ラベル プロパガンダ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル プロパガンダ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年1月15日日曜日

実際はどの程度?:NATOがウクライナに供与した兵器と損失数

撃破された「M777」155mm榴弾砲

 著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

  • 最終更新日:2023年9月26日(本国版:2023年9月25日)
  • 【重要】Oryxの活動縮小のため、当リストは10月1日以降は更新されません。今後はウクライナ軍の損失兵器一覧でご確認ください。

 2022年のロシア・ウクライナ戦争は、ロシア軍に影響を及ぼす諸問題と、1990年代から2000年代初頭にかけての長い衰退期の後に2010年代におけるロシアの軍備増強が茶番劇じみていたことを露わにしました。

 戦線の全体で主導権を喪失し、現時点ではその流れを変えることができない状況で戦線を安定させるために残されたロシアの希望は、ロシアにとって有利な条件でウクライナを交渉のテーブルに座らせるために行う将来的なイランの徘徊兵器及び弾道ミサイルの大量使用か総動員の発動しかありません。

 それらが最終的に戦争の行方にどのような影響を及ぼすにせよ、ロシアの指導部が自国の能力を完全に過大評価し、それと同時にウクライナ人の祖国防衛の決意をひどく過小評価していたことは間違いないでしょう。

 想像し得るほぼ全ての種類の武装を西側諸国から安定的に供給され、これらの新しい兵器システムを戦場で適切に投入するための十分な戦闘経験を持ったウクライナ軍は、間違いなく2月24日以来最強の状態にあると言えます。[1]

 対照的に、ロシア軍はウクライナで士気どころか強いというイメージさえも失ってしまいました。軍の能力を国内の人々に納得させるため、ロシア国防省はウクライナにおける戦闘実績で醜悪な誇張をしたり、身繕いのために真っ赤な嘘をつく必要に追い込まれました。

 例としては、(主張された時点で)ウクライナに納入された16基の「HIMARS」のうち20基を破壊・鹵獲したとされるものや、ウクライナに納入された約50機の「バイラクタルTB2」のうち(メーカーの「バイカル・テクノロジー」社がこれまで450機しか製造していないにもかかわらず)1,000機を撃墜したと報じたものが挙げられます。[2]

 一方、ロシアはほとんどの戦線で劣勢に立たされており、ウクライナの「HIMARS」及び「M270 "MLRS"」や西側諸国から供与された榴弾砲類の運用面での最大の脅威は、ロシアの対砲兵射撃や徘徊兵器による破壊ではなく、継続的な運用に伴う弾薬不足と砲身摩耗のようです(注:2022年11月ころから徘徊兵器による被害が増加する傾向にある)。

 ウクライナに供与された約160門の「M777」155mm牽引式榴弾砲のうち、撃破されたことが視覚的に確認されたのは31門です。[3]


 また、ロシアは20基の「HIMARS」を撃破したと主張しているものの、その1基でも撃破を裏付ける証拠を提示したことはありません。

 (この記事を執筆した2022年10月下旬の時点で)実際にロシア軍の手によって損害を被っているのは、主に旧ソ連製の戦車や西側諸国製のAPCの提供を受け、ヘルソン奪還の先頭に立っているウクライナの機械化部隊だけなのです。


  1. この記事は、視覚的証拠に基づいて確認された西側諸国が出所の重装備の損失とその特定のカテゴリーで引き渡された供与兵器の総量をリストアップすることを試みたものです。
  2. この一覧には、画像または映像による証拠で確認できる破壊された車両および兵器類のみを掲載しています。したがって、実際に撃破された車両・重火器の量はここに記録されている数よりも多いと思われます。
  3. 損傷した兵器類や対戦車ミサイル(ATGM)、携帯式対空ミサイルシステム(MANPADS)、トラックはこのリストに含まれていません。
  4. この一覧は、2022年2月24日以降にウクライナへ引き渡されたされた兵器類のみを対象としています。
  5. 2月24日以前と以降に納入されたものを区別するために、各国固有の車種や迷彩パターン、製造番号などの特徴を活用しています。
  6. 以下の項目は兵器の種類ごとに分類されており、国旗は供与した国を示しています。
  7. この統計については、新たな損失が確認され次第に更新していく予定です。
  8. 各兵器の名称の後に示されている数字をクリックすると、破壊または鹵獲された当該兵器の画像などが表示されます。


戦車: 約595台供与 - 78台の損失を確認


装甲戦闘車両: 約40+台供与 - 4台の損失を確認



歩兵戦闘車:約560台供与 - 48台の損失を確認


装甲兵員輸送車: 約1,180台供与 - 124台の損失を確認



MRAP(耐地雷・伏撃防護車両): 約905台供与 - 135台の損失を確認 

 

歩兵機動車: 約1,120台供与 - 29台の損失を確認 ※「ハンヴィー」を除く



工兵・戦闘支援装備:約225台供与 - 6台の損失を確認

牽引砲: 約430門供与 - 39門の損失を確認


自走砲: 約355+台供与 - 50台の損失を確認



多連装ロケット砲: 約105門供与 - 2門の損失を確認


対空砲:少量が供与 - 1門の損失を確認


レーダー:約125基供与 - 3基の損失を確認


無人偵察・輸送機: 大量に供与 - 28機の損失を確認


[1] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html
[2] Lost In Lies: Keeping Track Of Russian Propaganda Claims https://www.oryxspioenkop.com/2022/10/lost-in-lies-keeping-track-of-russian.html
[3] Attack On Europe: Documenting Ukrainian Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-ukrainian.html

※  当記事は、2022年10月29日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
  あります。


おすすめの記事