2022年12月2日金曜日

勝利を実現させるために:カナダによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ 

 2022年2月にロシアがウクライナへ侵攻した後、カナダは多くのNATO加盟国と同様にウクライナの防衛力の構築に大きく貢献しました。

 カナダによる軍事援助には、これまでに真新しい「ASCV」装甲戦闘支援車39台、新型のロシェル「セネター」歩兵機動車(IMV)8台、「M777」155mm牽引式榴弾砲4門、対戦車兵器4600基が含まれています。

 また、西側諸国から供与された155mm榴弾砲に使用するために「M982 "エクスカリバー"」GPS誘導弾を(数量不明ながらも)送ったこと、カナダはウクライナに初めて誘導砲弾を供給した国でもあることは注目すべきでしょう。
 
 ウクライナに新型の装甲戦闘車両(AFV)を供与するという決定は、ウクライナに重火器を贈呈してきた他の多くの国とは明らかに一線を画しています。カナダは、2022年後半を通して39台のGDELS製「LAV 6.0」装甲戦闘支援車両(ACSV)を供与する予定です(注:2022年12月には現地に到着)。

 「ACSV」にはいくつかのバージョンが存在しますが、ウクライナは装甲兵員輸送車(APC)型を受け取ることになると推測されています。

 ちなみに、戦争初期の段階で「LAV/ACSV」のベースとなったモワク製「ピラーニャ」APC25台をウクライナに供与する試みがあったものの、スイスがデンマークから同型車をウクライナへ供与することについて承認を求められた際に却下したことを受けて頓挫してしまいました(注:スイスは自国製兵器を第三者に移転する際は許可が必要など厳格な管理を行っています)。[1]

 もう一つ見落とされている支援としては、カナダがウクライナ向けの「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)用にウェスカム製「MX-15D」前方監視赤外線(FLIR)装置を相当数寄贈していることが挙げられます。

 トルコ製の「バイラクタルTB2」に装備するために「MX-15D」をウクライナに寄贈するという決定は、おそらく皮肉としか言いようがありません。なぜならば、トルコはアゼルバイジャンに「MX-15D」を装備したTB2を販売して制裁を受けているからです(注:本当に新規にカナダから寄贈されたものか、それとも制裁前にメーカーのバイカル社が「MX-15D」を相当数ストックしていたものかを考慮する必要がありますが、現時点におけるTB2の生産機数を考えるとストックは若干考えにくいかもしれません)。

 トルコに対する制裁が発動されたにもかかわらず、カナダではウクライナに代わってTB2を購入するために独自のクラウドファンディングも行われていることは注目に値する動きと言えるでしょう。[2]

 今後、ウクライナに対するカナダのさらなる軍事援助がどうなるかについては、現時点では依然として不明となっています。

 ウクライナにTB2を安定的に供給されるようになれば、カナダはさらに多くの「MX-15D」を寄贈ができるでしょう。また、確立された国内におけるAFV産業の存在は、カナダは自国の戦力を損なうことなく「ACSV」や「セネター」といった車両の供与を可能にさせます。また、カナダはアップグレードした「M113」APCのストックを保有していることから、いつかウクライナに送られる可能性も残されています。

 この戦争が転換期を迎えていることは確かであり、友好国から寄贈されて集まった兵器類が戦場でその影響力を発揮していることから、カナダはますます失われた領土を回復しつつあるウクライナを支援し続けるための他の方法を見出すに違いないでしょう。

ロシェル製「セネター」歩兵機動車:8台がカナダからウクライナへ供与された

  1. 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の直前と最中にカナダがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. このリストは、主にカナダ政府が発表した情報に基づいて作成されています。[3] 
  3. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されています)。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます

地対空ミサイルシステム
  • 1 NASAMS(1個中隊分を1と計上) [予定]
  • 12 AIM-120 "AMRAAM" (「NASAMS II」用) [2023年3月]

空対空ミサイル

戦車

工兵・支援車両

牽引砲
  • 4+ M777 155mm榴弾砲 [2022年4月] (数量不明の「M982 "エクスカリバー"」GPS誘導砲弾を含む)

装甲兵員輸送車 (APC)

歩兵機動車(IMV)
  •  330 ロシェル「セネター」 [8台は2022年5月に供与済みで追加の78台が2023年6月に供与、残りはそれ以降に供与予定] 

前方監視赤外線 (FLIR) 装置

対戦車兵器
  • 100 カールグスタフM2 無反動砲 [2022年3月]
  • 4,500 M72 使い捨て式対戦車ロケット砲 [同上]

小火器
  • C8 カービン [2022年2月か3月]
  • 200+ C6 汎用機関銃 及び C9 軽機関銃 [同上]
  • 78 中口径・大口径狙撃銃 [2022年3月]
  •  600 グロック17 [2022年2月か3月]
  • 40 ''プレーリー・ガン・ワークス''製狙撃銃 [予定]
  • 38 7.62mm 軽機関銃 [2023年1月以降に供与]
  • 21.000 5.56mm アサルトライフル [2023年1月以降に供与]

弾薬類
  • M982「エクスカリバー」GPS誘導砲弾(「M777」榴弾砲用) [2022年4月]
  • 27,000 155mm砲弾(「M777」榴弾砲用) [2022年4月,5月,10月]
  • 2,000 84mm無反動砲弾(「カールグスタフM2」用) [2022年3月]
  •  7,500 C13 手榴弾 [同上]
  •  3,900,000 口径不明の弾薬 [2022年2月か3月]
  • 120mm砲弾「レオパルト2A4用] [予定]
  • 10,000 105mm砲弾 [予定]

個人装備
  • CG634 ヘルメット [2022年3月]
  • ボディアーマー [同上]
  • 1,600 防弾チョッキ [同上]
  • 防毒マスク [同上]
  • 暗視ゴーグル [同上]
  • 個人用防護・運搬装備  [2022年2月か3月]
  •  500,000 防寒着 [2022年10月と12月]

その他の装備品類
  • 10 155mm砲身 (「M777」榴弾砲用) [2022年6月]
  • 16 通信装置(「レオパルト2A4」用) [予定]
  • 監視・検知装置 [2022年2月か3月]
  • 7,000万ドル(約70億円)相当の衛星画像サービスの提供 [2022年10月以降]
  •  640,000 レーション (MRE) [2022年3月]
  •  携行式暖房器具 [2022年11月以降]
  •  保温ブランケット [同上]
  • 寝袋 [同上]
  •  防寒服 [同上]

リトアニアでのクラウドファンディングで得た「バイラクタルTB2」には、カナダから譲渡されたウェスカム製「MX-15D」FLIR装置が装備されている

[1] Swiss veto Danish request to send armoured vehicles to Ukraine https://www.reuters.com/world/europe/swiss-veto-danish-request-send-ukraine-armoured-vehicles-tv-2022-06-01/
[2] Canadian Crowdfund aims to buy Turkish combat drone for Ukraine https://www.aa.com.tr/en/economy/canadian-crowdfund-aims-to-buy-turkish-combat-drone-for-ukraine/2640135
[3] Canadian military support to Ukraine https://www.canada.ca/en/department-national-defence/campaigns/canadian-military-support-to-ukraine.html

※  当記事は、2022年9月12日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したも
 のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
 あります。


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2 件のコメント:

  1. 大変有益な情報ありがとうございます。
    ロシア軍の損失情報の更新もお願いします。

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    1. 体力・精神的に厳しい状態が続いているため日本語版での更新はしばらく厳しいです。それまでは本国版のリストをご覧いただけますようお願い申し上げます。

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