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2024年2月8日木曜日

限られた予算内での近代化:ブルガリアによる兵器調達計画の概要


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 気がつくと、ブルガリアは自身が欧州連合加盟国内の最貧国として、厳しい経済状況に置かれていることに気づきました。

 この経済的苦境は、ブルガリアの軍を近代化する取り組みに多大な影響を及ぼしています。不足した予算がこの国の軍事力を現代(NATO)の水準に引き上げようとする試みを妨げており、その結果として、保有する兵器が1980年代のブルガリア軍と酷似したものとなっているのです。

 ディミタール・ストヤノフ元国防相によると、軍の近代化が遅れた結果、軍隊を現代的な水準に引き上げるために必要な予算の規模は、現時点で国内総生産(GDP)の約3~4%にまで達しています。[1]

 今のところ、そのような予算やリソースを国防分野に割り当てることが非現実的に思えますが、今後数年間でブルガリア軍はついに多くの新兵器システムを迎え入れる予定です。最も注目すべきものとしては、空軍は老朽化した「MiG-29」戦闘機と「Su-25」対地攻撃機の後継として16機の「F-16V ブロック70戦」闘機を受領し、海軍はドイツから2隻の「MMPV 90」級コルベットが引き渡されることが挙げられます。

 2023年、陸軍は4,000万ユーロ(約62億円)を上回る額の契約で国営企業のTEREMとイスラエルのエルビット社によって改修された44台の「T-72M/M1」戦車を受けとりました。[2]

 ブルガリア軍は、新たに導入するF-16の能力をさらに向上させるための対空捜索レーダーを含む、数多くの装備の調達事業を最優先事項としています。さらに、国防省は180台以上の「ストライカー」装甲兵員輸送車及び歩兵戦闘車、155mm自走砲、新型地対空ミサイルシステムの導入しようとしています。これらの購入資金については、最長で15年にわたる分割払いによって調達される予定です。[3]

 また、ブルガリアはトルコの「バイラクタルTB2」及び「アクンジュ」無人戦闘航空機の導入に関心を示していますが、これは現在の無人機戦力の不足を是正することを目的としています。

  1. 以下に列挙した一覧は、ブルガリア陸空軍によって調達される兵器類のリスト化を試みたものです。
  2. この一覧は重火器に焦点を当てたものであるため、対戦車ミサイルや携帯式地対空ミサイルシステム、小火器、指揮車両、トラック、レーダー、弾薬は掲載されていません。
  3. 「将来的な数量」は、すでに運用されている同種装備と将来に調達される装備の両方を含めたものを示しています。
  4. この一覧は新しい兵器類の調達が報じられた場合に更新される予定です。


陸軍 - Sukhopŭtni Voĭski Na Bŭlgariya

歩兵戦闘車

特殊車両
  • 155mm自走砲の導入計画


空軍 - Voennovazdushni Sili

戦闘機

無人戦闘航空機

防空システム
  • 中・長距離地対空ミサイルシステムの導入計画


海軍 - Voennomorski Sili Na Republika Balgariya

フリゲート (将来的な数量: 2 または 3)
  • 2 または 3 「ウィーリンゲン」級フリゲートの近代化改修(新型兵装及び戦闘システムの搭載を含む)[2020年代半ばから後半の間に着手]

コルベット (将来的な数量: 2)

潜水艦 (将来的な数量: 2)
  • 2 中古潜水艦の導入計画 (2011年に最後の「プロジェクト633 "ロメオ"」級潜水艦が退役した後、空白となったブルガリアの潜水艦戦力を復活させるため))

沿岸防衛ミサイルシステム
  • 新型沿岸防衛ミサイルシステムの導入計画 (「4K51 "ルベージュ"」を更新するもの)


[1] The modernization of the Bulgarian army requires 3-4% of country's GDP https://bnr.bg/en/post/101783524/the-modernization-of-the-bulgarian-army-requires-3-4-of-country-s-gdp
[2] Bulgarian T-72 upgrade expected to be completed in 2023 https://www.janes.com/defence-news/news-detail/bulgarian-t-72-upgrade-expected-to-be-completed-in-2023
[3] Modernization program of the Bulgarian army is not financially secure: Defence Minister https://bnr.bg/en/post/101775374/modernization-program-of-the-bulgarian-army-is-not-financially-secure-defence-minister
[4]https://www.navalnews.com/naval-news/2023/08/bulgarias-first-modern-corvette-launched-by-local-shipyard/

※  当記事は、2023年8月14日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。


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2023年9月30日土曜日

ウクライナの隠れた武器庫:ブルガリアによるウクライナへの軍事支援(一覧)


 ロシアとの戦争で武器庫としての役割を果たしているブルガリアは、ウクライナにとって極めて重要なライフラインとして、その存在を際立たせています。

 この国の防衛企業は前例のない役割を担っています。ウクライナによるロシアへの対抗を支援するために、同国が必要とする旧ソ連規格の弾薬を24時間体制で提供するために活動しているほどです。

 ただし、ブルガリアの工場がウクライナ支援に辛抱強く努めているにもかかわらず、ブルガリア自身は国内で生じた矛盾に直面しています。親ロシアの大統領がロシアの侵攻はキーウに責任があると主張し、ブルガリアの戦争への間接的な関与に猛烈に反対している彼の姿勢は、親ウクライナの国防相がウクライナへの援助を拡大することを目指す姿勢とは明らかに正反対です。

 結局のところ、ブルガリア指導部内では対立陣営の中間地点に結論を見いだしたようです。これには、支援に必要とされる弾薬や兵器をNATO加盟国に売却し、最終的にそれらのウクライナへの移送を手助けするという戦略的決定が含まれています。

 この入り組んだ協定の中で、ブルガリアは微妙なバランスを保っています。つまり、公式にはウクライナを非軍事的に支援する姿勢を支持する一方、ウクライナの防衛に関する取り組みには密かに貢献しているというわけです。

 このような取引から創出される収益は喜ばしい財政強化をもたらし 、ブルガリアがウクライナを支援しながら自国の経済的安定を強化するという、両国の関係を共生的なものへと効果的に変化させていくでしょう。

 ブルガリアの大統領はウクライナへの武器供与に断固として反対しているにもかかわらず、政府自体は慎重に支援を拡大しています。こうした関与の証の一つが、ウクライナに100台の「BTR-60PB」装甲兵員輸送車の供与の約束を表明したことです。こうした取り組みは単なるウクライナの防衛力強化の域を越えたものであり、戦略的な目標に支えられています: 支援の見返りとして、ブルガリアはアメリカ製兵器の導入を確実なものにしたいと切望しているのです。

 ドイツの循環的交換政策への参加を逃したブルガリアは、同様の協定を通じてアメリカの兵器システムを導入する機会を得たと考えているようです。

 アメリカの余剰兵器と"交換"することと引き換えに、その大半が旧ソ連時代のものである軍備をウクライナへ提供することで、ブルガリアは全ての(ウクライナ側の)当事者に利益をもたらす潜在的なWin-Winのシナリオへ発展させる力を秘めているかもしれません。

  1. 以下に列挙した一覧は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてブルガリアがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されており、末尾には供与された月などが記載されています)。
  3. 一部の寄贈された武器の詳細情報は機密性を帯びていることから、表示している数量はあくまでも最低限の数となっています。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. * はウクライナ、アメリカやEU諸国がブルガリア企業から調達したものを指します。
  6. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。

ジェット機
  • 14 Su-25 対地攻撃機* [2022年4月] (NATO加盟国がブルガリアから調達後、ウクライナへ引き渡し)
戦車
  • T-72M1* [2022年5月以前] (チェコがブルガリアから調達後、ウクライナへ引き渡し)

多連装ロケット砲

自走砲

牽引砲
  • D-20 152mm榴弾砲 * [2022年4月] (チェコがブルガリアから調達後、ウクライナへ引き渡し)

迫撃砲

装甲兵員輸送車

対戦車ミサイル

携帯式対戦車兵器

小火器

弾薬

個人装備
  • 2,000 ヘルメット [2022年]
  • 2,000 防弾ベスト [同上]
  • 5,000 防寒服 [2022年後半]
  • 5,000 防寒ブーツ [同上]
  • 350 医療キット [350]

その他の装備品類

技術支援
  • ウクライナの装甲車両及び装備の修理 [2022年5月から]

訓練
  • ブルガリア陸軍将兵50人の展開(ウクライナ兵の訓練用) [2023年]
  • 毎年実施する60人のウクライナ軍衛生兵への訓練 [2023年から]

特別協力: War_NoirUkraine Weapons Tracker (敬称略)

※ この記事は2023年8月13日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
 です。


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