2021年10月11日月曜日

逃した好機: エチオピアの「Negash」中高度・長時間滞空無人機計画



著:ステイン・ミツッアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 イラン製「モハジェル-6」UCAVのエチオピアへの納入に関する新たな情報が明らかになり続けていますが、同国への配備はまだエチオピア国防軍(ENDF)の運命に逆転をもたらしてはいません。
 
 その性能はほとんど実証されておらず、(FLIR用カメラや兵装を含む)サブシステムは、中国やトルコが開発した同世代のUCAVに見られるものよりも低品質であることから、「モハジェル-6」が最終的にティグレ戦争でエチオピアを優勢に変える可能性のある重要なアセットにはなりそうもありません。

 この無人機が引き渡される以前では、「バイラクタルTB2」がシリア、リビア、ナゴルノ・カラバフで大成功を収めたことから、トルコがエチオピアにUCAVの供給者となる可能性が最も高いと存在と考えられていました。

 トルコは歴史的にエチオピアと友好関係にあり、2021年8月中旬にアビー首相がアンカラを訪問したことで、その関係性が再確認されました。

 これらの強い絆がトルコからの武器購入をもたらしたことは一度もありませんでしたが、エチオピア独自の中高度・長時間滞空(MALE)UAV計画において、トルコの企業が重要な役割を果たしたと考えられていることは全く知られていません。

 2010年頃に始動したこの非常に有望なプロジェクトは「Negash」という名前で知られていましたが、世界中のほとんどの軍事アナリストの注目から回避することができました。

 このことは、少なくともプロジェクトが始動から約5年後に中止された影響によるものではなく、本質的には同プロジェクトが不明瞭な兵器の年代記に追いやられてしまったからです。その結果として、プロジェクトを取り巻いている多くの詳細な事項は現在でもほとんど不明のままとなっています。

 入手できる少ない情報は、不幸なことにプロジェクトの全体像をさらに複雑にしています。機体の設計を担当したトルコの企業は「Milyaz」と呼ばれていたと考えられていますが、設計したUAVと同様にとらえどころがないようです(注:設計会社についても情報が見つからないということ)。

 このシステムを撮影した僅かしか存在しない画像は、その流線型のデザインが約10年後に開発が開始されたロシアのクロンシュタット社の「オリオン」UAVを彷彿とさせるものであることを明らかにしています。

 出所不明の大型FLIR装置が胴体の前部を占めており、「バイラクタルTB2」と同様に着陸装置では前脚だけが格納式となっているように見えます。

        

 同様に不明なのは、この機体が純粋な偵察用UAVとして開発されたのか、それとも武装型も計画されていたのかということです。

 後者の場合では、左右各主翼の下にそれなりに大型の爆弾・ミサイルを1発ずつ搭載できた可能性がありますが、このUAVに関する実際の情報が不足しているため、予想されるその搭載能力を断定することはできません。

 同様に、推進力や離陸重量の詳細にアクセスできなければ、運用範囲(航続距離)と最高高度も推測することしかできません。



 「Negash」プロジェクトは最終的に暗礁に乗り上げましたが、デジェン航空機械産業(DAVI)は独自に偵察用小型無人機の設計を続けました。これらの設計の大部分は、軍用に適したシステムというよりはホビードローン風のDIYプロジェクト的な手法によるものが多く、エチオピア空軍に採用される可能性はほとんどありませんでした。

 おそらく当然のことながら、ほぼ全てのUAVは最終的により現実的な兄弟と同じ運命をたどりました:プロジェクトの中止です。



 時々、エチオピアは無人機の製造で飛躍的な進歩を遂げたと主張していますが、国産UAVの製造能力を構築するという現実的な強い願望は「Negash」プロジェクトで消滅したようです。

 それにもかかわらず、2021年8月にアビー首相がトルコを訪問した後で、トルコとのつながりが有益であることが再び証明されるかもしれません。

 ENDFはティグレ人民解放戦線(TPLF)の前進を食い止めるためのアセットを必死に探し求めているので、TB2のようなトルコの無人機は迅速に入手できる可能性と魅力的な価格設定のおかげで、その最適な候補となる可能性があります。

 それでもなお、エチオピアの新しい内戦が政府軍にさらに不利な状況となって続いているため、この分野で独自の能力を獲得するチャンスを逃したことは、一部の人々にとって苦痛となっていることを疑う余地はほとんどありません。


※  この翻訳元の記事は、2021年8月20日に投稿されたものです。当記事は意訳など 
  により、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読ください。

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