2023年9月8日金曜日

台湾要塞:中華民国軍の重火器・軍用車両(一覧)


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 歴史的に見ると、台湾陸軍は台湾軍を構成する3大軍種の中で最も少ない予算しか受け取っていません。年間の予算が僅か190億ドル(2023年:約2兆7千億円)しかない台湾国防部は、中国の急速な軍備増強に少しでも遅れずについて行く好機を逃さないために、空軍と海軍への投資を優先せざるを得ないからです。

 台湾陸軍が戦闘に加わるのは中国軍がすでに台湾本島や中国沿岸に位置する複数の島嶼群の一つに上陸した後であることから、 台湾軍の最優先課題は、戦闘機、対艦ミサイル、防空システムといった兵器システムの導入を通じて実行可能な抑止力と現実的な戦時能力を構築し、中国が実施するであろう水陸両用作戦を抑止することにあります。

 優先事項への投資は「雄風3型対艦ミサイルや「天弓3型」地対空ミサイルシステムなど、台湾の防衛上の需要に合わせた数多くの高度な国産兵器システムをもたらしましたが、結果的に台湾国防部が装甲戦闘車両(AFV)や自走砲(SPG)といった従来型の通常戦力への投資が大幅に避けられることになるという悪影響も出てしまいました。

 台湾陸軍と海兵隊が保有する車両と装備品の大半については、一見すると、1970年代や1980年代前半のアメリカ陸軍と大差がないように見えます。アメリカから多くの現代的なアセット(2019年に108台の 「M1A2T "エイブラムス"」戦車、2020年に11基の「M142 "ハイマース"」多連装ロケット砲)や現地のメーカーから同様の新型兵器を調達したにもかかわらず、台湾は未だに保有する装備の全般的な旧式化に直面しているのです。

 特筆すべきは、中華民国陸軍(ROCA)と中華民国海兵隊(ROCMC)の主力戦車が、国産の「CM-11」約450台と、1990年代にアメリカから購入した中古の「M60A3」460台であることでしょう。

 「CM-11」は1980年代後半に米台が共同開発した、「M60A3」の車体に「M48A3」の砲塔を組み合わせたものであり、現在では「M1 "エイブラムス"」初期生産型の火器管制システム(FCS)と 「M68A1」105mm砲を装備しています。ROCAはこの戦車に爆発反応装甲(ERA)を装着することで装甲防御力を高めようとしてきましたが 、重量面での問題がERAの広範にわたる導入を妨げているようです。

 「M60A3」は近代化改修を受けないまま運用され続けていますが、新しいエンジンとFCSを搭載する限定的なアップグレードの実施が数年後に計画されています。

 台湾が保有する戦車のストックを占めていた「CM-12」「M41D」については、「M1A2T "エイブラムス"」の納入後に退役することになりそうです(注:後者は2022年2月に退役しました)。

 人口2,300万人の島で歩兵を輸送するため、台湾は1980年代に「M113」装甲兵員輸送車(APC)の国産型の開発に着手しました。こうして登場した「CM-21」とし呼ばれるAPCは、自走迫撃砲、砲兵用牽引車、指揮車、「TOW」対戦車ミサイル搭載車など、多岐にわたる特別仕様のベースにも活用されました。

 機械化歩兵旅団の火力と機動性を向上させるために、ROCAは「CM-21」を新型の装軌式AFVで置き換えたり、または補完したりするのではなく、合計で305台の(台湾で初めて就役するIFVである)「CM-34」装輪式歩兵戦闘車と650台の(ヘッダー画像で表示している)「CM-32」装輪式APCを発注しました。

 「CM-32/34」の車体は、防御力と引き換えに機動性を大幅に向上させた新型105mm機動砲システムのベースにもなっています。今後納入される「M1A2T "エイブラムス"」に加えて、この新型もROCAの旧世代MBTの一部を置き換えることになるかもしれません。

 台湾陸軍に機動的な火力支援能力をもたらしているのは、200台以上の「M109A2」及び「M109A5」155mm自走榴弾砲です。砲兵戦力には「M114」牽引式155mm榴弾砲とその国産版である「T-65」もありますが、今日では完全に旧式化した兵器と考えられています。

 2021年に7億5,000万ドル(約1,075億円)の対外有償軍事援助(FMS)で40台の「M109A6」自走榴弾砲を導入するという試みがあったものの、アメリカ政府が生産上の障害で同自走砲を2026年まで納入できないと台湾に通知したため、中止に追い込まれてしまいました。新自走砲導入プランについては、すでに2020年に発注済みの「M142 "ハイマース"」11門に加え、同システムの追加発注を選択することで立ち消えとなる可能性があります。

 ROCAは43門の「雷霆2000(RT/LT-2000)」多連装ロケット砲(MRL)も運用しており、同MRLには117mm、180mm、227mmのいずれかのロケット弾ポッドを2基搭載可能という特徴を誇っています。

 また、より強大な重砲も継続して運用されています:その中でも注目すべきは、それらの中に「M1」155mm野砲、2「M115」203mm榴弾砲、「M110A2」203mm自走榴弾砲 SPG、そして中国沿岸近くに位置する金門島と馬祖島の掩体壕に設置された4門の巨大な240ミリ「M1」240mm榴弾砲などが含まれていることです。

  1. この一覧は、現在の台湾軍で使用されている全種類のAFVをリストアップ化を試みたものです。
  2. この一覧には利用可能な画像・映像などの視覚的エビデンスに基づいて確認されたものだけを掲載しています。
  3. レーダー、トラックやジープ類はこのリストの対象外です。
  4. 兵器の名前をクリックすると台湾で運用中の当該兵器の画像を見ることができます。


戦車

軽戦車
  • 50 M41D (大半は保管状態,2022年に退役)

戦車駆逐車

装甲戦闘車両

歩兵戦闘車

装甲兵員輸送車

水陸両用強襲輸送車

歩兵機動車 (IMV)

軽攻撃車両 (LSV)

工兵・支援車両

指揮通信車

自走迫撃砲

多連装ロケット砲

短距離弾道ミサイル(SRBM)
  • 国家中山科学研究院「天戟 'スカイ・スピアー'」 [射程距離: 300km]
  • M57 "ATACMS" (発注中) [射程距離: 300km]

地上発射式巡航ミサイル(GLCM)
  •  国家中山科学研究院「雄風2型E」 [射程距離: 600-1,200km]
  •  国家中山科学研究院「雲峰」 [射程距離: 1200-2,000km] (現物は未確認)

沿岸防衛システム

牽引式対空砲

固定式地対空ミサイルシステム

 ※  この記事は、2023年3月26日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。


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