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2023年10月24日火曜日

極彩色の鉄騎兵:トルクメニスタンのオトカ「ウラル」と「コブラ」歩兵機動車



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 「オトカ」社製「コブラ」は、世界で最も成功した歩兵機動車(IMV)の1つであり、1997年に誕生して以来、約20カ国以上に輸出されています。

 さらにオリジナルの車体のフォローアップを図った改良型の「コブラII」も開発され、4カ国で採用されました。

 また、「オトカ」社はさまざまな大型AFVも設計しており、その中でも「アルマ」装甲兵員輸送車(APC)と「タルパー」歩兵戦闘車(IFV)は間違いなく最も知られた存在となっています。

 2010年代半ばのどこかの時点で、「コブラ」が同じく「オトカ製」の「ウラル」と一緒にトルクメニスタンへ輸出されたことは全く知られていません。どちらもトルクメニスタン軍で運用に入ることはなく、「ウラル」は内務省に引き渡され、国境警備隊は「コブラⅠ」の全部ではないにしてもその大部分を配備することに至りました。

 「ウラル」IMVの奇抜な迷彩パターンは明らかにどんな地形においても自身の被発見率の低下に少しも寄与しませんが、この国の治安部隊の車両として運用されていることを考慮すると、この塗装は実際に意図して施されたものと言えるでしょう。それでもなお、キューポラに搭載された「NSV」12.7mm重機関銃(HMG)は、内務省が予備的な戦闘任務も負っていることを明確に示しています。

 トルクメニスタンに納入された100台以上の「コブラ」は、その運用キャリアを通して(頻繁に変更されることで知られている)数種類の迷彩パターンが目撃されています。[1]

 最も新しい迷彩パターンは、2021年9月に実施された独立30周年記念の軍事パレードで見られたものです。はるかに大きなピクセルやドットが用いられていますが、トルクメニスタン陸軍の兵士が着用する迷彩服のパターンとほぼ同じものとなっています。

 確かに「ウラル」に施されたものよりは華々しくはありませんが、実用的な迷彩パターンとしてはより効果的であることは間違いありません。

国境警備隊の「コブラⅠ」IMV(2021年9月にアシガバートで実施された軍事パレードにて)

 トルクメニスタンのIMVの大部分は遠隔操作式銃架(RWS)を装備しており、「コブラⅠ」も同様に装備されています。

 実際、通常の重機関銃付きキューポラを装備した「コブラⅠ」はトルクメニスタンでたった一度しか目撃されていません。このキューポラは防楯が追加された「M2」12.7mm HMGもので構成されていましたが、一見すると前方からの銃撃に対する防御力は僅かしかなかったようです(注:防楯が薄すぎて装甲としての機能を期待できない)。


 トルクメニスタンが保有する「コブラ」のほとんどは「NSV」12.7mm HMGを装着したイスラエルのIMI製「ウェーブ300」RWSで武装されていますが、前述の貧弱なキューポラの存在を踏まえると、これらが国内で改修されたと考えるのが理にかなっているように思われます。

「ウェーブ300」RWSを装備した「コブラⅠ」

 「オトカ」製「ウラル」が内務省で運用される上での最も妥当な用途は群衆整理ですが、最大7人の治安部隊員の高速移動手段としても機能します。

 「コブラ」も同様に、運転手と指揮官に加えて最大で7人の国境警備員を乗車させることが可能です。

 どちちらのIMVにも、必要な時に素早く乗降できるようにするための後部ドアが設けられています。さらに、「コブラ」には兵員用の側面ドアと天井ハッチも備えられているため、被弾時や炎上時に脱出する機会を大幅に向上させています。

 トルクメニスタンで運用されている大部分のIMVとは異なり、「ウラル」と「コブラ」の双方には、フロントガラスを破損させて運転手の視界を悪化させる可能性のある投石やその他の破片から窓ガラスを保護する金網を備えています。

 通常兵器で武装した敵に対処する場合における両車の装甲防御力については、小火器と砲弾の破片から乗員を防護するには十分であり、限定的ながらも対人・対戦車地雷やIEDから保護する能力も備わっています。[2] [3]



 「オトカ」社は、トルクメニスタンを含む世界各国でIMVの著しい商業的な成功を収めています。

 最近のトルクメニスタンは新しい武器や装備の導入によって軍の能力をさらに向上させる用意が整っているようですので、もしかすると、将来的にさらに多くの「オトカ」製品が導入される状況を目にする日が訪れるかもしれません。

 現在のトルクメニスタンはソ連から引き継いだ大量の「BTR-80」APCと「BMP-2」IFVを運用していますが、それらの後継として、「オトカ」社が将来的に自社製の「アルマ」や「タルパー」をこの国に売り込むことは間違いないでしょう(注:2023年10月にエストニア防衛投資センターが「オトカ(6x6型)」とヌロル社製「NMS」を発注したことを明らかにしました)。

「コブラⅡ」IMV(左)と「アルマ 8x8」IFV(右)

[1] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[2] Cobra 4x4 Armored https://defense.otokar.com.tr/wheeled-armored/4x4-armored/cobra-4x4-armored
[3] Ural 4x4 Armored https://defense.otokar.com.tr/wheeled-armored/4x4-armored/ural-4x4-armored

この記事の作成にあたり、Sonny Butterworth氏に感謝を申し上げます。

※  この記事は、2022年1月15日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した  
  ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇
  所があります。 



2022年11月1日火曜日

マーケットリーダーとなるか:トルコの国産無人水上艇(USV)



 多くの軍事アナリストはトルコがドローン大国として台頭し、世界初の量産型多目的UCAVを開発したことも把握していますが、無人艇(USV)の分野におけるトルコの取り組みについては決して十分に知られていません。[1]

  2021年には、「アレス」造船所の「ULAQ(ウラク)」シリーズ、「セフィネ」造船所「NB57/RD09」「ディアサン」造船所「USV11/15」という3種類の武装無人水上艇(AUSV)が発表されました。

 これらのUSVやUCAV、多数の無人地上車両(UGV)や自律型水中艇(AUV)のおかげで、トルコは無人兵器システムのマーケットリーダーになりつつあります。

 すでにいくつかの国では、掃海や港湾防衛任務のためにUSVや攻撃型無人艇(AUSV)を導入しているため、この分野における商業的な可能性については今後も増えていくでしょう。

 ロケット弾、魚雷、そしてミサイルを搭載したAUSVの導入を通じて、トルコはUSVの能力を大幅に引き上げようと試みています。これらのAUSVの武装には、射程約8kmの対戦車ミサイル(ATGM)だけでなく、射程220km以上を誇る「アトマジャ」対艦ミサイル(ASM)さえもが含まれています。

 これらの多目的AUSVが大量にエーゲ海に導入された場合、ギリシャ海軍が質と量の差を和らげることは到底考えられないレベルまでに海軍力のバランスが著しく変化する可能性を完全に否定することはできません。

 潜在的な用途の幅広さは、現時点で有人艦艇が遂行している任務の多くをUSVに引き受けさせることを可能にします。そのため、対水上戦(AsuW)用や掃海用USVに加えて、トルコの造船所は対潜水艦(ASW)、情報・監視・偵察(ISR)、電子戦、さらには消火活動用のUSVも設計しています。

 また、「アセルサン」社は自律操作と群れ(スウォーム)で運用できるUSVも開発しています。[2]

 たった数年以内にこれらのタイプを同時に設計・開発したことによって、トルコはAUSV分野における絶対的なマーケットリーダーとしての地位を得たように思えます。UCAVの商業的成功と同様に、トルコのUSVも輸出市場で成功を収めるための好位置にいるようです。

 ほぼ間違いなく、トルコが戦場で効果的な成果を上げることが可能な無人システムの信頼性と手頃な価格を兼ね備えることに成功した最初の国と断言しても差し支えないでしょう。

 海外の顧客に対する彼らの魅力こそが、まさに輸出面での成功を確実にしてくれるものかもしれません。また、それは最終的にごく僅かな数しか生産されなかった世界各地のUSVが迎えた運命から脱出させてくれる可能性もあります。

 2021年12月には、「アレス」造船所が「ウラク」シリーズAUSVの販売について欧州2か国と交渉の最終段階に入っていることが報じられました。[3]

「ウラク」AUSVは、「L-UMTAS」ATGMを4発、「ジリット」誘導ロケット弾を8発、「スングル」近距離対空ミサイルを4発、またはこれらの組み合わせを搭載できる「ヤルマン」ウェポン・ステーションを装備しています。

 「アレス」造船所と「メテクサン・ディフェンス」社によって開発された「ウラク」AUSVは2021年5月に射撃試験を成功裏に終え、世界初の運用可能なAUSVとなる名誉を獲得しました。 これに続いてASW型「ウラク」の実証試験もまもなく始まる予定です。[4]

 「アレス」造船所は年間50隻の「ウラク」USVを建造するための生産基盤を強化しており、ほかの造船所が建造するUSVの数を合計すると、トルコは年に100隻を超える(A)USVを建造できるようになるでしょう。

 全てのAUSVは前方監視型赤外線装置(FLIR)とレーダーを装備しているため、遠距離の目標を捜索・探知し、約50ノット(約92km/h)の高速で迅速に迎撃することができます。

「アレス」造船所が現時点で売り込んでいるUSV一覧

 「セフィネ」造船所の(以前に「RD09」と「NB57」と命名された)「コンステレーション」級は、世界で最初の多目的AUSVです。

 その多目的性については、1基ずつウェポン・ステーションを搭載できる2つの小型フロート(アウトリガー)を船体を追加して三胴船形態にし、合計で3基のウェポン・ステーションを搭載することによって実現されています(船体に1基、左右のフロートに各1基のウエポン・ステーションがあるということ)。

 「コンステレーション」級の典型的な装備は、25km以上の射程を持つ4本の対潜用324mm「オルカ」短魚雷と、最大で8発の対艦用「ロケットサン」製「ジリット」誘導ロケット弾、そして1基の12.7mmRWSで構成されています。また、ソナーと後部甲板に設置されたソノブイ発射機によって敵の潜水艦を探知することが可能です。

 このAUSVには「マーリン」と呼ばれる電子戦特化型が存在することも特筆うべきでしょう。

「コンステレーション」級で可能な装備の組み合わせ

 「セフィネ」造船所によって設計されたもう1つのAUSVとして「ネビュラ」級があります。同AUSVは船室だけを水面上に露出させて自身をほぼ完全に水中に潜水させるという独特な能力を持ち合わせています。

 武装は船体に格納された複数の魚雷発射管であり、同所から魚雷やASHMを発射することが可能とされています。

 この半潜水型AUSVは、水上で最大28ノット(約58.1km/h)、半潜水の状態で最大8ノット(約14.8km/h)の速度で航行可能とのことです。

 「ディアサン」造船所は、2021年12月に11m級の「USV11」と15m級の「USV15」から成る自社製UAVのラインナップを公開しました。[5]

 同造船所はナイジェリアやトルクメニスタンといった国々への艦艇の輸出でかなりの成功を収めていることから、これらの国がいつかAUSVを手に入れるために同造船所に目を向けることは十分に考えられるでしょう。

 「USV11」は1門の「ヤルマン」ウェポンステーションか12.7mm重機関銃を装着したRWSで武装することが可能で、「USV15」の場合は「ヤルマン」とRWSのどちらも2門を装備可能であり、偵察専用型も存在しています。

「ディアサン」造船所がリリースしたUSVのラインナップ

 最も新しく公開されたUSVは「ヨンジャ・オヌク」造船所によって設計された「サンジャル」級AUSVです。同造船所は、カタール、UAE、エジプトやパキスタンといった輸出先で運用されている「MRTP(Multi Role Tactical Platform)」級哨戒艇で最も知られています。

 「サンジャル」級は、船体後部に4発の「L-UMTAS」対戦車ミサイルか8発の「ジリット」誘導ロケット弾を装備した「ヤルマン」ウェポン・ステーション1基と中央に「STAMP-2」12.7mm RWS1基を装備することが可能とのことです。

「サンジャル」級AUSV

 トルコ製AUSVの小型さは、それらを空輸や陸路で容易に輸送でき、LPD(ドック型輸送揚陸艦)やLHD(強襲揚陸艦)のウェルドックから展開することさえも可能ということを示しています。

 特にトルコにとっては、「アナドル(TCG Anadolu (L-400)」LHDが固定翼UCAVとAUSVの両方を配備した世界初の艦となる可能性があるため、重要なポイントとなっていると思われます。

 また、フリゲートのような別の艦艇からも同様に、艦載クレーンを使いてAUSVを発進・回収することができます。これによってAUSVの航続距離と作戦可能範囲が大幅に拡大されると共に、水上艦がホルムズ海峡などの紛争水域を航行する際にはAUSVという形で自らを護衛する小型艇を搭載することが可能となりました。

 トルコがより大型のUSVを設計する可能性については、水上や水中での無人プラットフォームのマーケット・リーダーになることを固く決意していると思われる国であることを考慮すると、それに取り組むことが想定の範囲内にあることは当然でしょう。


※各USVの名前をクリックすると実物またはイメージ図を見ることができます。

USV - 長距離対水上戦型 (LR-ASUW)
  • 「ウラク ASUW-G/M」 (射程が220km以上ある4発の「アトマジャ」対艦ミサイルと1基の12.7mm RWSを装備)


USV - 対水上戦型 (ASUW)


USV - 対空型(AAW)
  •  「ウラク AAW」 (4発の「スングル」近距離対空ミサイルを装備) [写真・図は未公開]


USV - 対潜型 (ASW)
  • 「ウラク LT」 (1) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷と12個のソノブイを装備)
  • 「ウラク LT」 (2) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷、ソナー、1基の12.7mm RWSを装備)
  • 「ウラク HT」 (射程が50km以上ある1発の「アクヤ」533mm魚雷、2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)
  • 「ウラク MCMV」 (2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)
  • 「コンステレーション」級(NB57) (射程が25km以上ある2発の「オルカ」324mm魚雷、1門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機、20個のソノブイと1基の12.7mm RWSを装備)

 
USV - 掃海型 (MCM)
  • 「ウラク MCMV」 (1個の遠隔操作無人探査機:ROV、 2門の「ロケトサン」製対潜ロケット弾発射機と1基の12.7mm RWSを装備)


USV - 情報・監視・偵察・/ 電子戦及び妨害 (ISR & EW)


USV - 消火活動・捜索救難型




USV - スウォームUSV


USV - 洋上標的
[1] Arsenal of the Future: The Akıncı And Its Loadout https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/arsenal-of-future-aknc-and-its-loadout.html
[2] First Phase of ASELSAN’s Swarm USV Project Albatros-S Completed https://www.overtdefense.com/2021/08/10/first-phase-of-aselsans-swarm-usv-project-albatros-s-completed/
[3] Turkey set to Export ULAQ Armed USV to Europe https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/turkey-set-to-export-ulaq-armed-usv-to-europe/
[4] Turkey’s ULAQ USCV hits the target during Denizkurdu 2021 exercise https://www.navalnews.com/naval-news/2021/05/turkeys-ulaq-uscv-hits-the-target-during-denizkurdu-2021-exercise/
[5] Unmanned Surface Vehicle http://www.dearsan.com/en/products/naval-vessels/unmanned-surface-vehicle

 たものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇
 所があります。 



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2022年7月29日金曜日

旧式艦+新型兵装:トルコ製RWSがアゼルバイジャンの旧式艦に装備された



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 アゼルバイジャン海軍は、同国のほかの軍種やカスピ海に存在する他国の海軍と比較した場合、現代化の点で後れを取っています。

 その代わり、アゼルバイジャンは沿岸警備部隊の近代化に多額の資金を投じ、国境警備隊用の「スパイクNLOS」(射程25km)や「スパイクER」(射程8km)対戦車ミサイル(ATGM)を装備したイスラエルの「サール62」級哨戒艦(OPV)6隻と「シャルダグMk V」級高速哨戒艇6隻を導入しました。[1]

 興味深いことに、アゼルバイジャン海軍はどの艦艇にも対艦ミサイル(AShM)を搭載しておらず、純粋に同国が有する排他的経済水域(EEZ)の哨戒部隊として運用されています。

 この国の海軍はコルベットや高速攻撃艇を運用するのではなく、数多く存在するソ連時代の哨戒艇、揚陸艦、掃海艇を活用しているほか、1960年代に建造された「ペチャ」級フリゲートの運用も続けていますが、艦載兵装については銃砲、魚雷、対潜装備しか搭載されていません。

 ごく最近になって、海軍は国境警備隊(SBS)から多数の艦の譲渡されることで戦力が増強されました。とはいえ、これらはソ連時代の「ステンカ」級哨戒艇や対空砲から機関銃まで装備していた大型のタグボートで構成されていたことから、譲渡された艦艇は海軍が保有する艦艇数を少なくとも2倍に増やしたものの、海軍に新たな戦力をもたらすようなことは少しもありませんでした。

 現時点でAShMを搭載できる艦艇を一切保有していないアゼルバイジャン海軍は、旧式化した艦艇の一部に重火器を搭載することによって戦闘能力の向上を図ろうと試みています。

 これまでのところ、この火力向上策には、「AK-230」2連装30mm機関砲塔を第二次世界大戦時代の「70K(61-Kの艦載型)」37mm機関砲といったほかの火砲に換装したことも含まれていますが、このような策が各艦艇の火力増強に全く寄与しなかったことは一目瞭然でしょう(注:後述のとおり、「MR-104」FCSレーダーで管制可能な「AK-230」近接防御システム(CIWS)をわざわざ手動操作式の旧式機関砲に置き換えることに意味を見出すことを理解すること自体が無理に近いでしょう)。

 これとは逆に、少なくとも1隻の「ステンカ」級にトルコの「アセルサン」社「SMASH」30mm遠隔操作式銃架(RWS)を搭載するという最近の近代化事業で、旧式艦艇により合理的なアップグレードが施されるようになり始めたようです。

艦首に「SMASH」RWSを装備した「ステンカ」級(G124)

 現在のアゼルバイジャン海軍は、イスラエル製OPVと哨戒艇が就役した後のSBSから得た「G122」から「G125」までの艦番号を付与された4隻の「ステンカ」級を運用していると考えられています。

 当初、「ステンカ」級には「MR-104」火器管制レーダーによって管制された「AK-230」2連装30mm機関砲が艦首と艦尾にそれぞれ1門ずつ搭載されていましたが、少なくとも数隻はどちらかの「AK-230」を「70K」30mm対空機関砲に換装されました。現代の水準における「70K」は本来の対空用途で少しも役立つことはできませんが、迎撃された相手国の艦艇の前方に向けて警告射撃を行うには理想的な火器です。

 現在までのところ、「G124」のみが「SMASH」RWSを装備されていることが知られています。興味深いことに、艦首の「AK-230」だけでなく後部の同機関砲塔も「SMASH」RWSに置き換えられています(上の画像では前部の「AK-230」のみが「SMASH」に換装されているため、段階的に「G124」の近代化を進めているか、または別の同型艇の後部に「SMASH」を装備した可能性があるからです)。

 当然ながら、使用されていないときの「SMASH」RWSは、波や風雨から保護するために防水カバーで覆われています。[2]

艦橋上部から見た艦首部の「SMASH」RWS
艦尾に搭載された「SMASH」RWS

 「SMASH」RWSは近年では世界で最も人気がある艦載用RWSであり、クロアチア、マレーシア、カタール、バングラデシュ、フィリピン、そしてアゼルバイジャンといった国々で導入されています。

 カタールは自国の(トルコ製)巡視船の大部分に装備させるためにこのRWSを調達してきた、世界最大の「SMASH」運用国です。

 同等の「アセルサン」製RWSの大口顧客はトルクメニスタンであり、28隻の艦艇に合計で38の「STOP」25mm RWSを装備しています。また、同国は世界初の「アセルサン」製「ギョクデニズ」35mm CIWS運用国でもあります。

 トルクメニスタンによって導入された海軍艦艇といった新型兵器に装備されたことに加え、「アセルサン」社はEO/IRセンサーやRWSを含む各種兵器システムを陸・海・空のさまざまな旧式プラットフォームにインテグレートすることによって、めざましい商業的な成功も収めています。

 最近の例では、ウクライナの「モトールシーチ」社と共同で同国と潜在的な輸出顧客向けに「Mi-8/17」と「Mi-24」攻撃ヘリコプターを近代化する契約を締結しており、これは「アセルサン」社がEO/IRセンサーを供給し、東側のヘリコプターに最新のトルコ製精密誘導兵器の運用能力をインテグレートするというものです(注:ロシアのウクライナ侵攻で実現はするかは不透明な状況)。[3]

 また、トルクメニスタンが保有する「BTR-80」装甲兵員輸送車の一部に同社製の「SARP(サープ)-DUAL」RWSを搭載してアップグレードを図ったも実例もあります。[4] [5]

現時点のカスピ海で最も強力な海軍艦艇であり、「STOP」25mm RWSや「ギョクデニズ」35mm CIWSを含む多数の「アセルサン」社製艦載兵装を搭載しているトルクメニスタンのコルベット「デニズ・ハン」

 「SMASH」RWSはデュアルフィード機能のおかげで毎分200発の射撃速度を誇る「Mk44 "ブッシュマスターⅡ"」30mm機関砲を備えています。機関砲の両側面には各1つの大型弾倉があり、合計で175発の砲弾を入れることができます。

 このRWSは完全にスタビライザーで安定化されているため、荒波の中でも移動する標的に対して正確な照準が可能となっていることが特徴です。

 「STAMP」12.7mm RWSや「STOP」25mm RWSで用いられている固定式の照準システムとは対照的に、「SMASH」は安定化された独立型EO/IRセンサーを搭載しているため、システム全体を旋回させることなく標的を追尾することができる利点が特徴的と言えるでしょう。

少なくとも5か国で運用されている「SMASH」RWSの旧バージョン

 現時点で、アゼルバイジャン海軍によってさらなる「SMASH」RWSが導入される計画が存在するのかは不明です。

 SBSから多数の艦艇が移管されたことは、この国の海軍がしばらくの間は現時点で運用している艦艇で間に合わせる必要があることを示している可能性があります。したがって、対艦ミサイルを搭載した艦船でますますあふれていくカスピ海で戦力を何らかの形で維持するために、アゼルバイジャン海軍は何度も艦艇の改修を余儀なくされるかもしれません。

 少なくとも4隻の「ステンカ級」哨戒艇が就役していることから、「SMASH」RWSがその価値を誇示する機会は十分にあることは確かでしょう。

艦首に「70K」37mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G122)

 「アセルサン」社は自ら開発した製品で世界中で広幅広い成功を収めてきました。これはカスピ海も例外ではなく、今や2か国の海軍が同社の製品を装備した海軍艦艇でこの海を航海しています。

 アゼルバイジャンがいつの日か自国の海軍の近代化のためにトルコ製軍用艦艇の調達を選定したり、カザフスタンもトルコ製艦艇に投資する可能性があることを考えると、どうやらトルコ製の海軍用防衛装備品の見通しは明るいようです。

 もちろん、これらにも「アセルサン」社の製品が装備されることについて、疑う余地はないでしょう。

 「SMASH」RWSのような艦載兵装は実際に搭載された船よりも確かに目立つものではありませんが、中央アジアの国々で進められている軍の近代化を示す重要な指標であることには間違いありません。

標準装備である「AK-230」30mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G124)

[1] INFOGRAPHICS OF COAST GUARD VESSELS #4: Azerbaijan and Colombia https://www.navalanalyses.com/2017/03/infographics-of-coast-guard-vessels-4.html
[2] https://i.postimg.cc/nrqg7HvB/69.jpg
[3] Aselsan to Supply EO Targeting Pods, AAMs for Modernization of Ukraine’s Mi-8 Helicopter Fleet https://en.defence-ua.com/news/aselsan_to_supply_eo_targeting_pods_aams_for_modernization_of_ukraines_mi_8_helicopter_fleet-2004.html
[4] https://postimg.cc/HJR0QxC3
[5] SARP-DUAL Remote Controlled Stabilized Weapon System https://www.aselsan.com.tr/en/capabilities/land-and-weapon-systems/remote-controlled-weapon-systems-land/sarpdual-remote-controlled-stabilized-weapon-system

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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