著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
ルーマニアは東欧のNATO加盟国で2番目に大きな軍隊を保有しているにもかかわらず、装備の大部分は冷戦時代のもので占められています。
ただし、2014年のロシアによるクリミア占領を受けて、ルーマニアは軍事力の近代化を図るためのプロジェクトを数多く実施してきました。今までに調達した中で最も重要な装備としては、ポルトガルとノルウェーからの「F-16」戦闘機を49機、アメリカからの「パトリオット」地対空ミサイルシステムを7個中隊分と「M142 "ハイマース"」54台 、「M1A2」戦車54台、そしてイスラエルからの「ウォッチキーパーX」UCAVが挙げられます。
これらの契約の一部には技術オフセット条項が含まれており、ルーマニア企業が下請け業者や部品サプライヤーとして不可欠な役割を果たすことを確実にするでしょう。
ルーマニア軍の近代化は、交渉の長期化と納期スケジュールの遅延を特徴とする大きな課題に直面しています。海軍用に計画された重要な装備の一部には4隻のコルベットがあり、ナバル・グループが率いるフランスとルーマニアの企業連合体が2019年に契約を勝ち取りました。ところが、3年も経過したにもかかわらず、ルーマニアとナバル・グループとの合意は未締結のままです。
こうした障害を克服して装備の調達先を多様化するため、ルーマニアはポーランドに習って韓国などの他国との協力を模索しており、現在では韓国との間でさまざまな種類の高度な兵器システムの調達を確保するための交渉が進行中です。
2023年4月、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領はルーマニア軍の著しい発展を発表し、2023年から始まる「加速する近代化」プランのフェーズについて明らかにしました。この近代化フェーズは、ルーマニアのGDPの2.5%に相当する60億ユーロ(約9,540円)という巨額の予算によって支えられる予定です。
特筆すべきは、この予算配分がNATOによって義務付けられている2%の基準を上回っていることでしょう。これは、ルーマニアが同盟の防衛基準に沿って軍事力を強化する取り組みに一層力を入れていることを示しています。
- 以下に列挙した一覧は、ルーマニア陸空軍によって調達される兵器類のリスト化を試みたものです。
- この一覧は重火器に焦点を当てたものであるため、対戦車ミサイルや携帯式地対空ミサイルシステム、小火器、指揮車両、トラック、レーダー、弾薬は掲載されていません。
- 「将来的な数量」は、すでに運用されている同種装備と将来に調達される装備の両方を含めたものを示しています。
- 中期近代化改修(MLU)については、当該兵器の運用能力の向上に寄与する場合にのみ掲載してます。
- この一覧は新しい兵器類の調達が報じられた場合に更新される予定です。
陸軍 - Forțele Terestre Române
戦車 (将来的な数量: 326)
歩兵戦闘車 (将来的な数量: ~600)
戦車 (将来的な数量: 326)
- 54 M1A2R [2020年代後半以降に納入] (納入の契約には4台の「M88A2」装甲回収車が含まれる) (最終的に「TR-85」及び「T-55」を更新するもの)
- 276 戦車の導入計画 [調達を検討] (最終的に「TR-85」及び「T-55」を更新するもの) [候補: 現代ロテム「K2」]
- 54 「TR-85M1 "ビゾヌル」戦車の改修計画(新型照準機、通信システムの装備を含む) [2024年に開始]
歩兵戦闘車 (将来的な数量: ~600)
- 300+ モワク「ピラーニャV (エルビット「UT30 MK 2」砲塔及び「スパイク」対戦車ミサイル装備型) [納入中]
- 298 装軌式歩兵戦闘車の導入計画 [候補: ハンファ・ディフェンス「AS21 "レッドバック"」, ラインメタル「リンクス KF41」 と GDELS「アスコッド」] (「 MLI-84」を更新するもの)
水陸両用強襲輸送車 (将来的な数量: 21)
特殊車両
- 80 モワク「ピラーニャV」の派生型 (指揮車, CBRN偵察車, 回収車,救急搬送車) [納入中]
歩兵機動車・戦術車
- 129 オシュコシュ「JLTV(M1278 重機関銃搭載車)」 [2020年代半ばに納入] (特殊部隊の「ハンヴィー」を更新するもの)
- 1,059 歩兵機動車及び9種の派生型 [調達を検討] [候補: オシュコシュ「JLTV」 と ルノー「シェルパ」]
- 50+ ポラリス「ダガー」全地形車 [2020年代半ばに納入]
火砲・多連装ロケット砲 (将来的な数量: 26 自走迫撃砲, ~200 自走砲, 100+ 多連装ロケット砲)
- 26 「スピアー」120mm自走迫撃砲(「ピラーニャV」搭載型) [納入中]
- 54 ハンファ・ディフェンス「K9 "サンダー"」155mm自走榴弾砲 [調達を検討]
- 110 装輪式自走砲 [調達を検討]
- 54 ロッキード・マーチン「M142 "ハイマース"」高機動多連装ロケット砲システム [納入中] (契約には「M57 "ATACMS"」の納入も含まれる)
防空システム(将来的な数量: 3個中隊 と 大量の発射機)
- 3 ロッキード・マーチン+レイセオン「MIM-104 "パトリオット"」地対空ミサイル中隊 [納入中] (空軍の「パトリオット」4個中隊を補完するもの)
- 短・中距離地対空ミサイルの導入計画 [調達を検討] (「CA-95」,「9K33 "オーサ"」, 「2K12 "クーブ"」を更新するもの)
無人戦闘航空機 (将来的な数量: 18)
- 18 バイカル「バイラクタルTB2」 [2020年代半ばから後半に納入] (空軍の「ウォッチキーパ-X」21 機を補完するもの)
空軍 - Forțele Aeriene Române
戦闘機 (将来的な数量: 48)
無人戦闘航空機(将来的な数量: 21)
- 21 エルビット「ウォッチキーパーX」 [2020年代半ばから後半に納入] (陸軍の「バイラクタルTB2」を補完するもの)
防空システム (将来的な数量: 4 「パトリオット」中隊 と 8 「ホーク」中隊)
- 4 ロッキード・マーチン+レイセオン「MIM-104 "パトリオット"」地対空ミサイル中隊 [納入中] (陸軍の「パトリオット」3個中隊を補完するもの)
海軍 - Forțele Navale Române
コルベット(将来的な数量: 4)
- 4 コルベットの導入計画 [調達を検討]
ミサイル艇 (F将来的な数量: 3)
- 3 「プロジェクト 1241.RE "タランタル"」級の中期近代化改修(対艦巡航ミサイル,三次元レーダー, 戦闘管理システムが対象) [2020年代半ばから後半までに完了]
潜水艦 (将来的な数量: 2)
- 2 DCNS+ナバンティア「スコルペヌ」級潜水艦 [2020年代後半に引き渡し] (かろうじて運用している「キロ」級1隻を更新するもの)
- 2 コングスベルグ「対艦打撃ミサイル(NSM) 」中隊 [2024に納入]
ヘリコプター (将来的な数量: 5)
- 2 エアバス「H215M」対水上戦用ヘリコプター [2020年代半ばに引き渡し]