著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ
歴史的に見ると、台湾陸軍は台湾軍を構成する3大軍種の中で最も少ない予算しか受け取っていません。年間の予算が僅か190億ドル(2023年:約2兆7千億円)しかない台湾国防部は、中国の急速な軍備増強に少しでも遅れずについて行く好機を逃さないために、空軍と海軍への投資を優先せざるを得ないからです。
台湾陸軍が戦闘に加わるのは中国軍がすでに台湾本島や中国沿岸に位置する複数の島嶼群の一つに上陸した後であることから、 台湾軍の最優先課題は、戦闘機、対艦ミサイル、防空システムといった兵器システムの導入を通じて実行可能な抑止力と現実的な戦時能力を構築し、中国が実施するであろう水陸両用作戦を抑止することにあります。
優先事項への投資は「雄風3型」対艦ミサイルや「天弓3型」地対空ミサイルシステムなど、台湾の防衛上の需要に合わせた数多くの高度な国産兵器システムをもたらしましたが、結果的に台湾国防部が装甲戦闘車両(AFV)や自走砲(SPG)といった従来型の通常戦力への投資が大幅に避けられることになるという悪影響も出てしまいました。
台湾陸軍と海兵隊が保有する車両と装備品の大半については、一見すると、1970年代や1980年代前半のアメリカ陸軍と大差がないように見えます。アメリカから多くの現代的なアセット(2019年に108台の 「M1A2T "エイブラムス"」戦車、2020年に11基の「M142 "ハイマース"」多連装ロケット砲)や現地のメーカーから同様の新型兵器を調達したにもかかわらず、台湾は未だに保有する装備の全般的な旧式化に直面しているのです。
特筆すべきは、中華民国陸軍(ROCA)と中華民国海兵隊(ROCMC)の主力戦車が、国産の「CM-11」約450台と、1990年代にアメリカから購入した中古の「M60A3」460台であることでしょう。
「CM-11」は1980年代後半に米台が共同開発した、「M60A3」の車体に「M48A3」の砲塔を組み合わせたものであり、現在では「M1 "エイブラムス"」初期生産型の火器管制システム(FCS)と 「M68A1」105mm砲を装備しています。ROCAはこの戦車に爆発反応装甲(ERA)を装着することで装甲防御力を高めようとしてきましたが 、重量面での問題がERAの広範にわたる導入を妨げているようです。
「M60A3」は近代化改修を受けないまま運用され続けていますが、新しいエンジンとFCSを搭載する限定的なアップグレードの実施が数年後に計画されています。
人口2,300万人の島で歩兵を輸送するため、台湾は1980年代に「M113」装甲兵員輸送車(APC)の国産型の開発に着手しました。こうして登場した「CM-21」とし呼ばれるAPCは、自走迫撃砲、砲兵用牽引車、指揮車、「TOW」対戦車ミサイル搭載車など、多岐にわたる特別仕様のベースにも活用されました。
機械化歩兵旅団の火力と機動性を向上させるために、ROCAは「CM-21」を新型の装軌式AFVで置き換えたり、または補完したりするのではなく、合計で305台の(台湾で初めて就役するIFVである)「CM-34」装輪式歩兵戦闘車と650台の(ヘッダー画像で表示している)「CM-32」装輪式APCを発注しました。
「CM-32/34」の車体は、防御力と引き換えに機動性を大幅に向上させた新型105mm機動砲システムのベースにもなっています。今後納入される「M1A2T "エイブラムス"」に加えて、この新型もROCAの旧世代MBTの一部を置き換えることになるかもしれません。
台湾陸軍に機動的な火力支援能力をもたらしているのは、200台以上の「M109A2」及び「M109A5」155mm自走榴弾砲です。砲兵戦力には「M114」牽引式155mm榴弾砲とその国産版である「T-65」もありますが、今日では完全に旧式化した兵器と考えられています。
2021年に7億5,000万ドル(約1,075億円)の対外有償軍事援助(FMS)で40台の「M109A6」自走榴弾砲を導入するという試みがあったものの、アメリカ政府が生産上の障害で同自走砲を2026年まで納入できないと台湾に通知したため、中止に追い込まれてしまいました。新自走砲導入プランについては、すでに2020年に発注済みの「M142 "ハイマース"」11門に加え、同システムの追加発注を選択することで立ち消えとなる可能性があります。
ROCAは43門の「雷霆2000(RT/LT-2000)」多連装ロケット砲(MRL)も運用しており、同MRLには117mm、180mm、227mmのいずれかのロケット弾ポッドを2基搭載可能という特徴を誇っています。
また、より強大な重砲も継続して運用されています:その中でも注目すべきは、それらの中に「M1」155mm野砲、2「M115」203mm榴弾砲、「M110A2」203mm自走榴弾砲 SPG、そして中国沿岸近くに位置する金門島と馬祖島の掩体壕に設置された4門の巨大な240ミリ「M1」240mm榴弾砲などが含まれていることです。
- この一覧は、現在の台湾軍で使用されている全種類のAFVをリストアップ化を試みたものです。
- この一覧には利用可能な画像・映像などの視覚的エビデンスに基づいて確認されたものだけを掲載しています。
- レーダー、トラックやジープ類はこのリストの対象外です。
- 兵器の名前をクリックすると台湾で運用中の当該兵器の画像を見ることができます。
戦車
- 460 M60A3TTS (改修予定,海兵隊でも運用)
- 450 CM-11 '勇虎' ''M48H'' (改修予定)
- 100 CM-12 (大半は保管状態)
- 108 M1A2T (引き渡しを待つ段階)
軽戦車
工兵・支援車両
- 37 M88A1 "ハーキュリーズ" 装甲回収車
- 19* M88A2 "ハーキュリーズ" 装甲回収車 (発注中)
- 4 AAVR-7A1 水陸両用回収車
- LVTE-1 水陸両用地雷処理車
- 18 M9 装甲ブルドーザー
- 12 M48A5 架橋戦車
- 22 M3 水陸両用自走架橋車
- CM-27/A1 砲兵牽引車
- 200 CM-24/A1 弾薬運搬車 (海兵隊でも運用)
- 6 M992 野戦弾薬補給車 (海兵隊で運用)
指揮通信車
- M101 105mm榴弾砲 (海兵隊でも運用)
- T-64 105mm榴弾砲
- 250 M114 155mm榴弾砲
- 203 T-65 155mm榴弾砲
- 90 M1 'ロング・トム' 155mmカノン砲
- 70 M115 203mm榴弾砲 2種類 (2)
- 4 M1 '黒龍' 240mm榴弾砲
自走砲
- 43 RT/LT-2000 '雷霆2000' 117mm/180mm/227mm多連装ロケット砲
- 29* M142 "ハイマース"(発注中)
短距離弾道ミサイル(SRBM)
- 国家中山科学研究院「天戟 'スカイ・スピアー'」 [射程距離: 300km]
- M57 "ATACMS" (発注中) [射程距離: 300km]
地上発射式巡航ミサイル(GLCM)
- 国家中山科学研究院「雄風2型E」 [射程距離: 600-1,200km]
- 国家中山科学研究院「雲峰」 [射程距離: 1200-2,000km] (現物は未確認)
沿岸防衛システム
- 国家中山科学研究院「雄風2型」 [射程距離: 150km] 発射機が2種類: (2, バンカー発射型)
- 国家中山科学研究院「雄風2型B」 [射程距離: 250km] (公式名称と射程距離は未確認)
- 国家中山科学研究院「雄風3型」 [射程距離: ~140km]
- 国家中山科学研究院「雄風3型ER」 [射程距離: ~300km]
- ハープーン (ブロックII)* [射程距離: 120km] (発注中)
牽引式対空砲
- 20mm T-82S 20mm対空機関砲
- T-82T 20mm対空機関砲
- XTR-102 20mm対空機関砲
- エリコン「GDF」35mm対空機関砲
- ボフォース40mm艦載型対空機関砲(単装)
- ボフォース40mm艦載型対空機関砲(2連装)
自走式地対空ミサイルシステム
- ボーイング「AN/TWQ-1 "アヴェンジャー"」 [射程距離: 4-8km]
- フォード「MIM-72 "チャパラル"」 [射程距離: 5km] (「天剣2」に更新)
- 国家中山科学研究院「捷羚(天剣1型)」 [射程距離: 9km]
- 国家中山科学研究院「天剣2型」 [射程距離: 15km]
固定式地対空ミサイルシステム
- ジェネラル・ダイナミクス「スティンガー」(2連装発射機搭載型) [射程距離: 4-8km] (海兵隊でも運用)
- エリコン「スカイガード (RIM-7 "スパロー")」 [射程距離: 19km]
- MIM-104 "パトリオット"(PAC-2) [射程距離: 90+km]
- MIM-104 "パトリオット"(PAC-3) [射程距離: 30km]
- 国家中山科学研究院「天弓1型 (TK-1)」 [射程距離: 80km]
- 国家中山科学研究院「天弓2型 (TK-2)」 [射程距離: 150km] 2種類: (2, バンカー格納型)
- 国家中山科学研究院「天弓3型 (TK-3)」 [射程距離: 150km]
す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
ます。
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