2025年8月24日日曜日

【復刻記事】介入の予感:シリアでロシアの「BTR-82A」歩兵戦闘車が目撃された


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2015年8月24日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。情報が古いですが、あえてそのままにしています。 

 シリア向けの軍用品の中に若干の「BTR-80」派生型がロシア黒海艦隊の揚陸艦「ニコライ・フィルチェンコフ」艦上で目撃されてから僅か数日後、より高度なロシア製兵器がシリアに渡ったことが明らかになりました。「BTR-82A」の目撃は、戦争で荒廃した国に対する全く知られていない一連の兵器供給では最も新しいものです。

 ラタキア攻勢の映像では、以前にラタキア北東部で失った領土の奪還を目的とした攻勢に、少なくとも1台の「BTR-82A」歩兵戦闘車(IFV)が参加している様子が見られました。この攻勢は、国家防衛隊(NDF)、シリア・アラブ軍(SyAA)、共和国防衛隊が共同で実施したもので、後者は最近になってシリア沿岸部に大規模に投入したことが把握されています。共和国防衛隊は、「T-72」や「BMP-2」、「2S3 "アカーツィヤ"」122mm自走榴弾砲とともに、2015年6月中旬にラタキアに到着しました。同部隊への「BTR-82」の引渡しも同時期に行われたと考えられます。

 シリアは2013年末から2014年初めにかけて、化学兵器の廃棄に関する合意の下でロシアから少数の「BTR-80」を受け取ったことが知られています。ちなみに、化学兵器の輸送と警備を任務とした車両は1台もロシアに返却されていません。前述の合意の下で引渡された「BTR-80」については、その全てがマーキングが施されていないオリーブドラブに塗装されました。映像の「BTR-82A」は迷彩塗装が施されている上に「111」の番号が付与されています。これは、すでに長い年月にわたって使用されているシリアの軍用車両に見られる識別用のマーキングとは全く異なるのです。


 から地中海に向かうロシア海軍の揚陸艦によって、シリアへの装備の引渡しが定期的に行われています。つい3日前の8月20日には、ロシア海軍の艦船ニコライ・フィルチェンコフが甲板にトラックや装甲車を積んでイスタンブールを通過したばかりです。

 甲板上に車両が存在することは注目に値します。なぜならば、装備品類は今まで貨物室に積載されていたために外から見ることができなかったからです。この状況は、シリアに送られる車両の規模が貨物室に収まらないほど大きかったことを示唆している可能性が高いと思われます。


 長砲身の「2A72」30mm機関砲のおかげで、「KPVT」14.5mm重機関銃を装備した一般的な「BTR-80」と「BTR-82A」の区別は容易です。しかし、同じ機関砲を装備した旧型の「BTR-80A」との区別は困難を極めます。

 両者の主な違いは、BTR-82の砲塔には「TPN-3」昼夜兼用砲手用照準器ではなく「TKN-4GA-02」 が搭載されていることです。2 つ目の識別ポイントは、下の画像でも分かるように排気口の形状です。

BTR-82A

BTR-80A

 最近のシリアに対する「BTR-82」の引渡しは、シリア政府(アサド政権)を支援するというロシアの強い関与を思い起こさせるものであり、将来的にはほかの車両や兵器が納入される可能性が高いことを示唆しています。アサド大統領の政権維持に対するロシアの関与は非常に過小評価され続けていますが、実際は誰もが予想していたよりも大きなものである可能性を否定できません。

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