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2024年1月27日土曜日

抑止力の目覚め:近年におけるルーマニアの兵器調達リスト


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 ルーマニアは東欧のNATO加盟国で2番目に大きな軍隊を保有しているにもかかわらず、装備の大部分は冷戦時代のもので占められています。

 ただし、2014年のロシアによるクリミア占領を受けて、ルーマニアは軍事力の近代化を図るためのプロジェクトを数多く実施してきました。今までに調達した中で最も重要な装備としては、ポルトガルとノルウェーからの「F-16」戦闘機を49機、アメリカからの「パトリオット」地対空ミサイルシステムを7個中隊分と「M142 "ハイマース"」54台 、「M1A2」戦車54台、そしてイスラエルからの「ウォッチキーパーX」UCAVが挙げられます。

 これらの契約の一部には技術オフセット条項が含まれており、ルーマニア企業が下請け業者や部品サプライヤーとして不可欠な役割を果たすことを確実にするでしょう。 

 ルーマニア軍の近代化は、交渉の長期化と納期スケジュールの遅延を特徴とする大きな課題に直面しています。海軍用に計画された重要な装備の一部には4隻のコルベットがあり、ナバル・グループが率いるフランスとルーマニアの企業連合体が2019年に契約を勝ち取りました。ところが、3年も経過したにもかかわらず、ルーマニアとナバル・グループとの合意は未締結のままです。

 こうした障害を克服して装備の調達先を多様化するため、ルーマニアはポーランドに習って韓国などの他国との協力を模索しており、現在では韓国との間でさまざまな種類の高度な兵器システムの調達を確保するための交渉が進行中です。

 2023年4月、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領はルーマニア軍の著しい発展を発表し、2023年から始まる「加速する近代化」プランのフェーズについて明らかにしました。この近代化フェーズは、ルーマニアのGDPの2.5%に相当する60億ユーロ(約9,540円)という巨額の予算によって支えられる予定です。

 特筆すべきは、この予算配分がNATOによって義務付けられている2%の基準を上回っていることでしょう。これは、ルーマニアが同盟の防衛基準に沿って軍事力を強化する取り組みに一層力を入れていることを示しています。 

  1. 以下に列挙した一覧は、ルーマニア陸空軍によって調達される兵器類のリスト化を試みたものです。
  2. この一覧は重火器に焦点を当てたものであるため、対戦車ミサイルや携帯式地対空ミサイルシステム、小火器、指揮車両、トラック、レーダー、弾薬は掲載されていません。
  3. 「将来的な数量」は、すでに運用されている同種装備と将来に調達される装備の両方を含めたものを示しています。
  4. 中期近代化改修(MLU)については、当該兵器の運用能力の向上に寄与する場合にのみ掲載してます。
  5. この一覧は新しい兵器類の調達が報じられた場合に更新される予定です。


陸軍 - Forțele Terestre Române

戦車 (将来的な数量: 326)

歩兵戦闘車 (将来的な数量: ~600)

水陸両用強襲輸送車 (将来的な数量: 21)

特殊車両
  • 80 モワク「ピラーニャV」の派生型 (指揮車, CBRN偵察車, 回収車,救急搬送車) [納入中]

歩兵機動車・戦術車

火砲・多連装ロケット砲 (将来的な数量: 26 自走迫撃砲, ~200 自走砲, 100+ 多連装ロケット砲)

防空システム(将来的な数量: 3個中隊 と 大量の発射機)

無人戦闘航空機 (将来的な数量: 18)


空軍 - Forțele Aeriene Române

戦闘機 (将来的な数量: 48)
  • 32 F-16A [ 2023年以降に納入] (既存の「F-16A」17機を補完するもの)
  • 48 F-35A [調達を検討] (最終的に「F-16A」を更新するもの)

無人戦闘航空機(将来的な数量: 21)

防空システム (将来的な数量: 4 「パトリオット」中隊 と 8 「ホーク」中隊)



海軍 - Forțele Navale Române

コルベット(将来的な数量: 4)
  • 4 コルベットの導入計画 [調達を検討]

ミサイル艇 (F将来的な数量: 3)
  • 3 「プロジェクト 1241.RE "タランタル"」級の中期近代化改修(対艦巡航ミサイル,三次元レーダー, 戦闘管理システムが対象) [2020年代半ばから後半までに完了]

潜水艦 (将来的な数量: 2)

掃海艇 (将来的な数量: ~7)

沿岸防衛ミサイルシステム (将来的な数量: 2個中隊)

2023年9月28日木曜日

カルパチアの戦友:ルーマニアによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

  1. 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてルーマニアがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されており、末尾には供与された月などが記載されています)。
  3. 機密性の関係上、一部の寄贈された武器などについて表示している数量は、あくまでも引き渡された最低限の数となっています。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。
  6. * はウクライナまたはEU諸国がルーマニアの防衛企業によって調達されたものです。

多連装ロケット砲

牽引砲

装甲兵員輸送車
  • TAB-71M [2022年11月以前に供与]

小火器

弾薬類

個人装備
  • 2,000 ヘルメット [2022年2月]
  • 2,000 防弾ベスト [同上]

その他の装備品類
特別協力: War_Noir と Ukraine Weapons Tracker (敬称略).

※ この記事は2023年8月5日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。


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2021年8月26日木曜日

トルコ初の装輪式装甲兵員輸送車:ヌロル・マキナ「エジデル 6×6」


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2021年4月26日に本国版「Oryxブログ」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります(本国版の記事はリンク切れ)。

 オマーンの不毛の砂漠からマレーシアの密林まで...現代では、トルコ製の装輪式装甲兵員輸送車は世界中で運用されています。

 トルコ製装甲兵員輸送車(APC)がこれらの国やバーレーンで活躍していることに加えて、現時点でほかの国々でも6x6や8x8の新型APCの調達を選定中であり、オトカ「ARMA」FNSS 「パース」がその有力な候補にしばしば挙げられています。

 それでも、トルコで初めて真に成功した装輪式APCのプロジェクトについては、それがトルコ製装輪式APCの最初の顧客であるジョージア(グルジア)へ輸出された事実があるにもかかわらず、多くの人に知られていないままです。

 それでは、今回はヌロル・マキナ社製の「エジデル 6x6」を詳しく紹介しましょう。

 トルコ語で龍を意味する「エジデル」は、これまでに世界7カ国で運用されている「エジデル・ヤルチュン」4x4 MRAPや、現時点ではカタールでのみ運用されている「NMS(ヨリュク)」4x4歩兵機動車(IMV)の製造でよく知られているヌロル・マキナ社が設計・製造しました。
 
 「エジデル」が最終的に具体化されるまでのプロセスはおそらくこの車両の最も興味深いものですが、本質的にはソ連のBTRシリーズを(非常に)漸進的に発展させたものです。

 1990年代初頭、ヌロル・マキナ社はルーマニアのROMARM社と共同で立ち上げたプロジェクト:「RN-94 6x6APC」(下の画像)の開発を通じて、防衛分野に初めて参入しました。後者はすでにAPCの設計に豊富な経験を持っており、特にソ連のBTR-60、70や80をベースにした「TAB」シリーズがよく知られています。

 最初の「RN-94」はまだルーマニアで製造されていましたが、2台目はすでにトルコで組み立てられており、その後にもう5台の試作車両の製造が続き、1999年までにさまざまなテストを受けました。このAPCには数種類の(砲塔タイプの)武器ステーションや、4発のマリュートカ対戦車誘導ミサイル(ATGM)を搭載することも可能でした。

 当初はトルコ国防省からの発注が予想されていましたが、軍内部からの要求が変化し、1999年までには、もはやトルコ陸軍で「RN-94」を導入する必要性がなくなってしまいました。結局、2005年に救急搬送型を9台購入バングラデシュが、この「RN-94」の唯一の顧客となりました。[1]

 「RN-94」の開発で得られた技術的なノウハウを活用したヌロル社による全く新しいAPCの開発がほぼ同時に開始され、そのプロジェクトの成果が最終的に「エジデル 6x6」となりました。[2]

 ROMARM社はRN-94プロジェクトから得られた経験を「Saur」シリーズのAPCに活かしましたが、結果としてどの車両も買い手がつきませんでした(注:ルーマニア軍自体はモワグ社製の「ピラーニャⅢ」を導入しています)。

 一方の隣国のジョージアでは、ミハイル・サーカシビリ大統領がアブハジアと南オセチアの分離独立地域に関してロシアと衝突する可能性を見越して、2004年以降、グルジア軍に最新の装備をさせるために巨額の資金を投入し始めました。この中にはイスラエルの「スパイダー」SAMLAR-160多連装ロケット砲、「ヘルメス450」UAVのみならずトルコの「コブラ」IMVも100台ほどが含まれています。

 それにもかかわらず、2008年8月にロシア軍が侵攻を開始した際には、これらのシステムはその猛攻撃を止めることに少しも役に立ちませんでした。

 敗北した直後、ジョージアは12日間の戦争で損失した装備を補填し、将来の脅威に対処する能力を向上させるために、改めて軍の再装備を開始しました。この期間で導入された最も重要な装備が約72台のヌロル製「エジデル 6x6」APCであり、これはジョージア陸軍と内務省で使用されているBTR-70とBTR-80装輪式APCを補完し、後に置き換えるためのものでした。 [3]

 機動性の高い「エジデル」はジョージアの機動戦のドクトリンに非常に適しており、国産の「ディドゴリ」IMVと一緒に運用されています。


 (重量が僅かに13トンを超過するBTR-80と比較すると)「エジデル 6x6」 TTZA (Taktik Tekerlekli Zırhlı Araç:戦術装輪式装甲車両 )の重量は18トンであり、舗装路での最高速度は110km/hで航続距離は約800kmです。[4]

 操舵については、6x6のために前4輪だけがステアリングされる方式となっています。

 「エジデル」の車体は装甲板で構成されているため、小火器からの射撃や砲弾の破片に対して全方位的な防御力を備えています(より高度な防御力を実現するための増加装甲も装備可能ですが、ジョージアは導入していません)。車体の底部はV字型であり、自体やIEDの爆風から2名の乗員と最大で10名の搭乗兵を保護します。[4]

 (使用すると自車の位置を一時的に隠すことができる)6基の発煙弾発射機も、追加的な防御手段としての機能を備えていると言えるでしょう・

 「エジデル」には車体後部に2基のウォータージェットが装備されているため、水上を時速9kmで推進することが可能です。[4]


 「エジデル 6x6」の武装はこのクラスのAPCとしては比較的標準的なものであり、遠隔操作式の7.62mmや12.7mm重機関銃、または40mm自動擲弾銃を装備しています(後者はジョージアで運用されている車両に装備されています)。また、「エジデル」は最大で口径90mmまでの砲を装備した、多種類にわたる遠隔操作式(砲塔型の)兵装ステーションも搭載することが可能です。

 (「RN-94」に搭載された砲塔と同型である)25mm機関砲を装備したフランスのドラガー砲塔を搭載した歩兵戦闘車(IFV)型も顧客(ジョージア?)に提案されましたが、受注されることはありませんでした。

 さらには偵察型、対戦車ミサイル搭載型、自走迫撃砲型、90mm砲を装備した火力支援車両型、救急車両型、指揮車両型、回収・工兵車両型を含むさまざまな派生型が開発されました。

 ヌロル・マキナ社は中東からの需要を予期してアラビアの砂漠で「エジデル 6x6」の試験を実施しましたが、結局はそれ以上の発注を受けることはありませんでした。その結果、今日ではジョージアがこのAPCの唯一の運用国となっています。


 「RN-94」と「エジデル 6x6」は最終的にトルコ軍に採用されませんでしたが、これらの開発から得られた経験は、オトカ「ARMA」、FNSS「パース」やBMC「ZMA」といった装輪式APCを生み出した新生トルコの防衛産業にほぼ確実に大きな恩恵をもたらしたことでしょう。
 
 今日では、トルコは陸軍と特殊作戦コマンド用に初の6x6 APCとしてFNSS「パースIII 」を受領する予定になっています。

 その一方でジョージアで運用されている「エジデル 6x6」は忘れられがちな存在ですが、決して能力が劣っているわけではありません。

 2009年に2隻のOnuk製「MRTP-33」警備艇がジョージア沿岸警備隊用に調達されたこと以外では、トルコからの大規模な武器調達は実現していません。それでもなお、ロシアの軍事行動の脅威が常にこの地域に迫っている中で、「バイラクタルTB2」のようなトルコ製の兵器がジョージア軍のウィッシュリストの上位に入っていることは間違いないでしょう。

 おそらくいつの日か、進化した兄弟たちが全ての始まりとなった車両:「エジデル 6x6」と一緒に活躍するかもしれません。
2025年前半に改訂・分冊版が発売予定です