2022年11月8日火曜日

創意工夫とDIYでの戦い:アルメニアの「N-2」多連装ロケット砲



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 アルメニアでは自国の現代史を通して、比較的少ないコストで新たな戦闘能力を軍隊に提供するべく独自兵器の設計が頻繁に考案されてきました。そのプロジェクトの1つである、塹壕内で使用するために設計されたリモート・ウエポン・システムについては、すでに当ブログで取り上げられています。

 もう1つの比較的あまり知られていないプロジェクトとして、12門の「RPG-7」対戦車擲弾発射器を牽引車やトラックに搭載した短射程のサーモバリック弾発射型多連装ロケット砲(MRL)があります。リモート・ウエポン・システムと同様に、このMRLもナゴルノ・カラバフ周辺のアゼルバイジャン軍との塹壕戦を念頭に置いて設計された可能性があります。

 「N-2」として知られるこのMRLは、おそらく1990年代から2000年代のどこかの時点で「Garni-ler・アームズ・カンパニー」によって設計・製造されました。[1]

 この発射機には12発の「TBG-7V」サーモバリック弾(またはアルメニアのコピー品である「TB-1」)を使用しますが、理論上は通常の「RPG-7」から発射できる弾頭であれば、どれでも使用可能です。12発の弾頭は、一度に単発か数発が遠隔操作で発射されます。ただし、「TB-1/BG-7V」の有効射程距離が短いため(数百メートルから1キロメートルと推定)、このシステムを有効に活用できる状況は比較的少ないと思われます。

 敵の陣地を狙うためには「N-2」を危険なほど近くに配置させる必要があるため、このシステムを防衛目的以外で適切に使用することは困難です。特に思い浮かぶシナリオの1つとしては、味方の陣地を敵の歩兵から防御する際での使用があります。敵兵に「N-2」の12発のサーモバリック弾頭を使えば、相当な効果を発揮するに違いありません。



 時々「N-2」MRLがアルメニア陸軍の装備リストに入ったと推測されることがありますが、これは2011年のアルメニアの独立記念日の軍事パレードに登場したことに由来しているようです。[2]

 (実際の運用を含めて)再び姿を見ることがなかったため、「N-2」がパレードに登場したのは一度限りの宣伝目的での使用にあったと思われます。実際、パレードに登場した4門のシステムは「N-2」の全生産量に相当する可能性すらあります。

 このシステムは安価で軽量なMRLとしてある程度の見込みがあるものの、問題はより正確に使用できる12門の「RPG-7」発射機と同量の弾頭を犠牲にすることが、「N-2」の控えめな接近阻止・領域拒否能力に値するかどうかです。



 「N-2」の性能は、どうやらアルメニア軍に大量生産を開始するには不十分なものと見なされたようです。

 とは言うものの、「N-2」はアルメニアの防衛部門に創造力が欠けているわけではないということを思い出させてくれます。らにある程度の財源が与えられるならば、「N-2」をベースにしたシステムが低レベルでの火力を増強する費用対効果の高い手段をもたらすかもしれません。



[1] Light multiple grenade launcher developed in Armenia http://articles.janes.com/articles/Janes-Missiles-And-Rockets-2010/Light-multiple-grenade-launcher-developed-in-Armenia.html
[2] Independence Day. Armenia. Parade on September 21 https://youtu.be/ggGo-BzNBEw

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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