多くの軍事アナリストはトルコがドローン大国として台頭し、世界初の量産型多目的UCAVを開発したことも把握していますが、無人艇(USV)の分野におけるトルコの取り組みについては決して十分に知られていません。[1]
2021年には、「アレス」造船所の「ULAQ(ウラク)」シリーズ、「セフィネ」造船所の「NB57/RD09」、「ディアサン」造船所の「USV11/15」という3種類の武装無人水上艇(AUSV)が発表されました。
これらのUSVやUCAV、多数の無人地上車両(UGV)や自律型水中艇(AUV)のおかげで、トルコは無人兵器システムのマーケットリーダーになりつつあります。
すでにいくつかの国では、掃海や港湾防衛任務のためにUSVや攻撃型無人艇(AUSV)を導入しているため、この分野における商業的な可能性については今後も増えていくでしょう。
ロケット弾、魚雷、そしてミサイルを搭載したAUSVの導入を通じて、トルコはUSVの能力を大幅に引き上げようと試みています。これらのAUSVの武装には、射程約8kmの対戦車ミサイル(ATGM)だけでなく、射程220km以上を誇る「アトマジャ」対艦ミサイル(ASM)さえもが含まれています。
これらの多目的AUSVが大量にエーゲ海に導入された場合、ギリシャ海軍が質と量の差を和らげることは到底考えられないレベルまでに海軍力のバランスが著しく変化する可能性を完全に否定することはできません。
潜在的な用途の幅広さは、現時点で有人艦艇が遂行している任務の多くをUSVに引き受けさせることを可能にします。そのため、対水上戦(AsuW)用や掃海用USVに加えて、トルコの造船所は対潜水艦(ASW)、情報・監視・偵察(ISR)、電子戦、さらには消火活動用のUSVも設計しています。
また、「アセルサン」社は自律操作と群れ(スウォーム)で運用できるUSVも開発しています。[2]
たった数年以内にこれらのタイプを同時に設計・開発したことによって、トルコはAUSV分野における絶対的なマーケットリーダーとしての地位を得たように思えます。UCAVの商業的成功と同様に、トルコのUSVも輸出市場で成功を収めるための好位置にいるようです。
ほぼ間違いなく、トルコが戦場で効果的な成果を上げることが可能な無人システムの信頼性と手頃な価格を兼ね備えることに成功した最初の国と断言しても差し支えないでしょう。
海外の顧客に対する彼らの魅力こそが、まさに輸出面での成功を確実にしてくれるものかもしれません。また、それは最終的にごく僅かな数しか生産されなかった世界各地のUSVが迎えた運命から脱出させてくれる可能性もあります。
2021年12月には、「アレス」造船所が「ウラク」シリーズAUSVの販売について欧州2か国と交渉の最終段階に入っていることが報じられました。[3]
「アレス」造船所は年間50隻の「ウラク」USVを建造するための生産基盤を強化しており、ほかの造船所が建造するUSVの数を合計すると、トルコは年に100隻を超える(A)USVを建造できるようになるでしょう。
全てのAUSVは前方監視型赤外線装置(FLIR)とレーダーを装備しているため、遠距離の目標を捜索・探知し、約50ノット(約92km/h)の高速で迅速に迎撃することができます。
ほぼ間違いなく、トルコが戦場で効果的な成果を上げることが可能な無人システムの信頼性と手頃な価格を兼ね備えることに成功した最初の国と断言しても差し支えないでしょう。
海外の顧客に対する彼らの魅力こそが、まさに輸出面での成功を確実にしてくれるものかもしれません。また、それは最終的にごく僅かな数しか生産されなかった世界各地のUSVが迎えた運命から脱出させてくれる可能性もあります。
2021年12月には、「アレス」造船所が「ウラク」シリーズAUSVの販売について欧州2か国と交渉の最終段階に入っていることが報じられました。[3]
「ウラク」AUSVは、「L-UMTAS」ATGMを4発、「ジリット」誘導ロケット弾を8発、「スングル」近距離対空ミサイルを4発、またはこれらの組み合わせを搭載できる「ヤルマン」ウェポン・ステーションを装備しています。 |
「アレス」造船所と「メテクサン・ディフェンス」社によって開発された「ウラク」AUSVは2021年5月に射撃試験を成功裏に終え、世界初の運用可能なAUSVとなる名誉を獲得しました。 これに続いてASW型「ウラク」の実証試験もまもなく始まる予定です。[4]
「アレス」造船所は年間50隻の「ウラク」USVを建造するための生産基盤を強化しており、ほかの造船所が建造するUSVの数を合計すると、トルコは年に100隻を超える(A)USVを建造できるようになるでしょう。
全てのAUSVは前方監視型赤外線装置(FLIR)とレーダーを装備しているため、遠距離の目標を捜索・探知し、約50ノット(約92km/h)の高速で迅速に迎撃することができます。
その多目的性については、1基ずつウェポン・ステーションを搭載できる2つの小型フロート(アウトリガー)を船体を追加して三胴船形態にし、合計で3基のウェポン・ステーションを搭載することによって実現されています(船体に1基、左右のフロートに各1基のウエポン・ステーションがあるということ)。
「コンステレーション」級の典型的な装備は、25km以上の射程を持つ4本の対潜用324mm「オルカ」短魚雷と、最大で8発の対艦用「ロケットサン」製「ジリット」誘導ロケット弾、そして1基の12.7mmRWSで構成されています。また、ソナーと後部甲板に設置されたソノブイ発射機によって敵の潜水艦を探知することが可能です。
「コンステレーション」級の典型的な装備は、25km以上の射程を持つ4本の対潜用324mm「オルカ」短魚雷と、最大で8発の対艦用「ロケットサン」製「ジリット」誘導ロケット弾、そして1基の12.7mmRWSで構成されています。また、ソナーと後部甲板に設置されたソノブイ発射機によって敵の潜水艦を探知することが可能です。
このAUSVには「マーリン」と呼ばれる電子戦特化型が存在することも特筆うべきでしょう。
「セフィネ」造船所によって設計されたもう1つのAUSVとして「ネビュラ」級があります。同AUSVは船室だけを水面上に露出させて自身をほぼ完全に水中に潜水させるという独特な能力を持ち合わせています。
武装は船体に格納された複数の魚雷発射管であり、同所から魚雷やASHMを発射することが可能とされています。
この半潜水型AUSVは、水上で最大28ノット(約58.1km/h)、半潜水の状態で最大8ノット(約14.8km/h)の速度で航行可能とのことです。
「コンステレーション」級で可能な装備の組み合わせ |
「セフィネ」造船所によって設計されたもう1つのAUSVとして「ネビュラ」級があります。同AUSVは船室だけを水面上に露出させて自身をほぼ完全に水中に潜水させるという独特な能力を持ち合わせています。
武装は船体に格納された複数の魚雷発射管であり、同所から魚雷やASHMを発射することが可能とされています。
この半潜水型AUSVは、水上で最大28ノット(約58.1km/h)、半潜水の状態で最大8ノット(約14.8km/h)の速度で航行可能とのことです。
「ディアサン」造船所は、2021年12月に11m級の「USV11」と15m級の「USV15」から成る自社製UAVのラインナップを公開しました。[5]
同造船所はナイジェリアやトルクメニスタンといった国々への艦艇の輸出でかなりの成功を収めていることから、これらの国がいつかAUSVを手に入れるために同造船所に目を向けることは十分に考えられるでしょう。
「USV11」は1門の「ヤルマン」ウェポンステーションか12.7mm重機関銃を装着したRWSで武装することが可能で、「USV15」の場合は「ヤルマン」とRWSのどちらも2門を装備可能であり、偵察専用型も存在しています。
「USV11」は1門の「ヤルマン」ウェポンステーションか12.7mm重機関銃を装着したRWSで武装することが可能で、「USV15」の場合は「ヤルマン」とRWSのどちらも2門を装備可能であり、偵察専用型も存在しています。
「ディアサン」造船所がリリースしたUSVのラインナップ |
最も新しく公開されたUSVは「ヨンジャ・オヌク」造船所によって設計された「サンジャル」級AUSVです。同造船所は、カタール、UAE、エジプトやパキスタンといった輸出先で運用されている「MRTP(Multi Role Tactical Platform)」級哨戒艇で最も知られています。
「サンジャル」級は、船体後部に4発の「L-UMTAS」対戦車ミサイルか8発の「ジリット」誘導ロケット弾を装備した「ヤルマン」ウェポン・ステーション1基と中央に「STAMP-2」12.7mm RWS1基を装備することが可能とのことです。
「サンジャル」級AUSV |
トルコ製AUSVの小型さは、それらを空輸や陸路で容易に輸送でき、LPD(ドック型輸送揚陸艦)やLHD(強襲揚陸艦)のウェルドックから展開することさえも可能ということを示しています。
特にトルコにとっては、「アナドル(TCG Anadolu (L-400)」LHDが固定翼UCAVとAUSVの両方を配備した世界初の艦となる可能性があるため、重要なポイントとなっていると思われます。
特にトルコにとっては、「アナドル(TCG Anadolu (L-400)」LHDが固定翼UCAVとAUSVの両方を配備した世界初の艦となる可能性があるため、重要なポイントとなっていると思われます。
また、フリゲートのような別の艦艇からも同様に、艦載クレーンを使いてAUSVを発進・回収することができます。これによってAUSVの航続距離と作戦可能範囲が大幅に拡大されると共に、水上艦がホルムズ海峡などの紛争水域を航行する際にはAUSVという形で自らを護衛する小型艇を搭載することが可能となりました。
トルコがより大型のUSVを設計する可能性については、水上や水中での無人プラットフォームのマーケット・リーダーになることを固く決意していると思われる国であることを考慮すると、それに取り組むことが想定の範囲内にあることは当然でしょう。
トルコがより大型のUSVを設計する可能性については、水上や水中での無人プラットフォームのマーケット・リーダーになることを固く決意していると思われる国であることを考慮すると、それに取り組むことが想定の範囲内にあることは当然でしょう。
※各USVの名前をクリックすると実物またはイメージ図を見ることができます。
USV - 対潜型 (ASW)
USV - 掃海型 (MCM)
USV - 情報・監視・偵察・/ 電子戦及び妨害 (ISR & EW)
USV - 長距離対水上戦型 (LR-ASUW)
USV - 対水上戦型 (ASUW)
USV - 対空型(AAW)
- 「ウラク ASUW-G/M」 (射程が220km以上ある4発の「アトマジャ」対艦ミサイルと1基の12.7mm RWSを装備)
USV - 対水上戦型 (ASUW)
- 「ウラク AUSV」(1) (4発の「L-UMTAS」ATGMか8発の「ジリット」誘導ロケット弾か1基の12.7mm RWSを装備) 「ウラク AUSV」 (2) (4発の「L-UMTAS」ATGMか8発の「ジリット」誘導ロケット弾と1基の12.7mm RWSを装備)
- 「ウラク 基地/港湾警備艇」 (1基の12.7mm RWSを装備)
- 「ネビュラ」級半潜水型AUSV (対艦ミサイルと/または魚雷を装備)
- 「コンステレーション」級 (哨戒型) (1基の12.7mm RWS と ソナーを装備)
- 「コンステレーション」級 (沿岸警備隊向けの哨戒型) 2種類: (2) (1基の12.7mm RWSを装備)
- 「コンステレーション」級(RD09) (三胴船形態で8発の「L-UMTAS」ATGMか16発の「ジリット」誘導ロケット弾」、20個のソノブイと1基の12.7mm RWSを装備)
- 「USV11」AUSV型 (1) (4発の「L-UMTAS」ATGMか8発の「ジリット」誘導ロケット弾を装備)
- 「USV11」AUSV型 (2) (1基の12.7mm RWSを装備)
- 「USV15」AUSV型 (4発の「L-UMTAS」ATGMか8発の「ジリット」誘導ロケット弾か1基の12.7mm RWSを装備)
- 「サンジャル」級(4発の「L-UMTAS」ATGMか8発の「ジリット」誘導ロケット弾か1基の12.7mm RWSを装備)
- 「レヴェント」級 (1基の12.7mm RWSを装備)
- 「ミル」級 (1基の12.7mm RWSを装備)
USV - 対空型(AAW)
- 「ウラク AAW」 (4発の「スングル」近距離対空ミサイルを装備) [写真・図は未公開]
USV - 対潜型 (ASW)
- 「ウラク LT」 (1) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷と12個のソノブイを装備)
- 「ウラク LT」 (2) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷、ソナー、1基の12.7mm RWSを装備)
- 「ウラク HT」 (射程が50km以上ある1発の「アクヤ」533mm魚雷、2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)
- 「ウラク MCMV」 (2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)
- 「コンステレーション」級(NB57) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷、1門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機、20個のソノブイと1基の12.7mm RWSを装備)
USV - 掃海型 (MCM)
- 「ウラク MCMV」 (1個の遠隔操作無人探査機:ROV、 2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)
USV - 情報・監視・偵察・/ 電子戦及び妨害 (ISR & EW)
- 「マーリン」
- 「ウラク ISR & EW」 (ISRやEW・妨害装置と6門のチャフ発射機を装備)
- 「USV15」監視型 (「USV15」AUSV型の非武装版)
USV - 調査型
[1] Arsenal of the Future: The Akıncı And Its Loadout https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/arsenal-of-future-aknc-and-its-loadout.html
[2] First Phase of ASELSAN’s Swarm USV Project Albatros-S Completed https://www.overtdefense.com/2021/08/10/first-phase-of-aselsans-swarm-usv-project-albatros-s-completed/
[3] Turkey set to Export ULAQ Armed USV to Europe https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/turkey-set-to-export-ulaq-armed-usv-to-europe/
[4] Turkey’s ULAQ USCV hits the target during Denizkurdu 2021 exercise https://www.navalnews.com/naval-news/2021/05/turkeys-ulaq-uscv-hits-the-target-during-denizkurdu-2021-exercise/
[5] Unmanned Surface Vehicle http://www.dearsan.com/en/products/naval-vessels/unmanned-surface-vehicle
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[2] First Phase of ASELSAN’s Swarm USV Project Albatros-S Completed https://www.overtdefense.com/2021/08/10/first-phase-of-aselsans-swarm-usv-project-albatros-s-completed/
[3] Turkey set to Export ULAQ Armed USV to Europe https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/turkey-set-to-export-ulaq-armed-usv-to-europe/
[4] Turkey’s ULAQ USCV hits the target during Denizkurdu 2021 exercise https://www.navalnews.com/naval-news/2021/05/turkeys-ulaq-uscv-hits-the-target-during-denizkurdu-2021-exercise/
[5] Unmanned Surface Vehicle http://www.dearsan.com/en/products/naval-vessels/unmanned-surface-vehicle
※ この記事は、2022年1月22日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳し
たものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇
所があります。
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