2023年2月3日金曜日

最後の中国製無人機:トルクメニスタンの「CH-3A」UCAV



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 中国製無人戦闘機(UCAV)の商業的成功については、中東、中央アジア、北アフリカの国々がこれまでになく大量の「翼竜」や「CH」シリーズUCAVを導入したことから、かつてはその快進撃を止めることができないだろうと思われていました。

 しかし、この素晴らしい販売実績の理由は、明らかに中国製UCAVが好まれていたということではなかったようです。それどころか、ここ10年の前半はUCAV市場にはほとんど競争がありませんでした。特にUCAVの導入を検討している国がアメリカから武器を調達できる余裕を持っていなかった場合は選択肢自体が事実上中国に限られていたのです。

 ただし、米国と密接な関係にある国でさえ、大抵は武装型「MQ-1 "プレデター "」や「MQ-9 "リーパー"」の購入が禁じられていたり、(トルコの場合のように)特定の地域には展開させないという約束の下でしか入手できませんでした。

 ロシアといったほかの主要な武器生産国はいまだにUCAVの量産や実用化に至っておらず、イスラエルは武装ドローンの輸出販売をしていません。

 競争市場では、生産者が互いに競争することによって販売価格が押し下げられる効果が生じます。

 UCAVの主要生産国としてトルコが出現したことは、ほぼ間違いなく中国を犠牲にする形で武装ドローン市場を一変させました。ただし、UCAV生産国としてのトルコの台頭は、2010年代初頭のトルクメニスタンが必要としていたUCAVのニーズに対応するにはあまりにも遅すぎましたのは周知のとおりでしょう。

 当時は中国からUCAVを調達する以外に選択する余地がほとんど無い状況に迫られていたため、トルクメニスタン空軍はまさにその現状に従って「CASC」「CASIC」「CH-3A」「WJ-600A/D」UCAVを大量に発注しました。[1]

 これらは2016年に実施された独立25周年記念日の軍事パレードで盛大なファンファーレと共に披露されたものの、調達数やその後のトルクメニスタンでの運用に関する情報はほとんど知られていません。

 トルクメニスタンの「CH-3A」で判明していることは、2011年にイタリアから購入した3機の「セレックスES(現レオナルドS.p.A.)」社「ファルコXN」無人偵察機と共に、アク・テペ・ベズメイン空軍基地を拠点としていることです。[2]

 「CH-3A」は左右の主翼にハードポイントを各1基ずつ備えているため、最大で8kmの射程を持つ「AR-1」空対地ミサイル(ASM)を2発搭載するのが標準的な武装となっています。

 また、このUCAVの巡航速度は 200km/hであり、12時間程度の滞空性能を誇ります。現代の基準からすると物足りませんが、それでもジェットエンジンを搭載した「WJ-600A/D」の3〜5時間という滞空時間を上回っています。[4]

アク・テペ・ベズメイン空軍基地で、中国製「FD-2000」及び「KS-1」地対空ミサイルシステムの前を自転車に乗って通過するグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領。「CH-3A」が「KS-1A」の右に置かれている様子は注目すべきことであり、これが2016年の軍事パレードに登場して以降に公開された同UCAV唯一の資料です。

 トルクメニスタンが追加の「CH-3A」、「CH-4B」、あるいは「翼竜」UCAVを導入する代わりに「バイラクタルTB2」を調達するという決定は、「バイカル・テクノロジー」社にとってさらなる注目すべき成功の1つです。[5]

 トルクメニスタンはTB2を導入した5番目の国であり、同機はこれまでに28カ国以上に販売されました。[6]

 武装ドローンの調達における世界的変化は、中国とアメリカという伝統的なサプライヤーを犠牲にしながら表面化しはじめています。このことは一度は停滞した市場を競合する他社から奪取できることを証明しており、この偉業はトルクメニスタンの「CH-3A」と「バイラクタルTB2」によって象徴されているのです。

主翼に「AR-1」空対地ミサイルを搭載した状態で軍事パレードに登場した「CH-3A」

  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。



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