この記事は、2022年11月21日に当ブログの本国版である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(本国版はリンク切れ)。
2年間も続いた第一次チェチェン戦争が1997年に終結しましたが、アスラン・マスハドフ大統領が率いる政府がチェチェン・イチケリア共和国を再建できず、増加するイスラム原理主義勢力を抑えることができなかったため国内で混乱が生じました。イスラム原理主義勢力をなだめるため、マスハドフは将来的にチェチェン議会を廃止することと、シャリーア(イスラーム法)の一部を導入する決定を下したにもかかわらず、シャミル・バサーエフやサウジアラビア出身のイブン・アル・ハッターブなどの人物は、マスハドフの支配を事実上弱体化させ続けたのです。
1998年4月、バサーエフとアル・ハッターブが率いるイスラム国際戦線は、チェチェンとダゲスタンにイスラム首長国を樹立してコーカサス全域からロシア人を追放するとの目標を公に宣言しました。これが、第2次チェチェン戦争(1999年~2009年)の火種となったわけです。1999年8月、バサーエフとアル・ハッターブ率いる約1500人ものチェチェン戦闘員が隣接するダゲスタン共和国に侵攻し、続く9月初旬にも2度目の侵攻が行われました。これらの侵攻に伴う戦闘により、数百人が死亡し、数万人が避難を余儀なくされるという結果がもたらされました。
チェチェン侵攻のアイディアについては、この時点ではロシア国内で未だに極めて否定的な意見が多数を占めていました。しかし、9月初旬にモスクワで発生した一連のマンション爆破事件で307人の民間人が死亡したことで、世論はチェチェン問題の「解決」を支持する方向に傾いたのです。チェチェンの武装勢力は爆破事件の犯行を否定したものの、この事件はウラジーミル・プーチン大統領にとってチェチェン侵攻を正当化する絶好の口実となったことは言うまでもありません。現在では、これらの攻撃は実際にはプーチン大統領の命令でFSBが実行したもので、大統領自身の地位の維持か、極めて不評だったはずの戦争を正当化する理由を作るために実行を命じたという説が有力視されています。
ロシアは1999年8月下旬から9月にかけてチェチェン上空で大規模な空爆作戦を実施した後、10月5日に地上侵攻を開始しました。初期の攻勢では、ロシア軍と親ロシア派のチェチェン民兵は戦闘でチェチェン治安部隊(CSF)から抵抗を受けずに掃討に成功しています。というのも、第一次チェチェン戦争と対照的に、CSFはこれと言った重火器を全く保有していなかったのです。また、ロシアはチェチェン指導部とその隠れ家を攻撃とするべく、新型機(Ka-50?)と精密誘導弾を初めて実戦投入しました。
チェチェンの首都グロズヌイは冬の包囲戦を経て2002年2月に陥落し、都市は廃墟と化したことは記憶に新しいかもしれません。ロシア軍への組織的抵抗は2000年5月に終了しましたが、国内全体での抵抗は2009年まで9年間も続きました。その後、(外国から来たイスラム原理主義の義勇兵:ムジャヒディーンを含む)残存するチェチェン部隊はゲリラ戦に移行しましたが、そのほとんどが殲滅されるという最期を迎えています(バサーエフ、アル・ハッターブ、マスハドフ元大統領を含む)。
プーチン大統領は2003年10月5日にチェチェンで選挙の実施を命じ、元独立派のアフマト・カディロフが最終的に勝利を収めました。しかし、彼が権力の座に長く留まる運命になかったのは容易に想像できます。実際、2004年に暗殺されたことがその運命を物語っていると言えるでしょう。現在では、彼の息子であるラムザンが現在に至るまでチェチェンの統治を続けています。
ロシア (292, このうち撃破: 289, 損傷: 1 鹵獲: 2)
2年間も続いた第一次チェチェン戦争が1997年に終結しましたが、アスラン・マスハドフ大統領が率いる政府がチェチェン・イチケリア共和国を再建できず、増加するイスラム原理主義勢力を抑えることができなかったため国内で混乱が生じました。イスラム原理主義勢力をなだめるため、マスハドフは将来的にチェチェン議会を廃止することと、シャリーア(イスラーム法)の一部を導入する決定を下したにもかかわらず、シャミル・バサーエフやサウジアラビア出身のイブン・アル・ハッターブなどの人物は、マスハドフの支配を事実上弱体化させ続けたのです。
1998年4月、バサーエフとアル・ハッターブが率いるイスラム国際戦線は、チェチェンとダゲスタンにイスラム首長国を樹立してコーカサス全域からロシア人を追放するとの目標を公に宣言しました。これが、第2次チェチェン戦争(1999年~2009年)の火種となったわけです。1999年8月、バサーエフとアル・ハッターブ率いる約1500人ものチェチェン戦闘員が隣接するダゲスタン共和国に侵攻し、続く9月初旬にも2度目の侵攻が行われました。これらの侵攻に伴う戦闘により、数百人が死亡し、数万人が避難を余儀なくされるという結果がもたらされました。
チェチェン侵攻のアイディアについては、この時点ではロシア国内で未だに極めて否定的な意見が多数を占めていました。しかし、9月初旬にモスクワで発生した一連のマンション爆破事件で307人の民間人が死亡したことで、世論はチェチェン問題の「解決」を支持する方向に傾いたのです。チェチェンの武装勢力は爆破事件の犯行を否定したものの、この事件はウラジーミル・プーチン大統領にとってチェチェン侵攻を正当化する絶好の口実となったことは言うまでもありません。現在では、これらの攻撃は実際にはプーチン大統領の命令でFSBが実行したもので、大統領自身の地位の維持か、極めて不評だったはずの戦争を正当化する理由を作るために実行を命じたという説が有力視されています。
ロシアは1999年8月下旬から9月にかけてチェチェン上空で大規模な空爆作戦を実施した後、10月5日に地上侵攻を開始しました。初期の攻勢では、ロシア軍と親ロシア派のチェチェン民兵は戦闘でチェチェン治安部隊(CSF)から抵抗を受けずに掃討に成功しています。というのも、第一次チェチェン戦争と対照的に、CSFはこれと言った重火器を全く保有していなかったのです。また、ロシアはチェチェン指導部とその隠れ家を攻撃とするべく、新型機(Ka-50?)と精密誘導弾を初めて実戦投入しました。
チェチェンの首都グロズヌイは冬の包囲戦を経て2002年2月に陥落し、都市は廃墟と化したことは記憶に新しいかもしれません。ロシア軍への組織的抵抗は2000年5月に終了しましたが、国内全体での抵抗は2009年まで9年間も続きました。その後、(外国から来たイスラム原理主義の義勇兵:ムジャヒディーンを含む)残存するチェチェン部隊はゲリラ戦に移行しましたが、そのほとんどが殲滅されるという最期を迎えています(バサーエフ、アル・ハッターブ、マスハドフ元大統領を含む)。
プーチン大統領は2003年10月5日にチェチェンで選挙の実施を命じ、元独立派のアフマト・カディロフが最終的に勝利を収めました。しかし、彼が権力の座に長く留まる運命になかったのは容易に想像できます。実際、2004年に暗殺されたことがその運命を物語っていると言えるでしょう。現在では、彼の息子であるラムザンが現在に至るまでチェチェンの統治を続けています。
- 当一覧は、2022年11月22日に当ブログの本国版である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(翻訳者は損失の精査には関与していません)。
- 第二次チェチェン戦争における両軍の兵器類の詳細な一覧を以下で見ることができます。
- この一覧は、写真や映像によって証明可能な撃破または鹵獲された兵器類だけを掲載しています。したがって、実際に喪失した兵器類は、ここに記録されている数よりも多いことは間違いないでしょう。
- 迫撃砲、トラックや以前から用廃となっている兵器類はこの一覧には含まれません。
- ロシアの巨大なスクラップ置き場で見つかった(部品が剥ぎ取られた)装備については、修理が不可能なレベルで損傷しているか、共食い整備に使用された場合にのみ含まれます。記載されている日付は、その装備が失われた正確な日付を示しているとは限りません(あくまでも概算です)。1991年以前に製造されたものについては、ソ連国旗を付しています。
- 第一次チェチェン戦争における両軍の兵器類の詳細な一覧はこちらで見ることができます。
- 各兵器類の名称に続く数字をクリックすると、破壊や鹵獲された当該兵器類の画像を見ることができます。
ロシア (292, このうち撃破: 289, 損傷: 1 鹵獲: 2)
戦車 (23, このうち撃破: 23)
装甲戦闘車両 (33, このうち撃破: 33)
歩兵戦闘車 (110, このうち撃破: 108, 鹵獲: 2)
装甲兵員輸送車 (58, このうち撃破: 58)
工兵車両 (2, このうち撃破: 2)
砲兵支援車両 (2, このうち撃破: 2)
自走砲 (7, このうち撃破: 7)
航空機 (6, このうち撃破: 6)
ヘリコプター (51, このうち撃破: 50, 損傷: 1)
チェチェン (14, このうち撃破: 5, 鹵獲: 9)
3 T-62 “1972年型”: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
2 T-62M: (1, 撃破) (2, 撃破)
4 T-72A: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破)
7 T-72B: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破)
3 形式不明のT-62: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
4 形式不明のT-72: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破)
3 BRDM-2 偵察車: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
2 BRM-1K 偵察車: (1, 撃破) (2, 撃破)
20 MT-LB 汎用軽装甲牽引車: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (14, 15, 16, 17, 18 と 19, 撃破) (20, 撃破)
5 MT-LBu 汎用軽装甲牽引車: (1, 撃破) (2 と 3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破)
1 RKhM “カシャロット” 化学偵察車: (1, 撃破)
2 形式不明のAFV: (1, 撃破) (2, 撃破)
歩兵戦闘車 (110, このうち撃破: 108, 鹵獲: 2)
23 BMP-1: (1 と 2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6 と 7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 撃破) (15, 撃破) (16 と 17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破)
1 BMP-1P: (1, 撃破)
72 BMP-2: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 15 と 16, 撃破) (17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破) (24, 撃破) (25, 撃破) (26, 撃破) (27 と 28, 撃破) (29, 撃破) (30, 撃破) (31, 撃破) (32, 撃破) (33, 撃破) (34, 撃破) (35, 撃破) (36, 撃破) (37, 撃破) (38, 撃破) (39, 撃破) (40, 撃破) (41, 撃破) (42, 撃破) (43, 撃破) (44, 撃破) (45, 撃破) (46, 撃破) (47, 撃破) (48, 撃破) (49, 撃破) (50, 撃破) (51, 撃破) (52, 撃破) (53, 撃破) (54, 撃破) (55, 撃破) (56, 撃破) (57, 撃破) (58, 撃破) (59, 撃破) (60, 撃破) (61, 撃破) (62 と 63, 撃破) (64, 撃破) (65, 撃破) (66 と 67, 撃破) (68 と 69, 撃破) (70, 撃破) (1, 鹵獲) (2, 鹵獲)
12 形式不明のBMP-1/2: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11 と 12, 撃破)
2 BMD-2: (1, 撃破) (2, 撃破)
装甲兵員輸送車 (58, このうち撃破: 58)
6 BTR-60PB: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破)
12 BTR-70: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 7, 8 と 9, 撃破) (10, 11 と 12, 撃破)
38 BTR-80:(1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 撃破) (15, 撃破) (16, 撃破) (17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破) (24, 撃破) (25, 撃破) (26, 撃破) (27, 撃破) (28, 撃破) (29, 撃破) (30, 撃破) (31, 撃破) (32, 撃破) (33, 撃破) (34, 撃破) (35 と 36, 撃破) (37, 撃破) (38, 撃破)
2 BTR-D:(1, 撃破) (2, 撃破)
砲兵支援車両 (2, このうち撃破: 2)
自走砲 (7, このうち撃破: 7)
1 2S1 "グヴォジカ" 122mm自走榴弾砲: (1, 撃破)
3 2S3 "アカツィヤ" 152mm自走榴弾砲: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
3 2S19 "ムスタ" 152mm自走榴弾砲: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
航空機 (6, このうち撃破: 6)
ヘリコプター (51, このうち撃破: 50, 損傷: 1)
11 Mi-8MT 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落) (10, 墜落) (11, 墜落)
1 Mi-8MTV-1 輸送ヘリコプター: (1, 墜落または地上撃破)
5 Mi-8MTV-2 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落)
11 Mi-8 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落) (10, 墜落) (11, 墜落)
1 Mi-8 電子戦ヘリコプター: (1, 墜落または地上撃破)
3 Mi-26T 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落)
3 Mi-24V 攻撃ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (1, 損傷)
9 Mi-24P 攻撃ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落)
2 Mi-24 攻撃ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落)
5 形式不明のMi-8/24: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落)
チェチェン (14, このうち撃破: 5, 鹵獲: 9)
戦車 (1, このうち鹵獲: 1)
装甲戦闘車両 (2, このうち鹵獲: 2)
歩兵戦闘車(5, このうち撃破: 3, 鹵獲: 2)
装甲兵員輸送車 (2, このうち撃破: 1, 鹵獲: 1)
多連装ロケット砲 (1, このうち鹵獲: 1)
航空機 (1, このうち撃破: 1)
トラック、ソフトスキン車両、ジープ (2, このうち鹵獲: 2)
特別協力:Lost Armour.
[1] Azerbaijan buys the deadly Turkish Bayraktar TB2 mid-range strike UAV https://bulgarianmilitary.com/2020/06/27/azerbaijan-buys-the-deadly-turkish-bayraktar-tb2-mid-range-strike-uav/
[2] Statement from Minister Champagne on suspension of export permits to Turkey https://www.canada.ca/en/global-affairs/news/2020/10/statement-from-minister-champagne-on-suspension-of-export-permits-to-turkey.html
2025年現在の情報にアップデートした改訂・分冊版が発売されました(英語のみ)
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特別協力:Lost Armour.
[1] Azerbaijan buys the deadly Turkish Bayraktar TB2 mid-range strike UAV https://bulgarianmilitary.com/2020/06/27/azerbaijan-buys-the-deadly-turkish-bayraktar-tb2-mid-range-strike-uav/
[2] Statement from Minister Champagne on suspension of export permits to Turkey https://www.canada.ca/en/global-affairs/news/2020/10/statement-from-minister-champagne-on-suspension-of-export-permits-to-turkey.html
2025年現在の情報にアップデートした改訂・分冊版が発売されました(英語のみ)


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