著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
戦車 (205)
歩兵戦闘車 (186)
装軌式装甲兵員輸送車(90)
装輪式装甲兵員輸送車 (930)
歩兵機動車(4+)
当記事は、2023年8月19日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに意味や言い回しを変更した箇所があります。
いかなる(近隣の)国々からの侵略に直面する可能性が僅かでも存在しないように思える冷戦終結後の今までも、スイスが相当数の装甲戦闘車両(AFV)を運用し続けていることに多くの人は驚くかもしれません。
ほとんどのトーチカが閉鎖され、航空兵力も大幅に削減されたにもかかわらず、スイス軍は継続的に戦力の近代化に取り組んでいます。これには、新たな装備の導入と、(限定的な)改修事業による既存のAFVの近代化の両方が含まれています。
スイス軍の不思議な点は、30機の「F-18」と18機の「F-5」戦闘機を保有していながら、1994年に最後のホーカー「ハンター」退役後に空対地攻撃能力を喪失したことです。その代わり、スイス陸軍は大量の「M109」自走砲を地上部隊の火力支援装備として頼りにしてきました。
2027年以降における「F-35A」の導入と共に、少量の「GBU-53」と「GBU-54」誘導爆弾の入手によってスイスは限定的な空対地攻撃能力を復活させることになるでしょう。[1]
スイス陸軍では、(地上)火力支援アセットの重要性を疑う余地は残されていません。陸軍は2023年現在で133台の「M109 "KAWEST WE(戦闘能力向上及び戦力維持仕様)"」 自走砲を保有しており、火力支援能力を引き続き重要視していることを明確に示しています。将来的には、10年以内に「M109」を「RCH-155」や「アーチャー」155mm自走榴弾砲に更新する計画があります。
自走砲と並んで、スイス陸軍は「ピラーニャ-V」ベースの「メイザー 16」120mm自走迫撃砲(SPM)を合計で48台発注しました。しかしながら、スイス陸軍の保有兵器には多連装ロケット砲(MRL)が含まれていません。
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、スイス陸軍はすでに発注した装備の数を一気に増加させました。特に、「メイザー16」SPMの発注数は32から48まで増えました。また、「ピオニア・パンツァーファールツォイク 21」 戦闘工兵車の調達数も60から84に増加しています。ただし、スイス陸軍が有する110台の「パンツァーイェーガー90」戦車駆逐車は、後継が不在のまま2022年に退役してしまいました。
スイスによるAFV導入は装軌式よりも装輪式のプラットフォームを好む傾向が強まっていることを特徴としており、この選択は同国の広範囲に及び道路網に適切なものと言えるでしょう。
「ビソン」要塞砲や「センティ」ブンカー(トーチカ)のような象徴的な構造物が過去の遺物となり、現在のスイスはブンカーに頼るのではなく、国内全域への迅速な戦力投入を優先する戦略をとっています。この変革は、1,000台近くの「M113」装甲兵員輸送車をスクラップにして「デューロIIIP」といった現代的な装輪式の代替車両を採用するなどの決定からも明らかです。
スイス軍の火力と有効性をさらに向上させるために今後いかなる措置が講じられたとしても、ロシアによるウクライナ侵攻は今後何十年もの間は実体を伴ったスイス軍を存続させ、常に変化する全地球的な情勢におけるスイスの即応性を確実なものにさせることでしょう。
- この一覧は、現在のスイス陸軍で使用されている全種類のAFVをリストアップ化を試みたものです。
- この一覧には、画像・映像などで存在が確認された現役・保管車両と発注中のものを掲載しています。
- レーダー、 (装甲) トラックとジープ類はこの一覧には含まれていません。
- スイスでは、兵器の能力向上や寿命の延長を表現するためにさまざまな略語を用いています:KAWEST(戦闘能力向上)、WE(戦力維持プログラム)、NUV(長寿命化)など
- 各兵器の名前をクリックすると当該兵器の画像を見ることができます。
- 134 パンツァー87 WE(レオパルト2A4)
- 71 パンツァー87(レオパルト2A4) (保管状態)
歩兵戦闘車 (186)
- 186 CV9030CH (改修を経て2040年まで運用予定)
装軌式装甲兵員輸送車(90)
装輪式装甲兵員輸送車 (930)
- 513 ラートシュッツェンパンツァー93 ピラーニャIIC (8台が 憲兵隊で運用)
- 417 モワク「デューロIIIP/GMTF」
歩兵機動車(4+)
- 4 モワク「イーグルV 4x4 EOR」 (爆発物処理部隊で運用)
- (?) ACS「LAPV エノク」
偵察車 (228)
- 69 モワク「イーグルII 4x4 - アウフクラルングスファールツォイク 93/97」 (改修を経て2030年代前半まで運用予定)
- 59 モワク「イーグルIII 4x4 - SKdt INTAFF」(砲兵指揮観測車) (同上)
- 100 モワク「イーグル V 6x6 - アウフクラルングスファールツォイク TASYS」 (2030年以降に配備)
軽攻撃車両 (10)
- 10 ラインメタル「AGF サーバル」LAUF(偵察戦闘車) (更新予定)
工兵・支援車両など
- 25 ベルゲパンツァー3 "ビュッフェル" 装甲回収車
- 12 AEV 3 "コディアック" 装甲工兵車
- 12 パンツァーシュネルブリュッケ レーゲン 架橋戦車
- 12 マイネンラオムパンツァー63/00 地雷除去車
- 84 ピオニア パンツァーファールツォイク21 装甲工兵車 (2023年以降に配備)
- キャタピラー「938G」装甲ホイールローダ
- 40 モワク「ピラーニャ」装甲救急車
- 4 モワク「デューロIIIP」装甲救急車
- 12 モワク「デューロIIIP」CBRN偵察車
- 12 モワク「ピラーニャIIIC」CBRN偵察車
- 48 ラウペントランスポルトワーゲン 68/05 ''M548'' 弾薬輸送車
- 10 シュビムブリュッケ 95/15 自走浮橋
- 16 ウンターシュテュッツングスブリュッケ 46m 支援橋 (DSB)
通信車両 (64)
- 36 モワク「ピラーニャIIIC」無線アクセスポイント (RAP) 車
- 8 モワク「ピラーニャIIIC」コムニカツィオンパンツァー(通信車)
- 8 モワク「ピラーニャIIIC」メーアツヴェクゼンダーパンツァー(多目的通信車)
- 12 モワク「ピラーニャIIIC」コンパックパンツァー(通信車)
指揮車両(310)
- 160 モワク「ピラーニャ」装甲指揮車
- 6 モワク「ピラーニャIIIC」フュールングスパンツァー(装甲指揮車)
- 6 モワク「ピラーニャIIIC」フュールングス Führungs FIS/HE INTAFF パンツァー(装甲指揮車)
- 50 コマンドパンツァー63/07 ''M113'' 装甲指揮車
- 35 コマンドパンツァー・アルティレリー 63/97 ''M113'' (装甲砲兵指揮車)
- 53 フォイアライトパンツァー63/97 ''M113'' 装甲火力指揮統制車
- モワク「イーグルV 6x6 - フュールングスファールツォイク」指揮車 (2020年代半ばに調達予定)
自走迫撃砲(48,発注中)
- 48 メイザー16 120mm自走迫撃砲 (2024年以降に配備)
自走砲 (133)
- 133 M109 KAWEST WE 155mm自走榴弾砲 (20230年代前半以降に更新予定)
対空砲 (48)
- 48 35mm フラブ・カン63/90 ''エリコン GDF'' 35mm対空機関砲 (更新予定)
固定配備式地対空ミサイルシステム (5個中隊分,発注中)
- 5 MIM-104E "パトリオット PAC-3 " 中隊 [射程: 70+km] (発注中,2022年に退役した「レイピア」の後継)
[1] Switzerland – F-35 Joint Strike Fighter Aircraft and Weapons https://www.dsca.mil/press-media/major-arms-sales/switzerland-f-35-joint-strike-fighter-aircraft-and-weapons
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