著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
「あなた方がわざわざ不可能な夢の実現に全力を尽くすことはない。私たちと彼ら(欧米の防衛装備製造メーカー)の間の架け橋を築き、私たちの通訳として行動してくれるだけで十分だ。」 (2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)[1] ※「バイカル社」はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです
いわゆる「スウォームUAV」のコンセプトは戦争における戦い方を激変させる可能性があります。なぜならば、機敏なUAVの群れ(スウォーム)が地上と空中の目標を攻撃し、偵察や電子戦の任務を遂行し、互いに密接に交信し合いながら、これまでの戦場では見られなかった独立した戦争の階層をもたらすことになるからです(※スウォームUAV:飛行制御技術等により、鳥や蜂の群れのように、あたかも1個体のごとく密集しながら同時に動いたり、分散・集合することができるUAV。自動プログラミングやAIで制御される場合が多い)。
いわゆる「スウォームUAV」のコンセプトは戦争における戦い方を激変させる可能性があります。なぜならば、機敏なUAVの群れ(スウォーム)が地上と空中の目標を攻撃し、偵察や電子戦の任務を遂行し、互いに密接に交信し合いながら、これまでの戦場では見られなかった独立した戦争の階層をもたらすことになるからです(※スウォームUAV:飛行制御技術等により、鳥や蜂の群れのように、あたかも1個体のごとく密集しながら同時に動いたり、分散・集合することができるUAV。自動プログラミングやAIで制御される場合が多い)。
その全てが斬新であるため、近年にテストされている大部分の「スウォームUAV」のコンセプトが実践的な運用の域に達するには、まだ何年もかかると思われます。
とはいえ、「スウォームUAV」が近接状態で連携して相乗効果的に機能できることは、すでに数々の国際的なイベントで知られているドローンで演出された、見応えのある「光のショー」によって証明されています。
しかしながら、民生用のアプリケーションを敵の電子妨害やなりすまし攻撃に直面しても実戦投入可能な軍事技術に変えることは、依然として大きな課題のままとなっています。
特に、最近の中国で200機のドローンが同時に衝突した事故は、ドローンの運用を一本化した際に何か問題が生じた場合は、全機が一斉に衝突・喪失する可能性を意味することを痛々しく思い出させてくれる事例となるはずです。[2] [3]
同様に、2018年には個人が市販のドローン・ジャマーを用いて香港のドローンによる光のショーを妨害し、46機ものドローンを地上に落下させるという事件があったことにも注目する必要があることは言うまでもありません。[4]
近年では、いくつかの国が軍事利用を目的とした「スウォームUAV」関連の技術開発中であり、その国々には中国やロシアといった予想され得る大国だけでなく、スペインや南アフリカも含まれます。[5] [6] [7] [8]
これらの国々がどこまで多重使用の運用システムを実用化できるのかは未知数であり、現在続行されているプロジェクトの多くが完全に単なる技術実証にとどまる可能性があります。
一方、アメリカでは、陸・海・空軍、海兵隊、そしてDARPA(国防高等研究計画局)の全てが各自に「スウォームUAV」プロジェクトを推進しており、中には同時に複数のプロジェクトに取り組んでいる軍種もあります。[9]
「スウォームUAV」に大きな関心を持って注目しているもう1つの国があります...トルコです。現時点でトルコ軍は「STM」社製の回転翼型徘徊兵器「カルグ」を運用していますが、能力向上型である「カルグ-2」が、急速に拡大しつつある無人機戦力の一部として、近いうちに導入される予定となっています。
技術的には「スウォームUAV」ではないものの、「カルグ」シリーズの大規模な実戦投入で得られた運用経験は、今後の「スウォームUAV」の研究において非常に有益なものとなるでしょう。
「カルグ」はこれまでに、シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフでの戦いに投入されています(注:特にリビアにおいては「自立型AI兵器」が初めて実戦投入されたということで、我が国でも悪名高い兵器として広く知られています)。 [10] [11] [12]
これらの国々がどこまで多重使用の運用システムを実用化できるのかは未知数であり、現在続行されているプロジェクトの多くが完全に単なる技術実証にとどまる可能性があります。
一方、アメリカでは、陸・海・空軍、海兵隊、そしてDARPA(国防高等研究計画局)の全てが各自に「スウォームUAV」プロジェクトを推進しており、中には同時に複数のプロジェクトに取り組んでいる軍種もあります。[9]
「スウォームUAV」に大きな関心を持って注目しているもう1つの国があります...トルコです。現時点でトルコ軍は「STM」社製の回転翼型徘徊兵器「カルグ」を運用していますが、能力向上型である「カルグ-2」が、急速に拡大しつつある無人機戦力の一部として、近いうちに導入される予定となっています。
技術的には「スウォームUAV」ではないものの、「カルグ」シリーズの大規模な実戦投入で得られた運用経験は、今後の「スウォームUAV」の研究において非常に有益なものとなるでしょう。
「カルグ」はこれまでに、シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフでの戦いに投入されています(注:特にリビアにおいては「自立型AI兵器」が初めて実戦投入されたということで、我が国でも悪名高い兵器として広く知られています)。 [10] [11] [12]
「STM」製「カルグ」徘徊兵器は、リビアやシリア、そして2020年のナゴルノ・カラバフに投入されて絶大な効果を発揮しました。 |
トルコの防衛産業を管理する機関であるトルコ国防産業局(SSB)は、現在、トルコにおける「スウォームUAV」の技術基盤を徐々に構築することを目的として、数多くのプロジェクトを支援しています。
SSBのスマイル・デミール局長によると、これらのプロジェクトは、中小企業が「スウォームUAV」の運用で必要とされるソフトウェアやアルゴリズムの開発を手助けすることを目的としたものです。[13]
これらのプロジェクトにおいて中小企業に焦点を当てることは、小規模な防衛関連企業を開花させるための環境を構築するというトルコ政府による幅広い取り組みに合致しており、これまでのところ、この政策は同国にとてつもない効果をもたらしています。
2020年9月には、自身でUAV専用の飛行空域を有するアンカラ近郊の「カレジックUAV試験センター」にて、初の「スウォームUAV」競技会が開催されました。[13] [14]
このコンペは、それぞれ複数のステージから成る全4つのフェーズで構成されています。第1フェーズでは、合計で26社が参加し、固定翼型「スウォームUAV」が屋外環境下における目標の探知と破壊のシミュレーションを実施しました。より多くの企業が参加できるようにするため、このコンペでは競技者が技術開発費に関する補助金を申請することができる仕組みを採用しています。[13]
この「スウォームUAV」競技会の模様はここで視聴することができます。
トルコは、既存の企業に「スウォームUAV」技術に取り組むことへ誘い入れ、それを可能にする財政支援をするだけではなく。世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めようと試みています。
これを成し遂げようとする方法の1つが、毎年開催されるトルコ最大の航空・宇宙技術展覧会「テクノフェスト」というイベントです。
今の若者は明日の未来であり、彼らはいつか軍用レベルの「スウォームUAV」の設計を担ったり、ほかの分野のハイテク産業で働くかもしれません。
したがって、「テクノフェスト」では、高校生や大学生を対象とした「スウォームUAV」の競技会も開催されています。このコンペの主要な目的は、与えられた課題を遂行できるUAVのスウォームを組織するために必要なソフトウェアやアルゴリズムを開発し、実際の環境下でその性能を実証することにあります。[15]
このコンペでは、参加チームがヴァーチャルと現実の両方で「スウォームUAV」を飛行させます。
コンペで実施されるミッションには、編隊を組んでの離陸、同時操作の実施、スウォームへの機体の追加や離脱、そして各ドローンの一体化的な集結・散開が含まれます。[15]
(アメリカなどを除くと)トルコはUAVの使用に関してパイオニア的存在であり、かつてはUAVの使用が不可能とされてきた戦闘シナリオにUAVを投入してきました。
今やほぼ全てのカテゴリーのUAVを開発しているトルコが世界で最初に「スウォームUAV」を実用化し、最終的に使用面での高い信頼性と価格面での手頃なシステムを創出する国の1つとなる可能性については、考えられないことではないように思われます。
「テクノフェスト」で競い合う学生たちは、明日のパイオニアです。(「バイラクタルTB2」などを生み出した)「バイカル・テクノロジー」社と同様に、彼らも小さいことから始めるでしょう。しかし、彼らの技術基盤の支援を決意していると思われる国家の姿勢と「テクノフェスト」のようなイベントがあれば、技術的なブレークスルーが起こり得ることは間違いなくあるでしょう。
彼らの成功は、いつの日か当記事冒頭の引用文に対する激しい反証を示すことになるに違いありません。
"私たちは状況を見極め、私たち自身で義務を果たしました"(オズデミル・バイラクタル:1949年 - ∞バイカル・テクノロジー」社の創業者) |
[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Drone show in China goes horribly wrong: dozens of drones crashed https://dronexl.co/2021/07/07/drone-show-drones-crashed/
[3] Watch Drones Rain Down From the Sky During a Failed Light Show https://interestingengineering.com/drones-rain-down-from-the-sky-during-failed-light-show
[4] HK$1 million in damage caused by GPS jamming that caused 46 drones to plummet during Hong Kong show https://www.scmp.com/news/hong-kong/law-and-crime/article/2170669/hk13-million-damage-caused-gps-jamming-caused-46-drones
[5] China Conducts Test Of Massive Suicide Drone Swarm Launched From A Box On A Truck https://www.thedrive.com/the-war-zone/37062/china-conducts-test-of-massive-suicide-drone-swarm-launched-from-a-box-on-a-truck
[6] Russia’s latest combat drone to control swarm of reconnaissance UAVs https://tass.com/defense/1265961
[7] Escribano designs a swarm system of UAVs for Surveillance and Recognition missions https://www.edrmagazine.eu/escribano-designs-a-swarm-system-of-uavs-for-surveillance-and-recognition-missions[8] Paramount Group pitches new drone swarm amid region’s lack of countermeasures https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/idex/2021/02/22/paramount-group-pitches-new-drone-swarm-amid-regions-lack-of-countermeasures/
[9] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One? https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=5eca88062f5c
[10] STM’nin yerli kamikaze İHA’sı KARGU PKK/YPG’li teröristleri vurdu https://www.defenceturk.net/stmnin-yerli-kamikaze-ihasi-kargu-pkk-ypgli-teroristleri-vurdu
[11] Indigenous kamikaze drone KARGU by STM appears in Libya https://en.defenceturk.net/indigenous-kamikaze-drone-kargu-by-stm-appears-in-libya/
[12] STM’s KARGU spotted in Azerbaijan https://en.defenceturk.net/stm-kargu-spotted-in-azerbaijan/
[13] First Stage Left Behind in SSB’s Swarm UAV Competition https://www.savunmahaber.com/en/first-stage-left-behind-in-ssbs-swarm-uav-competition/
[14] UAV and Drone Test Center Opens in Ankara https://en.rayhaber.com/2020/07/ankarada-iha-ve-drone-test-merkezi-aciliyor/
[15] Swarm UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-17.html
[16] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One?https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=449d08e2f5c6(これ以降の引用記事は日本語へ翻訳した際の参考資料)
[17] Swarms of Unmanned Aerial Vehicles — A Survey https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2452414X18300086#:~:text=A%20swarm%20or%20fleet%20of,%2C%20and%20land%20(VTOL).
[18] 1000機の「群れ」が一斉突撃? 米のマイクロドローン群実験成功で空戦は一変するか https://trafficnews.jp/post/63639
[19] 群制御の手法を応用した 無人機の編隊飛行 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/atla/research/dts2011/dts2011.files/low_pdf/P.pdf
[20] 無人機とエア・パワー戦略 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/asdf/meguro/center/img/03_mujinki_to_airpwr1.pdf
[21] 米海兵隊、いよいよスウォーム攻撃対応の自爆型UAV調達検討に着手 https://grandfleet.info/us-related/u-s-marine-corps-considers-self-destruct-uav-to-respond-to-swarm-attacks/
[22] 五輪のドローン演出と軍事用ドローン・スウォーム戦術の違い https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210724-00249601
[23] 誤解:「イージス艦ですらドローン攻撃に対処できない?」と論文の読み方 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210805-00251713
[24] 殺人AI兵器、世界初使用か https://nordot.app/779997234987859968