著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ
2022年のロシア・ウクライナ戦争におけるロシアの兵器で海外の人々に好印象を与えることができたものはほとんどありません。これは西側諸国のシンクタンクが数十年にわたってロシアの兵器を決してその期待に応えることができない水準にまで誇張してきた結果ですが、ロシアが特定の技術にタイムリーな投資をすることができなかったため、無人戦闘航空機(UCAV)や徘徊兵器などのシステムには後発組となってしまったことも事実です。
ロシアは数多くの誘導兵器を開発してきたものの、ロシア空軍によって導入されたものはほとんどなく、彼らは主に1980年代の「Kh-25」や「Kh-29」空対地ミサイルや無誘導爆弾までも主力として使い続けているのです。ロシアの最新鋭の精密誘導爆弾(PGM)でさえ、(特に西側のPGMと比較すると)その精度が不十分であることが確認されています。
こうした傾向からの最初の逸脱が生じたのは、2022年6月に新型PGMがウクライナ兵を収容しているとされる小さな家を攻撃したことが目撃された際のことでした。[1]この攻撃で使用された空対地ミサイル(AGM)は、15km以上も離れた距離の目標を攻撃できる新開発のヘリコプター用の「イズデリエ305(LMUR)」であることがすぐに確認されました。
「LMUR」はヘリコプターによって指示された目標を攻撃するタイプのミサイルで、ミサイル・シーカーが命中するまで目標を追尾し続けている間に発射した母機が移動可能であるほか、オペレーターがデータリンクを介してミサイルを目標に誘導する方式も採用したことで遠方から発射可能となっています(注:当初は慣性誘導で飛行して途中で目標が指示されるタイプであることから、途中でミサイルの目標を変更することも可能)。
どちらの攻撃方法も、ロシア製の旧世代型ヘリコプター発射式対戦車ミサイル(ATGM)/AGMから著しく改善されています。というのも、旧世代型は目標に命中するまでの間はヘリコプターをホバリングさせなければならなかったために標的にされやすいという欠点があったからです(注:ヘリ自身の目標指示装置をミサイル命中まで目標に向け続ける必要があったため)。
「イズデリエ305」の前身である「イズデリエ79」は2014年11月に最初の量産準備に入りましたが、ロシア国防省が発射機の発注を見落としていたため、このプロジェクトは2017年に契約が打ち切られるまで中途半端な状態で放置されてしまいました。[2]
ところが、この「LMUR」プロジェクトはコーカサスでの対テロ作戦用に「Mi-8MNP-2」攻撃ヘリコプター用の長距離AGMを求めていたロシア連邦保安庁(FSB)によって救われたのです。
こうして救われた「イズデリエ305」は、FSBの「Mi-8MNP-2」やロシア空軍の「Mi-28」及び「Ka-52」攻撃ヘリコプターから、「APU-305」単発発射機や「APU-L」2連装発射機を用いて発射することができるミサイルとなりました。また、以前に「バイカル」というコードネームで呼ばれた地対地型発射機の構想もありましたが実現はしていません。[2]
LMURの大量導入は、その高額なコストによって阻まれることになる可能性が高いと思われます。2018年時点におけるロシア国防省向け「LMUR」ミサイル1発の価格は227,000ドル(約2,940万円)であり、同ミサイルの輸出型の価格がさらに高くなることは間違いないでしょう。[2]
ウクライナでは、「LMUR」は主にウクライナ軍の装備や部隊を隠していると疑われる建物、浮橋やその近くにいるウクライナの車両に対して使用された状況が確認されています。
「LMUR」は高い命中精度を誇るものの、弾頭重量が25kgしかないため、倉庫のような大きな建築物にいるウクライナ兵を無力化するには極めてラッキーな命中弾が必要となるでしょう。[3]
ロシア国防総省は2台の「HIMARS」が3階建てビルの2階で破壊されたとする証拠として「LMUR」のシーカーが捉えた映像も使用してます – トラック搭載型のロケット砲の隠れ家としては疑わしいものですが。[4]
ロシアは数多くの誘導兵器を開発してきたものの、ロシア空軍によって導入されたものはほとんどなく、彼らは主に1980年代の「Kh-25」や「Kh-29」空対地ミサイルや無誘導爆弾までも主力として使い続けているのです。ロシアの最新鋭の精密誘導爆弾(PGM)でさえ、(特に西側のPGMと比較すると)その精度が不十分であることが確認されています。
こうした傾向からの最初の逸脱が生じたのは、2022年6月に新型PGMがウクライナ兵を収容しているとされる小さな家を攻撃したことが目撃された際のことでした。[1]この攻撃で使用された空対地ミサイル(AGM)は、15km以上も離れた距離の目標を攻撃できる新開発のヘリコプター用の「イズデリエ305(LMUR)」であることがすぐに確認されました。
「LMUR」はヘリコプターによって指示された目標を攻撃するタイプのミサイルで、ミサイル・シーカーが命中するまで目標を追尾し続けている間に発射した母機が移動可能であるほか、オペレーターがデータリンクを介してミサイルを目標に誘導する方式も採用したことで遠方から発射可能となっています(注:当初は慣性誘導で飛行して途中で目標が指示されるタイプであることから、途中でミサイルの目標を変更することも可能)。
どちらの攻撃方法も、ロシア製の旧世代型ヘリコプター発射式対戦車ミサイル(ATGM)/AGMから著しく改善されています。というのも、旧世代型は目標に命中するまでの間はヘリコプターをホバリングさせなければならなかったために標的にされやすいという欠点があったからです(注:ヘリ自身の目標指示装置をミサイル命中まで目標に向け続ける必要があったため)。
「イズデリエ305」の前身である「イズデリエ79」は2014年11月に最初の量産準備に入りましたが、ロシア国防省が発射機の発注を見落としていたため、このプロジェクトは2017年に契約が打ち切られるまで中途半端な状態で放置されてしまいました。[2]
ところが、この「LMUR」プロジェクトはコーカサスでの対テロ作戦用に「Mi-8MNP-2」攻撃ヘリコプター用の長距離AGMを求めていたロシア連邦保安庁(FSB)によって救われたのです。
こうして救われた「イズデリエ305」は、FSBの「Mi-8MNP-2」やロシア空軍の「Mi-28」及び「Ka-52」攻撃ヘリコプターから、「APU-305」単発発射機や「APU-L」2連装発射機を用いて発射することができるミサイルとなりました。また、以前に「バイカル」というコードネームで呼ばれた地対地型発射機の構想もありましたが実現はしていません。[2]
LMURの大量導入は、その高額なコストによって阻まれることになる可能性が高いと思われます。2018年時点におけるロシア国防省向け「LMUR」ミサイル1発の価格は227,000ドル(約2,940万円)であり、同ミサイルの輸出型の価格がさらに高くなることは間違いないでしょう。[2]
ウクライナでは、「LMUR」は主にウクライナ軍の装備や部隊を隠していると疑われる建物、浮橋やその近くにいるウクライナの車両に対して使用された状況が確認されています。
「LMUR」は高い命中精度を誇るものの、弾頭重量が25kgしかないため、倉庫のような大きな建築物にいるウクライナ兵を無力化するには極めてラッキーな命中弾が必要となるでしょう。[3]
ロシア国防総省は2台の「HIMARS」が3階建てビルの2階で破壊されたとする証拠として「LMUR」のシーカーが捉えた映像も使用してます – トラック搭載型のロケット砲の隠れ家としては疑わしいものですが。[4]
- ロシアの「イズデリエ305(LMUR)」によって攻撃されたウクライナの兵器類の詳細について、以下の一覧を見ることができます。
- この一覧には、写真や映像によって証明可能な撃破または鹵獲された兵器類だけを掲載しています。したがって、実際に喪失した兵器類はここに記録されている数よりも多いことは間違いないでしょう。
- この一覧については、資料として使用可能な映像や動画等が追加され次第、更新されます。
- 各装備などの後の数字をクリックすると、当該装備などに対する攻撃映像や画像などを見ることができます)
- 2023年4月で当ミサイルによる戦果一覧の更新を終了しました(ウクライナ軍の損失一覧自体の更新は続きます)
装甲戦闘車(5)
- 1 MT-LB 汎用軽装甲牽引車: (1, 浮橋付近で撃破)
- 1 BMP-2 歩兵戦闘車: (1, 浮橋付近で撃破)
- 1 BTS-4 装甲回収車: (1, 浮橋付近で撃破)
- 1 IMR-2 戦闘工兵車: (1, 浮橋付近で撃破)
- 1 形式不明の歩兵機動車: (1, 浮橋付近で撃破)
車両 (2)
- 13 ビルなど: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)
- 17 倉庫: (1) (2) (3) (4) (5 と 6) (7 と 8) (9) (10) (11) (12) (13) (14 と 15) (16 と 17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25 と 26)
- 2 前哨基地: (1) (2)
- 1 テント: (1)
- 1 煙突: (1)
[1] https://twitter.com/RALee85/status/1540608481232916480
[2] Is Russia Using Its New Advanced Anti-Armor Missile In Ukraine? https://www.thedrive.com/the-war-zone/is-russia-using-its-advanced-new-anti-armor-missile-in-ukraine
[3] https://twitter.com/RALee85/status/1552903607690960897
[4] https://twitter.com/Euan_MacDonald/status/1554095299991375872
特別協力: Rob Lee 氏
※ 当記事は、2022年11月26日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳 したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した
箇所があります。
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