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2022年1月30日日曜日

ティグレ戦争:いまだにエチオピア軍への物資輸送を続けるイラン機


著:Gerjon 氏が収集したデータを基にステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ が執筆 (編訳:Tarao Goo

 (6機の「翼竜Ⅰ」UCAVを輸送した後で)エチオピアへ武器や装備類を運ぶUAEの貨物便が停止したように見えるにもかかわらず、同種の貨物を運んでいると思しきイランの航空便はこの国に到着し続けています。[1] [2]

 過去1ヶ月で、「ファルス・エア・ケシュム」社の「ボーイング747-200FSCD」貨物機が5回もアディスアベバ・ボレ国際空港に着陸しました。「ボーイング747」の積載物の詳細については現時点では推測することしかできませんが、先述のフライトが2021年8月からセマラ空港に配備された2機のイラン製「モハジェル-6」UCAVに関連していることは考えられなくもないようです。[3] [4]

 ティグ戦争の流れを変えるために武装ドローン戦力を必死に求めたエチオピアは、期待を胸にして2機の「モハジェル-6」を入手することに成功しました。とはいえ、エチオピアでの運用には大きな問題があり、制御システムの問題で実際に用いることが阻害されたため、両機はすぐに駐機(放置)状態にされてしまいました。[3]

 「モハジェル-6」が抱える問題がやっと解決されたと思われるには2021年10月下旬まで時間を要したようです。2021年11月中には両機はセマラ空港の滑走路などで定期的に目撃されており、 ある程度は飛行していることが推測されています。 [5]

 「ファルス・エア・ケシュム」社は、2機の「ボーイング747-200」貨物機を世界中に数多く存在する送り先に飛ばしています。この航空会社はイラン革命防衛隊(IRGC)の傘下にある会社で、シリアに展開したイラン民兵に対する兵器類の輸送で2019年にアメリカから制裁を受けており、レバノンのヒズボラへの武器輸送にも関与していることが知られています。[6] [7]

 「ボーイング747」だけがエチオピアを頻繁に訪れるイランの航空便ではありません。「ポウヤ航空」も同様のフライトで「Il-76TD」を往来させています。この航空会社もIRGCが所有している企業であり、同様にエチオピアへの武器輸送に使用されたと考えられています。[8][9]

 私たち著者はエチオピア国防軍(ENDF)で使用されているイラン製兵器の痕跡を徹底的に調査しましたが、現時点では2機の「モハジェル-6」とその支援資機材及び弾薬だけがエチオピアで存在が確認されている唯一のイラン製兵器となっています。ENDFが空輸されたロケット砲といったほかのイラン製兵器を用いて作戦に活用していると考えるのも妥当な見方ですが、「モハジェル-6」が使用する「ガーエム」誘導爆弾の追加分を、まさにこれらの「ボーイング747」を用いて定期的に引き渡しているのでしょう。

 この数はティグレ戦争が勃発する前のイランからエチオピアへのフライト数と比較すると100%増加していますが、UAEからの119便と比較すると存在感が極めて薄いものとなっています(注:内戦前にはイランからの貨物便が全くなかった事を意味しています)。

 これまでに、UAEはエチオピアに最低でも6機に「翼竜Ⅰ」UCAVや迫撃砲弾で武装した大型のVTOL型UCAVをエチオピアに届けました。また、エチオピアも2021年10月にUAEから50台の救急車仕様のトヨタ・ランドクルーザーを供与されたことを公表しています。[11] [12][13]

エチオピア(ボレ国際空港とハラールメダ空軍基地)への貨物便の飛来回数

 この1ヶ月で現地の状況は劇的に逆転しました。衰えることなく続くドローン戦による圧力でティグレ軍部隊に首都アディスアベバへの侵攻を断念させ、拠点のティグレ州まで退却を余儀なくさせたのです。

 エチオピア側でのUCAVの配備と使用については依然として全くわかっていませんが、ティグレ戦争をUCAVが突破口を開いた紛争のリストに追加できることを示唆する理由は十分にあります。

 この偉業は少なからずエチオピア軍に(UCAVを含む)必要な武器や装備の供給を維持するため、UAEとイランによって行われた大規模な空輸を通じて達成されたものと言っても差し支えないでしょう。

 アフリカのこの地域におけるイランの武器と多岐にわたる支援の急激な拡散は、アメリカを大いに動揺させるかもしれません。イランから武器を調達した代償について、エチオピアは後でアメリカの制裁という形で支払うことになるのでしょうが、まだ目に見えてはいないようです。



[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475778475663544321
[2] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[3] Unfit For Service: Ethiopia’s Troublesome Iranian Mohajer-6 UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/unfit-for-service-ethiopias-troublesome.html
[4] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[5] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[6] U.S. lands sanctions on Iranian cargo airline https://www.freightwaves.com/news/u-s-lands-sanctions-on-iranian-cargo-airline
[7] Iran's secret weapons-smuggling air routes to Lebanon revealed by intel sources https://www.foxnews.com/world/irans-secret-weapons-smuggling-air-routes-to-lebanon-revealed-by-intel-sources
[8] https://twitter.com/search?q=%40gerjon_%20pouya&src=typed_query
[9] Pouya Air (Yas Air) https://www.iranwatch.org/iranian-entities/pouya-air-yas-air
[10] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475778475663544321
[11] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[12] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[13] The Cargo Cleared For Print: UAE Wartime Deliveries To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/the-cargo-cleared-for-print-uae-wartime.html

※  この翻訳元の記事は、2021年12月28日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。



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2017年5月5日金曜日

拡大するイランの勢力圏:イラクにおけるイラン製T-72 (1)


著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

イスラミック・ステート(IS)の戦闘員に対するイラクでの戦闘は、イラク軍とぺシュメルガによって戦われるだけではなく、イランからの大規模な支援を受けた、増加しつつあるシーア派民兵による戦闘もある。
イラクでの「レバノンのヒズボラ運動」に相当するカタイブ・ヒズボラは、間違いなく、現在のイラクに存在するすべてのシーア派民兵の中で、最も強力かつ影響力のある組織である。
これは、主にイランの資金援助や軍事援助、そして現地にいるイラン人顧問の存在のによるものである。

イランは、これらの民兵に、AM-5012.7mm対物ライフルやナシル・40mmグレネードランチャー、107mm多連装ロケット発射機(MRL)を搭載したサフィール・ジープや無反動砲、さらにはHM-20・122mmMRLまで何でも供給した。
これらの武器は全てイランで製造されたものである。
提供される兵器の量と種類は、民兵組織の規模に左右されている。

しかし、イラクに民兵が運用するイラン製戦車が存在するという噂は、今まで未確認であった。 
これらの噂は、イラン西側の国境付近を走る、無限軌道付きの車輌を搭載したトランスポーターが目撃されるたびに、世界中を早々と駆け巡った。
現在、イラクのISとの戦いに加わり、ティクリートの町から戦闘員を追放するために忙しく動くイラン製戦車についての写真による証拠が最終的に明らかにされた。


上の画像のイラン製T-72Sを見ると、155個のコンタークト1爆発反応装甲(ERA)の取り付けを可能にする留め具の存在によって、イラクのT-72 'ウラル'及びT-72M1と明確に区別できるが、この例では驚いたことにERAが皆無である。
また、この車輌(T-72S)には、発煙弾発射機がT-72M1で見られるような砲塔前部には無く、その代わりに同側面に装備されている。

このT-72Sは、最近のイラク-ロシア間で結ばれた、詳細が明らかにされていない武器取引の一部であった可能性があると論じることができたが、戦車に塗装されたイランの迷彩パターンはこの戦車の真の起源について疑う余地はないことを示している。
比較のために、パレード中のイラン製T-72S(ERA装着型)の画像を下に掲載した。
 
ティクリートの近くで撮影されたT-72Sが、イラン人によって乗り込まれたカタイブ・ヒズボラの兵器の一部であるのか、それとも実際はイラク軍で運用されているのかどうかは、現時点で不明である。
カタイブ・ヒズボラは、イラク軍によって置き去りにされた、たった1両のM1エイブラムスを運用していることが知られており、つまり、ティクリートのような町で近接戦闘を戦い抜くために不可欠な重火力の支援が不足している。
イランが、イラン軍か革命防衛隊のストックから出された、一定限度の量のT-72を供給していることは、この観点から見れば完全に筋が通っている。
内戦の最終経過でどんな影響があっても、中東やその他の地域における紛争へのイランの影響が過小評価されないことは確かである。

現在、イランはイラクから、シリア、イエメン、さらにはリビアに至るまで、多数の中東諸国に対して軍需産業を利用して影響を与えているが、その勢力圏を拡大する意図は今までより明確になっており、今後の中東政策を立案する際には、イランが過小評価されることはないと確信している。

 ※ この翻訳元の記事は、2015年3月13日に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。   

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拡大するイランの勢力圏:イラクにおけるイラン製T-72 (2)



著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

イラクにおけるイランの戦車の存在をはっきりとさせた、さらに多くの証拠写真が明らかとなった。
新しく公開された画像は、ティクリートの南にあるサーマッラーの町に到着する間に、ティクリート付近で目撃されたものと同じT-72Sと思われる戦車を写している。
イラクにおけるイラン製T-72S戦車の目撃例が初めて確認されてから、ちょうど1日後に新画像が届いた。

T-72Sはバドル軍団(注:イラクのシーア派政党、イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の軍事部門)のトップ:ハーディ・アル=アミーリーの側近であるカッセム・アル=アラジ(写真中央の人物)によって視察されている。
どこがイスラミック・ステートとの戦いでイラクを助けたのかと尋ねられたとき 、カッセム・アル=アラジ以前に「私たちはISISとの戦いにおいて、アメリカではなくイランからの支援を望んでいる」とした上で、イランについて「私たちの軍隊への支援に大きな役割を果たす」と述べた。
 
この支援には明らかにイランのT-72S戦車の譲渡も含まれており、少なくとも1台はバドル軍団の戦闘員から護衛されたイラク陸軍の戦車運搬車でサーマッラーに入った。


しかし、最初に信じられていたこととは反対に、戦車は、現在イラクで戦う、多くのシーア派民兵組織で最も影響力のあるカタイブ・ヒズボラやバドル軍団ではなく、イラク軍によって運用されている。バドル軍団内のカッセム・アル=アラジに近い情報筋は、「バドルには機械化部隊はない。 戦車はイラクのISF(イラク治安部隊)によって運用されているが、運用者はバドルの支持者かもしれない」と言った。

T-72Sは、イラクの古いT-72ウラルとT-72M1よりも先進的であるため、イラクの要員がイランでT-72Sの訓練を受けたことは妥当であると思われ、再び両国間の強い絆が示された。


Green lemon に感謝を申し上げます(注:元記事への協力であり、本件編訳とは無関係です)。

 ※ この翻訳元の記事は、2015年3月13日に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

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