2022年3月30日水曜日

ロシア・ウクライナ戦争で失われた艦艇一覧


著:ヤクブ・ヤノフスキ, アロハ, ダンケマル(翻訳:Tarao Goo)

  1. 当記事は、2022年2月24日に本ブログのオリジナルである「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(翻訳者は一覧の精査には関与していません)。
  2. この戦争で撃破されたり、鹵獲された両軍艦艇の詳細な一覧を以下で見ることができます。
  3. この一覧については、資料として使用可能な映像や動画等が追加され次第、更新されます。
  4. この一覧は、写真や映像によって証明可能な撃破または鹵獲された艦艇だけを掲載しています。したがって、実際に喪失したものは、ここに記録されている数よりも多いことは間違いないでしょう。
  5. この一覧は、各種情報を精査して確実と判断したものだけを掲載しています。したがって、後で誤りや重複が判明したものは適宜修正されます。
  6. 戦争以前からすでに放棄されていた艦艇や民間船はこのリストには掲載されていません。
  7. 「撃沈」や「大破・着底」の艦艇を当記事では「沈没」として扱います。
  8. 各艦艇の名称に続く数字をクリックすると、撃破や鹵獲された当該艦艇の画像を見ることができます。
  9. 本国版「Oryx」ではこの一覧の更新が常時なされていますが、日本語版については翻訳作業だけでも非常に大変なため、特異なものがない限りは3日か2日に1回程度の更新とさせていただきます。
  10. 当一覧の最終更新日:2023年11月19日(英語版は11月17日


ロシア - 19,  このうち沈没・撃破: 12, 損傷: 7 

ロケット巡洋艦(1, このうち沈没:1)

小型ロケット艦(コルベット)

潜水艦(1, このうち撃破:1)

揚陸艦(5, このうち沈没・撃破:3, 損傷:2)

掃海艦(1,このうち損傷:1)


高速艇 (5, このうち沈没・撃破:3, 損傷:2)


救助曳船(1, このうち沈没:1)



ウクライナ - 27, このうち沈没:8, 自沈:1, 損傷:1, 鹵獲:17

フリゲート(1, このうち自沈:1)

高速艇(11, このうち撃破・沈没:4, 損傷:1, 鹵獲:6)

多目的艦艇(15, このうち沈没:3, 鹵獲:12




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2022年3月25日金曜日

武器提供の呼びかけ:ウクライナが必要とする兵器類


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 今や現代で最も猛烈で犠牲の大きな戦争の1つとして定着しつつある武力衝突がヨーロッパの東側で激化するにつれ、双方の驚異的な損失のエビデンスがますます明らかになってきています。[1]

 ウクライナの都市群は、その物理的な強度と市民生活を無視した残酷な砲爆撃によって夜通しで瓦礫と化しつつありますが、ロシア側の損失も驚くべきものとなっています。このような混沌の中で、決定的とはほど遠いにもかかわらずウクライナは一定の兵器や装備の流入を受けているものの、これまで最も豊富な「供与」は(不本意ではありますが)ロシア軍からのものでした。[1]

 新たに導入した兵器類は無数の供給源から無償で得られているものの、これまで実現していない注目すべき一部の兵器の引き渡しは海外からの軍事援助の限界を示しています。おそらく最も辛辣だったのは、ウクライナ空軍を強化するために(ポーランドの)「MiG-29」戦闘機の贈与をめぐるNATO内部の不和が、幾分かの大失態を世間に晒してしまったことでしょう。

 しかし、各国は最も重要な問題に直面している状況下で政治的決心の度合いと何が現実的に供与可能かを熟考していることを踏まえると、戦闘機の供与への異議について理解はできます。では、ウクライナに必要な兵器とは何でしょうか?

 特にロシアのような一流の敵に対する軍事支援の概念について、(一般的には)主力戦車がずらりと並び、高度な防空システムや戦闘機までもが轟音を響かせながら登場するというイメージを思い起こさせますが、実際の支援のほとんどは歩兵用の武器や装備の供与という控え目な方法がとられました。それがなされている実用面的な理由の1つとして、ウクライナは主に旧ソ連由来の装備を運用しているため、同国を支援するほとんどの国が提供可能な兵器に全く馴染みがないことが挙げられます。

 歩兵用の兵器、特に主に供与されている兵器(「ジャベリン」「NLAW」など)の利点は、効果的に使用できるようになるために最低限の訓練しか必要としないことです。この要件は、本質的に軍事援助を「使いやすい装備」、あるいは「ウクライナ側ですでに使用経験のあるもの」に限定しています。

 ウクライナとの国境で装甲戦闘車両の譲渡がいまだに行われていない別の理由は、そのような兵器の供与が戦争をさらにエスカレートさせ、NATOとロシアとの間で潜在的に戦端が開かれるリスクがあるという懸念を外国の多くの政治家が抱いているためです。
 
 しかし、このような推論は、すでにロシアのメディアがロシア軍は本質的にウクライナで(本当の敵に対する)代理戦争を戦っているという一般的なナラティブを流布していることに加え、現在の軍事状況を踏まえると、ウラジーミル・プーチンが単なる通常兵器の供与で戦争をエスカレートさせるリスクを冒す可能性が低いという事実を考慮に入れていません。

 とはいえ、仮に「目立たないこと」をウクライナに供与される兵器類の条件としたとしても、(継続的な)導入によってゲームチェンジャーと見なされるかもしれないタイプの兵器は数多く存在します。

ウクライナはアメリカから100発の「スイッチブレード300」徘徊兵器の供与を受ける予定となっています

 近年の紛争が実証しているものを言明するならば、基本的に精密誘導兵器(PGM)を中心に展開し始めていることが挙げられます。PGMは1発の威力と戦場で素早く強引に突破口を切り開く可能性の観点から見ると、非常に効果的なものであることは言うまでもありません。

 この普及を制限していた要因は、PGMが法外なコストであったことや、時にはそれらが有するハイテク性が広範囲にわたる導入を妨げたという事実です。実はこの事実が、これまでのロシアの乏しい戦果をある程度説明してくれます。ロシアが配備しているPGMの量と質は相当に低いようであり、長距離巡航ミサイルはしばしば標的を外し、攻撃機は低空飛行で無誘導の爆弾やロケット弾をリリースせざるを得なくなっているのです。

 一方のウクライナ側では、既存のPGMと新たに導入されたPGMが非常に効果的であることが証明されていますが、枯渇率が非常に高く、問題のPGMの大部分は短距離でしか有効性を発揮できないに違いありません。したがって、ウクライナはPGMに加え、対地攻撃と防空のために、より長い射程を持つ兵器を必要としているのです
 
 近年にそのような兵器類を揃えつつある供給源の1つであるトルコは、非常に適したほかのアセットを数多く有しています。これまでトルコはすでに極めて重要な役目を果たしている「バイラクタルTB2」などの無人戦闘航空機(UCAV)に加えて、精密誘導ロケット弾によって高い殺傷力を発揮する「TRLG-230」多連装ロケット砲(MRL)といった兵器システムも輸出しています。[2]

 最大で4つの目標しかダイレクトに攻撃できないものの、その滞空性能のおかげでより多くの目標を捜索・識別できるTB2との合同作戦において、「TRLG-230」230mm MRLは、
「バイラクタルTB2」によって指示された70km圏内に存在する敵を素早く続けて高い精度で撃破することができます。[3]

 この能力は、ロシアの地上部隊に壊滅的な打撃を与えるだけではありません。その射程距離と優れた精度を考慮すれば、海軍の上陸作戦やその他の作戦を阻止さえできるかもしれません。

「TRLG-230」230mm レーザー誘導式ロケット弾は「バイラクタルTB2」に照準された標的を打撃可能です

 実際のところ、ウクライナのすでに殺傷能力が高いUCAVアセットを最大限に活用するためにできることはもっとあります。

 ウクライナの無人機は投入されている環境を考慮すると驚くほどよく運用されていますが、過去の別の紛争では、敵防空網からの脅威を弱め、それによって戦場をより完全にコントロールできる効果的な(防御的)電子戦(EW)システムの使用によって、その有効性が倍増した例があるからです(注:2020年のナゴルノ・カラバフ戦争のこと)。このようなEWシステムは、(供与されれば)ウクライナの保有戦力でに最も目立たなくも多大な影響を与える装備となる可能性があるでしょう。
 
 逆に、地上のウクライナの戦力を防護してロシアに航空優勢を与えさせないためには、より強力な防空アセットが緊急に必要となっています。

 (外国製とウクライナ製の)携帯式地対空ミサイルシステム:MANPADSは今次戦争で圧倒的な効果を上げていますが、射程の長い防空システムはウクライナが維持している領土における防衛側の自由度を高め、実質的により効果的な防衛と反撃を可能にします。

 現在、ウクライナが受け取ったこの分野のアセットとして一般に知られているのは、ロシアが放棄したものだけしかありません。詳しく説明すると、ロシア兵はさまざまな戦闘や撤退の裏でこれまでに約20の防空システムを遺棄しており、ウクライナの部隊がそれらを鹵獲したというわけです。[1] 

 (仮に供与するとしても)西側諸国の防空システムのほとんどが抱えている問題としては、それが今すぐに必要な設備であるのに対し、ウクライナのオペレーターが適切な運用スキルを得るまでに長期間の訓練を必要とすることがあります。

 一部ではトルコがロシア製の「S-400」 地対空ミサイル(SAM)システムを提供するべきだという意見を提起する人たちがいます。この意見の是非は別としても、なぜトルコだけが戦略SAMを供与する責任があると考えられているのか、という論点がはぐらかされています。[4] 

 実利的には、ウクライナは、ブルガリアとギリシャとポーランドから提供されるかもしれない「9K33/SA-8 "オーサ"」、フィンランドの「9K37/SA-11  "ブーク-M1」、ギリシャの「9K331/SA-15 "トール-M1"」、ブルガリアとスロバキアとギリシャの「S-300PMU(-1)」といった、すでに精通している移動式の中・長距離防空システムから最大の恩恵を受ける可能性があると思われます。

 これらは、ロシアがウクライナの領空を完全に掌握することを阻止し続ける上で大きな助けとなるかもしれず、供給国にとって政治的・経済的なインパクトが小さいという利点があります。
 
フィンランド軍の「ブークM-1(ItO 96)」は現役から退いていますが、戦時に備えて稼働状態を維持しています

 歩兵用火器の分野では、一般によく知られている対戦車兵器やMANPADS、そして小火器(夜間戦闘でウクライナに一貫した優勢を可能にさせる暗視装置も必要なことは言うまでもないでしょう)以外に、徘徊兵器やほかの見通し外兵器がウクライナをロシアより実質的な優位に立たせてくれるでしょう。

 最近、アメリカは殺傷力の高い小型の徘徊兵器「スイッチブレード300」を大量に供与することを約束しましたが、基本的に自前の徘徊兵器が不足しているロシア軍を撃退するためには、より多くの同種兵器が必要となります。[5]

 残念なことに、徘徊兵器の最大の生産国にして運用国であるイスラエルは、現時点で同盟国と共にウクライナに軍事支援を提供することに消極的です。したがって、この重要な要求をトルコ(STM製「カルグ」)やポーランド(WBエレクトロニクス製「ウォーメイト」)、そしてアメリカといった別の主要生産国が引き受けなければならないのです。
 
 通常、武器の有効性は自身の目標を検知する能力によって左右されます。これを踏まえると、潜在的な影響力と供与の実現性の両方で歩兵用火器の上位に位置するもう一つの兵器が偵察用ドローンという答えが導き出されます。特に歩兵が容易に輸送・発進・操作できるタイプは、ウクライナに供与されるほかの全ての兵器の戦力倍増装置になると同時に、大砲などの通常戦力を支援することもできる可能性を秘めています。
 
 かつての属国であった地で信じられないほど強力な敵に遭遇したロシア軍は動揺している一方で、ウクライナは軍事関連施設や民間インフラにたいする自暴自棄な攻撃をどんどん受けていることから、これまで以上にないレベルの緊張状態にあります。まさに今こそが
、ある種の兵器の新たな提供が歴史の流れを変えるかもしれない重要な時期なのです。

 起こるべきではなかった戦争で「主権を持つ国民国家」の意義がまさに争われている中、ウクライナは必死に友好国に訴えかけ続けていますが、1つの疑問が残り続けます:どの国がその呼びかけに応じるのでしょうか?

 
[1] Attack On Europe: Documenting Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-equipment.html
[2] Defending Ukraine - Listing Russian Army Equipment Destroyed By Bayraktar TB2s https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/defending-ukraine-listing-russian-army.html
[3] TRLG-230 Laser Guided Missile https://www.roketsan.com.tr/en/products/trlg-230-laser-guided-missile
[4] Turkey’s Russian Missiles Could Defend Ukraine https://www.wsj.com/articles/turkeys-russian-missiles-could-defend-ukraine-antiaircraft-weapons-putin-fighter-jets-arms-invasion-11647546396
[5] The latest US weapon heading to Ukraine: A 2-foot long, 5-pound drone designed for one-way missions https://breakingdefense.com/2022/03/ukraine-is-getting-switchblade-it-should-be-just-the-first-wave-of-loitering-munitions-for-kyiv/

 たものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇 
 所があります。


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ロシア・ウクライナ戦争で失われた航空戦力(一覧)


著:ヤクブ・ヤノフスキ, アロハダンケマル(翻訳:Tarao Goo)

  • 当記事は、2022年3月20日に当ブログの本国版である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。
  • この戦争で撃墜や鹵獲されるなどした両軍の有人機や無人機、ヘリコプターの詳細な一覧を以下で見ることができます。
  • この一覧については、資料として使用可能な映像や動画等が追加され次第、更新されます。
  • この一覧は、写真や映像によって証明可能な撃墜または鹵獲されるなどしたものだけを掲載しています。したがって、実際に喪失した兵器類は、ここに記録されている数よりも多いことは間違いないでしょう。
  • この一覧は、各種情報を精査して確実と判断したものだけを掲載しています。したがって、後で誤りや重複が判明したものは適宜修正されます。
  • 明らかな「撃墜」でも、地上に落下したものは全て「墜落」と分類します。
  • 各兵器類の名称に続く数字をクリックすると、破壊や鹵獲された当該兵器類の画像を見ることができます。
  • 本国版「Oryx」ではこの一覧の更新が常時なされていますが、日本語版については翻訳作業だけでも非常に大変なため、特異なものがない限りは数か月に1回程度の更新とさせていただきます。
  • 当一覧の最終更新日:2024年2月27日(本国版は2月25日)

 


ロシア - 580, このうち墜落・地上撃破: 399, 損傷: 38, 鹵獲: 143

戦闘航空機 (83, このうち墜落または地上撃破: 79, 損傷:4)

戦略爆撃機(3, このうち地上撃破:1, 損傷:2)
 
指揮管制機 (5, このうち墜落:4, 損傷: 1)

輸送機(7, このうち墜落・地上撃破:4, 墜落:1, 損傷:2)

ヘリコプター (135, このうち墜落または地上撃破: 103, 損傷:30, 鹵獲:2)

無人戦闘航空機 (14, このうち墜落:11, 鹵獲:3)


無人偵察機 (327, このうち墜落:189, 鹵獲:138)


無人標的機 (4, このうち墜落:1, 鹵獲:3) ※2022年5月末をもって更新終了(損失から除外)
  • 3 E95M (ウクライナの防空システムの位置を探るための囮として投入された可能性あり): (1, 鹵獲) (2, 鹵獲) (3, 鹵獲)
  • 1 KBLA-IVT (ウクライナの防空システムの位置を探るための囮として投入された可能性あり): (1, 墜落)

徘徊兵器(7,このうち墜落:7)※2022年4月27日をもって更新終了(損失から除外)



ウクライナ - 394, このうち墜落: 301, 損傷:3,鹵獲: 90

戦闘航空機等 (73, このうち墜落・地上撃破: 72, 損傷:1)

練習機輸送機(3, このうち墜落:3)
 
輸送機(4, このうち墜落・地上撃破:3, 鹵獲:1)

ヘリコプター(38, このうち墜落:34, 損傷:1, 鹵獲:3)
 
無人戦闘航空機(26, このうち墜落:26)

無人航空機(250, このうち墜落:163, 損傷:1, 鹵獲:86)

無人標的機 (6, このうち墜落:6) ※2022年
5月末をもって更新終了(損失から除外)

徘徊兵器(2,このうち墜落:2)※4月27日をもって更新中止(損失から除外)


陣営不明機 - 2, このうち墜落・地上撃破: 2

戦闘航空機 (1, このうち墜落: 1)
 
ヘリコプター (1, このうち墜落:1)
  • 1 Mi-24/35「ハインド」攻撃ヘリコプター: (1,墜落)

特別協力 : J.J., Alex, The Military Watch, Gerjon(敬称略)


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