2017年2月22日水曜日

備蓄品からの補充:ロシアから供与されたT-62MとBMP-1がシリアに到着した   





著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

シリア軍への新しいAFVの供与に関する多くの噂に続いて、シリアから流出したいくらかの画像は、そのような引渡しが実際に行われたことを明らかにした。
これらの新しく引き渡されたAFVは、 現在、T4空軍基地~タドムル(パルミラ)間でIS(イスラミック・ステート)との厳しい戦闘に従事しているシリア陸軍第5軍団へ配備されることになっている。
事実、現在ここで行われている戦闘を報じる画像やビデオで、既にこれらの車輌が、ISへの反撃の役割を果たしている状況が確認されている。

多くの人々は、2015年後半にシリア軍部隊にこれらの車輌の小数の引き渡しに続いて、より多くのT-72やT-90でさえ供与されることを期待していたが、現在、第5軍団の中核はT-62MやBMP-1(P)といった、戦闘で実績のあるAFVで占められているように見える。
確かに、他のシリアの戦場で用いられているT-72やBMP-2の派生型よりは旧式であるが、これらのAFVの供与はひどく枯渇したシリア軍の車廠への追加としては、依然として歓迎されている。

実際、T-62Mは、T-90戦車シリーズに見られる「シュトーラ」のようなアクティブ防護システムには恵まれていないものの、シリアにおいて今も疲弊した機甲部隊の大半を占め続ける、T-55やT-62の初期派生型よりは大幅に改善されている。
引き渡されたBMP-1及びBMP-1Pは僅かな攻撃力と防御力しか提供しないが、特にこれらの車輌を運用した経験がある乗員にとっては習得と維持が容易という事実のために、第5軍団では十分に役立つ可能性がある。 



第5軍団はシリア・アラブ陸軍(以下、SyAAと記載)に新しく設立された部隊で、過去数年間にSyAAの役割を大規模に引き継いだ、勢力を増す様々な民兵組織に対するカウンターウェイトとしての役割を果たすものである。
シリアの体制を存続させるためには、 SyAAの部分的な解体とそれに続く民兵組織の増加が必要であったが、それが将来、手に負えない状況に陥る可能性があるという、幾多の大きな問題を引き起こした。 
第5軍団の設立は、これらの問題の少なくとも一部を解決することをねらいとしている。

ロシアは、民兵をシリアの最高司令部の指揮下で独立した部隊として存続させるのではなく、政権に圧力をかけて多くの民兵の指揮及び統制をSyAAに戻すことによって、同軍の事実上の再建を図るけん引役であるように思われる。  
自身の影響範囲内でシリアを維持するというイランの目標はいくつかの民兵組織の設立で成立したが、その多くは結局のところ外国の組織であり、ロシアはそのかわりに統一された軍の創設によって、現政権の存続を可能にさせる安定した状況を作り出そうと試みている。

このような統一された軍の欠如が、タブカへの攻勢の失敗と2度目のタドムル(注意:パルミラ)の喪失を最近の例として、過去数年に渡る政権側の敗北の大半で、苦痛を伴いながら明確にされてきた。
ロシアがシリアに介入した直後に、第5軍団の創設と同様のプロジェクトが開始され、NDF(注:アサド政権の民兵組織)の一部を含むいくつかの民兵組織が第4軍団に合併するように求められた。 かつてNDFが政権の主要な部隊としてSyAAの大部分と置き換えられたとき、NDFは近隣の警戒から、他の場所への攻勢の引き受けとシリアの至る所にある町やガス田、戦略的な軍用施設の警戒にまで任務を拡大した。
したがって、上記の構想はNDFが地方の防衛専用の戦力に残って、これらの任務がSyAAに戻されることを要求したのである。
しかしながら、今までのところ、このプロセスは全く成功していないように思われる。

ほとんど独占的に徴兵された人員から構成されるシリア軍の他の部隊とは対照的に、第5軍団は、以前はスクア・アル=サハラ(砂漠の鷹)のような民兵組織にしか見られなかった給与と手当を提供することによって、多数の男性を引き付けることを期待している(注:第5軍団は志願制) 。
さらに兵士の数の増強を図るため、以前に徴兵を免除されていたり、対象とならなかったシリア人男性達は、軍役から除外される厳しい規則があるために、第5軍団に入る可能性が高い。




現在、ほぼ6年にわたる長い内戦が、かつてシリアの機甲部隊に大きな被害をもたらし、特にロケット推進擲弾(RPG)と対戦車ミサイル(ATGM)の広範囲への拡散による多大な損失に苦しんでいる。
その上、戦車を脆弱な固定のトーチカとして役目を担わせるという、ほとんどの政権側の部隊によって採用された貧弱な戦術のために、その価値を効果的に退化させられた。
利用可能なAFVの量が、今日の作戦に対してはまだ十分あるように思われるが、その数は完全に新しい戦闘団(第5軍団)に装備させるにはあまりにも不足しすぎている。

第5軍団の新設というロシアの役割に合わせて、この新しい軍団の装備を担当するのも同じロシアである。
これによって、新しい軍団には広範囲にわたる近代的なロシア製兵器が装備されるという見方もあるが、ロシアはこれまでのところ、ロシア軍自身でもはや運用されていない旧式兵器を供与することを約束してきた。
それにもかかわらず、供与された兵器と車輌はSyAAと第5軍団にとって理想的に適していた。

小型の武器や大量のUral、GAZ、KamAZ、UAZのトラックとジープの引渡しに加えて、第5軍団への供与品には、これまでのところT-62M、BMP-1P、BMP-1、122mm M-1938(M-30)榴弾砲が含まれていた。
後者(T-62M)は既にシリアで使用されているものよりも現代的なもので、ロシアが提供したものは1970年代の間に近代化されたバッチであり、オンロード及びオフロードにおける機動性の向上を考慮してオリジナルのゴム縁付き転輪を交換している。

これらがシリアで出現する前に、既にいくつかのT-62Mが、シリアへの輸送のために港へ向かう姿をロシア国内で目撃されている。
これらの車輌はその後、大多数の車輌や装備が既に到着しているタルトゥス港行きの 「シリア急行」に搭載されて出荷された。
その後、T-62MとBMP-1はタルトゥスで現在、シリア中央部のISに対する戦闘に加わっている第5軍団の一部を含む新しい部隊への配分を待つ姿が目撃された。





T-62Mは、1980年代初頭にはより近代的な西側の戦車に性能を大きく上回られていたたことから、いくつかのT-62の派生型をアップグレードすることを目的とした近代化プログラムである。
このプログラムは、 火力、防御、機動性の分野におけるT-62の欠点を対処することを目的とし、それまで期待されていた値より低かった能力を大幅に向上させた。
この改修は、同時期に実施されたT-55及びT-55AをT-55Mに近代化する改修と並行して行われた。

装甲の強化は、 BDD「ブローヴィ」増加装甲を砲塔前面と車体上部及び底部の避弾経始上に装着すること、ゴム製のサイドスカートや砲塔への対放射線防護用の内張り、それに対戦車地雷に対する底面の装甲強化によって達成した。
結果として増加した重量は、新型のV-55Uディーゼルエンジンによって補われた。
強力な115mm砲の全潜在能力を活用するために、KTDレーザー測距器と関連機器から構成される 「ヴォルナ」射撃管制装置が搭載された。
この戦車もまた、シリアの T-55(A)MVで使用されている9M117 (9K116-1)「バスチオン」ATGMとほとんど同一の砲発射式ATGM9M117 (9K116-2)「シェクスナ」を発射する能力を得た。
この目的のために、砲手と戦車長の両方が新たな照準システムを得たことから、夜間戦闘時の有効性を大幅に向上させた。
この全てに加えて、この戦車には新しいスタビライザー、115mm砲用のサーマルスリーブ、新型の無線機が搭載され、砲塔の右側面には発煙弾発射機が装備された。

その年式にもかかわらず、T-62Mは、ソ連のアフガニスタン侵攻中に同国の山岳地で大いに使用され、コーカサスにおける数十年間の対テロ作戦の後、ロシア軍からやっと退役したばかりである。
現在でも、T-62Mは他のいくつかの国、特にキューバで運用され続けており、皮肉なことに「キューバ革命軍」の最も現代的な戦車としその任務を果たしている。



T-62の1967年型及び1972年型のようないくつかの派生型は統一的にT-62Mへ改修されたが、 1967年式がDShK12.7mm重機関銃を装備していないことにより、双方とも未だ容易に識別することができる。
興味深いことに、シリアは1967年式及び1972年式をT-62Mに改修したものを受取ったようだ。
後者(1970年式改修型)は、これまでシリア中央部から出てきている映像で、より大々的に取り上げられており、 死傷者は報告されていないものの、ISが放つATGMの初めての餌食となった。

供与されたほとんどの戦車には、シリアへの出荷前にロシアで描かれた「H22-0-0」という鉄道輸送用マーカーをまだ見ることができる。
これらの表示を消さないことは、この場合にはほとんど重要性を持たない一方、ウクライナに配備された戦車にも同様のマーカーが残っており、これはウクライナ東部における戦争へのロシアの関与を確認するために再度用いられるであろう。




たとえ旧式だとしても、これらのAFVの大量供与は、シリアの戦闘車両群を壊滅させた、蔓延する消耗の趨勢を逆転する可能性がある。
おそらく最も重要なことは、自身の経済的苦境やシリアが破綻している事実にもかかわらず、ロシアが大量の軍用装備で同盟国を支援する能力があり、それを全くいとわないままであることを示している点である。
今回の新構想(注:大量供与)は本質的に組織化された形でのSyAAの再建を意味しており、シリア内戦の将来の展開に大規模な影響を及ぼすことは確実であろう。

 ※ この翻訳元の記事は、2017年2月18日に投稿されたものです。
    当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
    正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

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