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2022年5月18日水曜日

未来戦に備えよ:トルコが無人機による空戦技術の礎を築くための手法



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 「息子よ、聞きなさい - 君たちは偉大で立派に教育を受けた子供たちだが、外国のメーカーは君たちが手の届かないレベルにあるという事実を受け入れなさい。」(2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)※「バイカル」社はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです。

 無人航空機(UAV)の未来が議論されるたびに、いつの日か従来の戦闘機を時代遅れにする可能性がある技術的進歩として、他の航空機との交戦や撃墜できるUAVの能力が頻繁に言及されています。

 それにもかかわらず、そのような未来の実現に向けた実際の歩みは苦痛なほど遅いものでした。

 広く普及している議論の中では、戦闘用UAVの性能が、現実世界の能力よりはるかに先を行っていると考えられがちです。しかし、ロシアといった世界有数の兵器大国でさえ依然として国産の無人戦闘航空機(UCAV)飛行隊を生み出すことに苦労しており、ましてや近い将来に機敏な無人のドッグファイターを誕生させることが机上の空論なのは言うまでもありません。

 アメリカと中国は共にUCAVに短距離空対空ミサイル(AAM)を搭載する試験を行っており、前者は2017年の演習で、それを用いて別のドローンの撃墜に成功するまでに至っています。しかし、この演習でAAMの発射母体として使用された「MQ-9 "リーパー"」は比較的低速な機体であるため、おそらく誰もが思い描くような俊敏な戦闘機の機動性を欠いていることは火を見るよりも明らかです。[2]

 このような無人戦闘機を開発しようとするプロジェクト群は未だに計画段階で固まったままであり、ほとんどの設計案が生産に移行することは起こりえないでしょう。

 それでも、いつか無人戦闘機が有人戦闘機から空を奪取する日が来るであろうことは否定できません。

 無人戦闘機開発の最前線に立つことが見込まれている世界の超大国とは別に、近い将来における無人戦闘機技術の実用化に向けて、今や大躍進を遂げつつある別の国があります...トルコです。

 同国が進めている 「MİUS(ミウス:戦闘無人航空システム)」無人戦闘機計画では、2023年に実機が初の試験飛行を行う予定となっています(注:これは2022年春に「バイラクタル・クズルエルマ」という名称と完成待ちの機体が公開されました)。

 この超音速戦闘ドローンは、 精密爆撃、ドッグファイト、敵防空網の制圧などを遂行するために設計されたものであり、トルコ軍に斬新な能力をもたらすことになるこの開発は、当記事冒頭の引用文に対する激しい反証であることを示しています。

「ミウス」こと「バイラクタル・クズルエルマ」無人戦闘機

 トルコは「アクンジュ」や「クズルエルマ」といった無人戦闘機の開発に加え、いつかそれらの後継機を設計したり、先端技術を特徴とするその他の分野において働くであろう優秀な人材の確保にも入念に注意を払っています。

 この国は、世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めることを通じて、その目標を達成することを試みています。

 これを成し遂げようとする方法の1つとしては、毎年開催される「テクノフェスト」などのハイテク関連のイベントが挙げられます。

 「テクノフェスト」を純粋な航空ショーや軍事的な性格だけのイベントと誤解することは許されますが、実際のところ、このイベントはAIを活用した農業プロジェクトから電気自動車の設計までのあらゆるものを含む、30以上の技術コンペが開催されるテクノロジーの祭典なのです。

 前述のような熱狂が伴った非常に多くのコンテストで特に目立つのは、固定翼機と回転翼機による戦闘UAVの競技会と言っても差し支えないでしょう。競技は、異なるタイプのUAVが想定された空戦シナリオの中で、敵UAVに狙われることを阻みながらドッグファイトを行って制空権を争うものです。

イスタンブール上空で繰り広げられる無人機によるドッグファイト(テクノフェストにて)

 当然ながら、この競技でUAVから敵UAVに向けて実弾が発射されることはありませんが、その代わりとして、各UAVは胴体に搭載されたカメラを用いて相手の「ロックオン」を試みます。「ロックオン」するために使用されるカメラは、UAVの前方視界が得られる位置と角度に固定されています。

 敵UAVを最も多く「ロックオン」した一方で、可能な限り敵の「ロックオン」から回避することに成功した人が、この競技の勝者となります。したがって、実際の「撃墜」は物理的ではなく、バーチャルに行われます。

 ルールは至ってシンプルで、試合も実際の空戦の初歩的なシミュレーションにすぎませんが、このようなコンペは、まさに国の優れた若者の間で情熱の炎を燃え立たせるために必要なものなのです。

 その一方で、こうしたイベントは競技の参加者たちに、いつの日か高度なUAVの生産を可能にする関連ハイテク分野に携わるために必要な、知識の最初の基礎的な要素を提供します。[3]

 これらのコンペの参加者には、多くの高校生や大学生が含まれていることにも注目すべきでしょう。



 バラクタル兄弟と2人の父であるオズデミル氏が、仮に国防産業局の官僚のアドバイスを受け入れていたら、「ミウス」プロジェクトが進められているどころか「バイラクタル・アクンジュ」が空を飛ぶこともなかったでしょう(注:もちろん、あの「TB2」も存在しなかった世界になっていたはずです)。

 トルコの防衛産業が敗北主義という遅効性の毒に強く蝕まれていた時代に、自身のプロジェクトの開発に着手した彼らの奮闘は、いつか新しい世代が彼らの仕事を受け継ぐ道を開きました。

 今や賞金や公的な財政支援、大学入学の機会を通じて、新しい世代が自己のスキルや興味を高める機会を与えられているという事実は、将来的に莫大な効果をもたらす可能性があります。



 「国の富は子にあり」というありふれた決まり文句は、まさにそれが真実だからこそ存在しているのではないでしょうか。

 テクノフェストを訪れた人の中には軍用機の展示や見事な航空ショーを長く記憶にとどまっている人もいるでしょうが、真に重要な進歩については、コンペ等でインスピレーションを得た人々の心の中でしっかりと根付いていることがわかるでしょう。

 「バイカル・テクノロジー」社は最先端技術の設計で素晴らしい偉業を成し遂げたことで、国が無制限の研究開発予算を持つ超大国である必要はないことを証明しました。

 同社の創業者であるオズデミル・バイラクタル氏の逝去は、彼からインスピレーションを受けた人々を悲しませるかもしれません。しかし、同社の作業が止まることなく、彼のレガシーと物語は新しい世代の心の中に生き続け、いつの日かトルコ初の真の無人戦闘機という実を結ぶ弾みをもたらすことは間違いないでしょう。

 「私たちの仕事は、我が国がUAV技術の完全に独立したリーダーになるという目標に到達するまで全身全霊で絶え間なく続くでしょう。」(オズデミル・バイラクタル:1949 - ∞)

若き日のオズデミル・バイラクタル氏

[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Heat-Seeking Missile-Armed MQ-9 Reaper Shot Down Target Drone During Exercise https://www.thedrive.com/the-war-zone/23694/heat-seeking-missile-armed-mq-9-reaper-shot-down-target-drone-during-exercise
[3] Fighter UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-10.html

※  この翻訳元の記事は、2021年10月21日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳した
  ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
  す。




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