著 シュタイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ (編訳:Tarao Goo)
当記事は、2015年8月21日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
車両運搬式即席爆発装置/自動車爆弾(VBIED)は、過去2年間で、シリアとイラクのイスラム国戦闘員によって知られるようになりました。このコンセプトについては、イスラム国が両国の戦場で、より防御力が高く、さらに大型のものを絶え間なく製作と投入し続けることによって完成させたと言えるかもしれません。ラジコンの自動車から爆薬を満載した戦車や自走砲に至るまで、イスラム国はVBIEDであらゆることをやってきたのです。
イスラム国の部隊が用いるVBIEDは、一般的な軍隊における砲爆撃やロケット弾攻撃とほぼ同じような働きをします。あらゆる部隊の集結地点や基地に致命的な打撃を与える可能性を秘めている点を別にすると、VBIEDは爆発後にまだ生き残っている敵を恐怖に陥れて士気を低下させる心理兵器としての役割も果たす兵器なのです。
また、十分に防御された基地を攻撃する場合において、イスラム国は最後の一撃を加える前にVBIEDを多用する傾向があります。
ダマスカスとホムスのT4空軍基地の中間に位置する(イスラム国が支配下に置いた)アル・カリヤタインから上がってきた画像は、彼らが巨大なダンプトラックをVBIEDとして使用し始めたことを示しています。
運転手と前輪を保護するためか、ダンプトラックにはスラット装甲と装甲板で構成される非常に初歩的なDIY装甲が追加されていました。
このような重量級の車両で良好な状況認識力を確保するためにダンプトラックの窓は極めて大きいことから、ただでさえ巨大な車両の運転手は機銃掃射にさらされてしまうことは明らかです。そこで、運転手を守るべく、運転席の前には小さな窓付きの装甲板が装備されたほか、その正面にはスラット装甲も取り付けられています。
2015年5月下旬のイスラム国によるシリア中部への攻勢を細かく観察していた人であれば、巨大なVBIEDの正体が彼らに制圧されたクナイフィス燐鉱山で鹵獲されたダンプトラックだとすぐに気づくでしょう。イスラム国の戦闘員が鉱山を制圧した時点で、クナイフィスには約12台のリジットダンプトラックがあったことから、今後しばらくの間はVBIEDに転用するためのより多くの大型車両が安定的に供給されることになったわけです。
下の画像では、鉱山に並べられたベラルーシのベラーズ社製リジットダンプトラックを見ることができます。
先に紹介した個体は、クナイフィスから車で僅か50kmのアル・カリヤタインの北東に位置するアル・マフラク検問所の攻撃に投入されました。
この巨大なリジッドダンプトラックは一見すると「無事に」目的地に到着して検問所で起爆したようですが、その戦果は今も(そして今後も)不明のままとなることは間違いありません(爆発の模様は下の画像で見ることができます)。
ダンプトラックに備えられた巨大なバスケットは、無限と思える量の爆薬を目標に向かって運ぶことを可能にしてくれます。問題といえば、クナイフィスとアル・カリヤタイン近郊に配置されているイスラム国の戦闘員たちが、最低でも1個のバスケットを満杯にするほどの十分な武器をかき集めることができるのかということでしょうか。
鹵獲された約10台のリジッドダンプトラックの約半数がまだ運用可能な状態であることに加えて、シリア中央部には多数の標的が残っていることから、この先も広大なシリアの砂漠を進む巨大な怪物の姿をもっと目にする機会があるかもしれません。
この車両には無限とも思えるような量の爆薬を輸送する能力があることを説明しましたが、その巨大なサイズを考慮すると、十分に防御された検問所へ攻撃を仕掛けた場合は彼らの射撃訓練の的で終わる可能性が高いと思われます。
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