著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
トルクメニスタンは、世界各国から導入した多種多様な装甲戦闘車(AFV)から構成される戦力を保有しています。興味深いことに、これらの導入の多くは実際に正真正銘の軍事的に必要とされる装備を充実させるというよりも、特定の国との関係を強化する意図から行われているようです。
この「武器の買収を通じた友好」政策は、ますます複雑化する兵站システムに負担をもたらしており、今やトルクメニスタンの歩兵機動車(IMV)だけのために10数カ国からスペアパーツを調達しなければならなくなったのです!
最近のAFVのサプライヤーの1つはセルビアであり、2021年にトルクメニスタンへ詳細不明の数の8x8「ラザー3」歩兵戦闘車(IFV)を供給しました。
トルクメニスタンが膨大な数のIMV群を保有しているのと同様に、「ラザー3」の導入もセルビアとの政治的な結びつきを強化するための試みである可能性があります。なぜならば、トルクメニスタンはすでに同種の装甲兵員輸送車(APC)やIFVを複数保有しているからです。この中には「BTR-80A」 IFVや大量の「BTR-70」と「BTR-80」 APCが含まれており、その多くは最近にウクライナとトルコによってアップグレードされました。[1] [2]
トルクメニスタンの「ラザー3」には、12.7mm重機関銃を備えた遠隔操作式銃架(RWS)やセルビア国産の砲塔ではなく、通常は「BTR-80A」に搭載されているロシアの「MB2」外装式砲塔(30mm機関砲)が装備されています。この砲塔を装備したことによって、「ラザー3」は実質的にはAPCではなくIFVとなりました(注:本来、「ラザー3」はAPCに分類されています)。
車体のエンブレムやデジタル迷彩パターンに用いられている色が示しているとおり、このIFVは予想に反してトルクメニスタン陸軍ではなく国家保安省で運用が開始されました。
トルクメニスタンによる「ラザー3」の導入が最初に報じられたのは2021年初頭のことでした。[3]
しかし、「ラザー3」を本当に調達したという証拠が最初に公開されたのは、2021年9月に行われたトルクメニスタン独立30周年記念パレードに2台が登場した際のことでした。つまり、調達情報がリリースされてから数ヶ月以上の時間がかかってようやく事実が確認されたということです。[4]
トルクメニスタンが導入した正確な数は現在時点では不明のままです。「MB2」砲塔を装備している以外でトルクメニスタンの「ラザー3」で判明していることは、国家保安省に納入された最初のIFVということだけです(ちなみに、同IFVは8人の兵員とその装備を収容することが可能です)。
また、国家保安省が新たに導入した別の車両には、イスラエルのプラサン「ストームライダ」IMVがあります。[3]
さらに、2021年にはイヴェコ「LMV(Light Multirole Vehicle)」IMVもこの機関に導入されたことが確認されました。[5]
そして同省ではユーロコプタ「EC145」とロビンソン「R44」ヘリコプターも多数運用しており、大規模な装備調達の流れが近いうち減速する兆候は見られません。
トルクメニスタンの国境警備隊や内務省も同様に、膨大な量の重火器や航空機、さらには艦艇も運用しています。
1台のイヴェコ「LMV」と複数のプラサン「ストームライダー」の後に2台の「ラザー3」が続く(トルクメニスタン独立30周年記念パレードにて) |
「ラザー3」はセルビアの「ユーゴインポート SDPR」によって設計・開発されたAFVファミリーの最新型です。この車両は幅広いミッションに対応可能なAPCやIFV、そして装甲救急車両として設計されたものであり、「RALAS」長距離多目的ミサイルを8発搭載したバージョンさえ存在します。
(トルクメニスタン以外で)「ラザー3」を導入しているのはセルビアだけであり、陸軍の歩兵大隊と国家憲兵隊用に数十台程度の車両が調達されました。これらには「MB2-03」30mm機関砲塔か12.7mm重機関銃装備型RWSが搭載されています。
また、セルビアは独自に設計した「ケルベル」20mm機関砲装備型RWSとロシアの「32V01」30mm機関砲装備型 RWSも新たに調達した「ラザー3」へ搭載しました。[6]
最近になって潜在的な顧客に売り込み始めた別の兵装システムは、「M53/59 "プラガ" 」30mm機関砲2門と「ノヴァ」対戦車ミサイル4発を搭載しています(下の画像)
通常、「ラザー3」には車体側面の片側に5個の銃眼が設けられていますが、搭載する砲塔の種類によって4個しか銃眼が存在しないタイプもあります(後者はトルクメニスタンの車両に当てはまります)。
現在、セルビアの武器産業は多数の高度な各種装備を売り込んでいます。それにもかかわらず、実際の輸出は今まで主に小火器と「B-52 "ノーラ" 」自走榴弾砲に限られていましたが、トルクメニスタンへの「ラザー3」の販売は注目すべき例外となります。
これらが導入された理由がセルビアとの関係強化のためなのか、それとも国家保安省が実際に必要としていたからなのかは不明ですが、最終的にはたいした問題ではありません。「ラザー3」と新型の「ラザンスキー8x8」IFVの継続的な発展と開発を進めれば、今回の取引に支えられてすぐに全く新しい顧客を引き寄せる可能性があります(注:トルクメニスタンの導入に注目して他国が追随して導入する可能性があるということ)。
そして、場合によっては – 再びトルクメニスタンがそれらを最初に導入するかもしれません。
[1] https://i.postimg.cc/hjSY43j5/u1.jpg
[2] https://i.postimg.cc/C1LvpBry/688.jpg
[3] Набавка нових "Лазара 3" за Војску Србије, вредност уговора 3,7 милијарди динара https://www.rts.rs/page/stories/ci/story/124/drustvo/4301968/lazar-vojska-nabavka.html
[4] Snaps From Ashgabat: Turkmenistan’s 2021 Military Parade https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/snaps-from-ashgabat-turkmenistans-2021.html
[5] Turkmenistan’s Parade Analysis: What’s New? https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/turkmenistans-parade-analysis-whats-new.html
[6] Partner 2021: Serbia integrates Russian unmanned weapon stations on Lazar III A1 ACVs https://www.janes.com/defence-news/land-forces/latest/partner-2021-serbia-integrates-russian-unmanned-weapon-stations-on-lazar-iii-a1-acvs
※ 当記事は、2021年12月1日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
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