2021年12月18日土曜日

運用に不向き?:エチオピアの面倒なイラン製「モハジェル-6」UCAV

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo
 
 エチオピアの首都アディスアベバに対するティグレ防衛軍の野心的な反攻は、ついに停止したようです。ただし、この状況は少なくともエチオピア政府側に中国製UCAVが大々的に配備されたことによって実現に至らせたわけではありません。

 これまでにエチオピアによって導入が確認されているUCAVとして、中国の「翼竜Ⅰ」、UAEが供与したVTOL型ドローン、そしてイランの「モハジェル-6」があります。[1] [2] [3]

 エチオピアは長年にわたって軽視されてきた空対地戦力を補うために新しく導入したUCAVに大きく依存しており、この流れは2021年の夏になって空軍に性急なUCAVの調達に乗り出すことを余儀なくさせました。

 当ブログは2021年8月初旬にエチオピアがイラン製「モハジェル-6」UCAVを入手したことについて世界で最初に報じました。 [3]

 「モハジェル-6」はエチオピア側が期待を胸にして導入されたものの、この国における運用キャリアは引き渡されてからほぼすぐに終えました。なぜならば、導入された2機は制御システムの問題で実際にエチオピア上空での飛行することが阻害されたため、すぐに駐機(放置)状態にされてしまったからです。

 この失態は間違いなくエチオピア空軍を大いに幻滅させたことでしょう。彼らのUCAVの導入が次に確認されたのは、2021年9月中旬のことでした。[1] [4]

 エチオピアが新たに導入した中国製UCAV用の武装をかろうじて手に入れるまでには、さらに1ヶ月半を要してしまいました。結局、彼らが真の武装ドローンの配備が実現したのは、それを最初に試みてから約3ヶ月後のことだったのです。[5]

 UCAV用のいかなる兵装もまだ存在しなかったことは、空軍に「翼竜Ⅰ」を用いて(代わりに爆撃する)Su-27の目標を指示させることに至りました。Su-27はさまざまな種類の無誘導爆弾しか搭載できないため、これらによる著しく精度の低い空爆で多くの民間人の犠牲がもたらされてしまいました。[6]

 注目すべき事例としては、ティグレ州の州都メケルの上空でSu-27が投下した爆弾が狙った目標を1キロメートルも外れ、何もない野原に着弾したということがありました。残念なことに、別の空爆で投下された爆弾が本来の目標を外れて民間人の居住地域に着弾するという悲劇も発生しました。[6]

 「モハジェル-6」が抱える問題がやっと解決されたと思われるには2021年10月下旬までの時間がかかったようですが、それはエチオピアに到着してから約2ヶ月半も後のことでした!

 2021年9月から11月初旬にかけて、1機または2機の「モハジェル-6」がセマラ空港の滑走路や駐機場で定期的に衛星画像で確認されており、駐機場におけるイラン製ドローンの頻繁な再配置は、今やこの機体が定期的に飛行している可能性も示しています。[7]

 ほぼ同じ頃、ティグレ軍は傭兵や技術者としてエチオピア政府を支援している外国人を追討すると脅迫しましたが、これは間違いなくエチオピアで「モハジェル-6」を運用しているイラン人オペレーターのことを言及していると思われます。[8]

2021年8月初旬、セマラ空港で新たに導入された「モハジェル-6」と地上管制ステーション(GCS)を視察するエチオピアのアビー・アハメド首相(右)

 「モハジェル-6」は最大で40kgの兵装を搭載することが可能で、これにはそれぞれ2~4発の「ガーエム-1」,「ガーエム-5」,「ガーエム-9」精密誘導爆弾(PGM)が含まれます。

 これらのPGMの軽量性がこのUAVの最大飛行高度約5,500mや12時間の滞空性能を実現させており、このUCAVの製造者:コッズ航空産業社(イラン革命防衛隊傘下の企業)は運用範囲が200キロメートルに及ぶと主張しています(注:軽いPGMの搭載は機体の性能に大きな悪影響を及ぼさないということ)。[9]

 標的探知・獲得や偵察任務用として、「モハジェル-6」には「EOAS-I-18A」FLIR装置が装備されています。[10]

「ガーエム-5」。「モハジェル-6」には最大で4発が搭載可能。

 しかし、運用可能な高度が低いために地上からの対空砲火に脆弱であり、FLIRの品質が低いことや、「モハジェル-6」自体の戦闘における実績が皆無に近いという事実から、実戦では乏しい効果をもたらす可能性があります。

 おまけに、これまでに把握されている生産数が少ないため、2年目に突入したこの戦争で「モハジェル-6」が実際に効果を発揮できるかどうかは現時点では不明です。

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

特別協力: Wim Zwijnenburg

[1] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[2] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[5] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[6] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[7] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[8] Tigrayan forces say they will 'hunt down' foreign mercenaries https://www.reuters.com/world/africa/tigrayan-forces-say-will-hunt-down-foreign-nationals-aiding-ethiopia-war-2021-11-12/
[9] https://twitter.com/brokly990/status/1256994704568258562
[10] https://twitter.com/L4RB1/status/1192650551814742016

※  この翻訳元の記事は、2021年11月18日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。


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