ラベル Su-27 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Su-27 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年11月22日月曜日

致命的に効果なし:エチオピアの「翼竜Ⅰ」 UCAV がSu-27「爆撃機」のために標的を指示した

この「翼竜Ⅰ」はイメージ画像でエチオピアとは無関係です

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピアがSu-27戦闘機を爆撃機としてティグレ州の標的に使用したことは、不正確な攻撃によって多数の民間人の犠牲を引き起こしたとして、国際的な非難を受けることが予想されます。

 ある例では、Su-27が投下した無誘導爆弾が狙った標的を外して1キロメートルも離れた場所に着弾させたことがありました。[1]

 もともと迎撃機として設計されたSu-27はエチオピアで誘導兵器を搭載するようにアップグレードされていなかったため、北部司令部と同じくらいの大型目標を攻撃することにさえ(爆弾の投下訓練を受けていないパイロットが操縦する)Su-27を使用すること自体にそもそも爆撃が成功する見込みが少しもなかったのです。

 Su-27の攻撃目標を見つけるため、エチオピア空軍(ETAF)は中国製の「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)をティグレの州都であるメケレ市上空に展開させました。同機は西側諸国のUAVよりもはるかに低い高度を飛行するため、それが10月下旬にメケレ市民に飛行している1機の撮影を可能にさせたようです。[2]

 「翼竜Ⅰ」は、ティグレ軍の手に落ちて今やSu-27による空爆の対象となった旧ENDF(エチオピア国防軍)の軍事施設や工場の活動を監視していた可能性があります。[3] [4] [5]

 11月初旬まで「翼竜Ⅰ」はエチオピア空軍では非武装で運用されていたため、このUCAVは地上の標的の確認はできても、実際にそれらと交戦することはできませんでした。実際の攻撃はUCAVの標的確認からしばらく後にSu-27によって行われましたが、たいていは酷い命中精度だったようです。

 エチオピアが9月に「翼竜Ⅰ」を導入した際に専用の兵装も入手しなかった理由は不明のままであり、 UCAV を導入することによってエチオピア空軍がこの先の10年間を見据えて計算された導入戦略を実行しているという主張は、ほとんど現実に基づいていないように見えます。[6]



 2021年6月には、「OFAB-250」無誘導爆弾を4発搭載したエチオピア空軍のSu-27UBの姿が見られました。ETAFのSu-27は、内戦の間に本来は公式に継続して運用されている十数機程度のMiG-23BNによって実施されてきた対地攻撃任務の一部を引き継いでいるようです。

 MiG-23BNはETAF専用の戦闘爆撃機であり、Su-27は迎撃機としてのみ使用されることを目的としていました。機体の老朽化とティグレ戦争の初期段階における酷使は、MiG-23BN飛行隊の一部を恒久的な駐機状態(飛行不能状態)にさせていることを意味しているのかもしれません。

 ティグレ戦争における墜落でさらに2機のMiG-23BNが失われました。1機は2020年11月29日、もう1機は2020年12月6日に墜落(または撃墜)が確認されています。[7]

 Su-27と同様にMiG-23BNもいかなる現代的なPGM(精密誘導爆弾)を搭載することができず、運用され続けている機体は基本的にさまざまな種類のロケット弾や(クラスター爆弾を含む)無誘導爆弾の使用に限られています。それにもかかわらず、彼らのパイロットは実際に空対地兵装を使用するための訓練を受けているので、Su-27を操縦する同僚よりもはるかに正確に爆弾などを命中させることができるのは確実と思われます。

 したがって、Su-27の使用はMiG-23BNと一緒に空爆に投入するという慎重な選択によるものではなく、MiG-23BNの稼働数自体が減少しているために必要が生じたのかもしれません。

メケレ市上空を飛行する「翼竜Ⅰ」(2021年10月下旬)

 エチオピアは最近に「翼竜Ⅰ」UCAV専用の兵装を調達したことで、Su-27による爆撃ミッションが減少する可能性があります。ただし、エチオピアが中国から購入したTL-2空対地ミサイル(AGM)の軽い弾頭を考慮すると(硬目標へ命中しても破壊効果が期待できないため)、当分の間はSu-27の空爆任務が継続されることも考えられないことはないでしょう。[8]

 しかし、ティグレ軍がエチオピアの首都アディスアベバへの進撃を続けているため、より差し迫った目標が目の前にあることは間違いありません。

 ひとつだけ確かなことは、この戦争が終わりからかけ離れているように見えるということです。

[1] Russian Su-27 Fighters Deployed As Bombers In Tigray War https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/su-27-fighters-deployed-as-bombers-in.html
[2] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[3] https://twitter.com/FdreService/status/1452947692234158087
[4] https://twitter.com/FdreService/status/1453642480298049536
[5] https://twitter.com/FdreService/status/1454772663252099072
[6] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[7] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html
[8] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html

※  当記事は、2021年11月13日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



おすすめの記事

ティグレ戦争:エチオピアが「翼竜Ⅰ」UCAV用に中国の「TL-2」ミサイルを入手した
ティグレ戦争:中国製UCAVがメケレ市上空で目撃された
エチオピア上空の「翼竜Ⅰ」:中国製UCAVがティグレとの戦いに加わる
メイド・イン・チャイナ:エチオピアにおける中国製UAV飛行隊(英語:邦訳版は後日公開)

2021年11月19日金曜日

ティグレ戦争:エチオピア軍のSu-27が爆撃機として投入された



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア空軍(ETAF)は爆撃任務や近接航空支援(CAS)を実施するために、伝統的にソ連製のMiG-23BN飛行隊に依存していました。この頑丈な戦闘爆撃機は2020年11月に始まったティグレ戦争に相当の数が投入されており、今までのところ、2020年11月と12月に2機が失われています。[1]

 相当な数の爆弾を搭載できる能力がETAFによって評価されていますが、今や10数機かそれ未満の数しか残っていないMiG-23BNには現代的な精密誘導爆弾(PGM)を運用する能力が欠如しているため、これらによる標的を正確に攻撃するための選択肢は大幅に限られたものとなっています。

 その結果として生じる能力のギャップを軽減するため、エチオピアはイラン、中国、そしてUAEから3種類の無人戦闘航空機(UCAV)を導入したことが確認されていますが、精密打撃が必要な標的を攻撃するために、僅かに生き残っているSu-25TKを投入する可能性もあります。[2] [3] [4]

 したがって、ティグレの州都メケレへの数多くの空爆で最近目撃されたように、エチオピア空軍がSu-27戦闘機を爆撃機としての使用に引き続き専念していることは、なおさら驚くべきことです。

 当初、エチオピアは1990年代後半にロシアから8機のSu-27を購入しましたが、その後にロシアとウクライナから調達した機体を追加し、導入数は合計で17機となりました。[5]

 何度かの墜落事故により、現在のSu-27の機数はハラールメダ空港を拠点とする第5飛行隊によって運用されている約12機にまで減少しています。

 エチオピアはSu-27S、Su-27P、Su-27UBの各型を入手しましたが、どれもが誘導式の空対地兵器を運用する能力を備えていませんでした。Su-27を純粋に迎撃機として使用する目的だったため、空対地兵装に関する運用能力の制約はETAFにとっては問題ではありませんでした。実際、エチオピア・エリトリア国境紛争でSu-27はエリトリア軍のMiG-29を何機か撃墜するという戦果をもたらしています。

 純粋な迎撃機としての用途から、エチオピアのSu-27パイロットは無誘導爆弾を投下するための訓練を受けていないと考えられており、それは2021年10月にメケレ周辺にある多数の標的を空爆した際における酷い命中精度の原因に関係があると説明できるかもしれません。

 具体的な例として、メケレにある(現在はティグレ防衛軍の訓練場として使用されている)ENDFの北部司令部に対する爆撃を実施した際、Su-27が投下した爆弾は標的の建物だけでなく敷地全体からも外れ、1kmも離れた野原に着弾したことがあったのです。[6]

 メケレの空港に着陸するはずだった国連の飛行機は、この攻撃の結果として、着陸を中止せざるを得なくなりました。[7]

爆撃任務でメケレ上空を飛行中のエチオピアのSu-27

 2021年6月に放送されたエチオピア空軍のドキュメンタリー番組では、今や空対地任務を担う爆撃機として使用されているETAFのSu-27を初めて垣間見ることができました。[8]

 偶然とは思えないことに、この同時期にETAFのSu-27がティグレ州に近いバハルダール空軍基地に配備されているという最初の報告も明るみに出ました。[9] [10]

 この番組の映像では、ソ連製「OFAB-250」無誘導爆弾を4発搭載したSu-27UBが見られました。Su-27のパイロットは、MiG-23BNのパイロットから(ただでさえ悪い命中精度をさらに悪化させるであろう)ティグレ軍が持つ対空砲の最大射高を大きく超えて飛行しながら地上目標を攻撃する方法について、少なくともある程度の訓練を受けたものと考えられます。



 通常、Su-27飛行隊は首都アディスアベバ近郊にあるハラールメダ空軍基地を拠点としていますが、この紛争の間、空軍はMiG-23BN飛行隊の本拠地であるバハルダール空軍基地に2~4機のSu-27を定期的に分遣し続けています。[9] [10]

 最近のティグレ上空で爆撃任務に従事しているSu-27がハラールメダとバハルダールのどちらから出撃しているのかは不明のままですが、後者からの可能性が極めて高いと思われます。

 2020年11月、バハルダール基地は自身がティグレ軍によって発射された中国製の「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)の標的となったことに気づきました。このミサイル攻撃が物的損失をもたらしたか否かは不明ですが、ETAFにとって幸いなことに、この攻撃が繰り返されることはありませんでした。[11]

人目を引く機体の前でポーズをとるエチオピアのSu-27のパイロットたち(バハルダール基地にて)

 空対地任務でSu-27を使用し続けることについては、その目的を全く達成する可能性はないものの、2年目に突入しようとしているティグレ戦争に国際的な注目をさらに集めるかもしれません。

 Su-27を爆撃機として使用していることから判断すると、エチオピアがこれまでに入手したUCAVの数は彼らの需要に対して不十分なものと思われます。UAVの供給という、戦争という火に油を注ぐ行為が非倫理的と解釈される可能性はありますが、これらに精密誘導爆弾を搭載した場合は目的のターゲットに命中することはほぼ確実であり、不必要な民間人の犠牲を出すことを防ぐことができます。

 より多くのUCAVが導入されるまでSu-27は自身を真に必要としない紛争で戦い続けることになるかもしれませんが、敵を倒すためには利用可能な全てのリソースを活用することが求められます。



[1] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html
[2] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[5] Ethiopia - Sukhoi Su-27, Su-27UB, Su-27SK http://sukhoi.mariwoj.pl/
[6] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451539227217440778
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451520179758899209
[8] አስደሳች ግድቡን የሚጠብቁት አስፈሪ ጀቶች ጀነራሉን አስደመሙት https://youtu.be/A_rxWbdY9fw
[9] https://twitter.com/Gerjon_/status/1409448673625452546
[10] https://twitter.com/Gerjon_/status/1413857153039876100
[11] Go Ballistic: Tigray’s Forgotten Missile War With Ethiopia and Eritrea https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/go-ballistic-tigrays-forgotten-missile.html

※  当記事は、2021年11月4日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




おすすめの記事

Tankovy Busters: エチオピアにおけるSu-25TK攻撃機