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2023年3月18日土曜日

さらなる輸出市場の拡大:トルコがインドネシア向け哨戒艇の輸出に着手した



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 トルコが海軍の分野でほぼ自給自足の状態を成し遂げる方向に急速に進んでいることもあり、近頃では同国で設計された艦艇が世界中の海軍で運用されています。

 この野心的な努力の一環として、トルコの造船所では売り出す軍用艦艇のラインナップを常に拡大し続けているようです。2013年にトルコが現在海軍で仕様されている高速攻撃艇(FAC)を置き換える新型のFACの入札を開始した際に、30近くの国産で設計された案から選定できたことからも、同国での軍用艦の設計に関する流行の規模が決して誇張されたものではないことが証明されています。[1] [2]

 今やトルコは独自設計のヘリコプター搭載型強襲揚陸艦(LHD)からフリゲート、さらには小型潜水艦までも国内外の顧客に売り出しています。そのため、近い将来にトルコが世界最大の軍用艦艇の輸出国の1つになる可能性があることも考えられないことではありません。

 この素晴らしい偉業は少なからずとも防衛装備のほぼ全てを国産化することを意図しているトルコ政府のおかげで達成された産物です。そして、このことは、遠くないうちにトルコの造船所が輸出用の艦船を売り出す際に、艦載兵装を外国製に依存する必要がなくなることも意味します。

 20年ほど前のトルコは依然として自国の海軍のニーズを外国が設計した艦船に大きく依存しており、艦船を輸出すること自体が非現実的な夢物語だったことを考えると、今ではその状況が劇的に変化したことが一目瞭然でしょう。
 
 以前にパキスタン、カタール、UAE、インド、トルクメニスタン、ジョージア、ナイジェリア、エジプト、ウクライナに艦艇を輸出した後、今やトルコは東南アジアの新市場への進出に向けて動き出そうとしているようです。

 トルコの軍事関連メディア「サヴンマTR」のインタビューの中で、駐トルコのインドネシア大使であるラルー・ムハンマド・イクバル氏はトルコから軍用艦を調達することに関する交渉が始まったことを明らかにし、「トルコとの海軍システムに関する協力が相当な規模で増えるでしょう」と述べ、さらに「私たちは防衛産業との関係を向上させるためにより多くのことを行う必要があります...(中略)そのため、インドネシアがトルコから軍用艦を調達する可能性について、いくつかの交渉が始まったのです」とも述べました。[3]

ラルー・ムハンマド・イクバル大使(左)とイスマイル・デミル防衛産業次官(右)

 インドネシアが最初に興味を示したトルコ艦艇は、「TAIS(タイス)」造船所が設計した「KPC 65(65m級大型哨戒艇)」でした(注:「タイス」側では「LPC 65」が制式な名称とされています)。[4]

 強力なパンチ力を秘めた全長65mという大きさの船が「哨戒艇」と分類されていることについて困惑する方もいるでしょうが、本質的な問題ではないので気にしないでください。

 この「パンチ力」は76mm砲1門、2連装35mm機関砲1門、「STAMP」12.7mm リモート・ウェポン・ステーション(RWS)2基、「ロケットサン」製対潜ロケット弾発射機1門、「アトマジャ」対艦ミサイル(AShM)8発で形成されています。

 当然ながら、艦載兵装は顧客の要望に応じて変更可能であるため、インドネシアでは「アトマジャ」から(同海軍が装備している)「エクゾゼ」に変更されるかもしれません。しかし、「ロケットサン」製の対潜ロケット弾発射機は、変更されずにそのまま搭載される兵装システムの1つとなるでしょう。

 インドネシア海軍は、1992年にドイツから購入した16隻の「カピタン・パチムラ(パルヒム)」級コルベットのうち14隻を対潜艦(ASW艦)として運用し続けています。ドイツ海軍は1991年の東西ドイツ統一時に東ドイツの人民海軍から「パルヒム」級を引き継いだものの、冷戦終結後はこれらの艦艇を運用する必要性がほとんどありませんでした。

 このような理由から一気に売却された「パルヒム」級コルベットは当時のインドネシア海軍が持つ哨戒・対潜能力を著しく強化しましたが、今やソナーや兵システムが旧式化したため、更新が必要な状態となっています...それが「KPC 65」を欲した一因なのでしょう。

 インドネシアは、海軍用にまずは2隻の「KPC 65」を購入することに関心を示していると考えられています。[4]

 ラルー・ムハンマド・イクバル大使は、「私たちは防衛産業においてさらに前進し、特に海軍システムに関する協力が著しく増えるでしょう。[中略] そして、両国間での開発や共同設計も行われることになるでしょう。」とも述べました。[3]

 これは、「KPC 65」がインドネシアの要求に基づいて設計が変更されたり、同国の造船所で建造されることを意味するのかどうかはまだ不明ですが、後者は確かに妥当なものと思われます。

 

「KPC 65」の後部には多くの兵装が搭載されていることを示しています。この画像では、左から順に2門の12.7mm RWS、対艦ミサイル、対潜ロケット弾発射機、そして2連装の35mm機関砲塔が見えます。このモデルには対艦ミサイルは2発しか搭載されていません。

 現在のインドネシア海軍(TNI-AL) は、20隻程度の高速攻撃艇(FAC)から成る相当な規模の艦隊を運用しています。これらのFACの大部分はその基準からしても軽武装であり、最も多いFACである「クルリット」級は対艦ミサイルを僅か2発しか搭載していません。

 インドネシアが保有するFACで最も高性能なのは「サンパリ(KCR 60M)」級であり、同クラスは中国の「C-705」対艦ミサイルを4発、主砲として40mmまたは57mm機関砲を1門、中国製「NG-18」30mm近接防御システム(CIWS)を1門、そして対空・水上目標に用いる近接防御用20mm機関砲 1 門を装備しています。

 インドネシアは現時点で数回のバッチに分けて合計18隻の「KCR 60M」を導入することを計画しており、これまでに5隻が進水しています。[5]

 新しいバッチは、初期バッチよりもある程度の能力向上が図られる予定です。

 当初は各艇に主砲として「BAEボフォース」製「Mk.3」57mm機関砲が搭載される計画でしたが、予算上の制約で最初の2隻は代わりに同社製の40mm機関砲が搭載されました。これらは最近になってロシア製の「AU-220M」57mm RWSに交換されましたが、将来的に登場するバッチの分には当初から想定されていた「Mk.3」57mm機関砲が装備される予定となっています。[6]

「KRI トゥンバク」は主砲の位置に依然としてボフォース製40mm機関砲を装備しています
5隻目の「KCM 60M」である「KRI カパク(艦番号625)」はボフォース製「Mk.3」57mm機関砲を搭載しています。さらに、その後ろにはロシア製「AU-220M」57mm RWSを装備したばかりの「KRI サンパリ」と「KRI トゥンバク」も停泊しています。

 「タイス」造船所では、「KPC 65」に加えてトルコ初の国産ヘリコプター搭載型強襲揚陸艦(LHD)や複数のFAC、OPV、コルベット、フリゲート、揚陸艦や補給艦を含む広範囲にわたる種類の艦艇を売り出しています。

 「タイス」共同企業体には、(現在「TCG アナドル」 LHDを艤装中の)の「アナドル」造船所、「イスタンブール」造船所、「セデフ」造船所、「セフィネ」造船所、「セラ」造船所が参加しています。

 「タイス」造船所はトルコ海軍向けに数隻の大型揚陸艦や「バイラクタル」級戦車揚陸艦を建造した後に、インド向けに補給艦5隻、カタール向けに練習艦2隻と揚陸艦3隻を建造して輸出に成功しました。

 同造船所が売り出している艦艇のラインナップはここで見ることができます

「タイス」で最も先進的な見た目の「67m級高速ミサイル艇(GFMPB)」

「140m級多目的船フリゲート」は「タイス」が売り込んでいるものでは最大の水上戦闘艦です

 「タイス」造船所が「KPC 65」哨戒艇でインドネシアの市場に参入することができるとすれば、これがトルコとインドネシアの防衛協力の深化につながる可能性は十分にあり得ます。

 現在、両国は「現代型中戦車(MMWT)」プロジェクトで協力関係にあり、インドネシアはトルコ製UCAVの導入にも関心を示しています。[3]

 2021年、インドネシアは国軍を近代化するために1250億ドル(約14兆3,300億円)を投資する計画の概説をしました。同計画では、国内の防衛産業から装備類を調達することと、海外からの技術移転を確かなものとすることを優先としています。[7]

 「KPC 65」はこの計画に十分に適合しており、(「MMWT」プロジェクトで見られたように)おそらく最初のバッチはトルコで、残りはインドネシアで建造されるでしょう。

 将来的な両国の協力関係は、防衛産業の域を超越する可能性を秘めています。現在の状況はトルコのハイテク産業に、インドネシアが現在推し進めているいくつかのインフラ関連のプロジェクトに関与することを可能にする余地を残しているのです。

「FNSS」社と「PTピンダッド」社で協同開発された現代型中戦車(「カプランMT/ハリマウ)

[1] Turkish FAC-FIC Designs https://defencehub.live/threads/turkish-fac-fic-designs.558/
[2] Small But Deadly - Turkish Fast Attack Craft In Service With Turkmenistan https://www.oryxspioenkop.com/2021/03/small-but-deadly-turkish-fast-attack.html
[3] Endonezya Ankara Büyükelçisi Dr. Lalu Muhammad Iqbal: Türkiye ile Endonezya arasındaki savunma iş birliği artacak https://www.savunmatr.com/ozel-haber/endonezya-ankara-buyukelcisi-dr-lalu-muhammad-iqbal-turkiye-ile-h15336.html
[4] https://twitter.com/kimlikci_954/status/1459622498614616074
[5] Indonesia Launched Its 5th KCR-60M Fast Attack Craft https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/indonesia-launched-its-5th-kcr-60m-fast-attack-craft/
[6] https://twitter.com/Jatosint/status/1467457606637834245
[7] Indonesia reveals USD125 billion military modernisation plan https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indonesia-reveals-usd125-billion-military-modernisation-plan

  ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
    す。



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2021年7月22日木曜日

小さくても命取りな存在:トルクメニスタンの高速攻撃艇


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 カスピ海の海軍バランスを考えるとき、トルクメニスタンが最初に思い浮かぶ国ではないことはほぼ確実でしょう。それにもかかわらず、継続的な海軍の増強はこの点についてロシアと並ぶ地域有数の海軍力を持つ国に変えました。これはトルコのディアサン造船所によるところが大きく、同社はトルクメニスタン海軍が保有する現代的な艦艇のほぼ全てを供給しています。

 それらの一つが、過去10年で運用を開始した世界でも極めて数少ない高速攻撃艇(FAC)の一種である「FAC 33(上の画像)」です。(ほぼ確実に)サイズと運用者が小国のおかげで、このFACは設計された国(トルコ)以外ではほとんど知られていません。それでもなお、その滑らかなデザインと比較的軽い武装によって、同クラスの他の艦艇とは際立ったものになっています。

 33メートルという小さなサイズと搭載可能な武装は「FAC 33」をミサイル艇というよりはFACに近いものにしていますが、対艦巡航ミサイル(AShM)の登場以降はどちらの呼称もほぼ同義語になっていますので、特に問題はありません。

 (当然ながら世界最大の称号は北朝鮮が持っているため)トルコは確かに世界最大のFAC保有国ではありませんが、今日でも新型FACの設計を依然として積極的に行っている数少ない国の一つです。それらには、従来の船型から双胴船ベースのデザイン、さらには表面効果船(SES)型までのあらゆるタイプのものが含まれています。

 2013年に大統領府国防産業庁(SSB)は現在トルコ海軍で使用されているFACを置き換える新型FACの入札を開始しましたが、30近くの国内で設計された案から選定することができました。[1]

 これら全ての半分だけがトルコ型FAC計画の一部として入札に提案されましたが、これは(幅広い)設計の流行が(当局に)ほとんど過大評価されていないことを示しています。最終的には、僅かに非従来型のデザインを抑えた(しかし同等に見栄えの良い)STM社「FAC55(下の図)」をベースにした設計案が選定されました。


 トルコのFACを獲得する取り組みが始まった1年後の2014年、トルクメニスタンも新型FACの導入による自国海軍の強化を試みていました。ただし、トルコとは対照的に、すでに就役している既存の同クラスの艦艇を置き換えるのではなく、トルクメン海軍をカスピ海で最も恐るべき艦隊へと劇的に変化させることを目指した野心的な拡大計画の一環として新造艦の調達に関心を向けていたのです。

 トルクメニスタンとトルコとの間で享受されている文化的、経済的、そして軍事的に緊密な関係を考慮すると、アシガバートがその野望を実現するための計画を提示する先としてトルコに目を向けたことは自然なものでした。

 数多くあるトルコの造船会社からパートナーを選んだ結果、トルクメニスタンは最終的にディアサン造船所を選定しました。理由としては、おそらく同社がトルクメニスタンのニーズに完全に適合した幅広い種類の艦艇を売りに出していたからでしょう。

 追加的な利点として、ディアサンによって設計された艦艇のいくつかは、すでに運用面での実績があります。これらの中で最も人気があるのが2011年から16隻がトルコ海軍に配備されている「ツズラ」級哨戒艇であり、これも最終的にはトルクメニスタンで運用されている別の哨戒艇「NTPB」のベースになっています。

 2014年6月にはディアサンとの間で6隻の「FAC 33」に関する契約が結ばれました。[2] 

 最初の船は2014年7月に建造が開始され、翌2015年1月に進水して同年の7月にトルクメニスタンに引き渡されました。残りの艦艇の引き渡しは3ヶ月間隔で続き、2017年には納入が完了しました。[2]

 その後、この6隻は「SG-119 Naýza」、「SG-120 Ezber」、「SG-121 Kämil」、「SG-122 (名称不明)」、「SG-123 Galjaň」、「SG-124 Gaplaň」として、(一般的にSBSと略されるか、トルクメニスタンでは「Serhet Gullugy」と呼ばれている)国境警備隊に就役しました。

 2016年、これらの新型艦はトルクメニスタン初の共同演習「ハザル-2016」に参加しました(注:ハザルはカスピ海のテュルク語名です)。


 「FAC 33」は全長33メートルで2基のウォータージェットに動力を供給する「MTU M90」または「MTU M93L」ディーゼルエンジンを2基備えており、エンジンの選択に応じて37ノット以上または43ノット以上の速度を出すことができます。それよりも僅かに遅い速度を出した場合では、「FAC 33」の航続距離は350海里(650km)です。[3]

 「FAC 33」の艦載兵装は、艦橋前部のアセルサン社「STOP」25mm遠隔操作式銃架(RWS)、艦橋上部に(乗員用の)12.7mm重機関銃を2門、さらには艦尾に2発の「マルテMk2/N」対艦ミサイルを搭載しています。


 ディアサン造船所は(ギュルハン造船所との合弁事業で)国境警備隊とトルクメニスタン海軍の主要な供給業者となっています。

 これまでに、ディアサン造船所は(「ツヅラ」級をベースにした)「NTPB」哨戒艇10隻、「FAC 33」高速攻撃艇6隻、「FIB 15」高速介入艇10隻、27m級上陸用舟艇1隻、「HSV 41」測量船1隻、「FBF 38(別名FPF 38)人員輸送用双胴船1隻、タグボート2基をトルクメニスタンに納入しています(注:「FBF 38」はディアサン社などのウェブサイトでトルクメニスタンに納入された船の画像があります)。

 その後、2隻を除く全ての艦艇が国境警備隊に就役しましたが、これはトルクメニスタン海軍の発展が忘れ去られているというわけではありません。それどころか、海軍はさらに別の艦を全海上戦力の活動拠点であるトルクメンバシで建造中の「C92」コルベットという形でディアサン社から受け取ることになっています(注:この「C92」級は、2021年8月11日に「Deniz Han」として同国海軍に就役しました)。

 海軍と国境警備隊はこの都市にそれぞれ独自の基地と造船所を置いており、そこには「FAC 33」や大型の「NTPB」をメンテナンスしやすくするために、それらを水面から吊り上げて陸上に置く巨大なクレーンも備えています(注:海軍の基地国境警備隊の基地 の衛星画像はこちらです)。


 国境警備隊で就役しているディアサン造船所のもう一つの艦艇は、最大で40ノット以上の速度で航行可能な高速介入艇である「FIB 15」です。

 この高速艇は全長15メートルではるかに小型で軽量ですが、就役した10隻の武装は「FAC 33」と同じ「STOP」 25mmRWSが装備されています。

 その特性から、この船は海上阻止、沿岸警戒、港湾警備任務に非常に適したものになっています。

 「STOP」25mm RWSは近距離の目標と交戦するには最適な装備ですが、遠距離の敵艦を狙うには全く別の種類の武器が必要となります。FAC 33では、それはイタリアの「マルテ Mk2/N」AShM発射機を2基搭載という形でもたらされています。

 この亜音速シースキミング・ミサイルは、中間地点を通過するミッド・コースでの慣性航法と終末段階でのアクティブ・レーダー誘導を使用して、30kmを超える圏内にいる敵艦艇をターゲットにします。これは「Kh-35」「エグゾゼ」などの他の対艦ミサイルよりもはるかに短い射程ですが、このミサイルはヘリコプター発射型AshMの「マルテ Mk2/S」の派生型であることを留意しておく必要があります。[4]

 トルクメニスタンの「FAC 33」には「Mk2/N」用の単装発射機が2基しか搭載されていませんが、この発射機を二段重ね(スタック・ツイン)式に容易にアップグレードすることが可能です。この方式を用いた場合、甲板面積に影響を与えることなく「FAC 33」のミサイル搭載数が2倍となります。

 もし、このようなアップグレードがトルクメニスタンによってまだ想定されていないのであれば、これは僅かなコストで6隻の船の火力を増強するという、将来的な中間期近代化(MLU)の一環としての魅力的な選択肢になり得るでしょう。


 「FAC 33」は、高度な自動化に貢献している多機能ディスプレイを備えたコントロール・ステーションや遠隔操作式の武装を含む最先端技術を取り入れています。自動化は大幅な人員削減も可能としており、FAC33では乗員数が12名を超えないものと推定されています。


 「FAC 33」のユニークな特徴として、船尾に高速艇用の(スターン・ランプとしても知られている)スリップ・ウェイを設けていることがあります。これは船の活動範囲の拡大に大いに貢献し、不審な船の迅速な停止と検査を容易にしています。

 現代のFACの多くは後部甲板に小型ボートを搭載していますが、これらは原則としてクレーンを使って水面に降ろす必要があります:外洋での高速追尾に従事する際は降下作業が不可能となります。

 「FAC 33」は依然として比較的新しい設計ですが、ディアサン社のラインナップではすでに「FIB 33(33m級高速介入艇)」と呼ばれる新型に更新されています。航続距離と速度が向上した以外では、最も明らかな外観上の違いに船体の上部構造が延長されたことや2基の「マルテ Mk2/N」発射機の位置が船尾に変更されたことがあります。

 艦橋上部に携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の2連装発射機が新たに追加されていますが、その他の武装はFAC33と同じです(注:MANPADS発射機は後述の「FAC 43」と同様に「ミストラル」用の「SIMBAD-RC」であると思われます)。

 現在、ディアサン社が売り込んでいるFACは「FIB 33」だけではありません。「FAC 43」は基本的に「FIB 33」の大型版であり、結果としてより豊富な種類のレーダーや武装がその設計に取り入れられています。

 それに対して、「FAC 65」は全く異なる種類の設計案となっています。「FAC 65」は全長が65メートルもありますが、その長さだけでなく、8セルの「VL MICA-M」艦対空ミサイル用VLSを搭載しているという重対空兵装の点から、この船については重装備型ミサイル艇かコルベットと呼ぶことがふさわしいかもしれません。






























 少人数の乗員で運用するコンパクトな設計で驚くほど幅広い機能を提供していることから、「FAC 33」とその後継型の「FIB 33」は21世紀の多目的船という称号を大いに獲得しています。現在ではパキスタンやバングラデシュといった国が艦隊を更新している途中のため、これらのようなトルコの設計案は彼らの魅力的な採用候補となるかもしれません。

 もっと身近なところでは、カスピ海を共有するほかの国々によって深刻なほどに(水上戦力が)劣勢となっている、アゼルバイジャンやカザフスタンが有望な顧客に含まれる可能性があるでしょう。

 ひとつだけ確かなことは、この地域では約30種類の設計案が売り込まれているため、どのような条件だろうと顧客の要件を満たす艦船が常にあるということです。


[1] Turkish FAC-FIC Designs https://defencehub.live/threads/turkish-fac-fic-designs.558/
[2] IDEF 2015: Dearsan set to deliver first fast attack craft for Turkmenistan https://web.archive.org/web/20150717004314/www.janes.com/article/51221/idef-2015-dearsan-set-to-deliver-first-fast-attack-craft-for-turkmenistan
[3] 33m Attack Boat https://web.archive.org/web/20160731140456/http://www.dearsan.com/en/products/33-m-attack-boat.html
[4] Marte Mk2/N https://www.mbda-systems.com/product/marte-mk2-n/

特別協力: Hufden氏 from https://forums.airbase.ru

 ※  この記事は、2021年3月22日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。