2018年3月31日土曜日

シリア製TOS-1:「シャムスの放射砲」


著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans(編訳:ぐう・たらお)

第4機甲師団はダマスカスでの作戦を通じて、数種類の戦車やほかのAFVを追加装甲によって改修したことでよく知られている。
装甲の改修を一連のAFVと支援車両にわたって施した後、今や第4機甲師団(4AD)は「シャムス(アラビア語で太陽の意味)」として広く知られている新型の多連装ロケット発射機(MRL:放射砲)を導入することで、武器のストックを再び拡充した。
そのニックネームはシリアでの展開中に「太陽」と呼ばれていた、シャムスに美しく似たロシア製TOS-1A 「Solntsepyok」に由来すると考えられている。

この車両には、4ADのAFVに施された高度で専門的な改修の傾向が受け継がれている。
そのような改修を受けた車両の最初のものは2014年後半のダマスカス郊外県に位置するアドラに出現したが、少なくとも2台の装甲強化型T-72M1がジョバルに配備された直後に破壊された。
しかし、これ自体は4ADが改修プログラムを継続することを阻止しておらず、今後数年間でいくつかのタイプの装甲強化型AFVが戦場で目撃されるだろう。

シリア各地でこの国を支配すべく戦っている勢力は、戦場で直面している戦闘の種類により適合するAFVのいくつかを改修し始めた。
この改修には上空からの視認性を低下させるための対策を実装することから、戦車を車両運搬式即席爆発装置(VBIED)に転換することまでのすべてが含まれている。
BMPはこうしたDIY改修で多くのベース車となっており、明らかな制約と弱点があるにもかかわらず人気のプラットフォームであることが証明されている。

この車両には多くのDIY改修が存在する一方で、シャムスのようなIFVから放射砲への改修はシリアでは初めてであるが、間違いなく世界中のBMPの車体をベースにした火力支援プラットフォームでは最も洗練されたものである。
世界中で行われた以前の試みではBMPの砲塔に航空機とヘリコプターから取り外された23mmガンポッドB-8 80mmロケット弾ポッド搭載されたが、キューバは最近になってBMPのいくつかを火力支援用途に転換し始めて、100mm対戦車砲122mm榴弾砲(D-30)を装備した。









シャムスは5発の大口径ロケットの発射機構とBMP-1の車体を組み合わせたもので、ロケットは標準的なロケット弾とはるかに大きな弾頭を組み合わせた、人気のある「ボルケーノ」型だ。
これらのロケットは、2013年のクサイルにおける戦闘中に直撃で住宅区画を完全に破壊する能力で広く知られた。
シリアの軍需産業は同時期にこれらのボルケーノを大量生産し始め、現在ではシリアで展開される作戦地帯の殆どの前線で使用されている。

シリアでは、現在3種類のボルケーノが生産されていると考えられており、さらにそれぞれいくつかの派生型に分かれている。
最も広く使用されている型は107mm122mmベースのものだが、220mmベースのものも存在する。
シリアでは107mmと122mm(グラード)のロケット弾が非常に一般的である上220mmロケット弾はシリアで生産されていることが知られているので、これらをボルケーノに転換することは比較的容易だ。
シャムスは2種類の122mmベースのボルケーノを使用しており、どちらも大重量の300mm弾頭を備えている。

興味深いことに、2種類のうちの1つは従来の弾頭がもたらすことが可能な爆発力もより強力なものにするために空気中の酸素を利用し、閉じ込められた空間での使用に理想的に適したサーモバリック弾頭伝えられるところによれば350kgというとてつもない重量だという)を有すると評された 。
もう1種類は250kgの通常弾頭(元の122mmロケット弾では約65kg)を使用しており、短いロケットブースターによってサーモバリック弾頭型と識別することができる。
ボルケーノの射程距離はサーモバリック型では3.4キロメートル、従来型では1.5キロメートルと主張されている。
発射機内にある5発のロケット弾に加えて、BMP-1の歩兵搭乗区画にはさらに多くのロケット弾が搭載されている可能性があるが、車両や乗員自身にとって危険かもしれない(注:誘爆の可能性があるため)。











シャムスの画像は1ヶ月前(注:2016年10月)に初めてインターネット上に投稿されたが、このシステムはすでにデリ・ハビヤとカーン・アル・シー(ダマスカス郊外県)の戦いの間に作戦中の姿が見られた。
現在、第4機甲師団はこの戦略的な町とそれを取り囲む地勢を制圧するために反政府勢力と交戦し、10月下旬には反政府勢力の支配地域を完全に包囲している。
この出来事は4ADの少なくとも一部の部隊の配置転換をもたらしており、これにはシャムスも含むとも考えられている。
したがって、シャムスがすぐにダマスカス郊外県かダマスカスの別の場所に出現する可能性がある。








シャムスは戦時下に適応した完璧な例であり、もしそうでなければ平凡だったAFVを現在のシリアの戦場で遭遇した戦闘の種類に完全に適合した、強力なプラットフォームに変えた。
シリア陸軍がさらにそのような効果的な改修を行うのはその意欲と資源次第ではあるが、
機甲戦力の改修の柔軟性が軍事戦略に反映されれば、その決定はシリア内戦の結果に大きな影響を与えるだろう。

 ※ この翻訳元の記事は、2016年11月3日に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。  

おすすめの記事

4年にわたる内戦の成果:第4機甲師団の装甲強化計画(日本語)
最前線への前進:シリアのBMP(英語)
シリアの鋼鉄の猛獣: T-55(英語)
シリアの鋼鉄の猛獣: T-62(英語)
シリアの鋼鉄の猛獣: T-72(英語)