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2021年11月12日金曜日

エチオピア上空の「翼竜Ⅰ」:中国製UCAVがティグレとの戦いに加わる

このページにある「翼竜Ⅰ」の画像はイメージであり、エチオピアとは無関係です

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 エチオピアによってイランUAEの無人戦闘航空機(UCAV)が導入された後、今や第3のUCAV:中国製の「翼竜Ⅰ」がティグレ戦争に参戦したことを示唆する強い理由が浮かび上がりました。

 筆者が受け取った情報と「翼竜Ⅰ」が製造されている中国の成都からエチオピアのハラールメダ空軍基地への疑わしい貨物便を重ね合わせると、2021年9月に少なくとも3機の同UCAVがエチオピアに届けられたことを暗示しています。このニュースは、エチオピア軍がティグレ州でUAEが供給したUCAVを使用したことが確認された1週間後にもたらされました。[1]

 すでに2021年9月初旬には、エチオピア空軍司令官へのインタビュー映像でUCAVの模型が目立つように展示されていたことによって、「翼竜Ⅰ」の入手が初めてほのめかされました。

 ティグレ戦争への中国製UCAVの参戦については、すでに2020年11月の紛争が勃発してからずっと推測されてきました。エリトリアのアッサブ空軍基地からUAEが運用する「翼竜」が出撃していると頻繁に言われていますが、今までのところ、これらの主張を裏付ける証拠が提示されたことはありません。

 しかし、著者がハラールメダ空軍基地のDAVI(デジェン航空工学産業)で働く整備員から得た新たな情報は、ついにエチオピアにおける中国製UCAVの存在を明らかにしました。彼は、この機体について「最近に中国から到着した、胴体の前部に膨らみがあって両主翼の下にハードポイントを1つずつ装備しているUCAV」と言い表しているので、その外観的特徴は「翼竜Ⅰ」と正確に一致しています[2]。

 ドローンが空軍基地に到着した後、これらは詮索好きな目に発見されることを避けるために急いで近くの格納庫に移動されたにもかかわらず、その試みは明らかに失敗に終わりました。

「翼竜Ⅰ」(この画像はイメージであり、エチオピアとは無関係です)

 「翼竜Ⅰ」をエチオピアに輸送した貨物機は、2021年9月17日に撮影されたハラールメダ空軍基地の衛星画像で目撃された、ウクライナ・アントノフ航空のAn-124「UR-82029」だったと考えられています。

 このフライトで、「UR-82029」は(「翼竜Ⅰ」の製造拠点がある)成都から旅程をスタートし、イスラマバードに短時間立ち寄った後、結果的に最終目的地であるハラールメダ空軍基地に着陸しました。[3]

 今回のフライトは、ティグレ防衛軍の進撃を阻止するために必要なあらゆる武器・弾薬のストックをエチオピアに維持させるための複数の国による大規模な取り組みの一環です。その詳細については、以前に公開した記事を参照してください。[4]



 2021年9月初旬に行われたエチオピア空軍司令官イルマ・メルダッサ少将へのインタビューでは、少将とジャーナリストの間に「翼竜Ⅰ」の模型が目立つように飾られていました。

 (ほとんどが無人機戦に焦点を当てた)インタビューの間、ジャーナリストは、現時点におけるエチオピア空軍によるドローンの運用状況について何度も質問し、ある時点でUCAV導入のために他国との取引があったかどうかを直接尋ねました。

 これに対し、メルダッサ少将は、エチオピア空軍はドローンに関して卓越した立場にあり、空軍は今だけでなく次の10年を見据えた計画を立てていると説明しました。UCAV導入について他国との取引はあったのかという質問については、少将は「そのような質問は政府の責任ある部門にするべきです」という(少しがっかりしますが)政治的に正しい回答をしました。




 「翼竜Ⅰ」は現時点で中国で最も商業的に成功しているUCAVであり、これまでに少なくとも世界中で7つの海外の顧客によって導入されたことが確認されています。[6]

 ただし、このUCAVはその間に、兵装の搭載量を2倍にするため左右の主翼にハードポイントを2つずつ設けたことを含む多数の能力向上を図った、より高性能な「翼竜Ⅱ」に取って代わられました。しかし、前モデルの「翼竜Ⅰ」と比較すると「翼竜Ⅱ」は高価なことに加え(約1500万ドル=17億円に達すると考えられています)、前者の現代的なデザインは今日でも輸出市場でその人気を確かなものにしています。

 「翼竜Ⅰ」のハードポイントの少なさについては、搭載できる幅広い種類の兵装でカバーできます。とはいえ、海外の顧客は一般的に「翼竜Ⅰ」用の長距離滑空爆弾や対艦ミサイルといった武器システムの導入を控えており、その代わりに少数の空対地ミサイル(AGM)や精密誘導爆弾(PGM)にこだわっているようです。

 この傾向はエチオピア空軍にとっても変わらないものと思われます。同空軍がこのシステムに寄せる主な関心は、その対人・対戦車能力に向けられるでしょう。



 月を追うごとに拡大しているように見えるUCAVの戦力に直面して、ティグレ軍は今や彼らによって加えられる圧力の増加を戦場で感じ始めるでしょう。

 その敵対する側のエチオピア軍は、必死になって兵器を買い漁った結果として最低でも3つの異なる国からのUCAVが手元に残り、それが整備を複雑にしてコストを増加させていることにすぐに気づくかもしれません。

 その意味では、エチオピア空軍がこの先の10年間を見据えて計算された導入戦略を実行しているという主張は、ほとんど現実に基づいていないように見えます。その代わり、この空軍は長年にわたって世界中の現代の軍事的な発展を無視してきたことを埋め合わせしようと試みています。

 UCAV がティグレ戦争で極めて重要な役割を果たす可能性があり、エチオピアがそれらを気ままに購入していることを考慮すると、「翼竜Ⅰ」でさえ彼らが導入する最後の U(C)AV ではないのかもしれません。



特別協力: Saba Tsen'at Mah'derom.

[1] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[2] 安全上の理由から、彼の身元は秘匿とします。
[3] https://twitter.com/Gerjon_/status/1439611723992997888
[4] UAE Air Bridge Supports Ethiopian Military in Tigray War https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-air-bridge-supports-ethiopian.html
[5] የመሻገሪያ ዘመን -ሜ/ጀነራል ይልማ መርዳሳ የኢፌዲሪ አየር ኃይል ዋና አዛዥ|etv https://youtu.be/dOc1kBbEkvo
[6] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html

※  当記事は、2021年10月11日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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