2021年11月19日金曜日

ティグレ戦争:エチオピア軍のSu-27が爆撃機として投入された



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア空軍(ETAF)は爆撃任務や近接航空支援(CAS)を実施するために、伝統的にソ連製のMiG-23BN飛行隊に依存していました。この頑丈な戦闘爆撃機は2020年11月に始まったティグレ戦争に相当の数が投入されており、今までのところ、2020年11月と12月に2機が失われています。[1]

 相当な数の爆弾を搭載できる能力がETAFによって評価されていますが、今や10数機かそれ未満の数しか残っていないMiG-23BNには現代的な精密誘導爆弾(PGM)を運用する能力が欠如しているため、これらによる標的を正確に攻撃するための選択肢は大幅に限られたものとなっています。

 その結果として生じる能力のギャップを軽減するため、エチオピアはイラン、中国、そしてUAEから3種類の無人戦闘航空機(UCAV)を導入したことが確認されていますが、精密打撃が必要な標的を攻撃するために、僅かに生き残っているSu-25TKを投入する可能性もあります。[2] [3] [4]

 したがって、ティグレの州都メケレへの数多くの空爆で最近目撃されたように、エチオピア空軍がSu-27戦闘機を爆撃機としての使用に引き続き専念していることは、なおさら驚くべきことです。

 当初、エチオピアは1990年代後半にロシアから8機のSu-27を購入しましたが、その後にロシアとウクライナから調達した機体を追加し、導入数は合計で17機となりました。[5]

 何度かの墜落事故により、現在のSu-27の機数はハラールメダ空港を拠点とする第5飛行隊によって運用されている約12機にまで減少しています。

 エチオピアはSu-27S、Su-27P、Su-27UBの各型を入手しましたが、どれもが誘導式の空対地兵器を運用する能力を備えていませんでした。Su-27を純粋に迎撃機として使用する目的だったため、空対地兵装に関する運用能力の制約はETAFにとっては問題ではありませんでした。実際、エチオピア・エリトリア国境紛争でSu-27はエリトリア軍のMiG-29を何機か撃墜するという戦果をもたらしています。

 純粋な迎撃機としての用途から、エチオピアのSu-27パイロットは無誘導爆弾を投下するための訓練を受けていないと考えられており、それは2021年10月にメケレ周辺にある多数の標的を空爆した際における酷い命中精度の原因に関係があると説明できるかもしれません。

 具体的な例として、メケレにある(現在はティグレ防衛軍の訓練場として使用されている)ENDFの北部司令部に対する爆撃を実施した際、Su-27が投下した爆弾は標的の建物だけでなく敷地全体からも外れ、1kmも離れた野原に着弾したことがあったのです。[6]

 メケレの空港に着陸するはずだった国連の飛行機は、この攻撃の結果として、着陸を中止せざるを得なくなりました。[7]

爆撃任務でメケレ上空を飛行中のエチオピアのSu-27

 2021年6月に放送されたエチオピア空軍のドキュメンタリー番組では、今や空対地任務を担う爆撃機として使用されているETAFのSu-27を初めて垣間見ることができました。[8]

 偶然とは思えないことに、この同時期にETAFのSu-27がティグレ州に近いバハルダール空軍基地に配備されているという最初の報告も明るみに出ました。[9] [10]

 この番組の映像では、ソ連製「OFAB-250」無誘導爆弾を4発搭載したSu-27UBが見られました。Su-27のパイロットは、MiG-23BNのパイロットから(ただでさえ悪い命中精度をさらに悪化させるであろう)ティグレ軍が持つ対空砲の最大射高を大きく超えて飛行しながら地上目標を攻撃する方法について、少なくともある程度の訓練を受けたものと考えられます。



 通常、Su-27飛行隊は首都アディスアベバ近郊にあるハラールメダ空軍基地を拠点としていますが、この紛争の間、空軍はMiG-23BN飛行隊の本拠地であるバハルダール空軍基地に2~4機のSu-27を定期的に分遣し続けています。[9] [10]

 最近のティグレ上空で爆撃任務に従事しているSu-27がハラールメダとバハルダールのどちらから出撃しているのかは不明のままですが、後者からの可能性が極めて高いと思われます。

 2020年11月、バハルダール基地は自身がティグレ軍によって発射された中国製の「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)の標的となったことに気づきました。このミサイル攻撃が物的損失をもたらしたか否かは不明ですが、ETAFにとって幸いなことに、この攻撃が繰り返されることはありませんでした。[11]

人目を引く機体の前でポーズをとるエチオピアのSu-27のパイロットたち(バハルダール基地にて)

 空対地任務でSu-27を使用し続けることについては、その目的を全く達成する可能性はないものの、2年目に突入しようとしているティグレ戦争に国際的な注目をさらに集めるかもしれません。

 Su-27を爆撃機として使用していることから判断すると、エチオピアがこれまでに入手したUCAVの数は彼らの需要に対して不十分なものと思われます。UAVの供給という、戦争という火に油を注ぐ行為が非倫理的と解釈される可能性はありますが、これらに精密誘導爆弾を搭載した場合は目的のターゲットに命中することはほぼ確実であり、不必要な民間人の犠牲を出すことを防ぐことができます。

 より多くのUCAVが導入されるまでSu-27は自身を真に必要としない紛争で戦い続けることになるかもしれませんが、敵を倒すためには利用可能な全てのリソースを活用することが求められます。



[1] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html
[2] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[5] Ethiopia - Sukhoi Su-27, Su-27UB, Su-27SK http://sukhoi.mariwoj.pl/
[6] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451539227217440778
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451520179758899209
[8] አስደሳች ግድቡን የሚጠብቁት አስፈሪ ጀቶች ጀነራሉን አስደመሙት https://youtu.be/A_rxWbdY9fw
[9] https://twitter.com/Gerjon_/status/1409448673625452546
[10] https://twitter.com/Gerjon_/status/1413857153039876100
[11] Go Ballistic: Tigray’s Forgotten Missile War With Ethiopia and Eritrea https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/go-ballistic-tigrays-forgotten-missile.html

※  当記事は、2021年11月4日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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