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2023年7月30日日曜日

老兵は今日も海をゆく:アゼルバイジャン海軍の「AB-25」級哨戒艇


著:ステイン・ミッツアー(編訳:Tarao Goo)

※  この記事は、2022年1月27日に「Oryx」本国版(英語版)に投稿された記事を翻訳したものです。意訳など
  により、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

 アゼルバイジャンが1991年に独立した以降、この国の海軍は主にソ連から引き継いだ寄せ集めの艦艇を運用しています。

 アゼルバイジャンの国境警備隊(SBS)が近年にイスラエル製の哨戒用艦艇を大量に導入している一方で、海軍はSBSから移管された多数のソ連時代の哨戒艇とタグボートを「新たに」導入しただけであり、結局は旧式艦艇の寄せ集めとしか関わりがありません。

 おそらく一見して保有する艦艇が乏しい結果として、アゼルバイジャン海軍に関連するものには全く注意が向けられていませんでした。

 とはいえ、この海軍を注意深く分析してみると、現在保有している老朽化した艦艇や装備を最大限に活用して、他国の海軍ではだいぶ前に退役した艦艇や艦載兵装を運用し続けることを意図しているような現状が明らかとなりました。

 いくつかのケースでは、レーダーシステムのアップグレードや新たに遠隔操作式銃架(RWS)の搭載がなされることがあり、その一例として、以前に当ブログで取り上げた、少なくとも1隻の「ステンカ」級哨戒艇に「アセルサン」社製の「SMASH」30mm RWSが搭載されていることが挙げられます。[1]

 アゼルバイジャン海軍で現役を続けているもう1つの注目すべき老朽艦は、2000年に供与された1隻のトルコ製「AB-25」級哨戒艇です。[2]

 アゼルバイジャン海軍自体の画像や情報が不足しているため、この哨戒艇の20年以上にわたる同国での運用歴については、その大部分が見落とされてきました。

 それでもなお、アゼルバイジャン国防省がソーシャルメディアの活用を始め、今ではYouTubeに海軍に関する動画を定期的にアップロードするようになったことから、綿密な調査をしたところ、ここ10年間の至る所でこの哨戒艇に関する多くの映像が撮影されていたことが判明しました。


 「AB-25」級哨戒艇は1960年代から70年代にかけて、イスタンブールのCamialtı造船所で12隻建造されました。

 トルコ海軍がより現代的で重武装の艦艇を導入した後、トルコは数隻の旧式艦艇を周辺地域の友邦に供与することが決定され、隣国のジョージアは1隻の「AB-25」級を1998年にもらい受け、別の2隻は1999年と2001年にカザフスタンへ譲渡されたと報じられています。[2]

   アゼルバイジャンは2000年に「AB-25(艦番号:P 134)」を供与されたと推測されています。これによって、「P 134」艇はアゼルバイジャン海軍に就役した初の非ソ連製艦艇という栄誉を得ました。


 2000年と2002年にトルコがさらに2隻の「AB-25」級を退役させましたが、その後の現在でも6隻がトルコ海軍で現役であると考えられています。

 トルコで就役している「AB-25」級には、前甲板に「エリコン(現ラインメタル)」社製20mm機関砲1門、中央部に「M2」12.7mm重機関銃(HMG)2門、後甲板に「ボフォース(現BAEボフォース)」社製「L/70」40mm機関砲1門が装備されています。

 現代の基準からすると迫力に欠ける武装かもしれませんが、「AB-25」級が1960年代に沿岸哨戒艇(IPV)として設計されたものであることを忘れてはいけません。

 興味深いことに、ジョージアとアゼルバイジャンに供与された「AB-25」級は、武装が撤去された状態で引き渡されたようです。

イスタンブールの第1ボスポラス海峡大橋(7月15日殉教者の橋)手前を航行するトルコ海軍の「AB-25」級哨戒艇(艦番号: P 129)

 したがって「P 134」艇が2000年にアゼルバイジャンに到着した後、海軍は即座に武装化に着手しました(現在では同哨戒艇に「P 223」の艦番号が付与されていることが判明しています)。アゼルバイジャンはソ連海軍からかなりの量の艦載兵装を受け継いだので、ソ連製の艦載砲を搭載していても何ら不思議はありません。

 「エリコン」社製20mm機関砲は「2M-3」25mm連装機関砲塔に、「ボフォース」社製40mm機関砲は「70K」37mm単装機関砲に置き換えられました。これによって、「P 223」艇はソ連製の艦載兵装を搭載して運用される、初のトルコ製軍用艦艇となりました。

 中央に装備される2門の重機関銃については、他のアゼルバイジャン艦艇でもよく見られる 「DShK」12.7mm重機関銃と思われます。


首都バクーの南に位置する海軍基地で係留作業中の「P 223」艇

 すぐに後継となる艦艇が導入される目処が立っていないため、たった1隻しかない孤独な「AB-25」級は、しばらくの間、仲間のソ連製哨戒艇と一緒に航海を続けることになるでしょう。

 しかし、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争がアゼルバイジャンに有利な形でしっかり決着したことから、同国はカスピ海の軍事化の流れに対応するために海軍の戦力増強に向けた投資を遂に開始するかもしれません。

 アゼルバイジャンが現在運用している老朽化した艦艇の後継のメーカーとして、トルコの造船所が最有力候補となるだろうことには全く疑いの余地がありません。それを考慮すると、「AB-25」級はトルコで設計された別の艦艇に置き換えられる可能性は十分にあるはずです。


[1] New Meets Old: Aselsan’s 30mm SMASH RWS On Azerbaijani Stenka Patrol Boats https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/new-meets-old-aselsans-30mm-smash-rws.html
[2] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php



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2022年9月17日土曜日

新たなる力:「バイラクタルTB2」UCAVがキルギスに納入された


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年10月下旬、キルギスがトルコの「バイカル・テクノロジー」社から「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)を3機発注したことが発表されました。[1] 

 キルギスにはUCAVを保有する必要性がないと考えられていただけではなく、そもそも同国が有する空軍自体が無きに等しい存在であったことから、この発注に関するニュースは世に驚きをもたらしたのです。

 実際、キルギス空軍が固定翼機を運用し始めたのは2018年からであり、しかもその「An-26」輸送機2機はロシアから寄贈されたものだったということを考慮すると、その驚きは当然と言えるでしょう。[2]

 そして発表から間もない2021年12月18日に、待望のTB2がキルギスの国境警備隊で運用が開始されました。ちなみに、同機は国境警備隊で就役したことで知られる最初の航空アセットです。 [3] 

 2022年10月には、キルギスが数機の「バイラクタル・アクンジュ」を導入することに関心を持っていることを明らかにしました。 [4]

 2022年9月、キルギスはタジキスタン間の古くから続く水紛争を原因とする一連の国境での小競り合いで、新たに入手したTB2を実戦に投入しました。今回のタジキスタン軍は戦車と大砲を用いてキルギスのとある村に侵攻しバトケンの町を砲撃しましたが、TB2を撃墜可能な地対空ミサイル(SAM)をこの地域に展開していなかったため、この上空を飛ぶ見えない天敵のおかげでタジキスタンは少なくとも「T-72戦車」2台、「グラート」多連装ロケット砲(MRL)1台、弾薬輸送トラック1台を失ってしまいました。[5]

2022年9月の国境紛争でキルギスのTB2によって撃破されたタジキスタンの「9P138 "グラート-1"」MRL

 キルギス空軍は、かつて同国に駐留していたソ連空軍のアセットを引き継いで1992年7月に創設されました。キルギスは、主に「L-39」練習機と「MiG-21」戦闘機の外国人パイロットを養成するフルンゼ軍事大学の拠点だったことで知られています。[6]

 1992年の時点で、同国のカント空軍基地には大量の「MiG-21」が多数の「An-2」「An-12」、   「An-26」輸送機や「Mi-8」「Mi-24」ヘリコプターと共に残されていました。建国されたばかりのキルギス共和国には、このような大規模な飛行隊を運用するための資金、パイロット、そして何よりも必要性自体がなかったため、「An-2」輸送機と「Mi-8/24」ヘリコプター以外の運用についてはすぐに放棄されてしまいました。

 その後、 キルギス空軍は数十年にわたって、首都ビシュケク郊外にあるプリゴロドニ・ヘリポートを拠点にした数機の「Mi-8」と「Mi-24」、そして首都近郊に配備された1個の「S-75」と2個の「S-125」SAMサイトを運用し続けることになりました。

 カント空軍基地は約50機の「MiG-21」といくらかの輸送機の保管拠点として使用され続けていましたが、2015年までにその大部分がスクラップ処分されています。       

 2014年6月まで、マナス国際空港(IAP)はアフガニスタンにおける戦争を支援するためにアメリカによって使用されていました。その一方で、ロシアはマナスから僅か35km離れたカントに少なくとも2027年のリース期限まで使用できるようにした独自の空軍基地を設けています。[7]

 「Su-25」対地攻撃機と「Mi-8」を装備したロシア空軍の部隊がカントに到着したことに伴ってキルギスに4機の「L-39」が寄贈されました。それにもかかわらず、キルギス空軍はこの練習機を実際に運用しようとしなかったようです。おそらく、すでに運用されている武装した「Mi-8」や「Mi-24」と比較しても、空軍に目新しい戦力をもたらすことがほとんどなかったためと思われます。

 したがって、キルギスが「バイラクタルTB2」を調達したことは、 キルギス軍が望ましい性能を実際に入手可能な価格で提供してくれるアセットをTB2という形でついに見つけ出したと思われるため、いっそう注目されます。

2018年にロシアから供与された2機の「An-26」の1機。これらはキルギス空軍で唯一の固定翼機で、現在も運用されています(ただし、飛行する機会は極めて少ない)。

キルギス空軍が2000年代初頭にロシアから受け取った4機の「L-39」練習機。一見すると再び空を飛ぶことはないでしょう。各機は左右の主翼に1基ずつハードポイントを備えており、最大で2発の爆弾か2基のロケット弾ポッドで武装可能です。

 興味深いことに、キルギス空軍の航空機やヘリコプターにはソ連空軍のラウンデルが使われ続けている一方で、国境警備隊の機体には国旗にもある黄色い太陽を組み込んだラウンデルが施されています。

 キルギス空軍のラウンデルは同国に駐留するロシア空軍の航空機やヘリコプターのものと混同されることがありますが、後者は確かに赤い星のラウンデルを使用しているものの、赤い星の外周には細い青い縁があるという違いがあります。

 キルギス陸軍は2021年(注:2022年9月17日現在)というごく最近にキルギス・タジキスタン国境紛争で戦闘を経験したにもかかわらず、キルギス空軍が一度も実戦には投入されたことがありません。

 もし、キルギスやタジキスタンが航空機やヘリコプターを投入して衝突していたとしたら、皮肉なことにタジキスタンもソ連時代からの赤い星のラウンデルを使っているので、対空部隊は味方機を誤って撃墜しないよう十分に注意しなければならなかったに違いないでしょう。


 新しい装備の導入について、キルギス軍は創設された1992年からその大部分をロシアからの好意に依存しており、2018年と2019年には、キルギスは「Mi-8」ヘリコプター4機と「P-18」対空捜索レーダー2基を無償で供与されました。[8] [9] 

 また、過去10年間には、4機の「L-39」ジェット練習機、2機の「An-26」輸送機、数十台の「BTR-70M」装甲兵員輸送車と「BRDM-2M」偵察車、小火器と弾薬もロシアから供給されています。2020年には、キルギスが「ブーク-M1」地対空ミサイルシステムの譲渡についてロシアと協議中であることが発表されました。[10]

  その他の武器や装備類の供給国には、2010年代後半に幅広い種類の小火器と装甲車両を引き渡した中国と45台にピックアップトラックや44台の「ポラリス」ATV、そして数量不明の「ナビスター・インターナショナル7000」トラックを供与したアメリカも含まれています。[11]
      
 これまでのトルコによる軍事支援として、 軍事機関(旧フルンゼ軍事大学)用の新たな施設の建築やさまざまな装備の供与、トルコの軍事施設におけるキルギス軍人への訓練などがなされてきました。[12] [13] [14]


キルギス空軍

 長年にわたって「Mi-8」はキルギス空軍の有用な装備となっています。このヘリコプターは2018年に日本の登山家を救助する任務中に1機が墜落した後でも、依然として5機がこの空軍で運用が続けられています。[15]

 ほとんど飛行しないと思われる2機の「Mi-24V」攻撃ヘリコプターも、名目上ではキルギス空軍で強力な存在であり続けています。この代わりとして、同空軍はガンシップ型の
「Mi-8MT(V)」を配備しています。これらの機体は主翼下に最大で6基のロケット弾ポッドか機関銃ポッドで武装可能ですが、一部の機体は機首に「PK」7.62mm軽機関銃も装備しています。

 キルギスは、これらの「Mi-8」を最大で8発の爆弾を搭載した即席の爆撃機としても運用しています。

通常、「Mi-8」は「UB-16」または「UB-32」57mmロケット弾ポッドか「B-8」80mmロケット弾ポッドを搭載していますが、画像の機体はロケット弾ポッドに加えて機首に7.62mm軽機関銃も装備しています。

キルギスの「Mi-8」が「P-50T」訓練用爆弾を投下する様子が公開されていますが、この事実はキルギス空軍が近いうちに「MAM」シリーズ誘導爆弾を使用できるようになって高く評価される可能性を示唆しています。

 「バイラクタルTB2」の偵察能力は国境警備隊に高く評価されると思われますが、「MAM-L」及び「MAM-C」精密誘導爆弾の導入によって対地攻撃という完全に新しい能力を発揮することが可能となるでしょう。

 TB2は、ヘリコプターから投下される爆弾とは正反対に極めて正確に目標を直撃可能な「MAM」シリーズ誘導爆弾を最大で4発搭載可能です。

 さらに、「MAM」シリーズがINS/GPSに導入されたことで、最新型の射程距離が7kmから14km以上まで伸びました。このことは、標的の位置を特定し、自らの武装か別の火力支援アセットに指示して標的を攻撃可能というメリットと相まって、TB2をキルギスで最も崇敬されるアセットに位置付けるでしょう。


バイラクタルTB2と砲兵戦力の連携による相乗効果

 TB2が各種の信号情報や(車両などの目標に対して75km以上とされる)直距離の監視能力を誇る前方監視型赤外線(FLIR)装置で敵を探知した後、それらはキルギス陸軍の「BM-21」及び「BM-21V」122mm 多連装ロケット砲(MRL)や2S1「グヴォズジーカ」122mm自走榴弾砲(SPG)、さらに2S9「ノーナ」120mm自走迫撃砲(SPM)に加えて牽引砲によって打撃を加えることができるのです。

 これらの砲兵戦力の全てが敵の陣地や部隊の集結地点を狙うため、標的の位置を獲得するために砲兵部隊の観測班や航空偵察に依存していることは言うまでもありません。

 ただし、この国の軍隊は規模が小さいため、別の軍種との連携で生じる相乗効果の可能性は限られています(注:逆に言えば、それらの上手く活用して連携の成果を増長させる余地が残っているということを意味します)。

キルギス陸軍の「BM-21」122mm多連装ロケット砲(手前)、2S9「ノーナ」120mm自走迫撃砲(左と中央)、そして2S1「グヴォズジーカ」122mm自走榴弾砲(中央の奥)。

 キルギスのTB2はFLIR装置に加ウェスカム製「MX-15D」や独ヘンゾルト製「アルゴス-II HDT」ではなく、アセルサン製の「CATS」を装備しています。TB2はモジュール方式を採用しているため、さまざまな種類のFLIRシステムを搭載することができます。この特徴がTB2の商業的成功にさらに貢献したのかもしれません。

 トルクメニスタンに納入されたTB2と同様に、キルギスのTB2も夜間での運用に用いる2台目の尾部カメラや機体上部の対電子妨害装置の搭載など、既存のバージョンから多くの改良が施された最新モデルとなっています。


 キルギスの「バイラクタルTB2」は、同国西部にあるジャララバード空港に新設された施設で運用されることになっているようです。同施設はTB2が納入される直前の2021年11月に建設されたことが確認されています。[16]

 キルギスを占める山岳地帯と大規模な人口集中地が存在しないため、この国の空港は全国でも僅かに数カ所しかありません。それでもTB2は、(ジャララバードから運用する場合でも)ほぼ国内全土をカバーできる十分な航続距離を持っています。

3機のTB2の拠点である、ジャララバード空港。

キルギスで運用中の別の無人機

 ところで、キルギスが導入した最初のUAVは「バイラクタルTB2」ではありません。2021年8月下旬、キルギスが中国から「WJ-100」無人偵察機を調達していたことが明らかにされました。[17] [18]

 「WJ-100」はFLIR装置を備えてしていますが、TB2と異なって武装できず、滞空時間も(TB2の約27時間に対して)3時間しかありません。[19] 

 キルギス軍はさらに、カント空軍基地に駐留するロシア軍でも運用されている「オルラン-10」無人偵察機を6機輸入することによって増強される予定です(注:2022年5月現在で納入は未確認)。[20] [21]

 また、キルギスは「サーラ-02」と呼称されるより小型のUCAVも独自開発しており、現在は試験段階にあります。[21]

2021年8月に実施されたキルギス独立30周年記念の閲兵式に登場した「WJ-100」。

 一見すると、キルギスが3機の「バイラクタルTB2」を導入したことは、ウクライナやモロッコといった国々によるTB2の調達よりも華々しさが欠けているように見えるかもしれません。それでもキルギスからすれば、TB2以外にその利点を最大限に発揮してくれる輸出兵器はおそらく存在しないでしょう。
      
 キルギスが資金と専門知識の不足のために何十年もの間にわたって武装した固定翼機を運用してこなかった国であることを踏まえると、TB2が有効なパフォーマンスと信頼性、そして低い導入価格と運用コストを併せ持つ最初のアセットとなることは間違いありません。

 この記事を執筆している2021年12月の時点で、中央アジア5カ国のうち3カ国がトルコ製ドローンを運用しています。それらがUCAV市場を急速に席巻しているため、ウズベキスタンとタジキスタンの出方に注目が集まっています(注:2022年5月上旬には、カザフスタンがTAI製「アンカ」を導入することが決定されたと報じられました)。

[1] Kyrgyzstan set to receive Turkish armed drones https://www.aa.com.tr/en/world/kyrgyzstan-set-to-receive-turkish-armed-drones/2399480
[2] Two two military aircraft handed over to Kyrgyzstan by Russia https://akipress.com/view:704:Two_two_military_aircraft_handed_over_to_Kyrgyzstan_by_Russia/
[3] Беспилотники «Байрактар» поступили на вооружение Пограничной службы ГКНБ https://kg.akipress.org/news:1751371
[4] https://twitter.com/BaykarTech/status/1580173619233071105
[5] Documenting Losses During The September 2022 Kyrgyzstan–Tajikistan Border Clash https://www.oryxspioenkop.com/2022/10/documenting-losses-during-september.html

[6] Soviet 5th Training Center in Frunze Between 1956 and 1992 http://www.easternorbat.com/html/5th_training_center_eng.html
[7] In controversial move, Russia set to own runway at military base in Kyrgyzstan https://central.asia-news.com/en_GB/articles/cnmi_ca/features/2020/06/18/feature-01
[8] Russia donates two helicopters to Armed Forces of Kyrgyzstan https://24.kg/english/136240_Russia_donates_two_helicopters_to_Armed_Forces_of_Kyrgyzstan/
[9] Sergei Shoigu: Kyrgyzstan can always count on support of Russia https://24.kg/english/116337_Sergei_Shoigu_Kyrgyzstan_can_always_count_on_support_of_Russia/
[10] Russia and Kyrgyzstan discuss delivery of air defense systems, helicopters https://24.kg/english/153139_Russia_and_Kyrgyzstan_discuss_delivery_of_air_defense_systems_helicopters/
[11] A Vehicles Handover Ceremony with U.S. Ambassador T.Gfoeller to Kyrgyzstan http://bishkek.usembassy.gov/2010_0825_vehicle_handover.html
[12] Turkey to build military institute in Kyrgyzstan https://www.for.kg/news-582254-en.html
[13] Turkey donates military equipment to Kyrgyzstan https://24.kg/english/172035_Turkey_donates_military_equipment_to_Kyrgyzstan/
[14] From Turkey With Love: Tracking Turkish Military Donations https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/from-turkey-with-love-tracking-turkish.html
[15] ASN Wikibase Occurrence # 213092 https://aviation-safety.net/wikibase/213092
[16] https://twitter.com/Gerjon_/status/1472311300822814721
[17] Kyrgyzstan Independence Day Parade & Celebration August 31, 2021 https://youtu.be/XHUxnq3XVXw?t=2905
[18] China-made WJ-100 Blade UAV makes debut in Kyrgyzstan https://www.china-arms.com/2021/09/china-wj-100-blade-uav-debut-kyrgyzstan/
[19] Kyrgyzstan Orders Byratkar Drones from Turkey, Orlan-10E UAVs from Russia https://www.defenseworld.net/news/30647/Kyrgyzstan_Orders_Byratkar_Drones_from_Turkey__Orlan_10E_UAVs_from_Russia
[20] Russia’s military base in Kyrgyzstan to procure Orlan-10 UAVs https://www.airrecognition.com/index.php/news/defense-aviation-news/2020/june/6358-russia-s-military-base-in-kyrgyzstan-to-procure-orlan-10-uavs.html
[21] В Кыргызстане впервые выпустили беспилотник https://youtu.be/92QgvrwEcaw

  したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した
    箇所があります。


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2022年7月29日金曜日

旧式艦+新型兵装:トルコ製RWSがアゼルバイジャンの旧式艦に装備された



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 アゼルバイジャン海軍は、同国のほかの軍種やカスピ海に存在する他国の海軍と比較した場合、現代化の点で後れを取っています。

 その代わり、アゼルバイジャンは沿岸警備部隊の近代化に多額の資金を投じ、国境警備隊用の「スパイクNLOS」(射程25km)や「スパイクER」(射程8km)対戦車ミサイル(ATGM)を装備したイスラエルの「サール62」級哨戒艦(OPV)6隻と「シャルダグMk V」級高速哨戒艇6隻を導入しました。[1]

 興味深いことに、アゼルバイジャン海軍はどの艦艇にも対艦ミサイル(AShM)を搭載しておらず、純粋に同国が有する排他的経済水域(EEZ)の哨戒部隊として運用されています。

 この国の海軍はコルベットや高速攻撃艇を運用するのではなく、数多く存在するソ連時代の哨戒艇、揚陸艦、掃海艇を活用しているほか、1960年代に建造された「ペチャ」級フリゲートの運用も続けていますが、艦載兵装については銃砲、魚雷、対潜装備しか搭載されていません。

 ごく最近になって、海軍は国境警備隊(SBS)から多数の艦の譲渡されることで戦力が増強されました。とはいえ、これらはソ連時代の「ステンカ」級哨戒艇や対空砲から機関銃まで装備していた大型のタグボートで構成されていたことから、譲渡された艦艇は海軍が保有する艦艇数を少なくとも2倍に増やしたものの、海軍に新たな戦力をもたらすようなことは少しもありませんでした。

 現時点でAShMを搭載できる艦艇を一切保有していないアゼルバイジャン海軍は、旧式化した艦艇の一部に重火器を搭載することによって戦闘能力の向上を図ろうと試みています。

 これまでのところ、この火力向上策には、「AK-230」2連装30mm機関砲塔を第二次世界大戦時代の「70K(61-Kの艦載型)」37mm機関砲といったほかの火砲に換装したことも含まれていますが、このような策が各艦艇の火力増強に全く寄与しなかったことは一目瞭然でしょう(注:後述のとおり、「MR-104」FCSレーダーで管制可能な「AK-230」近接防御システム(CIWS)をわざわざ手動操作式の旧式機関砲に置き換えることに意味を見出すことを理解すること自体が無理に近いでしょう)。

 これとは逆に、少なくとも1隻の「ステンカ」級にトルコの「アセルサン」社「SMASH」30mm遠隔操作式銃架(RWS)を搭載するという最近の近代化事業で、旧式艦艇により合理的なアップグレードが施されるようになり始めたようです。

艦首に「SMASH」RWSを装備した「ステンカ」級(G124)

 現在のアゼルバイジャン海軍は、イスラエル製OPVと哨戒艇が就役した後のSBSから得た「G122」から「G125」までの艦番号を付与された4隻の「ステンカ」級を運用していると考えられています。

 当初、「ステンカ」級には「MR-104」火器管制レーダーによって管制された「AK-230」2連装30mm機関砲が艦首と艦尾にそれぞれ1門ずつ搭載されていましたが、少なくとも数隻はどちらかの「AK-230」を「70K」30mm対空機関砲に換装されました。現代の水準における「70K」は本来の対空用途で少しも役立つことはできませんが、迎撃された相手国の艦艇の前方に向けて警告射撃を行うには理想的な火器です。

 現在までのところ、「G124」のみが「SMASH」RWSを装備されていることが知られています。興味深いことに、艦首の「AK-230」だけでなく後部の同機関砲塔も「SMASH」RWSに置き換えられています(上の画像では前部の「AK-230」のみが「SMASH」に換装されているため、段階的に「G124」の近代化を進めているか、または別の同型艇の後部に「SMASH」を装備した可能性があるからです)。

 当然ながら、使用されていないときの「SMASH」RWSは、波や風雨から保護するために防水カバーで覆われています。[2]

艦橋上部から見た艦首部の「SMASH」RWS
艦尾に搭載された「SMASH」RWS

 「SMASH」RWSは近年では世界で最も人気がある艦載用RWSであり、クロアチア、マレーシア、カタール、バングラデシュ、フィリピン、そしてアゼルバイジャンといった国々で導入されています。

 カタールは自国の(トルコ製)巡視船の大部分に装備させるためにこのRWSを調達してきた、世界最大の「SMASH」運用国です。

 同等の「アセルサン」製RWSの大口顧客はトルクメニスタンであり、28隻の艦艇に合計で38の「STOP」25mm RWSを装備しています。また、同国は世界初の「アセルサン」製「ギョクデニズ」35mm CIWS運用国でもあります。

 トルクメニスタンによって導入された海軍艦艇といった新型兵器に装備されたことに加え、「アセルサン」社はEO/IRセンサーやRWSを含む各種兵器システムを陸・海・空のさまざまな旧式プラットフォームにインテグレートすることによって、めざましい商業的な成功も収めています。

 最近の例では、ウクライナの「モトールシーチ」社と共同で同国と潜在的な輸出顧客向けに「Mi-8/17」と「Mi-24」攻撃ヘリコプターを近代化する契約を締結しており、これは「アセルサン」社がEO/IRセンサーを供給し、東側のヘリコプターに最新のトルコ製精密誘導兵器の運用能力をインテグレートするというものです(注:ロシアのウクライナ侵攻で実現はするかは不透明な状況)。[3]

 また、トルクメニスタンが保有する「BTR-80」装甲兵員輸送車の一部に同社製の「SARP(サープ)-DUAL」RWSを搭載してアップグレードを図ったも実例もあります。[4] [5]

現時点のカスピ海で最も強力な海軍艦艇であり、「STOP」25mm RWSや「ギョクデニズ」35mm CIWSを含む多数の「アセルサン」社製艦載兵装を搭載しているトルクメニスタンのコルベット「デニズ・ハン」

 「SMASH」RWSはデュアルフィード機能のおかげで毎分200発の射撃速度を誇る「Mk44 "ブッシュマスターⅡ"」30mm機関砲を備えています。機関砲の両側面には各1つの大型弾倉があり、合計で175発の砲弾を入れることができます。

 このRWSは完全にスタビライザーで安定化されているため、荒波の中でも移動する標的に対して正確な照準が可能となっていることが特徴です。

 「STAMP」12.7mm RWSや「STOP」25mm RWSで用いられている固定式の照準システムとは対照的に、「SMASH」は安定化された独立型EO/IRセンサーを搭載しているため、システム全体を旋回させることなく標的を追尾することができる利点が特徴的と言えるでしょう。

少なくとも5か国で運用されている「SMASH」RWSの旧バージョン

 現時点で、アゼルバイジャン海軍によってさらなる「SMASH」RWSが導入される計画が存在するのかは不明です。

 SBSから多数の艦艇が移管されたことは、この国の海軍がしばらくの間は現時点で運用している艦艇で間に合わせる必要があることを示している可能性があります。したがって、対艦ミサイルを搭載した艦船でますますあふれていくカスピ海で戦力を何らかの形で維持するために、アゼルバイジャン海軍は何度も艦艇の改修を余儀なくされるかもしれません。

 少なくとも4隻の「ステンカ級」哨戒艇が就役していることから、「SMASH」RWSがその価値を誇示する機会は十分にあることは確かでしょう。

艦首に「70K」37mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G122)

 「アセルサン」社は自ら開発した製品で世界中で広幅広い成功を収めてきました。これはカスピ海も例外ではなく、今や2か国の海軍が同社の製品を装備した海軍艦艇でこの海を航海しています。

 アゼルバイジャンがいつの日か自国の海軍の近代化のためにトルコ製軍用艦艇の調達を選定したり、カザフスタンもトルコ製艦艇に投資する可能性があることを考えると、どうやらトルコ製の海軍用防衛装備品の見通しは明るいようです。

 もちろん、これらにも「アセルサン」社の製品が装備されることについて、疑う余地はないでしょう。

 「SMASH」RWSのような艦載兵装は実際に搭載された船よりも確かに目立つものではありませんが、中央アジアの国々で進められている軍の近代化を示す重要な指標であることには間違いありません。

標準装備である「AK-230」30mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G124)

[1] INFOGRAPHICS OF COAST GUARD VESSELS #4: Azerbaijan and Colombia https://www.navalanalyses.com/2017/03/infographics-of-coast-guard-vessels-4.html
[2] https://i.postimg.cc/nrqg7HvB/69.jpg
[3] Aselsan to Supply EO Targeting Pods, AAMs for Modernization of Ukraine’s Mi-8 Helicopter Fleet https://en.defence-ua.com/news/aselsan_to_supply_eo_targeting_pods_aams_for_modernization_of_ukraines_mi_8_helicopter_fleet-2004.html
[4] https://postimg.cc/HJR0QxC3
[5] SARP-DUAL Remote Controlled Stabilized Weapon System https://www.aselsan.com.tr/en/capabilities/land-and-weapon-systems/remote-controlled-weapon-systems-land/sarpdual-remote-controlled-stabilized-weapon-system

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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2021年7月22日木曜日

小さくても命取りな存在:トルクメニスタンの高速攻撃艇


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 カスピ海の海軍バランスを考えるとき、トルクメニスタンが最初に思い浮かぶ国ではないことはほぼ確実でしょう。それにもかかわらず、継続的な海軍の増強はこの点についてロシアと並ぶ地域有数の海軍力を持つ国に変えました。これはトルコのディアサン造船所によるところが大きく、同社はトルクメニスタン海軍が保有する現代的な艦艇のほぼ全てを供給しています。

 それらの一つが、過去10年で運用を開始した世界でも極めて数少ない高速攻撃艇(FAC)の一種である「FAC 33(上の画像)」です。(ほぼ確実に)サイズと運用者が小国のおかげで、このFACは設計された国(トルコ)以外ではほとんど知られていません。それでもなお、その滑らかなデザインと比較的軽い武装によって、同クラスの他の艦艇とは際立ったものになっています。

 33メートルという小さなサイズと搭載可能な武装は「FAC 33」をミサイル艇というよりはFACに近いものにしていますが、対艦巡航ミサイル(AShM)の登場以降はどちらの呼称もほぼ同義語になっていますので、特に問題はありません。

 (当然ながら世界最大の称号は北朝鮮が持っているため)トルコは確かに世界最大のFAC保有国ではありませんが、今日でも新型FACの設計を依然として積極的に行っている数少ない国の一つです。それらには、従来の船型から双胴船ベースのデザイン、さらには表面効果船(SES)型までのあらゆるタイプのものが含まれています。

 2013年に大統領府国防産業庁(SSB)は現在トルコ海軍で使用されているFACを置き換える新型FACの入札を開始しましたが、30近くの国内で設計された案から選定することができました。[1]

 これら全ての半分だけがトルコ型FAC計画の一部として入札に提案されましたが、これは(幅広い)設計の流行が(当局に)ほとんど過大評価されていないことを示しています。最終的には、僅かに非従来型のデザインを抑えた(しかし同等に見栄えの良い)STM社「FAC55(下の図)」をベースにした設計案が選定されました。


 トルコのFACを獲得する取り組みが始まった1年後の2014年、トルクメニスタンも新型FACの導入による自国海軍の強化を試みていました。ただし、トルコとは対照的に、すでに就役している既存の同クラスの艦艇を置き換えるのではなく、トルクメン海軍をカスピ海で最も恐るべき艦隊へと劇的に変化させることを目指した野心的な拡大計画の一環として新造艦の調達に関心を向けていたのです。

 トルクメニスタンとトルコとの間で享受されている文化的、経済的、そして軍事的に緊密な関係を考慮すると、アシガバートがその野望を実現するための計画を提示する先としてトルコに目を向けたことは自然なものでした。

 数多くあるトルコの造船会社からパートナーを選んだ結果、トルクメニスタンは最終的にディアサン造船所を選定しました。理由としては、おそらく同社がトルクメニスタンのニーズに完全に適合した幅広い種類の艦艇を売りに出していたからでしょう。

 追加的な利点として、ディアサンによって設計された艦艇のいくつかは、すでに運用面での実績があります。これらの中で最も人気があるのが2011年から16隻がトルコ海軍に配備されている「ツズラ」級哨戒艇であり、これも最終的にはトルクメニスタンで運用されている別の哨戒艇「NTPB」のベースになっています。

 2014年6月にはディアサンとの間で6隻の「FAC 33」に関する契約が結ばれました。[2] 

 最初の船は2014年7月に建造が開始され、翌2015年1月に進水して同年の7月にトルクメニスタンに引き渡されました。残りの艦艇の引き渡しは3ヶ月間隔で続き、2017年には納入が完了しました。[2]

 その後、この6隻は「SG-119 Naýza」、「SG-120 Ezber」、「SG-121 Kämil」、「SG-122 (名称不明)」、「SG-123 Galjaň」、「SG-124 Gaplaň」として、(一般的にSBSと略されるか、トルクメニスタンでは「Serhet Gullugy」と呼ばれている)国境警備隊に就役しました。

 2016年、これらの新型艦はトルクメニスタン初の共同演習「ハザル-2016」に参加しました(注:ハザルはカスピ海のテュルク語名です)。


 「FAC 33」は全長33メートルで2基のウォータージェットに動力を供給する「MTU M90」または「MTU M93L」ディーゼルエンジンを2基備えており、エンジンの選択に応じて37ノット以上または43ノット以上の速度を出すことができます。それよりも僅かに遅い速度を出した場合では、「FAC 33」の航続距離は350海里(650km)です。[3]

 「FAC 33」の艦載兵装は、艦橋前部のアセルサン社「STOP」25mm遠隔操作式銃架(RWS)、艦橋上部に(乗員用の)12.7mm重機関銃を2門、さらには艦尾に2発の「マルテMk2/N」対艦ミサイルを搭載しています。


 ディアサン造船所は(ギュルハン造船所との合弁事業で)国境警備隊とトルクメニスタン海軍の主要な供給業者となっています。

 これまでに、ディアサン造船所は(「ツヅラ」級をベースにした)「NTPB」哨戒艇10隻、「FAC 33」高速攻撃艇6隻、「FIB 15」高速介入艇10隻、27m級上陸用舟艇1隻、「HSV 41」測量船1隻、「FBF 38(別名FPF 38)人員輸送用双胴船1隻、タグボート2基をトルクメニスタンに納入しています(注:「FBF 38」はディアサン社などのウェブサイトでトルクメニスタンに納入された船の画像があります)。

 その後、2隻を除く全ての艦艇が国境警備隊に就役しましたが、これはトルクメニスタン海軍の発展が忘れ去られているというわけではありません。それどころか、海軍はさらに別の艦を全海上戦力の活動拠点であるトルクメンバシで建造中の「C92」コルベットという形でディアサン社から受け取ることになっています(注:この「C92」級は、2021年8月11日に「Deniz Han」として同国海軍に就役しました)。

 海軍と国境警備隊はこの都市にそれぞれ独自の基地と造船所を置いており、そこには「FAC 33」や大型の「NTPB」をメンテナンスしやすくするために、それらを水面から吊り上げて陸上に置く巨大なクレーンも備えています(注:海軍の基地国境警備隊の基地 の衛星画像はこちらです)。


 国境警備隊で就役しているディアサン造船所のもう一つの艦艇は、最大で40ノット以上の速度で航行可能な高速介入艇である「FIB 15」です。

 この高速艇は全長15メートルではるかに小型で軽量ですが、就役した10隻の武装は「FAC 33」と同じ「STOP」 25mmRWSが装備されています。

 その特性から、この船は海上阻止、沿岸警戒、港湾警備任務に非常に適したものになっています。

 「STOP」25mm RWSは近距離の目標と交戦するには最適な装備ですが、遠距離の敵艦を狙うには全く別の種類の武器が必要となります。FAC 33では、それはイタリアの「マルテ Mk2/N」AShM発射機を2基搭載という形でもたらされています。

 この亜音速シースキミング・ミサイルは、中間地点を通過するミッド・コースでの慣性航法と終末段階でのアクティブ・レーダー誘導を使用して、30kmを超える圏内にいる敵艦艇をターゲットにします。これは「Kh-35」「エグゾゼ」などの他の対艦ミサイルよりもはるかに短い射程ですが、このミサイルはヘリコプター発射型AshMの「マルテ Mk2/S」の派生型であることを留意しておく必要があります。[4]

 トルクメニスタンの「FAC 33」には「Mk2/N」用の単装発射機が2基しか搭載されていませんが、この発射機を二段重ね(スタック・ツイン)式に容易にアップグレードすることが可能です。この方式を用いた場合、甲板面積に影響を与えることなく「FAC 33」のミサイル搭載数が2倍となります。

 もし、このようなアップグレードがトルクメニスタンによってまだ想定されていないのであれば、これは僅かなコストで6隻の船の火力を増強するという、将来的な中間期近代化(MLU)の一環としての魅力的な選択肢になり得るでしょう。


 「FAC 33」は、高度な自動化に貢献している多機能ディスプレイを備えたコントロール・ステーションや遠隔操作式の武装を含む最先端技術を取り入れています。自動化は大幅な人員削減も可能としており、FAC33では乗員数が12名を超えないものと推定されています。


 「FAC 33」のユニークな特徴として、船尾に高速艇用の(スターン・ランプとしても知られている)スリップ・ウェイを設けていることがあります。これは船の活動範囲の拡大に大いに貢献し、不審な船の迅速な停止と検査を容易にしています。

 現代のFACの多くは後部甲板に小型ボートを搭載していますが、これらは原則としてクレーンを使って水面に降ろす必要があります:外洋での高速追尾に従事する際は降下作業が不可能となります。

 「FAC 33」は依然として比較的新しい設計ですが、ディアサン社のラインナップではすでに「FIB 33(33m級高速介入艇)」と呼ばれる新型に更新されています。航続距離と速度が向上した以外では、最も明らかな外観上の違いに船体の上部構造が延長されたことや2基の「マルテ Mk2/N」発射機の位置が船尾に変更されたことがあります。

 艦橋上部に携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の2連装発射機が新たに追加されていますが、その他の武装はFAC33と同じです(注:MANPADS発射機は後述の「FAC 43」と同様に「ミストラル」用の「SIMBAD-RC」であると思われます)。

 現在、ディアサン社が売り込んでいるFACは「FIB 33」だけではありません。「FAC 43」は基本的に「FIB 33」の大型版であり、結果としてより豊富な種類のレーダーや武装がその設計に取り入れられています。

 それに対して、「FAC 65」は全く異なる種類の設計案となっています。「FAC 65」は全長が65メートルもありますが、その長さだけでなく、8セルの「VL MICA-M」艦対空ミサイル用VLSを搭載しているという重対空兵装の点から、この船については重装備型ミサイル艇かコルベットと呼ぶことがふさわしいかもしれません。






























 少人数の乗員で運用するコンパクトな設計で驚くほど幅広い機能を提供していることから、「FAC 33」とその後継型の「FIB 33」は21世紀の多目的船という称号を大いに獲得しています。現在ではパキスタンやバングラデシュといった国が艦隊を更新している途中のため、これらのようなトルコの設計案は彼らの魅力的な採用候補となるかもしれません。

 もっと身近なところでは、カスピ海を共有するほかの国々によって深刻なほどに(水上戦力が)劣勢となっている、アゼルバイジャンやカザフスタンが有望な顧客に含まれる可能性があるでしょう。

 ひとつだけ確かなことは、この地域では約30種類の設計案が売り込まれているため、どのような条件だろうと顧客の要件を満たす艦船が常にあるということです。


[1] Turkish FAC-FIC Designs https://defencehub.live/threads/turkish-fac-fic-designs.558/
[2] IDEF 2015: Dearsan set to deliver first fast attack craft for Turkmenistan https://web.archive.org/web/20150717004314/www.janes.com/article/51221/idef-2015-dearsan-set-to-deliver-first-fast-attack-craft-for-turkmenistan
[3] 33m Attack Boat https://web.archive.org/web/20160731140456/http://www.dearsan.com/en/products/33-m-attack-boat.html
[4] Marte Mk2/N https://www.mbda-systems.com/product/marte-mk2-n/

特別協力: Hufden氏 from https://forums.airbase.ru

 ※  この記事は、2021年3月22日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。