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2022年6月2日木曜日

大空へ飛び上がった夢:自家製UAV「アルプクシュ」



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年の「テクノフェスト(注:トルコ最大の航空宇宙分野のイベント)」では多数の著名なUAVが展示されていましたが、それらと一緒に型破りで好奇心をそそる見た目のUAVも展示されていました。

 この2つの離れ業を組み合わせたのが、トルコ人エンジニアのアルペル・サリサン氏によって設計された小型UAV「アルプクシュ」です。

 もともと「アルプクシュ」は、世界最小の双発有人機という興味深い栄誉を持つ娯楽用の自家製機「コロンバン・クリクリ」シンプルなコピー機としてキャリアをスタートさせました。ところが、アルペル氏はこの数年のどこかの時点で自分の「クリクリ」を無人型に改造し、この国で増大しつつあるUAVのリストに加えました。

 住宅のテラスで組み立てられた世界初のUAVとして「アルプクシュ」は2021年に開催された「テクノフェスト」でデビューしましたが、すでにそれ自体が成果となっていることを疑う余地はありません。[1]

 このUAVは翼の下に爆弾やミサイルを搭載するのではなく、作物の生長のモニタリングといった農作業や山火事への対応などの広範囲に及ぶ民生用途での使用を目的としたものです。

 この機体は近い将来に最初のテスト飛行を実施する予定であり、ついに自家製UAVに改造された飛行機の将来が試されることになります(注:2022年4月14日に初飛行を成功裏に終えました)。[1]

 「アルプクシュ」は軍用ではなく民間市場を対象としていますが、すでにトルコの危機管理部門で使用されているUAVや、同じ目的で大手企業によって開発されているUAVが多数存在しています。したがって、「アルプクシュ」の開発の継続については、サリサン氏のビジョンを分かち合う投資家の存在に左右される可能性が高いと思われます。

 すでに飽和状態のマーケットに新たなコンセプトのドローンが入る余地があるかどうかは定かではないものの、低い導入コストが主要なセールスポイントになるかもしれません。反対に、双発機であることや機体の大きさが、同クラスの単発機よりも運用コストを高いものにする可能性があることは否定できません。


性能諸元
  1. 速度: 150km/h/ 92mph / 80 ノット[2]
  2. 運用高度: 4500m / 15.000 フィート
  3. 滞空時間: 最大11時間(各フライトの概要に左右される)
  4. 全幅: 5 メートル
  5. 全長: 4 メートル
  6. 最大離陸重量t: 160kg
  7. ペイロード: 最大50kg (主に機首下部に搭載されたEO/IRセンサーで占められている)


 アルペル・サリサン氏は、2016年のトルコで発生したクーデター未遂で負った傷を自宅で療養している間に、「コロンバン・クリクリ」のデザインに興味を持ったと伝えられています。[3]

 ほかの人たちは単に夢を見続けるだけで終わりますが、彼の夢は空へ飛び上がりました。というのも、サルサン氏はこの後に自宅のテラスでクリクリのコピーを作り始めたからです。

 彼は全費用を自分で負担したと延べており、UAVに改造されるまでに機体の約70パーセントの組み立てが完了していました。[3]

 自家製飛行機とUAV化という2つのプロジェクトのDIY性は、機体の外装構造を形成するアルミパネル上に残った(工場で施された製造番号などの)印字にはっきりと表れています。

飛行中の「コロンバン・クリクリ」(イメージ画像であり、「アプルクシュ」とは無関係です)

 「アルプクシュ」UAVの起源が「MC-15 "クリクリ" 」の自家製コピー機であることは、2つを並べて比較すると容易にわかります(下の画像)。

 小型双発機をUAVに改修するには、いくつかの設計上の課題があったはずです。 最も注目すべきポイントは、「アルプクシュ」の主な質量がエンジンとEO/IRセンサーが搭載されている機首に集中していることでしょう。このことは、飛行中や離着陸時に安定した飛行特性を維持させるために、その重量を胴体の後部で相殺する必要が生じることを意味しています。

「アルプクシュ」(UAV改造前)

「アルプクシュ」(UAVに改修後)

 「アルプクシュ」が今の形状で実用化される可能性は低いですが、サリサン氏のプロジェクトは個人の創意工夫と夢を実現する可能性を証明しています。

 もちろん、個人的な野心や(特に)資金面ではできることに限界があります。しかし、テクノフェストでの展示は、おそらく「アルプクシュ」の短いキャリアの中で最も重要な晴れ舞台であり、開発を継続するための資金を確保する最も現実的な機会でもあります。

 このUAVはまだ最初のテスト飛行が実施されていないことから、同機に興味を持つ投資家はまずは最初の成功を待つことになるでしょう。

 それでもなお、トルコは近年でこのようなプロジェクトを積極的に支援している世界でも数少ない国の1つであり、それが自国の技術基盤と軍需産業を今日の快進撃が続く巨人に成長させることを可能にしていることを忘れてはなりません。このような投資にはリスクが伴いますが、過去にそれをしっかりと受け入れたことで、この分野でトルコは報われたのです。

追記
 2022年4月14日、この「アルプクシュ」は遂に初飛行に成功しました。これを機会に当記事の編訳者はサリサン氏にコンタクトをとり、当記事をより理解しやすくするための簡単なインタビューを行いました。

 Q:あなたは有人機を作成していたはずですが、途中でUAV化に方向転換しました。その理由は何ですか?
 A:初飛行に伴う事故などでの人命の損失をゼロにしたかったので、変更しました。

 Q:このUAVの操作方法はどのようなものですか、遠隔操作かプログラム飛行ですか?
 A:今回の初飛行ではRCの手動飛行でしたが、プログラム飛行も可能です。

 Q:機首に装備されたEOターレットは実際に動作可能なのでしょうか?
 A:初飛行では実現していませんが、後に使用可能となります。

 Q:初飛行の成果をどう思いますか?また、今後も飛行試験は続けられますか?
 A:強風の中の初飛行にしては大成功だったと思います。神がお許しになれば、今後に再飛行が実施されるでしょう。

 Q:今後のプロジェクトの成功には資金が必要と思われますが、あなたはクラウドファンディングや支援サイトの立ち上げは考えていますか?
 A:現時点では考えていません。



[1] July 15 Veteran exhibits the plane he built on the terrace of his house at TEKNOFEST https://www.sabah.com.tr/yasam/2021/09/25/15-temmuz-gazisi-evinin-terasinda-yaptigi-ucagi-teknofest-te-sergiliyor
[2] https://twitter.com/SavunmaTR/status/1440940749823021064
[3] 15 Temmuz gazisi evinin balkonunda kendi uçağını yapıyor https://www.bursadabugun.com/haber/15-temmuz-gazisi-evinin-balkonunda-kendi-ucagini-yapiyor-1175458.html

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。



おすすめの記事

2022年5月27日金曜日

来たるべきUAVの「スウォーム戦」時代に備えよ :その実現に向けたトルコの取り組み



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 「あなた方がわざわざ不可能な夢の実現に全力を尽くすことはない。私たちと彼ら(欧米の防衛装備製造メーカー)の間の架け橋を築き、私たちの通訳として行動してくれるだけで十分だ。」 (2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)[1] ※「バイカル社」はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです

 いわゆる「スウォームUAV」のコンセプトは戦争における戦い方を激変させる可能性があります。なぜならば、機敏なUAVの群れ(スウォーム)が地上と空中の目標を攻撃し、偵察や電子戦の任務を遂行し、互いに密接に交信し合いながら、これまでの戦場では見られなかった独立した戦争の階層をもたらすことになるからです(※スウォームUAV:飛行制御技術等により、鳥や蜂の群れのように、あたかも1個体のごとく密集しながら同時に動いたり、分散・集合することができるUAV。自動プログラミングやAIで制御される場合が多い)。

 その全てが斬新であるため、近年にテストされている大部分の「スウォームUAV」のコンセプトが実践的な運用の域に達するには、まだ何年もかかると思われます。

 とはいえ、「スウォームUAV」が近接状態で連携して相乗効果的に機能できることは、すでに数々の国際的なイベントで知られているドローンで演出された、見応えのある「光のショー」によって証明されています。

 しかしながら、民生用のアプリケーションを敵の電子妨害やなりすまし攻撃に直面しても実戦投入可能な軍事技術に変えることは、依然として大きな課題のままとなっています。
特に、最近の中国で200機のドローンが同時に衝突した事故は、ドローンの運用を一本化した際に何か問題が生じた場合は、全機が一斉に衝突・喪失する可能性を意味することを痛々しく思い出させてくれる事例となるはずです。[2] [3]

 同様に、2018年には個人が市販のドローン・ジャマーを用いて香港のドローンによる光のショーを妨害し、46機ものドローンを地上に落下させるという事件があったことにも注目する必要があることは言うまでもありません。[4]

 近年では、いくつかの国が軍事利用を目的とした「スウォームUAV」関連の技術開発中であり、その国々には中国やロシアといった予想され得る大国だけでなく、スペインや南アフリカも含まれます。[5] [6] [7] [8]

 これらの国々がどこまで多重使用の運用システムを実用化できるのかは未知数であり、現在続行されているプロジェクトの多くが完全に単なる技術実証にとどまる可能性があります。

 一方、アメリカでは、陸・海・空軍、海兵隊、そしてDARPA(国防高等研究計画局)の全てが各自に「スウォームUAV」プロジェクトを推進しており、中には同時に複数のプロジェクトに取り組んでいる軍種もあります。[9]

 「スウォームUAV」に大きな関心を持って注目しているもう1つの国があります...トルコです。現時点でトルコ軍は「STM」社製の回転翼型徘徊兵器「カルグ」を運用していますが、能力向上型である「カルグ-2」が、急速に拡大しつつある無人機戦力の一部として、近いうちに導入される予定となっています。

 技術的には「スウォームUAV」ではないものの、「カルグ」シリーズの大規模な実戦投入で得られた運用経験は、今後の「スウォームUAV」の研究において非常に有益なものとなるでしょう。

 「カルグ」はこれまでに、シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフでの戦いに投入されています(注:特にリビアにおいては「自立型AI兵器」が初めて実戦投入されたということで、我が国でも悪名高い兵器として広く知られています)。 [10] [11] [12]

「STM」製「カルグ」徘徊兵器は、リビアやシリア、そして2020年のナゴルノ・カラバフに投入されて絶大な効果を発揮しました。

 トルコの防衛産業を管理する機関であるトルコ国防産業局(SSB)は、現在、トルコにおける「スウォームUAV」の技術基盤を徐々に構築することを目的として、数多くのプロジェクトを支援しています。

 SSBのスマイル・デミール局長によると、これらのプロジェクトは、中小企業が「スウォームUAV」の運用で必要とされるソフトウェアやアルゴリズムの開発を手助けすることを目的としたものです。[13]

 これらのプロジェクトにおいて中小企業に焦点を当てることは、小規模な防衛関連企業を開花させるための環境を構築するというトルコ政府による幅広い取り組みに合致しており、これまでのところ、この政策は同国にとてつもない効果をもたらしています。

 2020年9月には、自身でUAV専用の飛行空域を有するアンカラ近郊の「カレジックUAV試験センター」にて、初の「スウォームUAV」競技会が開催されました。[13] [14]

 このコンペは、それぞれ複数のステージから成る全4つのフェーズで構成されています。第1フェーズでは、合計で26社が参加し、固定翼型「スウォームUAV」が屋外環境下における目標の探知と破壊のシミュレーションを実施しました。より多くの企業が参加できるようにするため、このコンペでは競技者が技術開発費に関する補助金を申請することができる仕組みを採用しています。[13]

この「スウォームUAV」競技会の模様はここで視聴することができます



 トルコは、既存の企業に「スウォームUAV」技術に取り組むことへ誘い入れ、それを可能にする財政支援をするだけではなく。世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めようと試みています。

 これを成し遂げようとする方法の1つが、毎年開催されるトルコ最大の航空・宇宙技術展覧会「テクノフェスト」というイベントです。

 今の若者は明日の未来であり、彼らはいつか軍用レベルの「スウォームUAV」の設計を担ったり、ほかの分野のハイテク産業で働くかもしれません。

 したがって、「テクノフェスト」では、高校生や大学生を対象とした「スウォームUAV」の競技会も開催されています。このコンペの主要な目的は、与えられた課題を遂行できるUAVのスウォームを組織するために必要なソフトウェアやアルゴリズムを開発し、実際の環境下でその性能を実証することにあります。[15]

 このコンペでは、参加チームがヴァーチャルと現実の両方で「スウォームUAV」を飛行させます。

 コンペで実施されるミッションには、編隊を組んでの離陸、同時操作の実施、スウォームへの機体の追加や離脱、そして各ドローンの一体化的な集結・散開が含まれます。[15]



 (アメリカなどを除くと)トルコはUAVの使用に関してパイオニア的存在であり、かつてはUAVの使用が不可能とされてきた戦闘シナリオにUAVを投入してきました。

 今やほぼ全てのカテゴリーのUAVを開発しているトルコが世界で最初に「スウォームUAV」を実用化し、最終的に使用面での高い信頼性と価格面での手頃なシステムを創出する国の1つとなる可能性については、考えられないことではないように思われます。

 「テクノフェスト」で競い合う学生たちは、明日のパイオニアです。(「バイラクタルTB2」などを生み出した)「バイカル・テクノロジー」社と同様に、彼らも小さいことから始めるでしょう。しかし、彼らの技術基盤の支援を決意していると思われる国家の姿勢と「テクノフェスト」のようなイベントがあれば、技術的なブレークスルーが起こり得ることは間違いなくあるでしょう。

彼らの成功は、いつの日か当記事冒頭の引用文に対する激しい反証を示すことになるに違いありません。

"私たちは状況を見極め、私たち自身で義務を果たしました"(オズデミル・バイラクタル:1949年 - ∞バイカル・テクノロジー」社の創業者

[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Drone show in China goes horribly wrong: dozens of drones crashed https://dronexl.co/2021/07/07/drone-show-drones-crashed/
[3] Watch Drones Rain Down From the Sky During a Failed Light Show https://interestingengineering.com/drones-rain-down-from-the-sky-during-failed-light-show
[4] HK$1 million in damage caused by GPS jamming that caused 46 drones to plummet during Hong Kong show https://www.scmp.com/news/hong-kong/law-and-crime/article/2170669/hk13-million-damage-caused-gps-jamming-caused-46-drones
[5] China Conducts Test Of Massive Suicide Drone Swarm Launched From A Box On A Truck https://www.thedrive.com/the-war-zone/37062/china-conducts-test-of-massive-suicide-drone-swarm-launched-from-a-box-on-a-truck
[6] Russia’s latest combat drone to control swarm of reconnaissance UAVs https://tass.com/defense/1265961
[7] Escribano designs a swarm system of UAVs for Surveillance and Recognition missions https://www.edrmagazine.eu/escribano-designs-a-swarm-system-of-uavs-for-surveillance-and-recognition-missions[8] Paramount Group pitches new drone swarm amid region’s lack of countermeasures https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/idex/2021/02/22/paramount-group-pitches-new-drone-swarm-amid-regions-lack-of-countermeasures/
[9] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One? https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=5eca88062f5c
[10] STM’nin yerli kamikaze İHA’sı KARGU PKK/YPG’li teröristleri vurdu https://www.defenceturk.net/stmnin-yerli-kamikaze-ihasi-kargu-pkk-ypgli-teroristleri-vurdu
[11] Indigenous kamikaze drone KARGU by STM appears in Libya https://en.defenceturk.net/indigenous-kamikaze-drone-kargu-by-stm-appears-in-libya/
[12] STM’s KARGU spotted in Azerbaijan https://en.defenceturk.net/stm-kargu-spotted-in-azerbaijan/
[13] First Stage Left Behind in SSB’s Swarm UAV Competition https://www.savunmahaber.com/en/first-stage-left-behind-in-ssbs-swarm-uav-competition/
[14] UAV and Drone Test Center Opens in Ankara https://en.rayhaber.com/2020/07/ankarada-iha-ve-drone-test-merkezi-aciliyor/
[15] Swarm UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-17.html
[16] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One?https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=449d08e2f5c6(これ以降の引用記事は日本語へ翻訳した際の参考資料)
[18] 1000機の「群れ」が一斉突撃? 米のマイクロドローン群実験成功で空戦は一変するか https://trafficnews.jp/post/63639
[19] 群制御の手法を応用した 無人機の編隊飛行 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/atla/research/dts2011/dts2011.files/low_pdf/P.pdf
[20] 無人機とエア・パワー戦略 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/asdf/meguro/center/img/03_mujinki_to_airpwr1.pdf
[21] 米海兵隊、いよいよスウォーム攻撃対応の自爆型UAV調達検討に着手 https://grandfleet.info/us-related/u-s-marine-corps-considers-self-destruct-uav-to-respond-to-swarm-attacks/
[22] 五輪のドローン演出と軍事用ドローン・スウォーム戦術の違い https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210724-00249601
[23] 誤解:「イージス艦ですらドローン攻撃に対処できない?」と論文の読み方 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210805-00251713
[24] 殺人AI兵器、世界初使用か https://nordot.app/779997234987859968

2022年5月21日土曜日

海外へ飛び出す「テクノフェスト」:トルコ発の技術展示会がアゼルバイジャンで開催へ

「テクノフェスト2021」で展示された「バイカル・テクノロジー」社製「アクンジュ」UCAV


 2021年にイスタンブールで開催された「テクノフェスト」の期間中に、トルコがこの技術の祭典を他国でも開催する方針であることが公表されました。[1] 
 
 その候補について推測してみると、 トルコと強力な友好関係を維持し、無人航空機(UAV)を含むトルコの武器や技術を導入している国がいくつか思い浮かんできます。その1つがアゼルバイジャンです。なぜならば、同国はさまざまな無人兵器システムの導入と生産に著しい投資を行っており、最近では国内の技術基盤の拡充を目指す途上にあるからです。
 
 多くの飛行展示や航空機が(地上展示などでも)参加することで航空ショーと呼ばれることもある「テクノフェスト」ですが、学生や子供たちに興味を持たせ、技術コンペに参加してもらうことを目的としているため、より正確には「技術の祭典」と表現すべきイベントです。
 
 こうしたコンペの範囲は戦闘用無人機の競技会から電気自動車の設計、さらには健康や農業分野に恩恵をもたらす技術を考え出すコンペなど幅広くカバーしているため、まさに「技術の祭典」と強調してもし過ぎることはありません。[2]

 トルコが技術や防衛の分野で進歩し続けることに加えて関連する他のハイテク分野の持続的な成長も確保するためには、次世代のエンジニアを奮い立たせることが必要不可欠です。 

 トルコの名目GDPは現時点で世界第20位であり、世界のトップ10に入ることを目指しています。この目標を達成するためには、さらなる技術的進歩を推し進めることが必須となることは言うまでもないでしょう。[3]

  今年(2022年)、トルコはハイテク分野へ投資した成果について、同国初の国産電気列車「TOGC」社製国産電気自動車の量産が開始されるという形でその恩恵を受けることになっています。[4] [5]
 
 アゼルバイジャンに話を戻すと、この国は2009年に「科学開発基金」を創設し、独自のハイテク分野の開発を促進する環境を立ちあげました。この組織は、科学的なプロジェクト群の調整やハイテク産業に携わる企業へ援助をすることによって、アゼルバイジャン独自の技術基盤を支えることを目的としています。[6] [7] 
 
 アゼルバイジャンの経済成長を維持し、石油と天然ガスから脱却した多角的な経済基盤を構築するためには技術革新が欠かせないことは明らかです。近年に得た石油と天然ガスによる収益の一部を技術革新に投資することでアゼルバイジャンのハイテク分野における腕前を押し進め、この分野でのトルコの試みを再現することができるかもしれません。
 
  「テクノフェスト・アゼルバイジャン」は、2022年5月26日から29日まで、首都バクーの「バクー・クリスタル・ホール」の屋内アリーナと隣接する海辺の大通り(悪名高い「軍事戦利品公園」の向かい)で開催される予定です。[8] 
 
 このイベントは、「トルコ技術チーム(T3)財団」とトルコ産業技術省がアゼルバイジャンのデジタル開発運輸省との共催であり、「アセルサン」「バイカル・テクノロジー」といったトルコの主要な防衛メーカーが自社製品の一部を展示するほか、15以上のトルコの大学も参加して、それぞれの教育プログラムを披露することになっています。[9]
 
 「テクノフェスト」は技術コンペで満ちあふれるイベントですが、それは「テクノフェスト・アゼルバイジャン」も同じことです。バクーのイベントでは、バイオテクノロジー、3Dプリント技術、無人機、ロボット工学、農業技術、航空機のモデリングといった分野で競技が行われます。[10]
 
 これらの競技は、(トルコと同様に)賞金や資金援助、場合によっては名門大学への入学できるというチャンスによって、ハイテク技術に関する青少年のスキルや関心を高める機会をもたらしてくれるでしょう。 

 エンターテインメント部門では、UAVやヘリコプターの地上展示、トルコ空軍のアクロバット・チームである「ターキッシュ・スターズ」と「ソロ・テュルク」、そしてアゼルバイジャン空軍機による曲技飛行の披露が予定されています。

 若者に技術分野でキャリアを歩ませ、技術系の新興企業が活躍できるような環境づくりに向けて最初の一歩を踏み出したにもかかわらず、アゼルバイジャンの技術基盤は未だに極めて未成熟な状態にあります。
 
 アゼルバイジャンの新興企業は現在、農業、運輸、医療、そして宇宙や軍事産業などの分野で活躍しています。
 
 国内兵器産業への投資については、今までのところ、数多くの小火器と車両の設計及び生産が行われるという成果を出しています。 しかし、これらの大部分は外国の設計に基づいたものあり、それらをアゼルバイジャンで生産することが必ずしも同国の技術基盤に大きく貢献しているとは限らない可能性は否定できません。

 ただし、最近の流れはアゼルバイジャンの軍事産業が発展しつつあることを示唆しています。実例としては、この国は「アセルサン」などのトルコ企業と共同で数種類の誘導爆弾を開発している事業が挙げられます。トルコ自身が開発した誘導爆弾とは逆に、これらは「Su-25」や「MiG-29」といったソ連を起源とする航空機が搭載できるように設計されているのが特徴です。[11]
 
 もう1つの有望な事業には、アゼルバイジャンとイスラエルのUAVメーカーである「エアロノーティクス・システムズ」社が設立した合弁会社「アザド・システムズ」があります。
 
 この協力の成果は現時点でイスラエルが設計した無人機の組み立てと生産に限られており、国産化の比率は最大で30%です。しかし、いつの日かアザドの工場が国内で設計した無人機の生産ラインの現場となる可能性を秘めていることは火を見るより明らかでしょう。[12]

 アゼルバイジャンは、すでに2021年にイスタンブールで開催された「テクノフェスト2021」において国内で組み立てた無人機をいくつか展示したほか、同国の専用パビリオンで他分野における数多くの技術プロジェクトも出展しました。[13]
 
  実際、同イベントにはアゼルバイジャンの新興企業11社が参加し、自動駐車システムなどのプロジェクトを展示したのです。[14]
 
 同様に、アゼルバイジャン軍は「MiG-29」戦闘機2機と(「オービター1K」「オービター2」「オービター3」「オービター4」を含む)前述の国内で組み立てたドローンも展示しました。
 

「テクノフェスト2021」で展示されたアゼルバイジャン製「オービター」UAVシリーズ

 UAVの競技会や地上展示及びデモフライトが「テクノフェスト・アゼルバイジャン」の主要な催しとなる見込みです。
 
 まだアゼルバイジャンは国産のUAVを製造していませんが、前述のとおり「アザド・システムズ」社はこれまでに「エアロスター」と「オービター1K」、そして「オービター3」をアゼルバイジャン国内で製造・組み立てをしています。
 
 それらの組み立てとコンポーネントの製造で得られた経験は、いつか真の国産UAVの製造に関する設計者たちに活用されることは確実でしょう。
 

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領がイスラエル起源の 「シャヒン(エアロスター)」と「ザルバ-K(オービター-1K) 」U(C)AVの国内製造ラインを視察した際の様子

 アゼルバイジャンで開催される「テクノフェスト」では、トルコやイスラエルで開発・製造されたUAVが地上展示やデモフライトで観客を喜ばせることになるのは間違いありませんが、UAVコンペにおける「イスティグバル」のような国産ドローンの初飛行も同様に人々の注目を集める可能性があることは想像に難しくないでしょう(注:「イスティグバル」は「アズアストロ・テクノロジーズ」が開発中の小型無人機)。[15]
 
 もう1つのアゼルバイジャン製UAVが「GÖZ(ギョズ)-N1」であり、これはアゼルバイジャン国立科学アカデミー(ANAS)によって企画されたコンペにて設計されたものです(注:GÖZ=眼)。重量が2.5kgというこのUAVは、最大航続距離が10kmで約45分の飛行する能力を有していると報じられています。[16]
 
 これまで国産無人機の量産が実現したことはありませんでしたが、もし「ギョズ-N1」でそれが達成された場合、この小型ドローンは軍事と民間の両分野で活用される可能性があります。

「ギョズ-N1」

 2021年9月、アゼルバイジャンとトルコが技術革新に関する共同研究センターをバクーに設立すると発表されました。「ビリム・バクー・センター(バクー科学センター)」という名称を与えられたこの共同研究センターは、革新的なハイテク機器を開発するだけではなく、研究や研修も行われる予定です。[17] 
 
 トルコが自身が有するハイテク情報の一部を共有する意向であることと、大成功を収めた「テクノフェスト」のやり方は、自国の技術基盤を拡大し、ハイテクが経済成長を促進するような環境を構築しようとする友好国に莫大な利益をもたらす可能性があります。
 
 アゼルバイジャンにとって「テクノフェスト」と「バクー科学センター」は、 いつの日か同国が経済を多角化し、ハイテク分野における重要なプレーヤーとなることを手助けしてくれる可能性が高いプロセスを始動してくれる絶好の機会を提供する存在です。
 
 これは先が見えない長旅のように見えるかもしれませんが、(「バイラクタルTB2」を世に送り出した)「バイカル・テクノロジー」社を見ると、アゼルバイジャンも驚くほど短期間に何らかの偉業を成し遂げる可能性がゼロではないことに留意しておく必要があることでしょう。

スモークを引きながら飛ぶアゼルバイジャン空軍の「Su-25」対地攻撃機

[1] TEKNOFEST festival to be organized in friendly, fraternal Azerbaijan - Turkish president https://en.trend.az/azerbaijan/politics/3489500.html
[2] How Turkey Is Laying The Ground For The Future Of Unmanned Aerial Warfare https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/how-turkey-is-laying-ground-for-future.html
[3] Turkey certain to join ranks of world's top 10 economies: President Erdogan https://www.aa.com.tr/en/economy/turkey-certain-to-join-ranks-of-worlds-top-10-economies-president-erdogan/2400783 
[4] Turkey to start manufacturing 1st indigenous electric train locomotive in 2022 https://www.aa.com.tr/en/economy/turkey-to-start-manufacturing-1st-indigenous-electric-train-locomotive-in-2022/2386599
[5] Minister Varank: TOGG will start mass production at the end of 2022 https://www.bazaartimes.com/minister-varank-togg-will-start-mass-production-at-the-end-of-2022/
[6] The decree of the President of the Republic of Azerbaijan on approval of Charter of Science Development Foundation under the president of the Republic of Azerbaijan https://www.sdf.gov.az/en/generic/menu/Detail/97/menu//
[7] Spurring innovation will be central to diversifying Azerbaijan’s economy, according to UNECE study https://unece.org/circular-economy/press/spurring-innovation-will-be-central-diversifying-azerbaijans-economy
[8] TEKNOFEST Aerospace and Technology Festival https://teknofest.az/en/corporate/about/
[9] TEKNOFEST AZ Competitions https://teknofest.az/en/competitions/
[10] TEKNOFEST AZ Exhibitors https://teknofest.az/en/corporate/exhibitors/ 
[11] Bombs From Baku: Cataloguing Azerbaijan’s Indigenous Air-To-Ground Munitions https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/bombs-from-baku-cataloguing-azerbaijans.html 
[12] Death From Above - Azerbaijan’s Killer Drone Arsenal https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/death-from-above-azerbaijans-killer.html  
[13] Azərbaycan “Teknofest-2021” festivalında təmsil olunur https://azertag.az/xeber/Azerbaycan_Teknofest_2021_festivalinda_temsil_olunur_VIDEO-1880943
[14] Azerbaijan presents startups at Teknofest in Istanbul [PHOTO] https://www.azernews.az/business/183560.html
[15] Azerbaijan tests locally-made UAVs [PHOTO/VIDEO] https://www.azernews.az/nation/180774.html
[16] Azerbaijan creates UAV which can be used for reconnaissance and kamikaze purposes https://apa.az/en/xeber/social-news/azerbaijan-creates-uav-which-can-be-used-for-reconnaissance-and-kamikaze-purposes-352960
[17] Azerbaijan, Turkey to launch joint innovation center https://www.azernews.az/business/183601.html

2022年5月18日水曜日

未来戦に備えよ:トルコが無人機による空戦技術の礎を築くための手法



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 「息子よ、聞きなさい - 君たちは偉大で立派に教育を受けた子供たちだが、外国のメーカーは君たちが手の届かないレベルにあるという事実を受け入れなさい。」(2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)※「バイカル」社はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです。

 無人航空機(UAV)の未来が議論されるたびに、いつの日か従来の戦闘機を時代遅れにする可能性がある技術的進歩として、他の航空機との交戦や撃墜できるUAVの能力が頻繁に言及されています。

 それにもかかわらず、そのような未来の実現に向けた実際の歩みは苦痛なほど遅いものでした。

 広く普及している議論の中では、戦闘用UAVの性能が、現実世界の能力よりはるかに先を行っていると考えられがちです。しかし、ロシアといった世界有数の兵器大国でさえ依然として国産の無人戦闘航空機(UCAV)飛行隊を生み出すことに苦労しており、ましてや近い将来に機敏な無人のドッグファイターを誕生させることが机上の空論なのは言うまでもありません。

 アメリカと中国は共にUCAVに短距離空対空ミサイル(AAM)を搭載する試験を行っており、前者は2017年の演習で、それを用いて別のドローンの撃墜に成功するまでに至っています。しかし、この演習でAAMの発射母体として使用された「MQ-9 "リーパー"」は比較的低速な機体であるため、おそらく誰もが思い描くような俊敏な戦闘機の機動性を欠いていることは火を見るよりも明らかです。[2]

 このような無人戦闘機を開発しようとするプロジェクト群は未だに計画段階で固まったままであり、ほとんどの設計案が生産に移行することは起こりえないでしょう。

 それでも、いつか無人戦闘機が有人戦闘機から空を奪取する日が来るであろうことは否定できません。

 無人戦闘機開発の最前線に立つことが見込まれている世界の超大国とは別に、近い将来における無人戦闘機技術の実用化に向けて、今や大躍進を遂げつつある別の国があります...トルコです。

 同国が進めている 「MİUS(ミウス:戦闘無人航空システム)」無人戦闘機計画では、2023年に実機が初の試験飛行を行う予定となっています(注:これは2022年春に「バイラクタル・クズルエルマ」という名称と完成待ちの機体が公開されました)。

 この超音速戦闘ドローンは、 精密爆撃、ドッグファイト、敵防空網の制圧などを遂行するために設計されたものであり、トルコ軍に斬新な能力をもたらすことになるこの開発は、当記事冒頭の引用文に対する激しい反証であることを示しています。

「ミウス」こと「バイラクタル・クズルエルマ」無人戦闘機

 トルコは「アクンジュ」や「クズルエルマ」といった無人戦闘機の開発に加え、いつかそれらの後継機を設計したり、先端技術を特徴とするその他の分野において働くであろう優秀な人材の確保にも入念に注意を払っています。

 この国は、世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めることを通じて、その目標を達成することを試みています。

 これを成し遂げようとする方法の1つとしては、毎年開催される「テクノフェスト」などのハイテク関連のイベントが挙げられます。

 「テクノフェスト」を純粋な航空ショーや軍事的な性格だけのイベントと誤解することは許されますが、実際のところ、このイベントはAIを活用した農業プロジェクトから電気自動車の設計までのあらゆるものを含む、30以上の技術コンペが開催されるテクノロジーの祭典なのです。

 前述のような熱狂が伴った非常に多くのコンテストで特に目立つのは、固定翼機と回転翼機による戦闘UAVの競技会と言っても差し支えないでしょう。競技は、異なるタイプのUAVが想定された空戦シナリオの中で、敵UAVに狙われることを阻みながらドッグファイトを行って制空権を争うものです。

イスタンブール上空で繰り広げられる無人機によるドッグファイト(テクノフェストにて)

 当然ながら、この競技でUAVから敵UAVに向けて実弾が発射されることはありませんが、その代わりとして、各UAVは胴体に搭載されたカメラを用いて相手の「ロックオン」を試みます。「ロックオン」するために使用されるカメラは、UAVの前方視界が得られる位置と角度に固定されています。

 敵UAVを最も多く「ロックオン」した一方で、可能な限り敵の「ロックオン」から回避することに成功した人が、この競技の勝者となります。したがって、実際の「撃墜」は物理的ではなく、バーチャルに行われます。

 ルールは至ってシンプルで、試合も実際の空戦の初歩的なシミュレーションにすぎませんが、このようなコンペは、まさに国の優れた若者の間で情熱の炎を燃え立たせるために必要なものなのです。

 その一方で、こうしたイベントは競技の参加者たちに、いつの日か高度なUAVの生産を可能にする関連ハイテク分野に携わるために必要な、知識の最初の基礎的な要素を提供します。[3]

 これらのコンペの参加者には、多くの高校生や大学生が含まれていることにも注目すべきでしょう。



 バラクタル兄弟と2人の父であるオズデミル氏が、仮に国防産業局の官僚のアドバイスを受け入れていたら、「ミウス」プロジェクトが進められているどころか「バイラクタル・アクンジュ」が空を飛ぶこともなかったでしょう(注:もちろん、あの「TB2」も存在しなかった世界になっていたはずです)。

 トルコの防衛産業が敗北主義という遅効性の毒に強く蝕まれていた時代に、自身のプロジェクトの開発に着手した彼らの奮闘は、いつか新しい世代が彼らの仕事を受け継ぐ道を開きました。

 今や賞金や公的な財政支援、大学入学の機会を通じて、新しい世代が自己のスキルや興味を高める機会を与えられているという事実は、将来的に莫大な効果をもたらす可能性があります。



 「国の富は子にあり」というありふれた決まり文句は、まさにそれが真実だからこそ存在しているのではないでしょうか。

 テクノフェストを訪れた人の中には軍用機の展示や見事な航空ショーを長く記憶にとどまっている人もいるでしょうが、真に重要な進歩については、コンペ等でインスピレーションを得た人々の心の中でしっかりと根付いていることがわかるでしょう。

 「バイカル・テクノロジー」社は最先端技術の設計で素晴らしい偉業を成し遂げたことで、国が無制限の研究開発予算を持つ超大国である必要はないことを証明しました。

 同社の創業者であるオズデミル・バイラクタル氏の逝去は、彼からインスピレーションを受けた人々を悲しませるかもしれません。しかし、同社の作業が止まることなく、彼のレガシーと物語は新しい世代の心の中に生き続け、いつの日かトルコ初の真の無人戦闘機という実を結ぶ弾みをもたらすことは間違いないでしょう。

 「私たちの仕事は、我が国がUAV技術の完全に独立したリーダーになるという目標に到達するまで全身全霊で絶え間なく続くでしょう。」(オズデミル・バイラクタル:1949 - ∞)

若き日のオズデミル・バイラクタル氏

[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Heat-Seeking Missile-Armed MQ-9 Reaper Shot Down Target Drone During Exercise https://www.thedrive.com/the-war-zone/23694/heat-seeking-missile-armed-mq-9-reaper-shot-down-target-drone-during-exercise
[3] Fighter UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-10.html

※  この翻訳元の記事は、2021年10月21日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳した
  ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
  す。




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2021年9月23日木曜日

我が轟きを聞け: アゼルバイジャンのMiG-29がイスタンブールでデモフライトを披露した #Teknofest


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 トルコ軍のさまざまなアセットの参加に続いて、「テクノフェスト2021」の主催者は、アゼルバイジャン空軍に属するMiG-29戦闘機2機の参加を確保することにも成功しました。カラフルな塗装のMiG-29は、テクノフェストで展示されている西側やトルコの航空機とは完全に対照的です。残念ながら今年のテクノフェストに行くことができなかった読者のために、テクノフェストでデモフライトを行ったアゼルバイジャンのMiG-29の映像のリンクをここに紹介いたします

 この2機のMiG-29は、9月1日から17日までコンヤ空軍基地で実施されたアゼルバイジャン空軍とトルコ空軍の統合飛行戦術演習「TurAz Falcon-2021」に参加するためにトルコへ派遣されました。この毎年恒例の演習は、両国の軍用機の統合運用を強化させることを目的としています。というのも、アゼルバイジャンがソ連製とトルコ軍が米国製の機体を運用しており、これらには共通点がほとんど無いことから、統合運用には強い連携が求められるからです。今回の演習には、アゼルバイジャン空軍は2機のMiG-29と2機のSu-25の計4機が参加しました。[1]

 演習が成功裏に終了した後、2機のSu-25はアゼルバイジャンにある本拠地のキュルダミル空軍基地に戻り、MiG-29はトルコに残りました。


 今年のテクノフェストは、トルコとアゼルバイジャンの空軍機がボスポラス海峡上空を編隊飛行したことで幕を開けました。

 1機のA400M輸送機に続いて、2機のF-4E-2020「ターミネーター」、2機のF-16 (1機はアクロバット・チ-ム「ソロ・テュルク」所属機)、2機のアゼルバイジャン空軍のMiG-29が展示飛行に参加しました。




 アゼルバイジャン空軍の航空機やヘリコプターは、を共同演習に参加するため、頻繁にトルコに展開しています。特に有名な共同演習としては「アナトリアン・イーグル」があります。アゼルバイジャン空軍は依然としてMiG-29やSu-25を含む多数のソ連・ロシア製の機体を運用しているため、統合運用における意思の疎通などの改善に多くの注意を向けています。

 戦時のシナリオでは、例えば、トルコのF-16が直援としてアゼルバイジャンのSu-25の上空を飛ぶ姿を見ることができるかもしれません。

 対地攻撃におけるアゼルバイジャンのSu-25の有能さは、トルコの誘導爆弾、「SOM」巡航ミサイルやベラルーシの「タリスマン」ECMポッドを統合することを通じて大幅に向上しました。



 アゼルバイジャンで就役しているMiG-29は、首都バクー近郊にあるナソスナヤ空軍基地で運用されています。

 アゼルバイジャン空軍では、(2006年以降にウクライナから引き渡されたされた16機のうち)合計で14機のMiG-29が稼働状態にあり、単座機のMiG-29S「9.13」規格が11機、MiG-29UB練習機が3機で構成されています。[2]

 2006年以来、このMiG-29飛行隊は2度の事故に見舞われました:2008年1月にMiG-29UBが、2019年7月にMiG-29Sが墜落したのです。[3]

 パキスタンのJF-17への置き換えが頻繁に報じられていますが、現在のところ、アゼルバイジャンのMiG-29はしばらくの間は現役を続けるようです。




 この2機のMiG-29は、9月26日(日)まで開催される「テクノフェスト2021」の期間中の数日にわたってデモフライトを行う予定です(注:木・金曜日には行いません!)。



[1] Konya hosts closing ceremony of “TurAz Falcon – 2021” exercises https://azertag.az/en/xeber/Konya_hosts_closing_ceremony_of_TurAz_Falcon___2021_exercises-1877917
[2] MiG modernization in Lviv https://www.key.aero/article/mig-modernization-liviv
[3] MiG-29 crash in Azerbaijan https://www.facebook.com/Scramblemagazine/posts/2935845613108620

※ この記事は2021年9月22日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳したも
 のです。



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カスピ海の水陸両用機:見つけにくいアゼルバイジャンのベリエフ飛行隊

バイラクタルがバクルキョイ上空を飛ぶ #Teknofest



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(著:Tarao Goo

 この壮観な映像「テクノフェスト2021」の準備のためにイスタンブール・アタチュルク国際空港(IAP)に着陸する「バイラクタル・アクンジュ」「TB2」を映しています。双方の無人戦闘航空機(UCAV)の尾部に搭載されているカメラのおかげで、彼らのアプローチと着陸の様子をきちんと見守ることができました。

 「アクンジュ」と「TB2」は、今年のテクノフェストで展示されたシステムのほんの一部でしかありません。特にバイカル社の場合では、「バイラクタル・DİHA(VTOL UAV)」も初公開されました。

 テクノフェストは、トルコ技術チーム(T3)財団によって2018年9月にイスタンブール空港で初めて開催されたイベントです。このイベントの目標は、エンターテインメントという明白な目的だけでなく、テクノロジーについての意識を高め、将来の世代に科学技術分野への道を選択するように刺激を与えることにあります。どんな先進的な産業でも、今日の進歩を継続させ、将来の課題に挑戦する若者を刺激することを当てにしており、この状況はトルコでも変わりません。

 テクノフェストは、技術コンテスト、見本市や展示、展示飛行でいっぱいのイベントです。2021年の回では、メインイベントに先立って、すでにいくつかの技術コンペが開催されています。

 このフェスティバルでは、スマート交通システム、ヘリコプター・デザイン、バイオテクノロジー、ロボット工学、空飛ぶ車、ロケット、無人水中航走体などのカテゴリーで、数十の競技が行われることが特徴です。

 昨年は、COVID-19による制約のためにガズィアンテプ県で仮想的なイベントが開催されました。2019年は、約170万人がイスタンブールでのイベントを訪れました。[1]



 アタチュルク空港の滑走路に着陸する直前の「アクンジュ」(下の画像)。
 
 この空港の片隅に青と白のエアバスA300が駐機していることにも注目してください。このA300は、かつてボスポラス・ヨーロピアン・エアウェイズ(BEA)が所有していた3機のうちの1機です。BEAにとっては残念なことに、資金が尽きるまでの約半年間(2002年3月から8月まで)しかA300を運用できませんでした。その後、使用されなくなった機体はアタチュルク空港で保管されており、新しいオーナーを得るかスクラップになるかのどちらかを待ち続けています。

 BEAとそのA300に関する私たちの記事はここで読むことができます(注:英語)。



 滑走路に僅かにタッチダウンした後、「アクンジュ」が再び離陸すると、目の前のマルマラ海を航行する多数の貨物船が見えてきました。

 アタチュルク空港は、黒海と地中海を結ぶ人工水路プロジェクトであるイスタンブール運河の建設予定地の近くに位置しています。この新しい運河は、ボスポラス海峡の交通渋滞を緩和することを目的としています。というのも、この海峡での渋滞が、同所を通過するための船を何日も行列して待たせることが多くあるからです。



 「バイラクタルTB2」がアタチュルク空港に着陸します(下の画像)。

 2019年4月に北西40kmに位置する新イスタンブール空港に全ての旅客便が移管されるまで、アタチュルクIAPはイスタンブールで活躍していた主要な国際空港でした。それ以来、この空港は、貨物便、一般航空便、軍事、ビジネス便、外交便、そしてもちろんテクノフェストのためだけに開かれているのです!

 アタチュルク空港には、T-41D初等練習機を飛ばすトルコ空軍の訓練飛行隊の拠点や軍事航空管制司令部、イスタンブール航空博物館もあります。また、空軍士官学校がちょうど道路を挟んだ向かい側にあるため、この地域の軍事的な側面は前述のことだけではとても終わりそうにありません。

 主な航空便の運用が新イスタンブール空港へ移管された後、アタチュルク空港は2本ある滑走路のうち1本を失うことになっていました。ただし、空港の北西側にある多くのハンガーは、自家用機と商用機の整備のために残されるでしょう。

 2020年5月以降、閉鎖された滑走路の大部分がイェシルキョイ教授ムラト・ディルメネル救急病院で占められました。この病院は、特にパンデミックや地震などの緊急事態に対応するために建設されたものであり、トルコで最初にCOVID-19の感染が確認された直後に建設が開始されました。





無事に着陸しました!



[1] Visitor exodus as Turkey’s biggest tech event Teknofest begins https://www.dailysabah.com/business/defense/visitor-exodus-as-turkeys-biggest-tech-event-teknofest-begins

※ この記事は2021年9月21日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳したも