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2024年1月1日月曜日

女王陛下とNATOのために:近年におけるデンマークの軍備調達計画(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)


 EU加盟国内で最大規模の軍隊をもたらすことになるポーランドの防衛費増額には、(少なくとも私たちの記事を通じて)多くの注目が寄せられています。[1]

 ほかのNATO加盟国もこの動きに追随しようと試みており、ルーマニアでは小規模ながらポーランドの事例と同様の野心的な再軍備計画に着手しています。これらの国々による計画上の数値を合算した場合、結果的に数千台の戦車と歩兵戦闘車(IFV)、1000門以上の自走砲(SPG)と多連装ロケット砲(MRL)が調達されることになるでしょう。.

 このような目覚ましい数字を目にすると、デンマーク、バルト三国、オランダのような小国が自国軍の大幅な近代化と能力の拡張に取り組んでいることを非常に見落とされがちとなるかもしれません。

 この中で、特にデンマークは軍備の導入プロセスを迅速化を追求しており、ヨーロッパの防衛事業として以前では考えられなかったようなペースに加速しています。(特にポーランドのような国と比較した場合)導入した兵器システムの数は決して劇的なものではありませんが、それらはそれ自体でNATOの安全保障にとって不可欠なものであり続けることに疑いを向ける余地はありません。 

 近年におけるデンマークの兵器調達事業については、完全に新しい能力を導入する一方で、冷戦終結以降に失われた能力を取り戻すことも含まれています。後者に該当するのは潜水艦(2004年)、MRL(2004年)、地対空ミサイルシステム(2005年)、戦術無人航空機(2006年)などです。

 新規に買収する兵器類の費用を捻出するためにデンマークは防衛予算を大幅に引き上げました。その規模は防衛支出を増額すべく祝日を廃止したほどにもなります。[2] [3]

 人口600万人弱のデンマーク軍は比較的小規模な軍隊です。ただし、(いずれもデンマーク王国の自治領である)フェロー諸島とグリーンランドの防衛も担う海洋国家として、同国は5隻のフリゲートと8隻の哨戒艦(OPV)からなる大規模な海軍を保有しています。

 海軍とは対照的に、デンマーク空軍における将来の戦闘機部隊は僅か27機の「F-35」戦闘機で構成される予定となっています。

 陸軍は4,000人以上の兵力を誇る1個機械化旅団を有しており、NATOの枠組みの下で緊急展開が可能です。なお、この部隊については最大4,000人の予備兵力で増強を図ることが可能となっています。さらに、必要性が生じた場合には、徴兵と志願兵という形で最大2万人の兵力を動員することができます。[4]
 
 1個機械化旅団の献身は(少なくとも武力紛争の初期段階では)それほど大したものではないと思えるかもしれません。しかし、デンマーク陸軍第1旅団は、ヨーロッパ各地の旅団よりも著しく完成されたものとなっています。

 最近、デンマークは軍の規模を拡大するのではなく、イスラエル製の「PULS」MRLや地上配備型防空システム、電子戦システムを導入して第1旅団の戦力を増強することを選択しました。

 これらのシステムは、44台の「レオパルド2A7DK」戦車、44台の「CV9035DK」IFV、300台以上の「ピラーニャV」装甲兵員輸送車、(ウクライナに寄贈された19門の「カエサル 8x8」の後継品として2023年に購入された)19門の「ATMOS 2000」自走榴弾砲で構成される部隊をカバーすることになるでしょう。

 同旅団が完全に作戦へ投入されていない場合、他のNATO軍部隊の火力を増強するために残存部隊を個別に展開させることもできます。

  デンマークによる将来的な調達には、追加の「F-35」とともに、「AGM-158B JASSM-ER」空中発射巡航ミサイル(ALCM)や「AGM-88G AARGM-ER」対レーダーミサイル(ARM)といったスタンドオフ兵器が含まれる可能性があります。

 海軍については、「イーヴァ・ヴィトフェルト」級フリゲートの兵装が「BGM-109トマホーク」巡航ミサイルの装備によって強化されるかもしれません。これは、新たな兵装を装備させることで既存の兵器システムの能力を大幅に向上させようとしているオランダの取り組みを反映たものと言えます。

 陸軍では、「ATMOS」SPGと「PULS」MRL用の精密誘導弾を(追加的に)調達することも考えられます。特にMRLは、互換性のある全ての長距離精密誘導ロケット弾という形で恩恵を与えられることになるでしょう。[5] 

 今後、デンマークの防衛力をさらに強化するためにどのような手段が講じられるにせよ、この王国がNATO加盟国としての責任から逃れるつもりはないと決心していることは確実です。

  1.   以下に列挙した一覧は、デンマーク陸海空軍によって(将来的に)調達される兵器類のリスト化を試みたものです。
  2. この一覧は重火器に焦点を当てたものであるため、対戦車ミサイルや携帯式地対空ミサイルシステム、小火器、指揮車両、トラック、レーダー、(海軍以外の)弾薬は掲載されていません。
  3. 適切と判断された場合には、各装備の分野ごとに「将来的な保有数」を示しています。この数字は、すでに運用されている同種装備と将来に調達される装備の両方を含めたものです。
  4. この一覧は新しい兵器類の調達が報じられた場合に更新される予定です


陸軍 - Hæren

歩兵戦闘車 (将来的な数量: 44)
  •  44 「CV90」の改修(新照準装置及び兵器システムの装備) [2020年代半ばに改修予定]

装甲兵員輸送車 (将来的な数量: 330+)

自走砲・多連装ロケット砲 (将来的な数量: 19 SPG, 8 MRL, 15 SPM)

防空システム

装甲工兵車両


無人航空機
  • 小型無人偵察機の導入計画 [2020年代半ば以降に就役予定]


空軍 - Flyvevåbnet

戦闘機 (Future Quantity: 27+)
  • 27 ロッキード・マーチン「F-35A」 [納入中]
  • 追加の「F-35A」 [調達を検討]

無人航空機
  • 長距離無人偵察機の導入計画 [2020年代半ばから後半に就役予定]

初等練習機



海軍 - Søværnet

水上艦
  • 4 フリゲートまたはコルベットの導入計画 [2020年代後半 または 2030年代前半に就役予定] (「テティス」級哨戒艦の後継)

その他の艦艇
  • 1 新型観測船・潜水作業支援船(海軍の潜水任務用) [2029年 または 2030年 に就役予定]
  •  小型無人艇(USV)の導入計画(水上艦搭載用) [2020年代半ばから後半に就役予定]

艦載兵装
  • 50 レイセオン「SM-2 ブロックIIIA」長距離艦対空ミサイル(「イーヴァ・ヴィトフェルト」級フリゲート用) [2021年以降に納入]
  •  レイセオン「SM-6」長距離艦対空ミサイル(「イーヴァ・ヴィトフェルト」級フリゲート用) [導入を検討]
 当記事は、2023年6月7日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。


おすすめの記事

2023年9月27日水曜日

軍隊がなくても問題なし:アイスランドによるウクライナへの支援(一覧)

ゼレンスキー大統領と握手するカトリーン・ヤコブスドッティル首相(左)

著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

 常備軍を保有していないという点で、アイスランドはNATO加盟国の中では珍しい立場にあります。

 冷戦時代、この国ではNATOから脱退するか否かの議論が何回も交わされました。1970年代には、イギリスとの第二次、第三次タラ戦争を受けて、NATOから脱退すると脅したことすらあったのです。

 しかし、その平和主義的な特徴と、アイスランドのNATO加盟に反対していることで知られる首相がいるにもかかわらず、この島国はイラクやアフガニスタンを含むいくつかのNATO主導のミッションに平和維持要員を提供したり、NATOの空軍基地を受け入れた国でもあります。[1]

 軍備を保有していないことから、アイスランドによるウクライナへの支援の大部分は人道支援に力が注がれています。

 この国による軍事援助の例としては、貨物機をチャーターしてNATO加盟国からウクライナに軍用品を輸送したり、防寒具、EOD(爆発物処理)用装備、野戦病院の提供などが挙げられます。

 軍事援助におけるアイスランドの貢献額は約27億アイスランドクローナ(約29.6億円)に及び、経済・人道支援額については、これまでに31億アイスランドクローナ(34億円)に達しています。[2]

  1. 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻の最中にアイスランドがウクライナに供与した軍事援助及び人道支援の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は種類ごとに分類されています。
  3. この一覧には、個人及び企業からの寄贈品は含まれていません
  4. この一覧はさらなる支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各装備類の名称をクリックすると、当該装備類などの画像を見ることができます。

軍事援助

人道支援
  • 938万ユーロ(14.8億円 :国連機関及び赤十字国際委員会を通じての寄贈 [2022年/2023年]
  • 150万ユーロ(2.3億円): ウクライナへ緊急援助基金用 [同上]
  • 41万ユーロ(6,481万円): 世界銀行によるウクライナ支援用マルチドナー信託基金用 [同上]
  • 41万ユーロ(6,481万円)相当:発電機 (5) と 変圧器 (22) [同上]
  • 40.8万ユーロ(6,446万円)相当:食料品及び義足・義手 [同上]
  • 20万ユーロ(3,160万円):NATO-ウクライナ専門家育成プログラムの信託基金用[同上]

ウクライナからの難民受け入れ
  • 約2,600人のウクライナ難民(アイスランドの人口は37万5,318人)[2022年2月から]
[1] Iceland’s prime minister: “My opposition to Nato has not changed” https://www.newstatesman.com/encounter/2022/02/katrin-jakobsdottir-my-opposition-to-nato-has-not-changed
[2] War in Ukraine - Iceland's response https://www.government.is/topics/foreign-affairs/war-in-ukraine/

※ この記事は2023年7月20日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。



おすすめの記事

2023年8月20日日曜日

組立不要: スウェーデンによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ
  1. 以下に列挙した一覧は、2022年からのロシアによるウクライナ侵攻の最中にスウェーデンがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されており、末尾には供与された月などが記載されています)。
  3. 一部の武器供与については機密性の関係もあるため、寄贈された武器などの数量はあくまでも最低限の数となっています。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。

地対空ミサイル(SAM)システム

自走砲 (8)

戦車 (10)

歩兵戦闘車(50+)
  • 50+ CV9040C (「バラクーダ」対赤外線偽装網を装備) [2023年6月]

工兵・支援車両など

各種車両
  • 輸送車両 [予定]


地対地ミサイル

レーダー

携帯式地対空ミサイルシステム (MANPADS) 

対戦車ミサイル

携帯式対戦車兵器

小火器

弾薬
  • €43,000,000(約68億円)相当の155mm砲弾 [2022年9月]
  • 12.7mm弾(「アウトマトゲヴェール90」対物ライフル用) [2022年半ば]
  •  砲弾(無反動砲用) [予定]
  • 40mm機関砲弾(「CV9040」用) [2023年6月以降に供与]
  • 120mm戦車砲弾(「Strv 122」用) [2023年7月以降に供与]

被服・個人装備

その他の装備品
  • 135,000 レーション(MRE) [2022年3月]
  • 予備部品(「CV9040」用) [予定]
  •  予備部品(「Strv 122」用) [同上]


※ この記事は2023年5月27日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの