2023年9月30日土曜日

レプラコーン軍団:アイルランドによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

 2022年2月にロシアがウクライナへ大規模な武力侵攻を開始して以来、アイルランドは1億9000万ユーロ(約300億円)を提供することでウクライナ支援での献身ぶりを示してきました。総額のうち6,850万ユーロ(約108億円)が人道支援に充てられ、そして1億2,200万ユーロ(約192億円)が欧州平和ファシリティ(EPF)の枠組みの下での「非致死的軍事援助」に割り当てられています。[1]

 特に際立った支援としては、拡大する戦争からの影響に対処するためのアイルランド政府の取り組みとして、ウクライナから逃れてきた難民を支援するために今年は20億ユーロ(約3,150億円)という相当な額を割り当てていることが挙げられます。なお、2024年の予算ではこの額を25億ユーロ(約3,600億円)に引き上げる予定です。

 アイルランドによる貢献は非NATO加盟国としては称賛すべきものですが、日本、ニュージーランド、イスラエル、オーストラリアといった他の非NATO加盟国の支援一覧と並べてみると、比較的小規模であることは注目に値するでしょう。[2] [3] [4]

  • 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻でアイルランドがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事支援の追跡調査を試みたものです。
  • 一覧の項目は武器や支援の種類ごとに分類されています
  • この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。

個人装備
  • 200 防弾ベスト [2022年3月]

その他の装備品
  • 5,000 レーション (MRE) [2022年3月]

財政支援
  • 1.22億ユーロ(約192億円) NATOを通じての非殺傷兵器調達用の資金提供 [2022年2月から実施]

医療支援
  • アイルランド内における負傷したウクライナ兵5名のリハビリ [2022年6月]

訓練
  • 国防軍将兵30人の派遣(ウクライナ兵らに対する爆発物処理訓練用) [2023年5月以降に実施]

[1] Ireland has given Ukraine €122m in 'non-lethal military aid' and €68.5m in humanitarian support since war began https://www.independent.ie/irish-news/ireland-has-given-ukraine-122m-in-non-lethal-military-aid-and-685m-in-humanitarian-support-since-war-began/a2054820505.html
[2] Aid From Asia: Japan’s Military Support To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/09/aid-from-asia-japans-military-support.html
[3] Haka For Humanity: New Zealand’s Military Aid to Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2023/08/haka-for-humanity-new-zealands-military.html
[4] Arms From Down Under: Australia’s Aid To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/07/arms-from-down-under-australias-aid-to.html

※ この記事は2023年6月10日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。



おすすめの記事

2023年9月29日金曜日

人びとに捧げるハカ:ニュージーランドによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:シュイタン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

 ニュージーランドはウクライナから最も離れた場所に位置する国でありながら、この戦火の最中にある国への軍事援助を提供しています。この中でも特筆すべきものとしては、「L119」軽榴弾砲の操作と歩兵戦術をウクライナ兵に訓練を提供するために、ヨーロッパへ兵員を派遣したことが挙げられるでしょう。

 これまでに440人のニュージーランド国防軍(NZDF)将兵がウクライナを支援するためヨーロッパに派遣され、そのうち279人がイギリスで実施されている砲兵及び歩兵の訓練に携わりました。

 これらに加え、ニュージーランドはNATOからの要請に応じて、人員と装備を輸送するために「C-130H "ハーキュリーズ" 」輸送機」を2か月もイギリスへ展開させるという支援も実施しました(注:ニュージーランドはNATO非加盟ですがインド太平洋におけるパートナー国の一つです)。

 ウクライナの防衛力を増強させるためにニュージーランドは訓練や後方支援を実施しましたが、それ以外にも装備品の提供や武器や弾薬の調達のための財政支援も実施してきたこととから、同国がウクライナの大きな支えとなっている国の一つであると言っても過言ではありません。

  • 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻でニュージーランドがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事支援の追跡調査を試みたものです。
  • この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  • 個人や企業などの団体が寄贈したものは含まれていません。

弾薬
  •  少量の105mm榴弾(野砲の訓練用) [2022年夏]

個人装備
  • 473 ヘルメット [2022年3月]
  • 571 ボディアーマー と 1,066 専用の防弾プレート [同上]

その他の装備品
  • 40 ダイアル式照準器(「L119」軽榴弾砲用) [2022年夏]

財政支援
  • 275万ユーロ(約4.3億円) NATOを通じての非殺傷装備調達用資金の提供 [2022年3月]
  •  410万ユーロ(約6.45億円) イギリスを通じての武器弾薬調達用資金の提供 [2022年4月]
  • 230万ユーロ(約3.6億円) ウクライナ情報当局向け民間の商用衛星画像調達用資金の提供 [2022年4月]
  • 350万ユーロ(約5.5億円) NATOの信託基金を通じての非殺傷装備調達用資金の提供 [2022年6月 (約3.9億円) と 11月 (約1.6億円)]

訓練
  •  NZDF兵の派遣(ウクライナ兵への「L119」軽榴弾砲の訓練用) [2022年夏]
  •  NZDF兵の派遣(ウクライナ兵への歩兵の戦術訓練用) [2022年8月から2023年1月まで]
  • 情報分析担当者の派遣 [2022年春から2023年7月まで]

輸送支援
  •  「C-130H "ハーキュリーズ"」輸送機1機のイギリス展開 [2022年4~6月] 

※ この記事は2023年8月6日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。


おすすめの記事

2023年9月28日木曜日

カルパチアの戦友:ルーマニアによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

  1. 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてルーマニアがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されており、末尾には供与された月などが記載されています)。
  3. 機密性の関係上、一部の寄贈された武器などについて表示している数量は、あくまでも引き渡された最低限の数となっています。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。
  6. * はウクライナまたはEU諸国がルーマニアの防衛企業によって調達されたものです。

多連装ロケット砲

牽引砲

装甲兵員輸送車
  • TAB-71M [2022年11月以前に供与]

小火器

弾薬類

個人装備
  • 2,000 ヘルメット [2022年2月]
  • 2,000 防弾ベスト [同上]

その他の装備品類
特別協力: War_Noir と Ukraine Weapons Tracker (敬称略).

※ この記事は2023年8月5日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。


おすすめの記事

2023年9月27日水曜日

軍隊がなくても問題なし:アイスランドによるウクライナへの支援(一覧)

ゼレンスキー大統領と握手するカトリーン・ヤコブスドッティル首相(左)

著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

 常備軍を保有していないという点で、アイスランドはNATO加盟国の中では珍しい立場にあります。

 冷戦時代、この国ではNATOから脱退するか否かの議論が何回も交わされました。1970年代には、イギリスとの第二次、第三次タラ戦争を受けて、NATOから脱退すると脅したことすらあったのです。

 しかし、その平和主義的な特徴と、アイスランドのNATO加盟に反対していることで知られる首相がいるにもかかわらず、この島国はイラクやアフガニスタンを含むいくつかのNATO主導のミッションに平和維持要員を提供したり、NATOの空軍基地を受け入れた国でもあります。[1]

 軍備を保有していないことから、アイスランドによるウクライナへの支援の大部分は人道支援に力が注がれています。

 この国による軍事援助の例としては、貨物機をチャーターしてNATO加盟国からウクライナに軍用品を輸送したり、防寒具、EOD(爆発物処理)用装備、野戦病院の提供などが挙げられます。

 軍事援助におけるアイスランドの貢献額は約27億アイスランドクローナ(約29.6億円)に及び、経済・人道支援額については、これまでに31億アイスランドクローナ(34億円)に達しています。[2]

  1. 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻の最中にアイスランドがウクライナに供与した軍事援助及び人道支援の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は種類ごとに分類されています。
  3. この一覧には、個人及び企業からの寄贈品は含まれていません
  4. この一覧はさらなる支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各装備類の名称をクリックすると、当該装備類などの画像を見ることができます。

軍事援助

人道支援
  • 938万ユーロ(14.8億円 :国連機関及び赤十字国際委員会を通じての寄贈 [2022年/2023年]
  • 150万ユーロ(2.3億円): ウクライナへ緊急援助基金用 [同上]
  • 41万ユーロ(6,481万円): 世界銀行によるウクライナ支援用マルチドナー信託基金用 [同上]
  • 41万ユーロ(6,481万円)相当:発電機 (5) と 変圧器 (22) [同上]
  • 40.8万ユーロ(6,446万円)相当:食料品及び義足・義手 [同上]
  • 20万ユーロ(3,160万円):NATO-ウクライナ専門家育成プログラムの信託基金用[同上]

ウクライナからの難民受け入れ
  • 約2,600人のウクライナ難民(アイスランドの人口は37万5,318人)[2022年2月から]
[1] Iceland’s prime minister: “My opposition to Nato has not changed” https://www.newstatesman.com/encounter/2022/02/katrin-jakobsdottir-my-opposition-to-nato-has-not-changed
[2] War in Ukraine - Iceland's response https://www.government.is/topics/foreign-affairs/war-in-ukraine/

※ この記事は2023年7月20日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。



おすすめの記事