ポーランドから230台以上の「T-72」戦車、アメリカから126門の「M777」榴弾砲、オランダから「ハープーン」対艦ミサイル(ASHM)が供与される一方で、より多くの国が各自の方法で貢献しているにもかかわらず、ウクライナへの職規模な装備の供与が見落とされがちとなっています。[1]
そのうちの1国がリトアニアです。同国はウクライナに自国がストックしている軍備を供与することの加え、地元のジャーナリストでテレビキャスターでもあるアンドリウス・タピナス氏によって立ち上げられたクラウドファンディングなどの注目すべきキャンペーンがいくつも展開されています。
タピナス氏の尽力とリトアニア国民の寛大な支援によって、「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)を購入のために約600万ユーロ(約8.5億円)を集めることに成功しました(これを受けて、製造元の「バイカル・テクノロジー」社は同UCAVを無償で寄贈することを決めました)。この実績は、2014年からウクライナ軍に(衣服や車両、ドローンといった)非致死性の軍備を提供するリトアニアの慈善組織「Blue/Yellow」のために、すでに同国の市民によって集められた2300万ユーロ(約3.2億円)に加わる偉業です。[2][3]
タピナス氏がTB2調達のために集めた数百万ドルは、大型のVTOL型UAV4機(注:エストニア・「Threod Systems」社の「EOS C VTOL」無人偵察機)や対ドローン銃、TB2用の兵装などウクライナ軍向けの別の広範にわたる物品に費やされることになりました。
民間と同様に、リトアニア軍もウクライナに対する貴重な支援の源となっています。エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国がほかのNATO加盟国よりも運用している兵器の数が著しく少ないことを考慮すると、彼らによるウクライナ軍の戦闘力を維持させる取り組みは見事なものと言えます。
2022年4月下旬にはリトアニアから寄贈された軍事援助は1億ユーロ(約142億円)に達し、追加の物資輸送も行われていると報じられています。[4] [5]
リトアニア軍はさまざまな種類の対戦車兵器や弾薬、手榴弾、小銃、車両、通信機器などに加えて、少なくとも20台の「M113」装甲兵員輸送車(APC)、120mm重迫撃砲、多数の「FIM-92 "スティンガー"」携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)もウクライナへ引き渡してきました。今後、「M113」APCが追加供与される可能性は高いようです。
リトアニア陸軍は第二次世界大戦時代の「M101」105mm榴弾砲を予備兵器として最大で54門保有していますが、(「D-30」122mm榴弾砲などの15kmに比べると)僅か11kmという射程距離の短さを考えると(アウトレンジされてしまうために)ウクライナで使用するには適していないと思われます。
タピナス氏がクラウドファンディングで集めた資金で調達した6機のエストニア製「EOS C VTOL」UAVのうちの1機。これらはリトアニアの死の女神にちなんで「Magyla(マギラ)」と命名されました。 |
- 以下の一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の直前と最中にリトアニアがウクライナに供与したか、または供与を約束した軍事装備の追跡調査を試みたものです。
- 以下の項目は、兵器類の種類ごとに分類されています(名前の前にある旗は当該装備の原産国を示すものです)。また、一部の武器供与に伴う機密性のため、供与された武器の数はあくまでも最低限の数が判明しているものを表示しています。
- このリストは、さらなる軍事支援の表明や判明に伴い更新される予定です。
- 各兵器などの名前をクリックすると、当該兵器類の画像が表示されます。画像が無い場合は供与について公式に言及した情報源が表示されます。
ヘリコプター
- 2 Mi-8 汎用ヘリコプター [2023年8月以前に供与]
無人戦闘航空機(UCAV)
- 1 バイラクタルTB2 (リトアニア国民がクラウドファンディングで資金調達したもの。その後、メーカーの「バイカル・テクノロジー」社からリトアニアに無償で提供され、集まった600万ユーロは別の支援に転用)) [2022年7月]
- 37 WBエレクトロニクス「ウォーメイト」 [2022年後半] (リトアニア国民がクラウドファンディングで資金調達したもの)
- 18 UJ-23「トパーズ」 [2022年/2023年] (同上)
無人偵察機
- 7 EOS C VTOL (5月上旬にクラウドファンディングで2機、TB2調達クラウドファンディングで集めた資金でさらに5機を調達) [2022年6月]
- ''ドローン'' [予定]
地対空ミサイルシステム (SAM)発射機
- 2 NASAMS用発射機 [予定]
- 「FIM-92 "スティンガー"」 [2022年2月]
- 36 ボフォース「L70」40mm対空機関砲 [2023年2月以降に供与]
牽引砲
- 18 M101 105mm榴弾砲 [2022年9月]
自走迫撃砲
- 12 「パンツァーメーザー」120mm自走迫撃砲(M113の派生型) [2022年11月]
重迫撃砲
- 18 120mm重迫撃砲 [2022年4月]
装甲戦闘車両 (AFV)
- 72 M113 装甲兵員輸送車 及び M577 移動指揮車 [2022年6月から供与開始]
非装甲戦闘車両
- 10 軍用トラック [2022年6月]
- 10 三菱「L200」 (地雷除去任務用) [同上]
- 6+ ランドローバー「ディフェンダー」 [2023年4月]
- アークティック・トラックス「AT42(トヨタ製ランドクルーザーがベースのもの)」 [予定]
レーダー
- 16 RADA「ieMHR」戦術3次元レーダー [2023年4月以降に引き渡し] (リトアニア国民によるクラウドファンディングで調達されたもの)
- 対戦車兵器 [2022年3月]
- 23,000 アサルトライフル及び機関銃 [2022年3月以降に供与]
- 短機関銃 [同上]
- 4,000 拳銃 [2022年]
- ~1,300 擲弾発射機 [同上]
- 手榴弾 [2022年3月]
弾薬
- 155mm砲弾(「PzH2000」自走砲用) [2022年12月以降に供与]
- 4,500,000 小火器用弾薬 [2023年8月]
- 数千 RPG用弾頭 [予定]
その他の装備品
- クラウド型情報協調システム 「マギラ700」 (「EOS C VTOL」用) [引き渡し予定]
- 35,000セット 防寒服 [2022年9月以降に供与]
- 詳細不明の対ドローン兵器 [2022年3月か4月 と 同年6月]
- サーマルイメージャー [同上]
- 通信機器 [2022年3月]
- レーション(MRE) [2023年4月]
[1] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html
[2] Go-Fund Ukraine: Baykar Tech Donates TB2 For Ukraine After Lithuanian Crowdfunder https://www.oryxspioenkop.com/2022/06/go-fund-ukraine-lithuania-raises-funds.html
[3] Let your money fight https://blue-yellow.lt/en#about-us
[4] JAV inicijuotame pasitarime dalyvavęs A. Anušauskas: esame pasiryžę visokeriopai prisidėti prie ilgalaikio Ukrainos ginkluotųjų pajėgų stiprinimo https://kam.lt/lt/naujienos_874/aktualijos_875
[5] https://twitter.com/a_anusauskas/status/1534218840493768704
※ 当記事は、2022年6月17日に「Oryx」本国版(英語版)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
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