2026年7月25日土曜日

深海の狩人:トルコの小型潜水艦


著:シュタイン・ミッツアー(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2022年2月2日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 数発の魚雷を装備して素早い機動性を誇るこれらの深海の狩人たちは、その小型さゆえに侮ることはできません。2010年、北朝鮮の潜水艇が韓国海軍の浦項級コルベット「天安」を撃沈した事件は、この種の潜水艇がもたらす脅威を改めて示すものだったと言えます。

 「天安」のアクティブ・ソナーは前日からその海域に潜伏していた北朝鮮の潜水艇を探知できなかったため、逆に潜水艇が警戒を怠っていた標的に対して533mm魚雷1発を発射・命中させたのです。この悲劇を引き起こした潜水艇は誰にも気づかれることなく北の暗い海へと姿を消し、小型潜水艦の威力を痛感させる悲劇的な出来事にしたのでした。

 今日、小型潜水艦の設計や運用を続けている国は世界的に見てもごく少数です。通常の攻撃型潜水艦に比べ、設計が比較的容易で調達コストも低いものの、航続距離が短い上に軽武装の場合が多いことから、ほとんどの海洋国家にとってその導入は理にかなった選択とは言えません。

 小型潜水艦(潜水艇)の配備に適した海洋・地理を備えた国のみが、その運用に関心を示しているのが現状です。そうした国にはインドネシア、イランや北朝鮮などが含まれており、後者の2か国は多数の小型潜水艦を運用していることはよく知られています。その他に思い浮かぶのは、エーゲ海をめぐる紛争に巻き込まれているトルコとギリシャです。

 エーゲ海には潜水艦にとって天然の隠れ家となる島々が点在しているため、この海域は「サブマリナーの楽園」と呼ぶにふさわしいものとなっています。トルコ海軍がエーゲ海に小型潜水艦隊を配備すれば、ギリシャによる対潜戦(ASW)は著しく困難になり、エーゲ海と地中海の一部は、かつてないほど危険な海域と化すでしょう。

 この理屈はギリシャ海軍にも当てはまります。この国は現在、ドイツからさらに「214型」潜水艦を購入する資金が不足しているため、より安価な選択肢として、40年以上使用している「209型」潜水艦の一部を小型の潜水艦に置き換えることを検討している可能性があるからです。

 トルコの小型潜水艦の設計開発も、国際市場で成功を収めるための絶好のポジションにあるようです。すでにトルコのUCAVAUSVの成功によって実証されているように、トルコの防衛企業は、さらなる市場への参入と制覇を見据えているのです。[1] [2]

 AUSV市場と同様に、トルコの造船所が小型潜水艦を海外に売り込む場合、入札競争に直面する可能性は比較的低いと思われます。現時点で小型潜水艦を輸出している国は北朝鮮と中国のみですが、北朝鮮は兵器の供給源としては、(ごく一部の国を除けば)世界の国々から除外されてしまいます。中国はこれまで、自国の潜水艦の海外販売においてほとんど成果を上げていません。これらの状況を踏まえると、トルコが近い将来に小型潜水艦市場で独占的な地位を確立する可能性も決してあり得ない話ではないわけです。[3]

Artwork by HI Sutton.

 トルコが有する2種の小型潜水艦(案)には、両タイプとも小型潜水艦に分類される一方で直接の競合関係にはないという、さらなる利点があります。STM社が開発した「STM500」は、攻撃型潜水艦の多くの能力を低コストで実現しており、その点が高く評価された結果、すでに最初の海外顧客を獲得しました。そして、ディアサン造船所が開発した「L Sub 33」は、ミゼット潜水艦に近いという違った特性を備えているのです。[4]

 トルコによるエーゲ海への小型潜水艦配備が「ゲームチェンジャー」になると主張する意見もあるようですが、むしろ「マーケットチェンジャー」と表現する方が適切だと言えるのではないでしょうか。これまで現代的な潜水艦を購入する資金がなかった国々も、今や世界的な影響力を拡大しつつある政治的中立国であるトルコから、手頃な価格でそれらを購入できるようになったからです。

 この「現代的な(小型)潜水艦」には「STM500」や「L Sub 33」だけでなく、非大気依存推進(AIP)システムを搭載した全長60メートルの国産攻撃型潜水艦「TS1700」も含まれる予定となっています。この設計自体はドイツ・トルコ共同開発の「214TN型」潜水艦が持つ多くの特徴を備えており、現在韓国とドイツが輸出向けに売り込んでいる「209型」及び「214型」の直接的な競合相手として位置づけられています。[5]

 今やトルコが、大型攻撃型潜水艦、異なるクラスの小型潜水艦2種に加え、浸透作戦用の超小型潜水艦を輸出できるようになったという事実は、ドイツやフランス、韓国といった国々の不利益と引き換えに、潜水艦市場に大きな波紋を呼ぶ可能性があるでしょう。

 今後10年以内にトルコ製潜水艦を導入する可能性のある国には、インドネシア、ウクライナ、パキスタン、カタール、トルクメニスタン、フィリピンなどが挙げられます。

 かつては調達コストが安いという理由で中古潜水艦を購入せざるを得なかった国々でさえ、今では新造艦を調達できるようになりました。なぜならば、前述の新型艦がようやく財政的に手の届く範囲に来たからです。こうした国には、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、コロンビア、ペルー、エクアドル、チリなどが含まれます。

 ほんの数年前まではトルコがドイツの潜水艦に依存していたにもかかわらず、現在ではトルコ製の潜水艦が欧州の数か国の海軍で使用されるという構想は、決して荒唐無稽な話ではなくなっているのです。

STM500の決定デザイン

 STM社の「STM500」は、現在販売されている小型潜水艦の中で最も先進的な設計であり、AIPシステム、(計8発の魚雷を搭載可能な)4基の魚雷発射管、射程220km前後の「アトマジャ」対艦巡航ミサイル、機雷敷設能力、そして自律型無人潜水機(AUV)や特殊部隊を展開する能力といった大型攻撃型潜水艦が持つ多くの性能も備えています。[6]

 運用については、国産設計の海軍戦闘管理システムによって制御されます。18人の乗組員で、(AIPシステムを使用すれば)最大4000海里(7,408キロメートル)の航続距離と最大30日間の作戦活動が可能です。これは、ドイツの「212型」のような大型攻撃型潜水艦の約半分に相当します。

 すでにSTMは、潜水艦の設計・建造・改修の分野で豊富な実績を有しています。現在、同社はトルコ海軍向けに214TN型「レイース」級潜水艦を建造しているほか、同海軍が保有する旧式の「209型」の改修も手掛けているのです。[7]

 同社の事業は、トルコ海軍の潜水艦だけでなく、パキスタン海軍の「アゴスタ90B」級潜水艦も対象としています。2016年、STMはパキスタン海軍が保有する「アゴスタ90B」級潜水艦2隻の近代化改修契約を3億5000万ドルで獲得しました。皮肉なことに、40年以上前にこれらの艦を建造したフランス企業を差し置いて落札したのでした。[8]

 「STM500」の設計はすでに完了しており、2022年に最初の1隻が建造される予定です。発注元は非公開ですが、ウクライナ、とりわけパキスタンが有力な候補とみられています(編訳者注:2026年に完成予定で発注国はいまだ公表されていない)。[4]

 トルコ海軍が小型潜水艦の導入を検討しているか否かは現時点では判然としません。海軍の潜水艦隊は現在、計6隻の「214TN」級潜水艦のうち、最初の1隻の引き渡しを受けている最中です(編訳者注:2026年現在で2隻が就役、1隻が艤装中である)。

 これらが就役した後、トルコは完全国産の攻撃型潜水艦「MILDEN」級の建造に着手する予定です。また、将来を見据えてエーゲ海での運用を目的として数隻の小型潜水艦を導入し、地中海での作成に従事する「214TN」級の負担軽減を図る可能性があります(編訳者注:「MILDEN」級の建造は2025年1月に開始された)。

MILDEN級

MILDEN級潜水艦(IDEF2025にて撮影)

 ディアサン社が設計した小型潜水艦は、スウェーデンの「A26」級潜水艦を彷彿とさせる独特の艦首が特徴的です。「L Sub 33」は、ナイジェリアやトルクメニスタンにおける数多くの水上戦闘艦で既に大きな成功を収めているディアサン造船所が設計した初の潜水艦であることも記しておきます。[9] [10]

 これらの国は「L Sub 33」の潜在的な顧客でもあり、トルクメニスタンによる潜水艦の導入は、この10年以内に実現する可能性が高いでしょう。実際、「L Sub 33」が、トルクメニスタン海軍が求める小型潜水艦の要件を満たすために特別に設計されたものである可能性も、決して非現実的だとは言い切れません。

 この小型潜水艦の全長は33.6メートルで、「STM500」よりもかなり小型となっています。
AIPシステムは搭載していないものの、この艦は隠密性の高い浸透任務に適した設計となっており、1600海里(2963.2キロメートル)という航続距離と水中スラスターがその強力な武器となります。小型であることに伴い、搭載兵装は533mm魚雷2発と沈底機雷6発のみです。[11]

 「L Sub 33」の乗員は6~8名で、さらに8名の特殊部隊を乗せることが可能で。特殊部隊員は魚雷発射管の下にある潜水準備室を通じて潜水艦への出入りを行うようです。こうした能力を備える「L Sub 33」は、本質的に「ハンター・キラー型潜水艦」と「浸透型潜水艦」の機能を一つに融合させた設計となっています。

L Sub 33の最終デザイン

 ディアサン社が手掛けたもう1つの小型潜水艦の設計案は、「多目的SEAL潜水艦」の仮称で呼ばれており、フロッグマンや特殊部隊を敵の海域の奥深くに潜入させることを目的に特別に設計されたものです。

 全長19.2メートルのこの流線型の船は航続距離が約100海里(185.2キロメートル)あり、2名の乗員に加え、8名のフロッグマンや特殊部隊員を乗せることが可能です。[11]

 ディアサンの他の艦艇設計と同様に「多目的SEAL潜水艦」も輸出専用に設計されたものと思われますが、将来的には、トルコ海軍が求める特殊部隊とその装備を輸送するためのステルス性のある輸送艇としての要件を満たす可能性も否定できません。

 ちなみに、ディアサン社はこれら2種類の小型潜水艦に加え、600kgのペイロードと50海里(92.6キロメートル)の航続距離を持つ全長6.5メートルのAUVも開発しています。[11]


多目的SEAL潜水艦


小型潜水艦 - ハンターキラー
  • STM500 [STM] (6発の「アクヤ」533mm魚雷、「アトマジャ」AShMs または 機雷で武装可 )
  • L SUB 33 [ディアサン] (2発の「アクヤ」533mm魚雷 または 6発の沈底機雷で武装可)

小型潜水艦 - 浸透・潜入作戦用

L SUB 33の透視図(初期デザイン)


[1] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[2] The Market Leader: Turkey’s Indigenous Unmanned Surface Vessels (USVs) https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/the-market-leader-turkeys-indigenous.html
[3] CSIC_MS200 http://www.hisutton.com/CSIC_MS200.html
[4] https://twitter.com/TayfunOzberk/status/1460217754670313481
[5] Submarine TS1700 https://www.stm.com.tr/en/our-solutions/naval-engineering/submarine-ts1700
[6] IDEF 2021: Turkish industry unveils three new submarine designs https://www.navalnews.com/naval-news/2021/08/idef-2021-turkish-industry-unveils-three-new-submarine-designs/
[7] Turkish Navy Type 209-1200 AY Class Submarine Modernization Project https://www.stm.com.tr/en/our-solutions/naval-engineering/turkish-navy-type-209-1200-ay-class-submarine-modernization-project
[8] Despite French Sanctions, Turkey Making Progress in Pak's Agosta 90B Sub Upgrade https://www.defenseworld.net/news/26416/Despite_French_Sanctions__Turkey_Making_Progress_in_Pak_s_Agosta_90B_Sub_Upgrade
[9] Maritime Success: Nigeria Orders Turkish OPV 76s https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/maritime-success-nigeria-orders-turkish.html
[10] Bigger Business: Turkey Unveils F142 Frigate Design https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/bigger-business-turkey-unveils-f142.html
[11] L Sub 33 http://www.dearsan.com/pdfler/DEARSAN%2033m%20LSUB.pdf


 お知らせ2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 
お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました

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2026年7月16日木曜日

そして近代へ:イスタンブールの都市史を形づくった通勤列車


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2023年9月6日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 わが国を世界で最も繁栄し、文明化された国々の水準にまで引き上げよう (ムスタファ・ケマル・アタテュルク)


 イスタンブールの大陸間を結ぶマルマライ線は、現代のシルクロードとして称賛されています。ボスポラス海峡の下を走るトンネルを通じてイスタンブールのヨーロッパ側とアジア側を結ぶマルマライ線は現代技術の賜物であり、多数の駅を網羅し、地下鉄やトラム、バス高速輸送システム(BRT)などの他の交通機関との接続を実現することで、イスタンブール全域の交通網を劇的に改善したのです。全長76.6kmの路線には43の駅があり、そのうち14駅がイスタンブールのヨーロッパ側に位置しています(編訳者注:ボスポラス海峡横断地下鉄整備事業について、日本政府は円借款を1999年より供与したほか、海底を横断するトンネル建設については、大成建設がトルコ企業との協力のもと取り組んだ。しかし、トルコ側はトンネルの追加工事費用を大成建設に今も未払いのままであることも記してしておく

 あまり知られていないことですが、マルマライ線はイスタンブールの都市公共交通における最初の革命ではありません。1955年12月、トルコ初の電化鉄道として開通したイスタンブール・ハルカリ線が初の革命と言えます。同路線は、ヨーロッパで最も早く電化された25kV交流路線の一つにしてトルコ初の通勤路線でもありました。技術的な詳細については割愛しますが、25kV交流電化は、高速鉄道や通勤路線のような利用頻度の高い路線に最適なものです。それまで25kV交流電化は広く普及していなかったものの、その後、世界中で急速に普及しました。

 トルコ国鉄(TCDD – Türkiye Cumhuriyeti Devlet Demiryolları)は、フランスのアルストム社が設計した「E8000」系電車(EMU)28編成を購入し、イスタンブール・ハルカリ線での運行に投入しました。[1]

 これらの車両はフランスのアルストム、デ・ディートリッヒ・フェロヴィエール、ジュモン社によって製造されたものです。「E8000」系は当時としてはかなり近代的な車両で、丸みを帯びた前面形状を採用し、電子設備は車体の下部に配置されているという特徴がありました。その頑丈さにより、1970年代のイスタンブールにおける急速な人口増加に伴う過酷な使用にも耐えることができたのです。

 1979年以降、「E8000」系はアルストム社が設計し国内のTÜVASAŞ(トゥバサシュ)が製造した「E14000」系の導入で更新され始め、続く2010年には、(トルコと韓国の合弁企業である)ユーロテム社によって設計・製造された「E23000」系が導入されました。[2]

 「E23000」系は、2014年にマルマライ線の建設のためにイスタンブール・ハルカリ線が廃止されるまで、さらに4年間同線で運行されました。マルマライ線は、ビザンチン時代の遺跡が発見されたことにより4年の遅れが生じたものの、2019年に本格運行が開始されたことは周知のとおりです。

 ちなみに、マルマライ線は、イスタンブールのハルカリ線と1969年に電化されたアジア側のハイダルパシャ・ゲブゼ線を結んでいます。


イエディクレ駅を通過する2両編成の「E8000」系 EMU:1956年4月撮影

 「E8000」系と共に、同じ仏アルストム社が設計・製造した「E4000」系電気機関車3両も導入されました。[3] [4]

 「E4000」系はトルコで初めて就役した電気機関車として知られています。1955年までは、全旅客列車と貨物列車が環境汚染の原因である蒸気機関車によって牽引されていたのです。この電気機関車は、ハルカリ駅で特急列車や貨物列車を引き継いでイスタンブールへの最終区間を走行することを目的として導入されたものであり、沿線の地域における大気汚染の低減に大きく貢献しました。[4]

 「E4000」系が運行された全長28kmのイスタンブール・ハルカリ線は平坦な路線であったため、往復の短い区間では高速走行は必要とさていなかったようです。その結果、この機関車の設計は比較的シンプルなものとなり、変圧器から直接給電される単相交流モーターを採用していましたが、この技術はすぐに時代遅れとなってしまいました。1957年までに直流式電機機関車の製造は終了し、それ以降、「E4000」系は技術的に時代遅れとなってしまったわけです。[3]

 この機関車は仏ポール・アルザン社によって設計されたものであり、その美しい独特なデザインは長く人びとの記憶にとどまり続けています。

「E4000」系電気機関車

 「E8000」系は、2両の動力車と1両の中間客車で構成されていました。駆動ユニット自体は、Cユニットにのみ荷物室が設けられている点を除くと全てが同じです。「E8000」系は最大3両まで連結可能で、合計で9両編成となることが可能という特徴を有していました。

 国内で製造された中間車を追加することで、この電車が4両編成に延長された時期もありました。しかし、重量の増加により、当初から低かった「E8000」系の加速性能がさらに低下したおかげで、この仕様はすぐに廃れたようです。 [2]

 イスタンブールのアジア側にあるハイダルパシャ・ゲブゼ線で短期間使用されたことを除けば、この電車は56年にわたる運用期間中、一貫してイスタンブール・ハルカリ線で運行されていました。


 1970年代以降、イスタンブールの人口は、郊外に建設された新しい工場が全国各地から労働者を呼び寄せたことで、急激に増加し始めました。人口が急増した結果、かつては郊外だった地域が急速にイスタンブール大都市圏に飲み込まれていったため、公共交通の需要が高まったことは言うまでもないでしょう。


これに加え、「E8000」系では編成が最大でも9両という点が問題となりました。列車が過密状態になり、乗客が乗り降りすするために車外に身を乗り出さなければならないような事態も時折発生したのです。


 1970年代までに、トルコの蒸気機関車のほとんどは電気機関車やディーゼル機関車に取って代わられたものの、「E4000」系イスタンブール・ハルカリ線でのみ運行され続けました。

 信頼性が低下し続け、より現代的な機関車がすでに容易に入手可能となっていたため、これらの旧式機関車は1990年代末に引退させることが決定されました。[3]

 引退後、これらの機関車はハルカリ車両基地の使われなくなった線路に放置され、2010年代半ばまでそこにありました。その後、姿が見かけなくなりましたが、同所にマルマライ線の「E32000」系電車用の新車両基地を建設されたことを踏まえると、おそらくは解体されたものと思われます。[3]


 「E4000」系は3両と台数が少ない上に整備を要する交流モーターを搭載していたため、運用の継続は非現実的と判断された一方、「E8000」系は1990年代初頭以降、少なくともあと20年は運行が続けられる予定でした。

 これらの電車はヴィンテージ風の白ベージュと赤の塗装は、窓の下に赤いストライプが入った、よりモダンな外観の白と青の塗装に塗り替えられました。しかしながら、内外装にはそれ以外の改造や改良が一切加えられず、2011年に引退するまで、1950年代当時のままの状態で運行され続けたことは特筆に値するでしょう。

 「E8000」系の大部分はスクラップとなりましたが、今日でも僅か4編成が生き残っています。


 マルマライ線のより現代的で快適な「E32000」系への更新に伴って「E8000」系が段階的に廃止されたことは、イスタンブール・ハルカリ線を日常的に利用する乗客にとって間違いなく喜ばしいことでした。「E8000」系が、イスタンブール・ハルカリ線に初めて導入された当時の斬新さを思い起こさせる存在として記憶されることを願うばかりです。

 現在のマルマライ線と同様に、イスタンブール・ハルカリ線も当時としては画期的なものであり、ヨーロッパの他の多くの都市に先駆けて、イスタンブールの公共交通機関を飛躍的に改善したことも忘れてはいけません。

 マルマライ線はこの偉業をさらに上回るものであり、2022年後半にハルカリからイスタンブール空港行きのM11号線への接続が実現すれば、イスタンブールの公共交通機関の魅力と利便性はさらに高まるでしょう。


[1] E8000 http://www.trainsofturkey.com/pmwiki.php/MUs/E8000
[2] E14000 http://www.trainsofturkey.com/pmwiki.php/MUs/E14000
[3] BB 4 000 Alsthom https://users.metu.edu.tr/tonuk/E40003/4000/
[4] E4001 to E4003 http://www.trainsofturkey.com/index.php/Traction/E4000


 お知らせ2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました


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