2023年1月21日土曜日

大公国からの大規模な贈り物:ルクセンブルクによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:スタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

 もともと軍事力をほとんど持っていない国が、どうやってウクライナ軍に軍事支援をするのでしょうのか?ロシアがウクライナに侵攻を開始した直後の2月下旬に、ルクセンブルク大公国はそう自問したに違いありません。

 ベルギーが2022年11月になってもその答えを出せずに苦悩している一方、ルクセンブルク軍は素早く対応して、2022年2月28日にジープ「ラングラー」7台、「NLAW」対戦車ミサイル(ATGM)102発、軍用テント15セットを即座にウクライナへ寄贈しました。[1]

 すでにウクライナへ引き渡された追加の物的支援の中には、プリモコ「One 150」無人偵察機6機、「ハンヴィー」歩兵機動車(IMV)28台、「M2」12.7mm重機関銃20門、防弾チョッキ5,000着、ヘルメット5,000個、暗視ゴーグル470個、そして防毒マスク22,400個が含まれています。この数量はチェコやドイツといった国からウクライナに提供された大量の兵器や装備に比べると感銘を与えるような規模とは言えないと思えるかもしれませんが、ルクセンブルクの寄贈は自国が有するストックの大部分を占めています。この事実はゼレンスキー大統領が看過することなく2022年6月に「(ルクセンブルクの)国家の偉大さと気高さが直に感じられる」と述べて謝意を示しました。[2]

 実際、2023年9月の時点でルクセンブルクはすでに約1億1,400万ユーロ(約182億円)相当の兵器や装備類をウクライナへ寄付しているのです。[3]

 2022年11月、ルクセンブルク国防相は「ハンヴィー」IMV28台と「M2」12.7mm重機関銃20門の寄贈を発表し、さらに「ルクセンブルクは必要な限りウクライナを支援する」と表明しました。また、ルクセンブルクはソ連時代の弾薬の調達どころかウクライナの代わりに6機のUAVさえも購入しています。[4] [5]

 この国による今後の軍事支援が厳密にどのようなものになるのかは、依然として謎のままです。ルクセンブルク軍が保有している42台の「ハンヴィー」と48台の「ディンゴ」MRAPは2028年までに80台のGDELS-モワク「イーグルV」に更新される予定になっており、同軍が保管していた予備の「ハンヴィー」は2022年11月の28台を引き渡した後にゼロになったかもしれません。

 自国のストックから追加の軍事支援を提供するよりは、ルクセンブルクがウクライナ政府に他国からの武器を調達可能にさせるウクライナ安全保障強化基金に貢献したり、ウクライナの代わりにベルギーの防衛企業から兵器類を直に調達し続ける方が現実的に可能な方策と言えるでしょう。

 また、ルクセンブルク軍は15,000人のウクライナ兵を訓練する欧州連合の「ウクライナ支援のための軍事支援ミッション(EUMAM)」でも役割を果たす予定となっています。[6]

 ウクライナのために多大な貢献を果たすことについて、大きな国や軍隊を持つことを条件としているわけではないことをルクセンブルクが証明していることは言うまでもありません。
 
ルクセンブルク唯一の「A400M」輸送機が寄贈する軍用装備をポーランドまで輸送し、そこからウクライナに引き渡された

  1. 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の最中にルクセンブルクがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されています)。
  3. 一部の武器供与については機密扱いであるため、寄贈された武器などの数量はあくまでも最低限の数となっています。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。

無人偵察機
  •  15 プリモコ「ワン・150」 [2022年8月, 2023年] (メーカーから直に調達、6機はオランダとベルギーと協力して実施)

装甲兵員輸送車

歩兵機動車

車両
  • 7 ジープ「ラングラー」 [2022年3月]
  • 4 ピックアップトラック及びトレーラー [2022年8月] (「ワン・50」用)
  • 1 メルセデス「スプリンターL4」バン [年8月]
  •  30 装甲救急車 [2023年3月から供与]

対戦車ミサイル
  •  102 NLAW [2022年3月]

小火器
  • 20 ブローニング「M2」12.7mm重機関銃 [2022年11月] (「ハンヴィー」用)
  • 10 FN「MAG」汎用機関銃 [2023年3月]

弾薬
  • 600 122mmロケット弾(「BM-21 "グラート"」用) [2022年9月から10月の間に引き渡し] (第三国から調達後にウクライナへ引き渡し)
  •  12,500 RPG-7用擲弾 [2022年4月] (同上)
  •  3,200 155mm砲弾 [2023年3月]
  •  3220,000 12.7mm機関銃弾 [2022年と2023年]
  •  100,000 7.62mm弾 (アサルトライフル及び機関銃用) [2023年3月]

被服類
  •  5,000 防弾チョッキ [2022年5月] (国際市場から調達)
  •  5,800 ヘルメット [2022年5月,2023年] (同上)
  •  22,400 エイヴォン・プロテクション「C50」防毒マスク [2022年4月から6月の間に引き渡し] (44,800個のフィルターと共に引き渡し) (メーカーから直に調達)
  •  120 MUM製暗視装置 [2022年8月]
  • 180 PVS-14 暗視装置 [同上]
  •  70 RNVG 暗視装置 [同上]
  •  100 小銃用サーマル照準器 [同上]
  •  300 ヘルメット装着型暗視装置 [同上]
  •  150 暗視ゴーグル [2023年]
  •  25 タレス「ソフィー」携帯式暗視・目標指示装置 [2023年3月]

その他の装備品類
  • 医療物資 (8台の 救急車を含む) [2022年/2023年]
  • 50 「Satcube Ku」ポータブル型 ブロードバンド衛星端末とiDirect「iQ 200」モデム(定額の衛星通信サービス付き)[2022年7月から10月間に引き渡し] (メーカーから直に調達)
  • 40 衛星通信端末[2023年3月]
  • 15 軍用テント [2022年3月]
  • 358 防水・防寒寝袋 [2022年9月]
  • 18 発電機 [2022年11月]
  • 47 大型・中型発電機 [2023年3月~5月]
  •  3 携帯式軍用ヒーター [2022年9月]
  • 10 スタンドライト [2022年11月]
  • 800 レーション (MRE) [2022年9月]
  • 43 防水・防寒3Dスキャナー [2022年11月,2023年] (ロシアの戦争犯罪の捜査で使用)

特別協力: CalibreObscura氏(サブタイトルを提案)

[1] Luxembourg to send anti-tank weapons, jeeps to Ukraine, defence minister says https://web.archive.org/web/20220307070451/https://www.reuters.com/world/luxembourg-send-anti-tank-weapons-jeeps-ukraine-defence-minister-says-2022-02-28/
[2] Luxembourg commits 15% of its defense budget to support Ukraine: Zelensky https://edition.cnn.com/europe/live-news/russia-ukraine-war-news-06-22-22/h_131fd28221e6461e63694bbdb21ac8ff
[3] https://twitter.com/Defense_lu/status/1598610977364115462
[4] https://twitter.com/Francois_Bausch/status/1594639091064258560
[5] https://i.postimg.cc/cCh9SsTQ/image.jpg
[6] https://twitter.com/Francois_Bausch/status/1594604144358457345

※  当記事は、2022年11月23日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳
  したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した
  箇所があります。

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