2022年12月29日木曜日

忘れられた戦争:ティグレ戦争で失われた航空機一覧 (2020-2021)


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア政府と北部のティグレ州との間で勃発した戦争は、エチオピアを混乱に陥れています。この武力紛争は2020年11月から熾烈を極めており、数千人が死亡、数百万人が避難を強いられいる状況にあります。

 エチオピア政府とティグレ人民解放戦線(TPLF)との間で何ヶ月にわたる緊張関係が続いていた後に、情勢が激化して戦争となったのです。

 1974年から1991年までエチオピアに存在していた共産主義・社会主義政権を打倒した後、TPLFは30年近くにわたってエチオピアの権力の中心にいました。エチオピアの人口の約5%しか占めていないにもかかわらず、ティグレ人の役人は政府を支配することができました。

 2014年から2016年にかけて反政府デモが相次いだ後、2018年にアビー・アハメド首相率いる新政権が発足しましたが、アビー首相はTPLFの権力を抑制しようと改革を強行し、ティグレ人を大いに動揺させました。

 それに応えて、ティグレ州は独自の地方選挙を実施して緊張が高まり、緊張は敵意をむき出しにする段階まで高まりました。

 この政治危機は2020年11月にTPLFの部隊(TDF:ティグレ防衛軍)がティグレ州のエチオピア軍基地を攻撃したことで戦争に発展し、エチオピア陸軍はティグレ州への侵攻を開始しました。

 この地域の支配権を奪回した後、TDFはエチオピア軍をティグレ州の外へ追いやり、エチオピアへの攻勢を継続しています。

 エチオピア空軍(ETAF)は、MiG-23BN戦闘爆撃機やMi-35攻撃ヘリコプターによる近接航空支援任務と、輸送機やヘリコプターを用いた敵に包囲された地域への人員や装備の運搬など、紛争のあらゆる段階で活発的に行動する姿が見られています。

 また、隣国のエリトリア空軍もMiG-29戦闘機をこの紛争に投入したと頻繁に報じられていますが、これらの主張を裏付ける証拠は示されていません。

 その一方で、ティグレ軍は少なくとも3基のS-125/SA-3地対空ミサイル(SAM)陣地と一基のS-75/SA-2陣地、多数の9K310/SA-16「イグラ-1」MANPADS(携帯式地対空ミサイル)、12門を超えるZU-23 23mm対空機関砲を含む、航空機に対抗できるいくつかの対空兵器を保有しています。[1]

9K310「イグラ-1」MANPADSを構えているティグレの兵士。このMANPADSは最低でも2機のエチオピア軍機の撃墜に関わったものと考えられている。

ティグレ軍の手に落ちたS-125陣地

 ティグレ戦争は他の紛争と同様にプロパガンダが横行しており、ティグレ側から定期的に撃墜したという虚偽の戦果がリリースされています。

このような根拠のない主張が頻繁に投稿されています

 この一覧はティグレ戦争におけるエチオピア機の損失を視覚的に確認することを目的としており、新たな損失が発生し、確認された場合に更新されます。
 リストの最終更新日:2021年11月12日(Oryx英語版の元記事の最終更新日は2021年11月12日)


固定翼機(3)

ヘリコプター(2)


1x MiG-23BN(2020年11月29日, パイロットは脱出後に拘束)





1x MiG-23BN(2020年12月6日,ティグレ州のシレ《インダセラシエ》空港への緊急着陸を試みようとした際に滑走路の手前で墜落)





1x L-100-30(2921年6月23日,ティグレ州のギジェット近郊でMANPADSによって撃墜されたものと推測。この機はかつてエチオピア航空で使用されていたもの。 墜落時の映像はここで視聴可能





1x Mi-35(2021年4月20日, ティグレ州のアビー・アディ近郊でMANPADSによって撃墜されたものと推測)




1x Mi-35(2021年11月12日, アファール州近郊でMANPADSによって撃墜されたものと推測)
 




[1] The Tigray Defence Forces - Documenting Its Heavy Weaponry https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-tigray-defence-forces-documenting.html



おすすめの記事 

2022年12月28日水曜日

モロッコの「バイラクタルTB2」が姿を現した(短編記事)



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 最初の「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)がモロッコに到着してから2ヶ月も経たないうちに、すでに1機がこの王国の上空で目撃されています。

 モロッコは運用しているドローンの種類と配備されている場所に関して言えば秘密主義に徹していることで有名な国です。同国のUAVのいくつかは世間の注目からうまく避け続けていますが、モロッコで運用されていることが知られているにもかかわらず一度も目撃されていない機種もあります。[1]

 それにもかかわらず、モロッコが13機のTB2を導入したことが報じられているため、そのうちの1機を目撃する可能性は必然的にその確率が高くなると思われます。

 モロッコは、2020年に13機のTB2と4基の地上管制ステーション、1台のシミュレータだけでなく、ネットワークベースのデータトレースとアーカイブ処理用のソフトウェアも発注しました。[2]
 
 この王国は同年に(おそらくUAEからの贈呈品と思われる)3~4機の中国製「翼竜Ⅰ」を受け取っていたことから、このUCAVの入手がモロッコを中国から追加の無人機を導入させる方向へ導くだろうと予期されていました。しかし、中国製システムの追加購入が決定されることはなく、モロッコはトルコから13機の「バイラクタルTB2」を推定7,000万ドル(約80億円)で調達してしまったのです。[3]

 TB2の初目撃は、モロッコが西サハラで2台のトラックに対するドローン攻撃を実施した後に、アルジェリアが同国のトラック運転手3人を殺害したとしてモロッコを非難し、両国の緊張関係が高まっている中での出来事でした。[4]

 現時点ではTB2がその攻撃に関与したことを示唆する証拠はないため、実際にモロッコのドローンによる攻撃がなされたのであれば、中国製の「翼竜Ⅰ」が実施した可能性が高いと思われます。現在は数機の「翼竜Ⅰ」が西サハラのラユーンに配備されていますが、ダフラへの前進配置も現実的な可能性があります。

西サハラのラユーン上空を飛行するモロッコ軍の「バイラクタルTB2」

[1] Operating From The Shadows: Morocco’s UAV Fleet https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/operating-from-shadows-moroccos-uav.html
[2] Morocco's FAR Receives Drones Under Turkish Agreement https://www.moroccoworldnews.com/2021/09/344507/morocco-s-far-receives-drones-under-turkish-agreement
[3] Morocco receives 1st Turkish Bayraktar TB2 delivery: Reports https://www.dailysabah.com/business/defense/morocco-receives-1st-turkish-bayraktar-tb2-delivery-reports
[4] Comprendre l’attaque marocaine contre les civils algériens https://www.menadefense.net/algerie/comprendre-lattaque-marocaine-contre-les-civils-algeriens/

 のです。


 

2022年12月23日金曜日

ロシアのアフリカ攻勢:ロシアがマリ空軍の増強を図る(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 トゥアレグ紛争がイスラム過激派勢力の反乱を波及させ、遠くないうちに国土全体がアルカイダの支配下に置かれるという恐れが出てきた2012年以来、 マリはほぼ一貫して紛争状態に置かれています。

 2013年初頭には、首都バマコへ向かうイスラム過激派の進軍を阻止してマリ北部を政府の統治下に戻すためにフランス軍が介入し、マリ共和国軍の支援を得ながら敵の進出を迅速に覆してアルカイダ(後のイスラム国)が撤退したキダル地方を除く国土の大部分を奪回するという成功を収めました。

 近年のアルカイダやイスラム国はさらなる勢力圏の拡大を試みており、マリ軍や同国に展開したままの国連部隊への攻撃を数多く行っています。国連部隊の主な目的は、この地域における治安部隊が将来的にこれらの過激派組織という脅威と戦い、その供給路を遮断し、隠れ家の構築を防ぐといった対処を可能にするための訓練をすることにあります。 

 2012年にマリ北部で勃発した反乱に直面した際、マリ空軍(Armée De L'Air Du Mali)は敵の前進を阻むどころか友軍を支援することも完全に不可能であることが判明しました。

 明らかにマリに展開する外国軍部隊の影響を受け、その後のマリ空軍は自国の安全保障問題により現実的なアプローチをとることを始めました。「MiG-21」戦闘機や「S-125」地対空ミサイル(SAM)といった旧式の残存戦力の大半を迅速に退役させたのです。[1]

 それ以降のマリ空軍は2015年にブラジルから「A-29B "スーパーツカノ"」4機(2018年納入)、ロシアから「Mi-35M」攻撃ヘリ4機(2017年及び2021年納入)を導入するなどして、ゼロからの再建を進めています。

 2019年には、マリはEUから寄贈された情報収集・警戒監視・偵察(ISR)用に特化された「セスナ208」の引き渡しを受けました。前方監視型赤外線装置(FLIR)が装備されているこの飛行機は、3機の「Mi-24D」攻撃ヘリコプター、2機の「H215 " シュペルピューマ"」輸送ヘリコプター、1機の「C-295W」輸送機と共に、マリ空軍の中核を担う機体と言えるでしょう。[2] 

 このようにして、小さな戦力ではあるものの、結果的にこの地域で最も近代的で有能な空軍が誕生したのです。

 「A-29B」は幅広い種類の精密誘導兵器を搭載可能ですが、マリには導入されていません。その代わり、現存している3機はガンポッドや無誘導ロケット弾、そして無誘導爆弾で武装しています(注:「TZ-04C」は2020年に事故で失われました)。 [3] 

 この飛行機は胴体下部にFLIR装置を備え付けることも可能ですが、アメリカが供給に関する合意に消極的だったため、結果としてマリへ引き渡されることはなかったと思われます。[4]

 おそらくは「A29B "スーパーツカノ"」の有効性を高めるための手段が存在しないことに刺激を受けたせいか、マリはトルコや中国から精密誘導爆弾(PGM)を搭載できる無人戦闘航空機(UCAV)の導入を視野に入れているとみられます。

 2021年5月にアッシミ・ゴイタ大佐が10年ぶり3度目の軍事クーデターで政権を握った時点までこの交渉はまだ継続しているように見受けられましたが、彼の政権はロシアとの関係強化を選択して西側諸国との関係をさらに悪化させています。


マリ空軍が保有する「A-29B " スーパーツカノ"」のうちの1機

 アッシミ・ゴイタ大佐による権力奪取のほぼ直後に、マリはロシアから新たな兵器類を調達したり、寄贈を受けました。

 特にマリ空軍は両国の関係改善による恩恵を受けるに至りました。1年前の調印された契約に基づいて2021年12月に納入された4機の「Mi-171Sh」に加えて2機の「Mi-24P」攻撃ヘリコプターが引き渡されたのです。[5]

 2021年12月には、現地の治安部隊を訓練するためにロシアのPMC「ワグネル」も自身の「オルラン-10」無人偵察機と防空システムを伴ってマリに公式に展開しています。[6] 

 「ワグネル」は治安部隊の訓練のみならず、フランスを陥れるためにマリの旧フランス軍基地の近くに集団墓地を設けたことや、約300人のマリ市民が犠牲になった「ムラの大虐殺」に関与していたことが現在までに判明しています。[7] [8]

 2022年8月、マリ空軍はロシアから「Su-25」対地攻撃機1機、「L-39C」ジェット練習機・軽攻撃機6機、「Mi-24P」攻撃ヘリコプター2機、「Mi-8T」輸送ヘリコプター1機、そしてスペインから「C-295W」輸送機1機の引き渡しを受け、さらに強化されました(ただし、「Su-25」は10月4日に墜落事故で失われてしましました。代わりに納入された機体も2023年9月に撃墜され、保有機がゼロとなりました)。

 「Su-25」と「L-39」の引き渡しについては、マリの近隣諸国の大部分がトルコから「バイラクタルTB2」UCAVを導入、またはその予定であることが要因となった可能性があります。実際、ニジェール、ブルキナファソ、トーゴ、ナイジェリアがすでに同UCAVを運用中か発注していますし、結果としてマリには2022年12月に3機のTB2が納入されました。[9]

 自国の軍隊の需要を満たせるほどのUCAVを生産できないロシアは、マリ空軍にUCAVや関連技術を提供することができないというわけです。


 「Su-25」と「Mi-24P」は、マリ軍のパイロットが十分に熟練するまで「ワグネル」によって運用される可能性がないわけではありません。しかしながら、厳しいパイロットの訓練で「Su-25」や「L-39」が欠いている誘導兵器の運用能力や高度な照準システム、そして危険なサヘル地域で必要とされる生存能力をカバーすることは不可能と言わざるを得ません。

 政治的影響力を受けているかどうかは別として、減少しつつある軍備の蓄えを補う兵器類をロシアからまだ購入できるかもしれません。しかし、購入国はロシアの武器が21世紀の戦いに通用しないという現実に遅かれ早かれ直面することを余儀なくされるでしょう(2023ン年1月20日、マリ大統領府は新たに「Su-25」攻撃機1機、「L-39C」練習機5機、「Mi-8」汎用ヘリコプター2機が空軍に引き渡されたことを公表しました)[10]。

マリ空軍は合計4機の「Mi-35M」を2017年と2021年の引き渡しを受けました:これらはマリでFLIR装置が備え付けられた僅か2機種のうちの1つであり、誘導兵器(最大で8発の「9M120 "アタカ"」対戦車ミサイル)を運用可能な唯一の戦力です


  1. このリストは、マリ空軍で運用されている航空機の総合的なデータ化を目的としたものです。
  2. 現時点で運用されていない機体はこのリストには含まれていません。
  3. このリストは、新たな飛行機やヘリコプターの導入に関する発表や発覚に伴って随時更新されます。


マリ空軍の運用兵器一覧


無人戦闘航空機(9)


対地攻撃機及び練習機(18)


攻撃兼輸送ヘリコプター (16)


輸送兼汎用ヘリコプター (4)


練習兼汎用機 (8)


輸送兼汎用機 (6)


VIP専用機 (1)


無人偵察機 (少数)


レーダー(1)


[1] Goas In The Savanna: Mali’s S-125 SAM Systems https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/goas-in-savanna-s-125-sam-systems-in.html
[2] New ISR Cessna 208 Caravan for Mali https://www.keymilitary.com/article/new-isr-cessna-208-caravan-mali
[3] Crash Mali Air Force Super Tucano https://www.facebook.com/Scramblemagazine/posts/3538112936215215
[4] Mali receives Super Tucanos https://www.defenceweb.co.za/aerospace/aerospace-aerospace/mali-receives-super-tucanos/
[5] Mali officially takes delivery of Mi-171 helicopters https://www.defenceweb.co.za/aerospace/aerospace-aerospace/mali-officially-takes-delivery-of-mi-171-helicopters/
[6] Townsend: Russia Added to Instability in Africa With New Air Defenses in Mali https://www.airforcemag.com/townsend-russia-added-to-instability-in-africa-with-new-air-defenses-in-mali/
[7] French accuse Russian mercenaries of staging burials in Mali https://apnews.com/article/russia-ukraine-ouagadougou-burkina-faso-europe-africa-af0965b3bd459f90c9cf930625aa4590
[8] ‘The Killings Didn’t Stop.’ In Mali, a Massacre With a Russian Footprint https://www.nytimes.com/2022/05/31/world/africa/mali-massacre-investigation.html
[10] https://twitter.com/PresidenceMali/status/1616111932238356482?s=20&t=49UjxsXzXv4qxLtGhv1AQA

※  当記事は、2022年8月16日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
  あります。


おすすめの記事

2022年12月16日金曜日

希少な機体: モロッコにおけるIAI「ヘロン」UAV



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 一部の国は自国の軍事力を世界中に見せつけるべく保有するドローンを熱心に誇示する一方で、無人航空機(UAV)のストックや運用状況を公開したがらない国もあります。

 その1国がモロッコであり、現在ではイスラエルや中国、そしてトルコ製UAV・UCAVの大規模な飛行隊を運用しています。[1]

 それにもかかわらず、実際の運用については全く知られていないため、どうやらモロッコはUAVの運用を軍の巧妙に秘匿すべき機密として維持し続けているようです。

 これはモロッコが運用している3機のイスラエル製IAI「ヘロン」飛行隊も例外ではありません。このUAVは2013年に初めて導入されて翌2014年に運用が開始されましたが、この国で運用される姿については着陸や離陸する際に空軍基地のすぐ外側で民間人に撮影された時にしか目撃されておらず、導入自体もモロッコ当局から公式に認められたことはありません。[2]

 衛星画像の徹底的なサーチによって視認できた機数は多少増えたものの、隣国アルジェリアのUAV飛行隊よりもはるかに少ないことには変わりありません。

 モロッコは2020年までイスラエルを国家として承認していませんでしたが、両国は長い間にわたって非公式の関係を維持し、安全保障上の問題で協力してきました。これらの関係によってイスラエルから数種類のドローンが納入されてきましたが、モロッコは近い将来に(まだ形式が判明していない)イスラエル製徘徊兵器の組み立てラインも立ちあげる予定となっています。[1]

 モロッコがかなり興味を示している他のイスラエル製ドローンには、「ワンダーB」「サンダーB」、そして「ヘルメス 900」があり、現在ではこれらの全てが発注されたと考えられています。[1]

 また、モロッコはこれらの機種とIAI「ヘロン」を導入していることに加えて、2018年にフランス空軍から退役したEADS「アーファング(「ヘロン」をフランス向けに特別に開発した派生型)」の運用者でもあります。長い交渉期間の後の2020年になって、モロッコはようやくこれらのUAVを受け取ったようです。[3]

 当然のことながら、これらはまだモロッコでは目撃されていません。しかし、これは軍事的な調達を世間の目から隠し続けるという、モロッコの要領の良さをまさに証明しています。

このようなモロッコのIAI「ヘロン」を写した画像はほとんど存在しません

 IAI「ヘロン」は現在、アゼルバイジャン、インド、そしてシンガポールを含む少なくとも10の国で運用されています。また、EUもこのUAVの運用者であり、欧州国境沿岸警備機関で使用されています。

 モロッコのIAI「ヘロン」は「ドローン飛行隊」によって運用されていますが、(運用部隊のものと思われるパッチ以外の)詳細は不明です。

    
 公式の情報源によって確認されたことはありませんが、最近のモロッコ空軍のIAI「ヘロン」は同国中部のベン・ゲリール空軍基地に駐留しており、西サハラにあるダフラへ定期的に前進配置されているようです。

 「ヘロン」の目撃情報の大部分はダフラでの展開中に得られたものであり、この基地が住宅地に近接している結果としてもたらされたことは間違いないでしょう。

 新たに入手したEADS「アーファング」もこれらの場所に配備されているかは不明のままですが、モロッコと西サハラ地域にある別の空軍基地もドローンによる作戦で用いられていると考えられています。

ベン・ゲリール空軍基地にいるIAI「ヘロン」(2016年2月)

 係争中の西サハラに位置するダフラに「ヘロン」が配備されたことで、この地域におけるモロッコ軍の偵察能力が大幅に向上しました。[4] [5]

 24時間以上の滞空性能を持つこのUAVは、モロッコと同様にサハラ地域の領有権を主張する「ポリサリオ戦線」の動きを追うのに最適です。

 (外国に販売された全てのイスラエル製UAVと同様に)「ヘロン」は非武装ですが、トルコから13機の「バイラクタルTB2」を調達したことで、モロッコは控えめながらも本格的な精密打撃能力を手に入れました。[1]

ダフラ基地のIAI「ヘロン」。この画像が基地の外から撮影されたことに注目。

上の同じ場所を撮影した衛星画像でも「ヘロン」の姿を確認できます(2018年11月)

 イスラエル製UAVの数を増やし、最近ではトルコから「バイラクタルTB2」を導入したことで、モロッコは今や高度な無人機戦力を提供するこれらの国との関係を固めるという方向で結論を出したようです。

 おそらく偶然ではないでしょうが、モロッコの無人機戦力の構成は2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で圧倒的な影響をもたらしたアゼルバイジャンのものと酷似しています。より多くの国がこの流れに追従しようとするのは、あり得ない話ではありません。

 興味深いことに、この動きは中国製ドローンの評判を不利益にしているように見えます。なぜならば、モロッコはトルクメニスタンとナイジェリアに次いで、すでに中国製UCAVを運用しているのにトルコ製UCAVを調達した3番目の国だからです。

 モロッコが隣国のアルジェリア(の軍事力)に後れずについていくことを試みたり、特定の任務(例:西サハラ上空での作戦)における有人機を置き換える選択肢として無人機がますます魅力的になるにつれて、将来的にはトルコやイスラエルからの無人機の調達が増えていく可能性があるでしょう。
バイラクタルTB2

Special thanks: SamirFederico Borsari (敬称略)

[1] Operating From The Shadows: Morocco’s UAV Fleet https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/operating-from-shadows-moroccos-uav.html
[2] Morocco Acquired IAI's Heron https://www.israeldefense.co.il/en/content/morocco-acquired-iais-heron
[3] Morocco receives Harfang UAVs from France https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/morocco-receives-harfang-uavs-from-france/
[4] https://twitter.com/obretix/status/1380989224107794440
[5] Israeli-French Drone Spotted In Moroccan Airport https://southfront.org/israeli-french-drone-spotted-in-moroccan-airport/

 ものです。また、意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇
 所が存在する可能性があります。



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