2021年12月3日金曜日

UAEがティグレ戦争に参戦: エミレーツの「翼竜Ⅰ」UCAVがエチオピアに配備された

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ編訳:Tarao Goo

 エチオピア政府側にアラブ首長国連邦(UAE)の無人戦闘航空機(UCAV)が展開しているという情報については、2020年11月に反政府勢力と化したティグレ州との紛争が始まって以来、ずっと推測されてきました。

 ただし、いくらかの中国製「翼竜Ⅰ」UCAVがティグレ上空での戦闘任務に就くためにエリトリアのアッサブ空軍基地から出撃しているという頻繁になされる主張については、確かな証拠によって裏付けされたことが一度もありません。

 しかし、著者がハラールメダ空軍基地の整備士から得た新たな情報は、エチオピアの空にエミレーツ(UAE)の「翼竜Ⅰ」UCAVが存在している事実をようやく明らかにしたと思われます。[1]

 UAEは(以前から噂されていた)隣国のエリトリアからの運用ではなく、Uエチオピアの首都アディスアベバ近郊に位置するハラールメダ空軍基地に少なくとも6機の「翼竜Ⅰ」を配備したようです。

 エミレーツの武装ドローンがエチオピアに配備されたのは、政府軍がティグレ軍からの脅威を阻止できない状況下で国内各地の治安状況がますます悪化する最中のことでした。

 10月初旬にエチオピア軍(ENDF)がティグレ防衛軍(TDF)に対して壊滅的な攻撃を行った後、TDFは反攻を開始して一時は首都の安全を脅かす状況までに至りました。[2]

 エチオピア政府がティグレ軍の脅威に屈服する可能性があるとの報道は間違いなくアブダビ当局に警告を与え、アラブ首長国連邦空軍(UAEAF)が保有する「翼竜Ⅰ」を即座にエチオピアへ展開させる有力な理由となった可能性があります。

 その情報筋は、最近になって少なくとも6機の「翼竜Ⅰ」とUAE軍の人員がハラールメダ空軍基地に到着したと伝えましたが、UAEがエチオピアでもUCAVを運用するかどうかはまだ明らかになっていません(UAEからENDFに譲渡される可能性があるため)。

 (譲渡される場合に)エチオピアの要員が最初に「翼竜Ⅰ」の運用に関する広範囲に渡る訓練を受ける必要があることを考慮すると、最初にUAEのオペレーターが同機を使用することは決して不自然なものではないと思われます。

 この情報筋(整備士)はハラールメダ空軍基地にあるデジェン航空工学産業(DAVI)で働いており、2021年10月初旬に当ブログが報じた、エチオピアが中国から調達した3機の「翼竜Ⅰ」の到着について筆者に正確に伝えた人物です(注:つまり、今回の件も一定の信用性があるということ)。[3]

 すでにUAEは2021年初夏の時点で2発の迫撃砲弾で武装した大型のVTOL型UCAVをエチオピア軍に引き渡していますが、自軍の「翼竜Ⅰ」を6機も配備することはエチオピア政府への支援を莫大に増やすことになります。[3] [4]

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

 UAEは「翼竜Ⅰ」と「翼竜Ⅱ」の活発的なユーザーです。両機種はイエメンやリビアでの戦闘に投入され、今までに事故やフーシ派による地対空ミサイル、そしてトルコの防空システムで少なくとも12機が失われています。[4]

 2020年1月、リビアのトリポリにある士官学校で26人の(非武装の)士官候補生が殺害された攻撃がありましたが、これはエミレーツの「翼竜Ⅰ」によるものでした。

 同年には、UAEによる「民間人の住宅、野戦病院を含む医療施設と救急車を標的にしている」武装ドローンの使用を理由に、アムネスティ・インターナショナルがアメリカにUAEへのドローンの販売を停止するように要請もしています。[5] [6] [7]
 
UAEは躊躇することなくトリポリの士官学校で整列していた士官候補生を攻撃しました

「翼竜Ⅰ」は中国で最も商業的に成功しているUCAVであり、今までに(エチオピアを含む)7つの海外の顧客によって導入されたことが確認されています。[8]

 このUCAVは空対地ミサイル(AGM)または誘導爆弾を合計で2発を搭載するために、左右の主翼にハードポイントを1つずつ備えていますが、その少なさについては、搭載できる幅広い種類の兵装でカバーすることが可能です。

 11月初旬にはエチオピアがこのUCAV用に「TL-2」AGMを調達したことが判明しました。「翼竜Ⅰ」は2連装発射機を用いた場合、このAGM最大で4発を搭載可能です(注:エチオピアが連装発射機を導入したかは不明です)。[9]
        
 UAEは「翼竜」シリーズ用に主として「AR-1」AGMを用いていることが知られています。

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

 UAEのUCAVがエチオピアに配備されたことは、追い詰められているアビー・アハメド政権に対する支援の質と量を相当に向上させるものであり、同国が法外な政治的・財務コストをかけてでも現体制の存続を保証する意思があることを示唆している可能性があります。

 2021年8月以降、UAEからエチオピアに向かう100便以上の貨物便が確認されています。その大部分がさまざまな武器・弾薬を積載しており、ある時点でこれらのドローンが含まれていたことは明らかでしょう。[10]

 仮にUAEの「翼竜Ⅰ」の配備がイエメンやリビアへの介入で知られた決意と広範囲にわたる関与に類似するものになるのであれば、ティグレ軍は注意を払うことを余儀なくされるかもしれません。

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

[1] 当然ながら、安全上の問題で身元は秘匿です。
[2] Ethiopia's Tigray crisis: Citizens urged to defend Addis Ababa against rebels https://www.bbc.com/news/world-africa-59134431
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] Tracking Worldwide Losses Of Chinese-Made UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/tracking-worldwide-losses-of-chinese.html
[5] Libya migrant attack: UN investigators suspect foreign jet bombed centre https://www.bbc.com/news/world-africa-50302602
[6] UAE implicated in lethal drone strike in Libya https://www.bbc.com/news/world-africa-53917791
[7] US urged to stop drone sales to UAE over civilian deaths in Yemen and Libya https://www.middleeasteye.net/news/amnesty-demands-us-halt-sale-drones-uae
[8] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[9] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[10] UAE Air Bridge To Ethiopia Continues Unabated - Surpassing 100 Flights https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/uae-air-bridge-to-ethiopia-continues.html

※  当記事は、2021年12月1日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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