著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
エチオピア政府と北部のティグレ州との間で勃発した戦争は、エチオピアを混乱に陥れています。この武力紛争は2020年11月から熾烈を極めており、数千人が死亡、数百万人が避難を強いられいる状況にあります。
エチオピア政府とティグレ人民解放戦線(TPLF)との間で何ヶ月にわたる緊張関係が続いていた後に、情勢が激化して戦争となったのです。
1974年から1991年までエチオピアに存在していた共産主義・社会主義政権を打倒した後、TPLFは30年近くにわたってエチオピアの権力の中心にいました。エチオピアの人口の約5%しか占めていないにもかかわらず、ティグレ人の役人は政府を支配することができました。
2014年から2016年にかけて反政府デモが相次いだ後、2018年にアビー・アハメド首相率いる新政権が発足しましたが、アビー首相はTPLFの権力を抑制しようと改革を強行し、ティグレ人を大いに動揺させました。
それに応えて、ティグレ州は独自の地方選挙を実施して緊張が高まり、緊張は敵意をむき出しにする段階まで高まりました。
この政治危機は2020年11月にTPLFの部隊がティグレ州のエチオピア軍基地を攻撃したことで、戦争に発展しました。
おそらく一般的な予想に反して、ティグレの軍隊はかなり多くの戦車や大砲を運用しており、長距離誘導ロケット砲や弾道ミサイルも保有していました。そう、あなたが読んだとおり弾道ミサイルもあるのです。
反乱軍によって弾道ミサイルが鹵獲されることは目新しいことではありませんが、彼らがそれを使用し始めることはあまり一般的ではありません。さらに稀なことはこれらが完全に別の国を対象として使用される場合ですが、それをまさにティグレ軍が行ったのです。
弾道ミサイルはティグレ州にエリトリア軍が展開したことに対抗して発射されたと報じられており、ティグレ軍はエリトリアへの攻撃が差し迫っている可能性があると警告した数時間後に、その首都アスマラへ向けて少なくとも3発のミサイルを発射しました。[1]
同じ頃、(名称がティグレ防衛軍:TDFとなった)ティグレ軍は、ティグレへのエチオピアによる空爆への報復として、バハルダールとゴンダールにあるエチオピア空軍基地に対しても中国製「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)を発射しました。[2]
2021年9月の時点でTDFはエチオピアへの攻勢を押し続けており、地域をめぐる支配権が双方に行き交っているため、紛争の終わりは未だに見えてきません。
明らかに自国の運命を変えようと試みて、エチオピアはイランから「モハジェル-6」無人戦闘航空機(UCAV)の調達を開始しました。
イラン、イスラエルや中国製のUAV飛行隊が一見して阻止できないTDFの進撃を食い止めるのに十分かどうかは不確かであることから、軍事的な打開を確実なものとするため、近い将来にエチオピアがさらに無人機を導入する状況を目にするかもしれません。
※エチオピア・TDFそれぞれの支配地域を示す紛争地域の地図は、ここで見ることができます。この地図は戦争の進行に合わせて更新されます。
- ティグレ防衛軍が運用していたことが確認された重装備の詳細な一覧は以下のとおりです。
- この一覧は入手可能な画像が追加されるに伴い、随時更新される予定です。
- この一覧には入手可能な画像や映像などの視覚的証拠で確認された装備だけを掲載しています。したがって、TDFが実際に鹵獲・運用している装備の量はここで紹介されているものよりも著しく多いはずです。
- ティグレ州はエチオピア軍が保有する重装備の大部分の本拠地となっており、その大半は2020年11月にティグレ軍の手に落ちましたが、大量の増備がエチオピア軍に奪回されたため、それらはこの一覧に加えることができませんでした。
- 全ての重装備が同時にTDFによって運用されているわけではなく、すでに戦闘で喪失したものもあります。
- 小火器や迫撃砲、トラックなどはこの一覧に含まれてはいません。
- 装備名の後に羅列してある数字をクリックすると、その装備の画像を見ることができます。
戦車 (86)
- 29 T-55: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18, 19 と 20) (21) (22)(23) (24) (25) (26) (27) (28) (29)
- 1 T-55(A)MV:(1)
- 33 T-62: (1) (2, 3 と 4) (5) (6) (7, 8 と 9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17, 18, 19 と 20) (21 と 22) (23) (24) (25) (26) (27) (28, 29 と 30) (31, 32 と 33)
- 22 T-72B: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14 と 15)(16) (17) (18) (19) (20) (21) (22)
- 1 T-72UA1: (1)
戦車回収車(1)
- 1 BTS-5B: (1)
- 26 89式A : (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14 と 15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22, 23 と 24) (25 と 26)
- 4 WZ-551 : (1) (2) (3) (4)
牽引式砲(63)
- 47 D-30「2A18」122mm榴弾砲 : (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7, 8, 9 と 10) (11, 12 と 13) (14) (15) (16) (17) (18) (19, 20 と 21) (22 と 23) (24) (25) (26, 27 と 28) (29 と 30) (31) (32) (33, 34 と 35) (36) (37) (38) (39) (40 と 41) (42) (43, 44, 45 と 46) (47)
- 9 M-46 130mm野砲: (1) (2 と 3) (4) (5) (6) (7 と 8) (9)
- 7 AH-1 155mm榴弾砲: (1) (2 と 3) (4 と 5) (6) (7)
多連装ロケット砲 (16)
- 6 63式 107mm : (1) (2) (3) (4) (5) (6)
- 7 BM-21「グラート」122mm : (1) (2) (3) (4 と 5) (6) (7) (8)
- 1 AR2 300mm : (1)
- 1 A200/M20 300mm : (1)
弾道ミサイル発射機 (1)
- 21 ZU-23 23mm機関砲: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21)
- 6 65/74式 37mm機関砲 : (1, 2, 3 と 4) (5) (6)
地対空ミサイルシステム (4陣地に13の発射機. 未使用)
- 1 P-18「スプーン・レストD」: (1)
- 2 ST86U/36D6「ティン・シールド」: (1) (2)
- 1 SNR-75「ファン・ソング」 (S-75用): (1)
- 3 SNR-125「ロー・ブロー」 (S-125用): (1) (2) (3)
[2] Two missiles target Ethiopian airports as Tigray conflict widens https://edition.cnn.com/2020/11/14/africa/ethiopia-airport-tigray-intl/index.html
※ 当記事は、2021年9月1日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳したも
のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
あります
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