2021年10月5日火曜日

トルクメニスタンの軍事パレード2021を考察:何が新しいのか?



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年9月27日に、トルクメニスタンの独立30周年記念を祝賀する軍事パレードが首都アシガバートで実施されました。

 西側や中露製の兵器システムが行進し、過去10年間にこの国が行ってきた本格的な軍事への投資を改めて浮かび上がらせています。

 それにもかかわらず、主要な新装備を誇示するという観点から見ると、新しく導入したトルコの「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)とイスラエルの「スカイストライカー」徘徊兵器を除けば、今回は比較的保守的なものでした。

 パレードの海上部門では、トルクメニスタン海軍の最新鋭コルベットであり、今のカスピ海で最も強力な艦艇である「デニズ・ハン」も登場しました(下の画像)。

 今回の軍事パレード(全編)については、ここで視聴することができます



 セルビアからのニューカマーは「ラザー3」装甲兵員輸送車(APC)でした(下の画像)。

 興味深いことに、トルクメニスタンが導入したものには、通常はBTR-80AやBTR-82A歩兵戦闘車(IFV)が搭載しているロシアの30mm機関砲を装備した「BBPU」砲塔が載せられていました。この砲塔が装備された場合、「ラザー3」は本質的にAPCというよりはむしろIFVとなります。

 「ラザー3」はトルクメニスタン陸軍に仲間入りする代わりに、迷彩パターンで示されているとおり国家保安省に就役しました。



 国家保安省が新たに導入したもう1つの車両はイスラエルのプラサン「ストームライダー」歩兵機動車(IMV)です(下の画像)。

 このIMVは、アゼルバイジャン軍で広く用いられている同社の「サンドキャット」IMVをさらに進化させたものであり、独立懸架式サスペンションを備えたモノコック構造の胴体や燃料容量の増加を含む、前モデルの設計を上回るいくつかの改善を誇っています。

 さらに、トルクメニスタンが導入したものには、7.62mm軽機関銃を装備した遠隔操作式銃架(RWS)が搭載されています。




 「ストームライダー」の列の最前部には、同じように国家安全保障省への仲間入りをしたIMVの「イヴェコLMV(Light Multirole Vehicle)」が1台だけ登場しました(下の画像)。

 過去10年間にイタリアから大量の武器や装備を導入してきたにもかかわらず(特筆すべきは、トルクメニスタンで制式採用された「ARX-160」アサルトライフルの存在)、「イヴェコLMV」は中央アジアの国で就役した最初のイタリア製装甲車となりました。



 韓国から導入した起亜「KLTV(Kia Light Tactical Vehicle)」も12台が軍事パレードに初登場し、上面に12.7mm RWSを搭載した型を含む3種類のモデルが行進しました(下の画像)。

 「KLTV」は、今年にトルクメニスタンに到着してから国境警備隊に就役したようです。

 現時点でトルクメニスタン以上にIMVを運用している国は存在せず、「KLTV」は過去10年の間に導入された15種類のIMVと一緒に運用されることになるでしょう。





 もう1つの驚くべきトルクメニスタンの装備車両の追加としては、ロシアの「カマズ-63968 タイフーン」耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)がありました(下の画像)。

 トルクメニスタン陸軍は、近年にシリアに展開したロシア軍によって戦闘デビューを果たした、この車両の最初の輸出先です。

 世界中に存在する別のMRAPとは異なり、「タイフーン」には武装が一切装備されていません。

 トルクメニスタンは歴史的にロシアの武器・装備品の大口顧客でしたが、現在では防衛装備の調達先の大半をロシアから多数の別の武器生産国に移しています。



 パレードの車両部門では、UAEから導入した多数のインカス「タイタン-DS」IMVも登場しました(下の画像)。

 この「タイタン-DS」は「ニムル」に次いでトルクメニスタン軍に就役した2番目のUAE製車両です。

 トルクメニスタン陸軍に採用されたことに加え、内務省もこの車両の受領者となりました。双方が運用している「タイタン-DS」の構成は僅かに異なっていますが、どちらの車両もオープンのキューポラに12.7mm重機関銃(HMG)を装備しています。




 ベラルーシから「T38 スティレット」地対空ミサイルシステム(SAM)を入手したと噂をされているにもかかわらず、防空戦力の部門では新型装備がほとんど見られませんでした。

 これの例外としては、中国から導入した「DWL-002」パッシブ式検知システムがありました(下の画像)。このシステムについては戦闘機サイズの空中目標の探知距離が400キロメートルと主張されており、ステルス機の追跡も可能と伝えられています。[1]

 「DWL-002」だけでなく、すでに運用されていることが知られている中国製の「YLC-2V」長距離捜索レーダーと「コルチューガ」パッシブ式レーダーも行進しました。



 「DWL-002」と一緒に行進したのは、ドイツのMAN社製トラックに搭載された新型の電子戦(EW)システムでした(下の画像)。

 この非常に高度なEWシステム自体はドイツのローデ・シュワルツ社から供給されたものであり、HF/VHF/UHFの周波数帯域における敵の通信を傍受・妨害することが可能です。

 このトラックベースのシステムは、通常の無線通信システムと最新の周波数ホッピング方式のシステムの両方を高いホッピングレートで妨害することを可能にする、広帯域の検出器と励磁器を組み合わせたものです。[2]



 パレードにおける無人航空機(UAV)部門を構成したのは、約10年前に導入されたイタリアのセレックスES「ファルコXN」3機とイスラエルの「オービター2B」2機の偵察用UAVでした。

 より最近に追加されたものとしては、「MAM-C」「MAM-L」誘導爆弾を2発ずつ翼の下に搭載した3機のトルコの「バイラクタルTB2」UCAVがあります(下の画像)。

 トルクメニスタンのTB2には、カナダの「MX-15D」やトルコのアセルサン「CATS」FLIRシステムではなく、ドイツ・ヘンゾルト社の「アルゴス-II HDT」 電子光学/赤外線・FLIRシステムが装備されています。



 イスラエルの「スカイストライカー」徘徊兵器もトルクメニスタンでデビューを果たしました(下の画像)。

 これらのシステムは、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャンによって大きな効果を挙げたものであり、同じイスラエル製のIAI「ハロップ」よりも取得価格がかなり安価のようです。

 「スカイストライカー」の調達により、トルクメニスタンは既存の無人攻撃能力を大幅に拡大することが可能となります。



 今年のパレードで登場した大部分の装備がトルクメニスタンの軍隊ですでに運用していることが以前から知られていたという事実があったにもかかわらず、展望台の前を通過する兵器システムの全体的な多様性は見応えのあるものでした。

 トルクメニスタンが毎年に多数の装備を入手していることを踏まえると、すでに私たちは間違いなく来年のパレードで登場を待っているサプライズを今から楽しみにするしかありません。

特別協力: Farooq BhaiSonny Butterworth(敬称略)

[1] DWL002 Passive Detection System https://www.metavr.com/products/3Dcontent/metavrFeaturedModel-DWL002.html
[2] Electronic Warfare https://www.rohde-schwarz.com/fi/solutions/aerospace-defense-security/defense/signal-intelligence-electronic-warfare/electronic-warfare/electronic-warfare-overview_233140.html


※ この記事は2021年10月3日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳したも
 のです。




おすすめの記事

アシガバートからのスナップショット:トルクメニスタンの軍事パレード2021(日本語)
トルクメニスタンが軍事パレードで新たに導入した「バイラクタルTB2」を披露した(英語、日本語版は後日に公開予定)
難解なAFV:トルクメニスタンのT-72UMG戦車(英語、日本語版は後日に公開予定)
小さくても命取りな存在:トルクメニスタンの高速攻撃艇(日本語)

0 件のコメント:

コメントを投稿