著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
2022年2月27日、オラフ・ショルツ首相は連邦議会での特別演説でロシアによるウクライナ侵攻をヨーロッパの歴史におけるZeitenwende(時代の転換点)であると言及し、首相は2024年にGDPの2%を防衛費に充てるというドイツの公約を再確認しました。
それに加えて、ドイツ政府は、軍への緊急投資のために1,000億ユーロ(約15.5兆円)の特別基金を設置しました。
そうは言っても、数千台もの戦車と数百機もの戦闘機を誇るドイツ軍の復活を期待していた人たちにとっては、それが実現しないことに不満を持つかもしれません。
ロシア軍の深刻な弱体化と、ポーランドやルーマニアといった最前線のNATO加盟国による軍への大規模な投資を考慮すると、何百台もの戦車を追加で導入することがNATOの抑止力を強化するための最善のアプローチであるかどうかは議論の余地があります。
その代わり、ほかのEU諸国に不足している兵器システムへの投資や装備の寄贈を通じて他のNATO加盟国(及びウクライナ)の戦力を増強させることは、ドイツが自らの資金で最大限の恩恵を得るための代替策となるでしょう。
- 以下に列挙した一覧は、ドイツ陸空軍によって調達される兵器類のリスト化を試みたものです。
- この一覧は重火器に焦点を当てたものであるため、対戦車ミサイルや携帯式地対空ミサイルシステム、小火器、指揮車両、トラック、レーダー、小型無人機、弾薬は掲載されていません。
- 「将来的な数量」は、すでに運用されている同種装備と将来に調達される装備の両方を含めたものを示しています。
- この一覧は新しい兵器類の調達が報じられた場合に更新される予定です
陸軍 - Heer
戦車 (将来的な数量: 328)
- 18 レオパルト2A8 [2026年から2027年の間に納入] (310台の「レオパルト2A6(M)/A7」を補完するもの)
- 陸上主力戦闘システム(MGCS) 計画 [2030年代半ば以降に就役予定] (最終的に「レオパルト2」を更新するもの)
歩兵戦闘車 (将来的な数量: ~600)
- 50 プーマS1 [2025年から2027年の間に納入] (350台の「プーマ」を補完するもの)
- 179 プーマS1 [調達を検討] (最終的に「マルダー」を更新するもの)
- 143 プーマをS1規格にするための中期近代化改修(新型視察装置、無線機、「MELLS」対戦車ミサイルの搭載を含む) [2029年までに改修完了]
- 約200 マルダーの近代化改修(新型エンジン、変速機、履帯、サーマルカメラ、「MELLS」対戦車ミサイルの搭載を含む)[2020年代半ばから後半に改修完了]
装甲戦闘車両
- 128 ボクサー 戦闘車 [2025年以降に納入] (一般部隊における「ヴィーゼル1」を更新するもの)
- GSD ルーヴァ 空挺戦闘車 [調達を検討] ((空挺部隊における「ヴィーゼル1」を更新するもの)
- 367(オプションで+233) BVS10 Mk II 全地形水陸両用装軌式装甲車(5種類) [2024年以降に納入] (283台の「BV 206S'」を更新するもの)
特殊車両
- 81 ボクサー 統合火力支援部隊用車両 [2024年から2031年にかけて納入]
- 80 モワク「イーグルV 6x6」装甲救急車 [2023年から2024年にかけて納入]
- 大量 パトリア「6x6(XA-300)」(装甲兵員輸送車, 指揮車、特殊用途用) [調達を検討]
軽攻撃車両
- 80 デーフェンテル「マンモス (AGF 2)」 [2024年から2025年にかけて納入]
- 1,004 ラインメタル「カラカル」空挺機動車 [2025年以降に納入]
砲兵・多連装ロケット砲 (将来的な数量: 228 自走砲, ~80 多連装ロケット砲)
- 22(オプションで+6) PzH 2000 155mm自走榴弾砲 [2025年以降に納入] (既存の「PzH 2000」86台を補完するもの)
- 86 PzH 2000の中期近代化改修(新型アヴィオニクス、温度調節器、暗視装置、上面への追加装甲、弾薬装填システムの能力向上を含む) [2028/2029年までに改修完了]
- 120 装輪式自走砲の導入計画[調達を検討] [候補車両: クラウス・マッファイ・ヴェクマン「RCH-155」 と ラインメタル「ATI」ATI]
- 新型MLRSの導入計画 [調達を検討] [候補車両: エルビット+クラウス・マッファイ・ヴェクマン「ユーロPULS」 と ロッキード・マーチン+ラインメタル「ユーロ・ハイマース」] (35台「MARS II」 MLRSを更新するもので、500km以上の射程を持つ「JFS-M」地上発射巡航ミサイルを発射可能)
防空システム (将来的な数量: 30 自走対空砲, 32 SAM発射機)
- 最大で30 ラインメタル「スカイレンジャー30」30mm自走対空砲 [2020年代半ばから後半の間に納入] (2012年に退役した「ゲパルト」の後継となるもの)
- 4 ディール+サーブ+アレニア「IRIS-T SLS」地対空ミサイルシステムと付随する32基の発射機 [調達を検討 [候補: ラインメタル「ボクサー」 と モワク「イーグル 6x6」ベースの発射機] (2005年に退役した「ローラント」SAMの後継となるもの)
電子戦システム
- 長距離電子戦システムの導入計画 [調達を検討]
装甲工兵車両
- 24 レグアン 架橋戦車 [2023年から2028年にかけて納入] (既存の「レグアン」7台を補完するもの)
- 44 コディアック 戦闘工兵車 [2026年から2029年にかけて納入]
ヘリコプター
- 24 エアバス「H145M」軽攻撃ヘリコプター [2027年以降に納入] (2016年に退役した「BO-105P "PAH-1A1"」対戦車攻撃ヘリコプターの後継で、51機の「タイガー」を補完するもの)
- 攻撃ヘリコプターの導入計画 [調達を検討] [候補: ボーイング「AH-64E " アパッチ"」, ベル「AH-1Z "ヴァイパー"」,レオナルド「AW249」] (51機の「タイガー」を補完するもの)
- 58 エアバス「H145M」汎用ヘリコプター [2027年以降に納入]
無人航空機
- 45 ラインメタル「ルナNG」無人偵察機 [2020年代半ばまでに納入完了] (既存の「ルナNG」20機を補完するもので、最終的に同社の「ルナ」と「KZO」を更新するもの)
列車
- 3 ICE3ネオ 高速救急医療列車 [2025年に納入予定]
空軍 - Luftwaffe
戦闘機 (将来的な数量: ~185)
- 38 ユーロファイター "タイフーン" トランシェ4 [2020年代後半に納入] (31機の「ユーロファイター "タイフーン"」を更新するもの)
- 35 F-35A [2026年以降に納入] (68機の「トーネードIDS」を更新するもので、「B61-12」核爆弾を装備可能)
- 層来戦闘航空システム (FCAS)計画 [2040年以降に就役] (最終的に「ユーロファイター "タイフーン"」を更新するもの)
敵防空網制圧(SEAD)機 (将来的な数量: 15)
- 5 IAI「ヘロンTP」 [改修中] (既存のイスラエル製UAVがベース)
- 21 エアバス+レオナルド+ダッソー「ユーロドローン」 [2030年代前半以降に納入] (5機の「ヘロンTP」を更新するもの)
電波収集(SIGINT)及び情報収集・警戒監視・偵察(ISR)機 (将来的な数量: 3)
- 16 エアバス「A400M」輸送 (空中給油)機 [納入中] (既存の「A400M」37機を補完するもの)
- 5 エアバス「A330」空中給油・輸送機(MRTT) [納入中] (多目的MRTT部隊用で、他のNATO加盟国で運用中の「A330」 MRTT5機を補完するもの)
- 3 ロッキード・マーチン「KC-130J "スーパーハーキュリーズ"」空中給油・輸送機 [2024年に納入]
輸送ヘリコプター (将来的な数量: 75)
- 2 「SARah」偵察衛星 [2020年代半ばに打ち上げ] (すでに打ち上げた「SARah」1機を補完するもの)
防空システム (将来的な数量: 1 「アロー3」 ABMシステム, 11「パトリオット」中隊, 6 「IRIS-T SLM」システム)
- 1 IAI「アロー3」弾道弾迎撃ミサイルシステム [2025年に納入]
- 6 ディール+サーブ+アレニア「IRIS-T SLM」地対空ミサイルシステムと付随する18基の発射機 [2020年代半ばから後半にかけて納入]
海軍 - Deutsche Marine
フリゲート (将来的な数量: 15)
- 6 「F126」級多目的フリゲート [2027年以降に引き渡し] (4隻の「F123 "ブランデンブルク"」級フリゲートの後継)
- 6 「F127」級防空フリゲート [2033年以降に引き渡し] (3隻の「F124 "ザクセン"」級フリゲートの後継)
コルベット (将来的な数量: 6)
- 5 ブラウンシュヴァイク級(バッチ2)コルベット [2025年以降に引き渡し] (5隻の「ブラウンシュヴァイク」級(バッチ1)コルベットの後継)
- 1 ブラウンシュヴァイク級(バッチ3)コルベット [調達を検討] (5隻のブラウンシュヴァイク級(バッチ2)コルベットを補完するもの)
小型艦 (将来的な数量: 最大で8)
- 3 「707」級給油艦 [2026年以降に引き渡し] (2隻の「704 "レーン"」級給油艦の後継)
- 6 多目的補給艦の導入計画 [調達を検討] (6隻の「404 "エルベ"」級補給艦の後継)
掃海艇 (将来的な数量: 最大で12)
- 最大12 掃海艦導入計画 [2020年代後半以降に引き渡し] (2隻の「エンスドルフ」級掃海艇と10隻の「フランケンタール」級掃海艇の後継で、無人機雷処分艇を装備するものと思われる)
高速攻撃艇 (将来的な数量: 15)
- 31 NHI「NH90 "シータイガー」 [2025年以降に納入] (21機のアグスタウェストランド「リンクスMk.88」の後継)
無人ヘリコプター