著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
2000年代後半、ロシアの兵器メーカーにとって今後のトルクメニスタンとのビジネスの見通しが有望視されていたに違いありません。なぜならば、当時はトルクメニスタンから装甲戦闘車両(AFV)やヘリコプター、艦船などの受注が絶え間なく舞い込んできたからです。
ところが、トルクメニスタンは軍の近代化をロシアにかなり依存していましたものの、ほどなくして同国からロシア製兵器の発注がすぐに途絶え始めました。その代わり、トルクメニスタンはロシアやウクライナの武器メーカーを犠牲にして、他国の数多くある兵器メーカーを含むように兵器類のサプライヤーの多角化を図りました。
この突然の調達方針の転換によって、機械化部隊にあるソ連時代の装備類をロシアの「T-90S」戦車と「BMP-3」歩兵戦闘車(IFV)で部分的に置き換えて近代化を図るというトルクメニスタンの計画はほぼ終止符を打たれてしまったようです。
一見して装輪式AFVを好むこの国の新たな防衛ドクトリンのおかげで、前述のロシア製AFVは最終的にごく少数の導入で終わりました。前者は歩兵機動車が中核となっており、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、UAE、韓国、オーストリア、イタリア、そしてベラルーシなどの国々から調達されました。
それにもかかわらず、2021年9月に実施されたトルクメニスタン独立30周年記念の軍事パレードで、トルクメニスタンが兵器類の供給に関して再度ロシアに目を向けたことが明らかとなりました。驚くべきことに、「カマズ-63968 "タイフーン" 」耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)が初めて軍事パレードに登場・初披露されたのです。[1]
残念ながら、実際にこのMRAPが調達された数の情報が皆無に近いため、現時点では運用テストのための少数の導入にとどまっている可能性があります(注:たった1台という情報がある)。
「カマズ-63968」は2016年にシリアで同国に展開したロシア軍によって戦闘デビューを果たしており、今回のパレードでトルクメニスタンがその初の輸出先として判明したということです。
世界中の他のMRAPとは異なって、「タイフーン」は固有の武装を備えていませんが、顧客の要求に応じて12.7mm銃機関銃を備えた遠隔操作式銃架(RWS)を装備することが可能となっています。[2]
それでもなお、ロシア軍もトルクメニスタン軍も今のところ「タイフーン」用にRWSを調達したことはないようです。
「タイフーン」はカマズ社とウラル社が設計したMRAPシリーズであり、兵員の輸送だけでなく、より特殊な任務のためのベース車両として用いられることを意図して開発されました。
00年代後半に引き渡された数少ない「BMP-3」IFVの1台(00年代後半か10年代前半の軍事パレードにて) |
「タイフーン」はカマズ社とウラル社が設計したMRAPシリーズであり、兵員の輸送だけでなく、より特殊な任務のためのベース車両として用いられることを意図して開発されました。
このMRAPは底部のV字型モノコック構造は車体や乗員を爆風から遠ざけることによって、地雷に対する高い防護性能を確保しているほか、車内には2名の乗員と最大16名人の兵員用に耐衝撃・衝撃吸収座席が設けられています。
全周囲に14.5mm徹甲弾に耐える装甲を施されていることから、「カマズ-63968」はこのクラスで最も優れた防護性能を持つ車両の1つとなっています。
以前のロシア製AFVと比較すると、「カマズ-63968」の人間工学は著しく改善されています。例えば、このMRAPの前面、背面、両側面にはビデオカメラが搭載されているため、車内にいながら周囲を視察したり、フロントガラスに銃弾が撃ち込まれて視界不良になった場合でも車両を操縦することを可能にしています。
16人の兵員は車両後部のランプ・ドアで乗降するほか、天井に設置されている合計で7つのハッチからも緊急時に脱出することができます。
トルクメニスタンによる兵器類の爆買いは長期間続く可能性が高く、すでに毎年の多数の新型車両や航空機、そして艦艇の披露で国際的なアナリストを驚かせています。
これがロシアからの新たな兵器類の調達に含まれることになるのかはまだ不明ですが、最近になってトルクメニスタンが国内全域で救急搬送任務を行うために救急搬送仕様の「Mi-17」と「アンサット」ヘリコプターを発注したことは、ロシアが手頃な価格の軍事・航空技術の供給源として忘れられていないことを裏付けています。[3]
[1] Turkmenistan’s Parade Analysis: What’s New? https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/turkmenistans-parade-analysis-whats-new.html
[2] https://i.postimg.cc/j2Sr8FLB/438.png
[3] Russian Company Delivers Ansat, Mi-17-1W Ambulance Helicopters to Turkmenistan https://business.com.tm/post/6900/russian-company-delivers-ansat-mi171w-ambulance-helicopters-to-turkmenistan
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全周囲に14.5mm徹甲弾に耐える装甲を施されていることから、「カマズ-63968」はこのクラスで最も優れた防護性能を持つ車両の1つとなっています。
以前のロシア製AFVと比較すると、「カマズ-63968」の人間工学は著しく改善されています。例えば、このMRAPの前面、背面、両側面にはビデオカメラが搭載されているため、車内にいながら周囲を視察したり、フロントガラスに銃弾が撃ち込まれて視界不良になった場合でも車両を操縦することを可能にしています。
16人の兵員は車両後部のランプ・ドアで乗降するほか、天井に設置されている合計で7つのハッチからも緊急時に脱出することができます。
1台のイスラエル製「コンバットガード 4x4」 IMVに続き、3台の中国製「EQ2050」と1台の「カマズ-63968 」MRAPが行進しています。 |
トルクメニスタンによる兵器類の爆買いは長期間続く可能性が高く、すでに毎年の多数の新型車両や航空機、そして艦艇の披露で国際的なアナリストを驚かせています。
これがロシアからの新たな兵器類の調達に含まれることになるのかはまだ不明ですが、最近になってトルクメニスタンが国内全域で救急搬送任務を行うために救急搬送仕様の「Mi-17」と「アンサット」ヘリコプターを発注したことは、ロシアが手頃な価格の軍事・航空技術の供給源として忘れられていないことを裏付けています。[3]
トルクメニスタン陸軍の「BTR-80A」IFV |
[1] Turkmenistan’s Parade Analysis: What’s New? https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/turkmenistans-parade-analysis-whats-new.html
[2] https://i.postimg.cc/j2Sr8FLB/438.png
[3] Russian Company Delivers Ansat, Mi-17-1W Ambulance Helicopters to Turkmenistan https://business.com.tm/post/6900/russian-company-delivers-ansat-mi171w-ambulance-helicopters-to-turkmenistan
※ 当記事は、2021年12月8日にOryx「本国版」(英語)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
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