著:ステイン・ミッツアー(編訳:Tarao Goo)
すぐに後継となる艦艇が導入される目処が立っていないため、たった1隻しかない孤独な「AB-25」級は、しばらくの間、仲間のソ連製哨戒艇と一緒に航海を続けることになるでしょう。
しかし、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争がアゼルバイジャンに有利な形でしっかり決着したことから、同国はカスピ海の軍事化の流れに対応するために海軍の戦力増強に向けた投資を遂に開始するかもしれません。
アゼルバイジャンが現在運用している老朽化した艦艇の後継のメーカーとして、トルコの造船所が最有力候補となるだろうことには全く疑いの余地がありません。それを考慮すると、「AB-25」級はトルコで設計された別の艦艇に置き換えられる可能性は十分にあるはずです。
[1] New Meets Old: Aselsan’s 30mm SMASH RWS On Azerbaijani Stenka Patrol Boats https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/new-meets-old-aselsans-30mm-smash-rws.html
[2] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
※ この記事は、2022年1月27日に「Oryx」本国版(英語版)に投稿された記事を翻訳したものです。意訳など
により、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
アゼルバイジャンが1991年に独立した以降、この国の海軍は主にソ連から引き継いだ寄せ集めの艦艇を運用しています。
アゼルバイジャンの国境警備隊(SBS)が近年にイスラエル製の哨戒用艦艇を大量に導入している一方で、海軍はSBSから移管された多数のソ連時代の哨戒艇とタグボートを「新たに」導入しただけであり、結局は旧式艦艇の寄せ集めとしか関わりがありません。
おそらく一見して保有する艦艇が乏しい結果として、アゼルバイジャン海軍に関連するものには全く注意が向けられていませんでした。
とはいえ、この海軍を注意深く分析してみると、現在保有している老朽化した艦艇や装備を最大限に活用して、他国の海軍ではだいぶ前に退役した艦艇や艦載兵装を運用し続けることを意図しているような現状が明らかとなりました。
いくつかのケースでは、レーダーシステムのアップグレードや新たに遠隔操作式銃架(RWS)の搭載がなされることがあり、その一例として、以前に当ブログで取り上げた、少なくとも1隻の「ステンカ」級哨戒艇に「アセルサン」社製の「SMASH」30mm RWSが搭載されていることが挙げられます。[1]
アゼルバイジャン海軍で現役を続けているもう1つの注目すべき老朽艦は、2000年に供与された1隻のトルコ製「AB-25」級哨戒艇です。[2]
アゼルバイジャン海軍自体の画像や情報が不足しているため、この哨戒艇の20年以上にわたる同国での運用歴については、その大部分が見落とされてきました。
それでもなお、アゼルバイジャン国防省がソーシャルメディアの活用を始め、今ではYouTubeに海軍に関する動画を定期的にアップロードするようになったことから、綿密な調査をしたところ、ここ10年間の至る所でこの哨戒艇に関する多くの映像が撮影されていたことが判明しました。
2000年と2002年にトルコがさらに2隻の「AB-25」級を退役させましたが、その後の現在でも6隻がトルコ海軍で現役であると考えられています。
トルコで就役している「AB-25」級には、前甲板に「エリコン(現ラインメタル)」社製20mm機関砲1門、中央部に「M2」12.7mm重機関銃(HMG)2門、後甲板に「ボフォース(現BAEボフォース)」社製「L/70」40mm機関砲1門が装備されています。
現代の基準からすると迫力に欠ける武装かもしれませんが、「AB-25」級が1960年代に沿岸哨戒艇(IPV)として設計されたものであることを忘れてはいけません。
興味深いことに、ジョージアとアゼルバイジャンに供与された「AB-25」級は、武装が撤去された状態で引き渡されたようです。
したがって「P 134」艇が2000年にアゼルバイジャンに到着した後、海軍は即座に武装化に着手しました(現在では同哨戒艇に「P 223」の艦番号が付与されていることが判明しています)。アゼルバイジャンはソ連海軍からかなりの量の艦載兵装を受け継いだので、ソ連製の艦載砲を搭載していても何ら不思議はありません。
「エリコン」社製20mm機関砲は「2M-3」25mm連装機関砲塔に、「ボフォース」社製40mm機関砲は「70K」37mm単装機関砲に置き換えられました。これによって、「P 223」艇はソ連製の艦載兵装を搭載して運用される、初のトルコ製軍用艦艇となりました。
中央に装備される2門の重機関銃については、他のアゼルバイジャン艦艇でもよく見られる 「DShK」12.7mm重機関銃と思われます。
アゼルバイジャンの国境警備隊(SBS)が近年にイスラエル製の哨戒用艦艇を大量に導入している一方で、海軍はSBSから移管された多数のソ連時代の哨戒艇とタグボートを「新たに」導入しただけであり、結局は旧式艦艇の寄せ集めとしか関わりがありません。
おそらく一見して保有する艦艇が乏しい結果として、アゼルバイジャン海軍に関連するものには全く注意が向けられていませんでした。
とはいえ、この海軍を注意深く分析してみると、現在保有している老朽化した艦艇や装備を最大限に活用して、他国の海軍ではだいぶ前に退役した艦艇や艦載兵装を運用し続けることを意図しているような現状が明らかとなりました。
いくつかのケースでは、レーダーシステムのアップグレードや新たに遠隔操作式銃架(RWS)の搭載がなされることがあり、その一例として、以前に当ブログで取り上げた、少なくとも1隻の「ステンカ」級哨戒艇に「アセルサン」社製の「SMASH」30mm RWSが搭載されていることが挙げられます。[1]
アゼルバイジャン海軍で現役を続けているもう1つの注目すべき老朽艦は、2000年に供与された1隻のトルコ製「AB-25」級哨戒艇です。[2]
アゼルバイジャン海軍自体の画像や情報が不足しているため、この哨戒艇の20年以上にわたる同国での運用歴については、その大部分が見落とされてきました。
それでもなお、アゼルバイジャン国防省がソーシャルメディアの活用を始め、今ではYouTubeに海軍に関する動画を定期的にアップロードするようになったことから、綿密な調査をしたところ、ここ10年間の至る所でこの哨戒艇に関する多くの映像が撮影されていたことが判明しました。
「AB-25」級哨戒艇は1960年代から70年代にかけて、イスタンブールのCamialtı造船所で12隻建造されました。
トルコ海軍がより現代的で重武装の艦艇を導入した後、トルコは数隻の旧式艦艇を周辺地域の友邦に供与することが決定され、隣国のジョージアは1隻の「AB-25」級を1998年にもらい受け、別の2隻は1999年と2001年にカザフスタンへ譲渡されたと報じられています。[2]
アゼルバイジャンは2000年に「AB-25(艦番号:P 134)」を供与されたと推測されています。これによって、「P 134」艇はアゼルバイジャン海軍に就役した初の非ソ連製艦艇という栄誉を得ました。
2000年と2002年にトルコがさらに2隻の「AB-25」級を退役させましたが、その後の現在でも6隻がトルコ海軍で現役であると考えられています。
トルコで就役している「AB-25」級には、前甲板に「エリコン(現ラインメタル)」社製20mm機関砲1門、中央部に「M2」12.7mm重機関銃(HMG)2門、後甲板に「ボフォース(現BAEボフォース)」社製「L/70」40mm機関砲1門が装備されています。
現代の基準からすると迫力に欠ける武装かもしれませんが、「AB-25」級が1960年代に沿岸哨戒艇(IPV)として設計されたものであることを忘れてはいけません。
興味深いことに、ジョージアとアゼルバイジャンに供与された「AB-25」級は、武装が撤去された状態で引き渡されたようです。
イスタンブールの第1ボスポラス海峡大橋(7月15日殉教者の橋)手前を航行するトルコ海軍の「AB-25」級哨戒艇(艦番号: P 129) |
したがって「P 134」艇が2000年にアゼルバイジャンに到着した後、海軍は即座に武装化に着手しました(現在では同哨戒艇に「P 223」の艦番号が付与されていることが判明しています)。アゼルバイジャンはソ連海軍からかなりの量の艦載兵装を受け継いだので、ソ連製の艦載砲を搭載していても何ら不思議はありません。
「エリコン」社製20mm機関砲は「2M-3」25mm連装機関砲塔に、「ボフォース」社製40mm機関砲は「70K」37mm単装機関砲に置き換えられました。これによって、「P 223」艇はソ連製の艦載兵装を搭載して運用される、初のトルコ製軍用艦艇となりました。
中央に装備される2門の重機関銃については、他のアゼルバイジャン艦艇でもよく見られる 「DShK」12.7mm重機関銃と思われます。
首都バクーの南に位置する海軍基地で係留作業中の「P 223」艇 |
すぐに後継となる艦艇が導入される目処が立っていないため、たった1隻しかない孤独な「AB-25」級は、しばらくの間、仲間のソ連製哨戒艇と一緒に航海を続けることになるでしょう。
しかし、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争がアゼルバイジャンに有利な形でしっかり決着したことから、同国はカスピ海の軍事化の流れに対応するために海軍の戦力増強に向けた投資を遂に開始するかもしれません。
アゼルバイジャンが現在運用している老朽化した艦艇の後継のメーカーとして、トルコの造船所が最有力候補となるだろうことには全く疑いの余地がありません。それを考慮すると、「AB-25」級はトルコで設計された別の艦艇に置き換えられる可能性は十分にあるはずです。
[1] New Meets Old: Aselsan’s 30mm SMASH RWS On Azerbaijani Stenka Patrol Boats https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/new-meets-old-aselsans-30mm-smash-rws.html
[2] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
0 件のコメント:
コメントを投稿