2017年8月4日金曜日

DIYに走るシリア軍: S-60 AZP 57mm対空機関砲が2K12 SAM発射車両に搭載された


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2015年7月11日に本国版「Oryxブログ」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。
 
 現在も進行しているシリアでの内戦は、関係する各勢力が自己の火力を高めるために多くのDIYプロジェクトに取り組むという結果をもたらしています。悪名高い反政府軍の「ヘル・キャノン」や政府軍のIRAM(Improvised Rocket-Assisted Munition or Mortar:急造ロケット推進弾・迫撃砲、例として「ボルケーノ・ロケット」)と樽爆弾はそれらの完璧な例であり、かなりの数が生産されているほど十分に成功しているようです。後者の2つは共和国防衛隊の機甲部隊の一部に施された装甲の強化とともに実際には広く普及しているため、単なるDIYによる改造ではなく工業規格化された改修としてより適切に分類されるべきかもしれません。

 DIYプロジェクトは利用可能な資源と各地の指揮官・兵士の独創性や意欲にたびたび左右されます。これらの条件はシリア各地で大きな差があり、幾つかの勢力や地域には十分な武器や弾薬がある一方で、他では敵から優位を得るか攻勢を阻むために使用できる十分な火力を確保するべくDIYを余儀なくされている場合があるのです。

 「S-60 AZP」57mm対空機関砲のトラックへの搭載はシリアで非常に普及しているDIY改造であり、長射程を有する速攻の火力支援を兵士に提供することが比較的容易なものと言えます。この改造の唯一の欠点は、トラックのキャビンが障害となって正面がブロックされるために機関砲の射撃範囲が制限されることです(注:正面に向けて射撃できない)。

 このような改造のためにベースとして選択されたトラックについて、多くの場合はごみ収集車であり、要員に小火器の射撃に対する一定の防護を提供してくれます。


 同じ機関砲を「2K12 "クーブ"」移動式地対空ミサイル(SAM)システムの車体である「GM-578(2P25)」に取り付けることで、先に指摘した問題が解決されて砲手が機関砲を完全に旋回させることを可能にしました。
 
 最近、少数のこの種の改造がシリア・アラブ陸軍(SyAA)のために施されていることを踏まえると、近い将来により多くの車両が改造される可能性があるでしょう。


 改造された「2K12」の少なくとも1台は現在(注:2015年当時)、ヒズボラとシリア政府軍によって共同で実施されている戦略的に位置づけられたカラマウン地区への攻勢に参加しています。

 SyAAと共和国防衛隊は、主にヒズボラの戦闘員で構成された歩兵部隊に火力支援の大部分を提供しています。


 シリア各地に散在する孤立したSAM陣地の脆弱性は安全でより強力な政府支配地域に最も脆弱な装備を移動させるという決定につながり、そこでほとんどのSAM中隊が復活させられたものの、何らかの理由でその復活は短命に終わってしまいました。

 スペアパーツの不足や要員を他の任務に配置する必要があるということは、SAM中隊は最小限の要員で運用されるか全部が放棄されたことを意味したわけです。

 いくつかの「2K12」中隊は下の画像のTELと同じ運命を迎えました。この車両には「الجيش - ١٠٦٠٥٥٨ :陸軍-1060558」という文字が書かれています。

 改造された「2K12」は放棄された車両の1つであり、これらに埃を被らせるのではなく火力支援のプラットフォームに転換することは道理にかなっていると言えるでしょう。


 この費用対効果の良い改造車両は機動性があり、それゆえに政権側の戦闘員と一緒に進むことができる一方で、小火器の射撃から乗員を防護する鉄鋼製の車体に搭載することができる弾薬の量が限られるため、火力支援プラットフォームとしての役割を限定する可能性があるあります。

 しかし、リビア・ドーン(リビアの夜明け運動)によって開始された別のDIYプロジェクトでは、2K12を同じような他の用途(注:対地攻撃用)で使用できるように改修することが可能だということを示してくれました。つまり、比較的単純な改造をすれば、600kgの「3M9」ミサイルは非常に頼りにならない影響しか与えないにもかかわらず、地対地攻撃の用途に再利用することができるということです(注:対地ロケットとして開発されていない対空ミサイルでは、弾頭の種類や特性、それに弾道特性などから命中率も低いためにあまり戦果を期待できないが使えなくもないということ)。

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