著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
A-10「サンダーボルトII」はCAS(近接航空支援)専用機として開発された機体であり、敵戦車を引きちぎったり強力な30mm機関砲で敵の地上部隊を掃射します。GAU-8「アヴェンジャー」ガトリング式機関砲の搭載を中心に設計されたA-10は、単に戦場に存在するだけでも、地上のどんな敵にも消えることのない恐怖感を与えるのに十分な「攻撃」となります。
一見したところ、「バイラクタル・アクンジュ」はA-10を恐ろしい戦車ハンターにした要素を少しも備えられておらず、いかなる種類の砲熕兵装ですら装備されていません。
しかし、戦争は変わりました。もはや航空機が敵の幅広い防空システムにさらされながら、機関砲や無誘導ロケット弾を主兵装に用いた低高度での対地攻撃を行うことはなくなるでしょう。
現在 航空機の大部分は敵の地上目標を攻撃するために精密誘導弾に頼っており、敵の防空システムの「天井」をはるかに超えて飛行していることがよくあります。A-10のような機体でさえ、JDAMや「ペイブウェイ」シリーズのPGM(精密誘導弾)を搭載して、最終的にはこの戦術の転換に適応しなければならなかったのです。
機体の生存性の確保については自身が(ステルス性や距離によって)検知されないままでいる方法に道を譲った一方で、現代における兵装の発展は搭載できるその量が機体自身の空力や速度を上回ることを意味するようにさせました。安価ながらも高精度な「MAM-L」誘導爆弾を用いたアゼルバイジャン軍の「バイラクタルTB2」は、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で少なくとも92台のアルメニア軍のT-72戦車を無力化しました。[1]
かさばる装甲が「MAM-L」のような爆弾からのトップアタックに対して全く防御力をもたらさないことから、彼らの成功は「戦車の終焉」がついにやって来たのではないかという主張の登場にも至らせました。
しかし、ナゴルノ・カラバフ戦争は火力支援プラットフォームとしての戦車の終焉を告げるものではなく、実際には高強度紛争における無人機の投入に関する実現可能性を証明するものでした。このような状況下でTB2は非常によく機能し、わずか2機の損失が確認された一方で少なくとも548のアルメニアの標的を破壊したと言うことができます。[1]
2019年と2020年にリビアとシリアで無力化されたものを含めると、破壊された戦車の数はさらに増えます。この国々では、TB2が少なくとも30台以上の戦車を破壊したことが確認されています。
ここで、ナゴルノ・カラバフ、シリア、リビアで「バイラクタルTB2」によって破壊されたことが視覚的に確認された戦車の一覧を以下に示します。
戦車 (124:破壊)
2021年8月に最初の「バイラクタル・アクンジュ」が就役したことで、バイカル社のUAVファミリーの対戦車能力が高まっているように見えます。
A-10「サンダーボルトII」はCAS(近接航空支援)専用機として開発された機体であり、敵戦車を引きちぎったり強力な30mm機関砲で敵の地上部隊を掃射します。GAU-8「アヴェンジャー」ガトリング式機関砲の搭載を中心に設計されたA-10は、単に戦場に存在するだけでも、地上のどんな敵にも消えることのない恐怖感を与えるのに十分な「攻撃」となります。
一見したところ、「バイラクタル・アクンジュ」はA-10を恐ろしい戦車ハンターにした要素を少しも備えられておらず、いかなる種類の砲熕兵装ですら装備されていません。
しかし、戦争は変わりました。もはや航空機が敵の幅広い防空システムにさらされながら、機関砲や無誘導ロケット弾を主兵装に用いた低高度での対地攻撃を行うことはなくなるでしょう。
現在 航空機の大部分は敵の地上目標を攻撃するために精密誘導弾に頼っており、敵の防空システムの「天井」をはるかに超えて飛行していることがよくあります。A-10のような機体でさえ、JDAMや「ペイブウェイ」シリーズのPGM(精密誘導弾)を搭載して、最終的にはこの戦術の転換に適応しなければならなかったのです。
機体の生存性の確保については自身が(ステルス性や距離によって)検知されないままでいる方法に道を譲った一方で、現代における兵装の発展は搭載できるその量が機体自身の空力や速度を上回ることを意味するようにさせました。安価ながらも高精度な「MAM-L」誘導爆弾を用いたアゼルバイジャン軍の「バイラクタルTB2」は、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で少なくとも92台のアルメニア軍のT-72戦車を無力化しました。[1]
かさばる装甲が「MAM-L」のような爆弾からのトップアタックに対して全く防御力をもたらさないことから、彼らの成功は「戦車の終焉」がついにやって来たのではないかという主張の登場にも至らせました。
しかし、ナゴルノ・カラバフ戦争は火力支援プラットフォームとしての戦車の終焉を告げるものではなく、実際には高強度紛争における無人機の投入に関する実現可能性を証明するものでした。このような状況下でTB2は非常によく機能し、わずか2機の損失が確認された一方で少なくとも548のアルメニアの標的を破壊したと言うことができます。[1]
2019年と2020年にリビアとシリアで無力化されたものを含めると、破壊された戦車の数はさらに増えます。この国々では、TB2が少なくとも30台以上の戦車を破壊したことが確認されています。
ここで、ナゴルノ・カラバフ、シリア、リビアで「バイラクタルTB2」によって破壊されたことが視覚的に確認された戦車の一覧を以下に示します。
戦車 (124:破壊)
- 90 T-72: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) (41) (42) (43) (44) (45) (46) (47) (48) (49) (50) (51) (52) (53) (54) (55) (56) (57) (58) (59) (60) (61) (62) (63) (64) (65) (66) (67) (68) (69) (70) (71) (72) (73) (74) (75) (76) (77) (78) (79) (80) (81) (82) (83) (84) (85) (86) (87) (88) (89) (90)
- 12 T-72: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)
- 5 T-62: (1) (2) (3) (4) (5)
- 5 T-55: (1) (2) (3) (4) (5)
- 9 形式不明のT-55/62: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7 と 8) (9)
- 1 T-55: (1)
実際、TB2と比較すると、「アクンジュ」は最大で18発の「MAM-L」(または任務の必要性に応じて「MAM-C」)を搭載することが可能です(注:TB2の最大搭載量は4発)。この能力は、「アクンジュ」をたった1回の出撃で装甲車列の全体を壊滅させたり、前進する部隊に先駆けて敵を取り除くことで地上の攻勢を支援するための完璧なシステムとして位置づけています。
ロケトサン社の「MAM-L」は、UAVや軽攻撃機での使用を想定して開発された精密誘導爆弾です。「MAM」シリーズは、静止・移動目標の両方を高い精度で攻撃することが可能であり、これまでもいくつかの紛争で活躍が見られました。
ロケトサン社の「MAM-L」は、UAVや軽攻撃機での使用を想定して開発された精密誘導爆弾です。「MAM」シリーズは、静止・移動目標の両方を高い精度で攻撃することが可能であり、これまでもいくつかの紛争で活躍が見られました。
新たにINS/GPS誘導方式を「MAM-L」に導入したことは、その射程距離を7kmから14km以上へと劇的に延長し、現在世界中で運用されているほとんどの(ロシアの)移動式防空システムをアウトレンジすることを可能にさせました。
「アクンジュ」は無人機戦の分野に多くの斬新な能力をもたらしています。その目新しさから、これらの能力だけに焦点を当てることは、おそらく理にかなっているでしょう。
ただし、既存のUCAVよりもペイロードが増加したという単純な事実も同様に重要です。実戦で18発の「MAM-L」を搭載するケースが実際に発生することは起こりそうもありませんが、これは「アクンジュ」が持つ素晴らしいペイロードと現代の最も恐ろしい空飛ぶ駆逐戦車の1つとしての可能性を示しています。
新しい兵装が「アクンジュ」と共にめざましい勢いで開発されており、このことはドローン技術が常に敵の対抗策より先を行くことを確実なものにしています。無人航空戦の未来がついに到来した暁には、「アクンジュ」がその最前線に立つかもしれません。
[1] The Fight For Nagorno-Karabakh: Documenting Losses On The Sides Of Armenia And Azerbaijan https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/the-fight-for-nagorno-karabakh.html
※ 当記事は、2021年9月17日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
おすすめの記事
無人機戦における新たな章:「バイラクラル・アクンジュ」が就役した
「Nu.D.40」から「バイラクタル・アクンジュ」へ: デミラーグの遺産(英語)
ただし、既存のUCAVよりもペイロードが増加したという単純な事実も同様に重要です。実戦で18発の「MAM-L」を搭載するケースが実際に発生することは起こりそうもありませんが、これは「アクンジュ」が持つ素晴らしいペイロードと現代の最も恐ろしい空飛ぶ駆逐戦車の1つとしての可能性を示しています。
新しい兵装が「アクンジュ」と共にめざましい勢いで開発されており、このことはドローン技術が常に敵の対抗策より先を行くことを確実なものにしています。無人航空戦の未来がついに到来した暁には、「アクンジュ」がその最前線に立つかもしれません。
[1] The Fight For Nagorno-Karabakh: Documenting Losses On The Sides Of Armenia And Azerbaijan https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/the-fight-for-nagorno-karabakh.html
※ 当記事は、2021年9月17日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
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