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2024年4月3日水曜日

黄計画:1940年におけるドイツ軍のルクセンブルク侵攻で各陣営が損失した兵器類(全一覧)


著:シュタイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ (編訳:Tarao Goo

 第二次世界大戦におけるルクセンブルクでの戦いは、ルクセンブルク国家憲兵隊及び志願兵とドイツ国防軍の間で行われた短期間の戦闘であり、ナチス・ドイツが迅速に勝利を収めるという結果で終わったことは以外と知られていません。

 戦いの原因となったドイツによるルクセンブルクへの侵攻は1940年5月10日に始まり、僅か1日で終わりを告げました。

 1867年のロンドン条約の結果として、当時のルクセンブルクは軍隊を持たず、防衛は国家憲兵と志願兵から構成される小規模な部隊を当てにせざるを得ない状態でした。

 それにもかかわらず、ルクセンブルクはドイツの電撃戦からデンマークよりも長く生き残ることができました。なぜならば、デンマークには陸軍と空軍があったものの、1940年4月9日にナチス・ドイツに侵攻で始まった僅か2時間の戦闘の後に降伏したからです。

 ドイツ軍のルクセンブルク侵攻は3つの装甲師団がルクセンブルクの国境を越えた午前4時35分に始まり、彼らはスロープと爆薬を用いてシュスター線のバリケード突破に成功しました。散発的な銃撃戦を除くと、(志願兵の大部分が兵舎に籠城していたこともあったせいか)ドイツ軍が大した抵抗を受けたという記録はありません。

 少数のドイツ兵がヴォルムメルダンジュの橋を占領し、そこでドイツ軍の進撃停止を要求した2人の税関職員を拘束しました。(国境の)ザウアー川に架かる橋は部分的に破壊されていましたが、ドイツの工兵部隊によって迅速に修復を受け、戦車をルクセンブルク領内に入れることを可能にしました。

 国境検問所から国家憲兵隊や志願兵部隊の司令部への通信はルクセンブルク政府と大公宮に侵攻が始まったことを知らせ、午前6時30分に政府関係者の大多数が自動車に乗って首都から国境の町エッシュへ避難しました。ただし、彼らはそこで125人ものドイツ兵が待ち構えていたことを知りませんでした...「Fi156 "シュトルヒ"」で輸送された彼らは、すでに侵攻本隊が到着するまで同地域の確保に当たっていたのです。

 勇敢にも1人の国家憲兵隊員が125人の兵士に立ち向かって国から立ち去るように要求しましたが、彼は希望した答えを得る代わりに捕虜にされてしまったことは言うまでもないでしょう(注:殺害されなかったのは意外かもしれませんが)。

 ルクセンブルク大公を伴った政府関係者の車列はエッシュでの拘束を何とか回避し、田舎道を使ってフランスへの脱出に成功しました。

ルクセンブルクが侵攻される直前に、シュスター線のバリケード前でポーズをとっているルクセンブルクの国家憲兵隊員たち:中央の2名は小銃を背負っているが、両端の2名は非常に小さなスパイク型銃剣を装着可能な「モデル1884」型回転式拳銃を携行している[1]

 午前8時、第1シパーヒー旅団と第5機甲大隊の支援を受けたフランス第3軽騎兵師団は、南の国境を越えてルクセンブルクに入ってドイツ軍への威力偵察を試みるも失敗に終わりました。

 フランス空軍が進撃するドイツ軍に対して出撃を控えていたことに我慢できなかったイギリス空軍は、フランスに駐留していた第226飛行隊のフェアリー「バトル」軽爆撃機にドイツ軍の攻撃を命じました。ルクセンブルク上空で激しい対空砲火に遭った爆撃機部隊は何とかして危険な空域から脱出したものの、大部分の機体が軽い損傷を被り、このうち1機がヒールゼンハフ近郊へ墜落しました(この墜落では、乗員1名が死亡し、負傷した2名もドイツ軍の捕虜となりました)。

1940年5月10日にヒールゼンハフに墜落した "フェアリー「バトル」":3名の乗員はドイツ兵によって燃え上がる残骸から引き揚げられたものの、後にダグラス・キャメロン中尉は負傷が原因で地元の病院にて命を落とした[2][3]

 こうした間も国家憲兵隊はドイツ軍に抵抗し続けましたが全く歯が立たず、正午前に首都が占領され、夕方には南部を除く国土の大部分がドイツ軍に占領されてしまったのです。

 ルクセンブルクが受けた損失は戦傷者7名(このうち国家憲兵隊6名、兵士1名)であり、ドイツ国防軍の損失は戦死者36名でした。

 5月11日、国土から逃れたルクセンブルク政府はパリに到着し、在仏公使館に拠点を構えました。ドイツの空爆を危惧した政府はさらに南下し、最初にフォンテーヌブロー、次にポワチエに移し、その後はポルトガルとイギリスへ逃れ、最終的には戦争の終わりまでカナダに落ち着く結果となりました。

 当然ながら、カナダに亡命したシャルロット大公が国民統合の重要なシンボルとなったことも記憶にとどめておくべきでしょう。

シュスター線上に設けられた41個ものコンクリートブロックと鉄扉のうちの一つを通過する自動車:結果として。これらは実質的にドイツ国防軍の進撃を遅らせることができなかった

  • 以下の一覧では、ルクセンブルクでの戦闘で撃破や鹵獲された各陣営の兵器・装備類を掲載しています。
  • この一覧の対象に、馬は含まれていません(注:騎兵用と思われる)。
  • 仮に新たな損失が確認できる情報を把握した場合は、一覧を随時更新します。
  • 各兵器類の名称に続く数字をクリックすると、撃破や鹵獲された当該兵器類の画像を見ることができます。


  • ナチス・ドイツ (損失なし)


    ルクセンブルク (不明)

    自転車
    •  不明 政府支給の自転車: (多数, 鹵獲)

    フランス (損失なし)


    イギリス (1)

    航空機 (1, 墜落: 1)

    [1]Revolver with a Bayonet: Luxembourg Model 1884 Gendarmerie Nagant https://youtu.be/jYQNSQ3krWw

    ※  当記事は、2023年3月24日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したも 
      のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
        あります。また、編訳者の意向で大幅に加筆修正を加えたり、画像を差し替えています。


    おすすめの記事

    2023年6月23日金曜日

    大きさが全てじゃない:ルクセンブルク軍の航空隊


    著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

     ルクセンブルク大公国は小規模ながら十分に装備された軍隊を有しており、2020年からはその中に航空部隊も含まれることになりました。ルクセンブルク軍の独立した軍種ではないにもかかわらず、この部隊は2020年に納入された唯一の現用機(1機の「A400M」)のおかげで世界で最も現代的な航空戦力を構成しています。

     この地味な偉業についてはともかく、近年のルクセンブルクはエアバス「H145M」ヘリコプター2機、エアバス「A330」空中給油・輸送機(MRTT)1機、エアロバイロメント「RQ-11 "レイブン" 」、「RQ-20 "プーマ"」、「RQ-21 "インテグレーター"」無人偵察機(UAV)を入手することを通じて航空戦力をさらに増強しています。また、救急搬送、戦術空輸、洋上監視用の航空機やヘリコプターの追加導入も近い将来に予定されているようです。[1]

     2001年に「A400M」軍用輸送機1機を調達したことで、ルクセンブルクは1968年に空中観測や連絡業務に使用していたパイパー「PA-18 "スーパーカブ" 」3機を退役させて以来、再び航空機を運用するようになりました。[2]

     「A400M」プログラムにおける開発遅延により、最終的にルクセンブルク軍がこの輸送機を受領できるようになるまでは、最後の航空機を退役させてから52年後の2020年10月までかかることになったのです!

     ルクセンブルクに引き渡された「A400M」は、ブリュッセル近郊のメルスブローク空軍基地を拠点とするベルギー空軍第15航空輸送団で共同運用されています。現在、ルクセンブルクのフィンデル国際空港に政府の(航空)拠点を設けることが検討されていますが、現時点のルクセンブルク軍には空港に専用のスペースがありません。[2]

     ルクセンブルクの「A400M」はベルギーに駐機しており、(2024年に納入予定の)「A330 MRTT」はオランダのアイントホーフェン空軍基地かドイツのケルン空港に駐機予定であるほか、ルクセンブルクの無人機は手や空気圧で射出されるため、(少なくとも救急搬送機や海上監視機を導入するまでは)空港に専用のスペースはほぼ必要ないと言って差し支えないでしょう。

     ルクセンブルクの航空部隊は自身の基地を持っていないにもかかわらず、国の紋章をモチーフにした独自のラウンデルを用いています。このカラフルなラウンデルは、ルクセンブルク機として登録されているNATO諸国の「E-3A "セントリー"」AWACS17機にも施されています。

    当然ながら、ルクセンブルクの「A400M」には同国のラウンデルが施されている
     
     2020年の納入以降、「A400M(CT-01)」はルクセンブルクによる欧州連合マリ訓練ミッション(EUTM)の支援で兵士と彼らの装備をマリへ輸送すために投入されたほか、ルクセンブルク軍がウクライナに寄贈した軍用品をポーランドへ移送するためにも使用されています。[3]

     内陸国であるルクセンブルクは長年にわたって軍の展開や人道援助を支援するための人員や物資の輸送手段を求めており、かつてはベルギーと共同でドック型輸送揚陸艦(LPD)を導入することすら検討されていたことはあまり知られていません。この計画については、相次ぐコストの増加とベルギーの国防費が削減されたことにより、結果として2003年に頓挫してしまいました。[4]

     海上輸送能力に対する関心が再び高まる可能性は低いと思われる一方で、ルクセンブルク軍は2016年にNATOの多国籍「A330 MRTT」飛行隊の創設メンバーとなり、毎年200時間の飛行を割り当てられています(この飛行隊の「A330 MRTT」はNATOの所有となっており、各機が年間の飛行時間を割り当てられた 6つの加盟国によって資金提供されています)。2020年、ルクセンブルクは既存の契約オプションを行使して9機目を導入するための資金を提供することによって、飛行時間をさらに1,000まで引き上げることを確実にしました。[5]

     空中給油が可能な高速ジェット機を所有していないにもかかわらず(ただし、同国の「A400M」は取り外し可能な給油プローブを備えていますが)、ルクセンブルクはNATOのMRTT飛行隊には3番目の規模で参加している国であり、自身に割り当てられた飛行時間を他の加盟国に提供することによって、NATOの活動に大きく貢献することを可能としています。

     ルクセンブルクは人口が65万人未満であり、明らかに大規模な常備軍を増強する見込みがないことことを考慮すれば、この国によるNATO共同プロジェクトへの資金援助の強化も可能と言えるでしょう。例えば、NATOの「E-3A "セントリー"」AWACS飛行隊の更新に伴う多額の資金を提供することが考えられます。これによって、NATO加盟国間のより公平な負担の分担が可能となり、この目的を達成するために自国の軍隊を増強する必要がなくなるというわけです。

     これまでのルクセンブルクは防衛費をGDPの2%に引き上げることに消極的でしたが、その代わりに2028年までに年間の防衛費をGDPの1%、つまり10億ユーロ(約1,440億円)近くに引き上げることを目標に設定しました。[6]

    オランダのアイントホーフェン空軍基地にタッチダウンする「A330 MRTT」:ルクセンブルクはNATOの多国籍「330 MRTT」飛行隊の一部となる9機目の資金を提供した

     2020年までルクセンブルク軍には欠けていた戦力がありました...それは高度なヘリコプター部隊です。

     以前は警察に就役した「MD902 "エクスプローラー"」1機とルクセンブルク航空救難隊で使用されている「MD900」2機に依存していましたが、2018年にルクセンブルク国防省は監視任務や対テロ作戦用に、軍で使用する「H145M」2機を発注しました。ちなみに納入された2機は警察のマークを施されて運用されていることからも分かるとおり、警察が「H145M」を用いて執行活動を行うことも可能です。[7]

     戦術的空輸能力を獲得するため、将来的に大型ヘリコプターの導入の検討も想定されています。[1]


     ルクセンブルク軍で驚くほど優れているのは無人航空戦力であり、彼らは より大きないくつかの欧州諸国を上回る能力と数を誇る無人機部隊を運用しています。近年におけるこの部隊の戦力については、12機の「RQ-11 "レイブン"」、数量不明の「RQ-20 "ピューマ"」、4機の「RQ-21 "インテグレーター"」、そして「アトラス・プロ」手投げ式UAVで構成されています。[8] [9] [10]

     ルクセンブルクは、合成開口レーダー(SAR)及びEO/IRセンサーを搭載した「RQ-4D "フェニックス"」 高高度長時間滞空(HALE)型無人偵察機5機を飛行させているNATOの同盟地上監視プログラム(AGS)のメンバーでもあります。

     現在、ルクセンブルク軍はパートナー国と協力してさらなる航空監視プログラムに参加するか、その代わりに必要な航空機やUAV、そしてデータ解析能力を自身で導入するかを検討しているところです。[1]

     (ベルギーも調達した)アメリカの「MQ-9B "スカイガーディアン" 」やイスラエルのエルビット「ヘルメス 900」といった、多岐にわたる高度なペイロードを備えた(より大型の)無人偵察機の導入は、比較的少ない人的資源の投資で済むことに加えてNATOの能力向上に著しい貢献をすることも可能となるでしょう。

     ルクセンブルクのような小さな国では必然的に空域が狭いため、大型UAVを使った日常の運用や訓練は不可能ではないにしても、大きな支障となることが不可避です。この点の対応は、ベルギーなどのパートナー国と提携する可能性はルクセンブルクにとって特に魅力的な選択肢となるかもしれません。

     洋上監視機を導入した場合は入手した機体を内陸国以外の空軍基地に配置させることも必要となりるものの、アデン湾のような不安定な海域でルクセンブルクの旗を守り、地中海では欧州対外国境管理協力機関(Frontex)を支援することに導きます。



     より大型のUAVまたは洋上監視機を調達することで空中偵察能力を万全にできる一方で、ルクセンブルクは2018年に官民連携(PPP)で政府所有の通信衛星「GovSat-1」を打ち上げることによって宇宙にも進出しました。

     「GovSat-1」は、複数の政府特有のミッションのために高出力かつ操作可能なスポットビーム照射能力を備えた軍用の周波数(Xバンドおよび軍用Kaバンド)を用いる多目的衛星であり、ヨーロッパのみならず中東やアフリカもカバーしています。

     ルクセンブルク政府はこの新しい人工衛星で割り当てられるデータ容量の大半を事前に押さえており、残りの容量はほかの政府機関や団体といった顧客に提供されることになっています。

     ルクセンブルク国防省は、需要に応じて今後10年間で衛星コンステレーションを徐々に拡大させていく場合の利点を検証する予定です。[1]


     場所が空でも宇宙でも、種類も有人・無人だろうと、ルクセンブルク軍の航空部隊には最初に目にした以上の価値があることは間違いありません。

     この部隊は半世紀わたる休養状態から復活したばかりですが、今後10年間に計画されている目覚ましい規模の調達で急速に能力を拡大することになっています。 ルクセンブルクは空中監視/偵察、空中給油、輸送などの重要な分野に投資することで、さらなるNATOの支援を可能にするわけです。

     今後もこの投資が継続されるならば、この国は貴重なNATO加盟国として未来に羽ばたいていくでしょうし、真の能力の尺度として、献身は自身の規模に勝ることを実証することになるのです。


    [1] Luxembourg Defence Guidelines for 2025 and Beyond https://defense.gouvernement.lu/dam-assets/la-defense/luxembourg-defence-guidelines-for-2025-and-beyond.pdf
    [2] Luxembourg Army Aviation http://www.aeroflight.co.uk/waf/lux/army/lux-army-home.htm
    [3] https://twitter.com/Francois_Bausch/status/1590708549407342598
    [4] Navire de transport stratégique belgo-luxembourgeois (NTBL) [belgian-luxembourg strategic transport vessel Command, Logistic Support & Transport (CLST) https://www.globalsecurity.org/military/world/europe/clst-h.htm
    [5] Multi Role Tanker Transport Capability https://english.defensie.nl/topics/international-cooperation/other-countries/multi-role-tanker-transport-capability
    [6] Luxembourg to double defence spending by 2028 https://www.luxtimes.lu/en/luxembourg/luxembourg-to-increase-defence-spending-by-2028-62b5739cde135b9236c55bc6
    [7] Polizeihubschrauber offiziell vorgestellt https://www.wort.lu/de/lokales/polizeihubschrauber-offiziell-vorgestellt
    [8] Matériel - UAV https://www.armee.lu/materiel/uav
    [9] https://twitter.com/ArmyLuxembourg/status/1576878178286850049
    [10] SIPRI - Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php

    ※  この記事は、2022年12月2日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した 
      ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
        す。

    2023年1月21日土曜日

    大公国からの大規模な贈り物:ルクセンブルクによるウクライナへの軍事支援(一覧)


    著:スタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ

     もともと軍事力をほとんど持っていない国が、どうやってウクライナ軍に軍事支援をするのでしょうのか?ロシアがウクライナに侵攻を開始した直後の2月下旬に、ルクセンブルク大公国はそう自問したに違いありません。

     ベルギーが2022年11月になってもその答えを出せずに苦悩している一方、ルクセンブルク軍は素早く対応して、2022年2月28日にジープ「ラングラー」7台、「NLAW」対戦車ミサイル(ATGM)102発、軍用テント15セットを即座にウクライナへ寄贈しました。[1]

     すでにウクライナへ引き渡された追加の物的支援の中には、プリモコ「One 150」無人偵察機6機、「ハンヴィー」歩兵機動車(IMV)28台、「M2」12.7mm重機関銃20門、防弾チョッキ5,000着、ヘルメット5,000個、暗視ゴーグル470個、そして防毒マスク22,400個が含まれています。この数量はチェコやドイツといった国からウクライナに提供された大量の兵器や装備に比べると感銘を与えるような規模とは言えないと思えるかもしれませんが、ルクセンブルクの寄贈は自国が有するストックの大部分を占めています。この事実はゼレンスキー大統領が看過することなく2022年6月に「(ルクセンブルクの)国家の偉大さと気高さが直に感じられる」と述べて謝意を示しました。[2]

     実際、2023年9月の時点でルクセンブルクはすでに約1億1,400万ユーロ(約182億円)相当の兵器や装備類をウクライナへ寄付しているのです。[3]

     2022年11月、ルクセンブルク国防相は「ハンヴィー」IMV28台と「M2」12.7mm重機関銃20門の寄贈を発表し、さらに「ルクセンブルクは必要な限りウクライナを支援する」と表明しました。また、ルクセンブルクはソ連時代の弾薬の調達どころかウクライナの代わりに6機のUAVさえも購入しています。[4] [5]

     この国による今後の軍事支援が厳密にどのようなものになるのかは、依然として謎のままです。ルクセンブルク軍が保有している42台の「ハンヴィー」と48台の「ディンゴ」MRAPは2028年までに80台のGDELS-モワク「イーグルV」に更新される予定になっており、同軍が保管していた予備の「ハンヴィー」は2022年11月の28台を引き渡した後にゼロになったかもしれません。

     自国のストックから追加の軍事支援を提供するよりは、ルクセンブルクがウクライナ政府に他国からの武器を調達可能にさせるウクライナ安全保障強化基金に貢献したり、ウクライナの代わりにベルギーの防衛企業から兵器類を直に調達し続ける方が現実的に可能な方策と言えるでしょう。

     また、ルクセンブルク軍は15,000人のウクライナ兵を訓練する欧州連合の「ウクライナ支援のための軍事支援ミッション(EUMAM)」でも役割を果たす予定となっています。[6]

     ウクライナのために多大な貢献を果たすことについて、大きな国や軍隊を持つことを条件としているわけではないことをルクセンブルクが証明していることは言うまでもありません。
     
    ルクセンブルク唯一の「A400M」輸送機が寄贈する軍用装備をポーランドまで輸送し、そこからウクライナに引き渡された

    1. 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の最中にルクセンブルクがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
    2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されています)。
    3. 一部の武器供与については機密扱いであるため、寄贈された武器などの数量はあくまでも最低限の数となっています。
    4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
    5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。

    無人偵察機
    •  15 プリモコ「ワン・150」 [2022年8月, 2023年] (メーカーから直に調達、6機はオランダとベルギーと協力して実施)

    装甲兵員輸送車

    歩兵機動車

    車両
    • 7 ジープ「ラングラー」 [2022年3月]
    • 4 ピックアップトラック及びトレーラー [2022年8月] (「ワン・50」用)
    • 1 メルセデス「スプリンターL4」バン [年8月]
    •  30 装甲救急車 [2023年3月から供与]

    対戦車ミサイル
    •  102 NLAW [2022年3月]

    小火器
    • 20 ブローニング「M2」12.7mm重機関銃 [2022年11月] (「ハンヴィー」用)
    • 10 FN「MAG」汎用機関銃 [2023年3月]

    弾薬
    • 600 122mmロケット弾(「BM-21 "グラート"」用) [2022年9月から10月の間に引き渡し] (第三国から調達後にウクライナへ引き渡し)
    •  12,500 RPG-7用擲弾 [2022年4月] (同上)
    •  3,200 155mm砲弾 [2023年3月]
    •  3220,000 12.7mm機関銃弾 [2022年と2023年]
    •  100,000 7.62mm弾 (アサルトライフル及び機関銃用) [2023年3月]

    被服類
    •  5,000 防弾チョッキ [2022年5月] (国際市場から調達)
    •  5,800 ヘルメット [2022年5月,2023年] (同上)
    •  22,400 エイヴォン・プロテクション「C50」防毒マスク [2022年4月から6月の間に引き渡し] (44,800個のフィルターと共に引き渡し) (メーカーから直に調達)
    •  120 MUM製暗視装置 [2022年8月]
    • 180 PVS-14 暗視装置 [同上]
    •  70 RNVG 暗視装置 [同上]
    •  100 小銃用サーマル照準器 [同上]
    •  300 ヘルメット装着型暗視装置 [同上]
    •  150 暗視ゴーグル [2023年]
    •  25 タレス「ソフィー」携帯式暗視・目標指示装置 [2023年3月]

    その他の装備品類
    • 医療物資 (8台の 救急車を含む) [2022年/2023年]
    • 50 「Satcube Ku」ポータブル型 ブロードバンド衛星端末とiDirect「iQ 200」モデム(定額の衛星通信サービス付き)[2022年7月から10月間に引き渡し] (メーカーから直に調達)
    • 40 衛星通信端末[2023年3月]
    • 15 軍用テント [2022年3月]
    • 358 防水・防寒寝袋 [2022年9月]
    • 18 発電機 [2022年11月]
    • 47 大型・中型発電機 [2023年3月~5月]
    •  3 携帯式軍用ヒーター [2022年9月]
    • 10 スタンドライト [2022年11月]
    • 800 レーション (MRE) [2022年9月]
    • 43 防水・防寒3Dスキャナー [2022年11月,2023年] (ロシアの戦争犯罪の捜査で使用)

    特別協力: CalibreObscura氏(サブタイトルを提案)

    [1] Luxembourg to send anti-tank weapons, jeeps to Ukraine, defence minister says https://web.archive.org/web/20220307070451/https://www.reuters.com/world/luxembourg-send-anti-tank-weapons-jeeps-ukraine-defence-minister-says-2022-02-28/
    [2] Luxembourg commits 15% of its defense budget to support Ukraine: Zelensky https://edition.cnn.com/europe/live-news/russia-ukraine-war-news-06-22-22/h_131fd28221e6461e63694bbdb21ac8ff
    [3] https://twitter.com/Defense_lu/status/1598610977364115462
    [4] https://twitter.com/Francois_Bausch/status/1594639091064258560
    [5] https://i.postimg.cc/cCh9SsTQ/image.jpg
    [6] https://twitter.com/Francois_Bausch/status/1594604144358457345

    ※  当記事は、2022年11月23日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳
      したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した
      箇所があります。