著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
当記事は、2016年8月5日に本国版「Oryxブログ」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。
シリア・アラブ海軍はシリア内戦で重要な役割を果たしていないことから、シリア軍の中では疑いも無く最も知名度の低い軍種と言えるでしょう。それでも、シリア海軍は世界中の他の海軍では既にかなり前に引退している艦船を興味深い組み合わせで運用し続けています。
今回の記事は、シリア海軍の多種多様な艦船と部隊が参加した2012年の演習風景を中心に取り上げたものです。同演習はシリアが無視できない存在であることを「外の世界」へ見せ付けることを目的としたものであり、シリアの全軍種が参加しました。
シリア海軍の「ペチャIII」級フリゲートは2隻が運用されています。同フリゲートはシリア海軍の中では最大の戦闘能力を備えた艦ではありますが、対潜用に特化して設計されたものです。その結果として、この艦の潜水艦以外に対する能力は微々たるものしかありません。
シリア海軍の「ペチャIII」級フリゲートは2隻が運用されています。同フリゲートはシリア海軍の中では最大の戦闘能力を備えた艦ではありますが、対潜用に特化して設計されたものです。その結果として、この艦の潜水艦以外に対する能力は微々たるものしかありません。
この能力不足はイスラエル海軍が新型潜水艦を導入したことによって悪化しており、すでにこれらの艦は本来の役割を果たすことには役に立ちません。両艦は依然として正式に運用されてはいるものの、共にほとんどの時間をタルトゥース港の埠頭で朽ち果てながら過ごしています。
2018年4月15日にロシア海軍の演習で「アル・アッサリ(1-508)」と思われる一隻が標的艦として沈められてしまいました。引き続き、「アル・ヒラサ(2-508)」も錆び付いた状態で再び動くことなく2019年11月から2020年1月の間に退役を迎えたようです(後者の時点で衛星画像上で姿を発見できなかったことから、これも標的艦となったか解体されたものと思われれる)。[1]
下の画像では、(現在では事実上解体された)シリア海軍歩兵の兵士たちが練習艦「アル=アサド」の前でゴムボートで海岸へ移動している状況が見えます。
この練習艦は、将来の海軍を担う人材の訓練とシリア海軍歩兵のための揚陸艦として行動するという二つの役割を有しています。
老朽化した「Ka-25」を置き換えるため、80年代後半に4機の「Ka-28」が空軍に導入されました。少なくともこのうちの2機は、シリア内戦の開始直前にウクライナでオーバーホールを受けたことが確認されています。
シリアの「Ka-28」については、2015年9月にフメイミムに派遣されたロシア空軍部隊へ道を明けるために新ヘリポートへ配置転換される前まで、全4機がフメイミム/バーセル・アル=アサド国際空港を拠点としていました。
下の画像は、「SPU-35V」沿岸防衛システムの発射機から発射される「4K44 "リドゥート" 地対艦ミサイルの様子です。
下の画像は、「SPU-35V」沿岸防衛システムの発射機から発射される「4K44 "リドゥート" 地対艦ミサイルの様子です。
シリアは現代的な「K-300P "バスチオン-P"」を含む沿岸防衛システムを運用しています。この種のシステムについては過去数十年間も新規導入がありませんでしたが、それでも「K-300P」は現在でもシリア海軍で最も現代的なシステムに入ります。
シリアは北朝鮮と共に「オーサI」級ミサイル艇を運用する残り僅かの国として知られています。下の画像の船はより先進的な「オーサII級」ですが、「オーサI」級に装備された「P-15」艦対艦ミサイル用の箱形発射機と比較すると、(前者は管状の発射機のため)容易に見分けることができます。
追記:2024年12月のアサド政権崩壊に乗じて、イスラエル軍がシリア軍基地への攻撃を実施しました。この攻撃でラタキアに配備された「オーサII級」5隻が沈没・大破着底(事実上の撃破)が確認されています。[2]
当然のことながら、海軍将兵の平均年齢はシリア軍の他の軍種に比べて非常に高いものとなっています。この年齢の格差は、内戦が始まって以来の徴兵がほぼ独占的にシリア陸軍と国防軍(NDF:シリア政権の民兵組織)に集中していることで更に大きくなる可能性が否定できません。
近年におけるシリア海軍への追加装備として、2006年に6隻のイラン製「TIR-II(IPS-18)」級ミサイル艇が導入されました。
近年におけるシリア海軍への追加装備として、2006年に6隻のイラン製「TIR-II(IPS-18)」級ミサイル艇が導入されました。
北朝鮮の設計に基づいたこれらのミサイル艇は、2発の「C-802(またはヌールという名前のイラン製コピー)」対艦ミサイルを装備することが可能で、通常はラタキアの北に位置するミナト・アル=バイダ海軍基地で運用されています(注:1隻はタルトゥースに配備されていることが確認されている)。
[2] https://x.com/ZiratNews/status/1866439846736048203
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