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2024年1月31日水曜日

ビジョン2030:国産UCAVの開発を推進するサウジアラビア(一覧など)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 無人戦闘航空機(UCAV)の調達に関して、サウジアラビア(KSA)は中国にその大半を依存してきました。このことは、KSAが2010年代半ばから後半にかけて「翼竜Ⅰ」や「翼竜Ⅱ」、「CH-4B」を大量に導入したことに表れています。

 これらの中国製UCAVは、2015年3月のサウジアラビア主導のイエメン介入開始以来、すでにイエメン上空に投入されている数種類の南アフリカやイタリア、ドイツ製無人偵察機を補完するものでした。[1] 

 2019年になると、サウジアラビアはトルコの「レンタテク」社製「カライェル-SU」UCAVを導入し、保有するドローン兵器群をさらに増強しました。この同型機は「ハブーブ」のという名前で近いうちにKSA国内で生産される予定です。[2] 

 サウジアラビアは「ビジョン2030」の一環として2030年までに防衛支出額の少なくとも50%を現地調達に充てることを目指しており、防衛企業が兵器類の現地生産ラインを構築するための刺激材料となっています。
 
 現在、サウジアラビアは海外の企業や科学者たちと協力して、さらに数種類のUCAVを開発しています。それらの最初の1機である「サクル-1」は、南アフリカの「デネル・ダイナミクス」社によって開発された「バトルゥール」中高度長時間滞空(MALE)型UAVの設計をベースにしています。より小型の「スカイガード」は、2017年に初めて発表された国産機です。

 「サムーン」と呼称される7つのハードポイントを持つ大型の双発機のほかに、サウジアラビアは中国と契約を結んで、双発または三発機の「TB001」重UCAVを「アル・イカーブ-1」及び「アル・イカーブ-2」として開発しています。[3] [4]

 ちなみにウクライナとUAVを共同設計・生産する計画もありましたが、ウクライナ戦争のせいでキャンセルされたようです。[5]
 
 中国の「腾盾」が開発した巨大な「TB001」は、主翼下部に設けられた4つのハードポイントに、さまざまな誘導爆弾や空対地ミサイル(AGM)、対艦ミサイル、巡航ミサイルで武装することが可能となっています。

 「アル・イカーブ-1」は三基のエンジンを備えた異例の三発機であることが特徴であり、「アル・イカーブ-2」はその双発機型です。

 「TB001」については2019年に契約が発表されたものの、その開発は長引いており、 サウジアラビアが自国の防衛面での需要を満たすために、このプロジェクトを依然として積極的に推進しているかどうかは今でも不明のままとなっています。

提案されている双胴機「アル・イカーブ-1/2(TB001)」:2019年に契約が締結されたものの、同機をめぐるプログラムの現状は不明のままです

 国産機を開発している間に、サウジアラビアと「中国航空宇宙科学技術公司(CASC)」がKSA国内に生産ラインと地区整備センターを設立して、最終的に今後10年間で約300機もの「CH-4B」を大量生産する可能性についての関する報道が2017年から飛び交っています(現在の統計を前提とした場合、これが実現するとKSAが世界最大のUCAV運用国となるでしょう)。[6]

 なお、このような合意が成立したのか、または計画されたのかすら不明であり、この記事を執筆している2022年9月時点では実現されていないようです。

 おそらくは中国製UCAVの稼働率や運用実績が乏しいためか、サウジアラビアはすでに少なくとも2017年からUCAVの調達先としてトルコに目を向けるようになっています。

 当初は「トルコ航空宇宙産業(TAI)」「アンカ」UCAVに関心を寄せていましたが、最終的にKSAは2010年代後半に「ヴェステル(注:軍事部門はその後「レンタテク」に社名を変更)」社と数量不明の「カライェル-SU」について契約を結びました。[7] [2] 

 これらはほぼ即座にイエメンでの作戦に投入され、現時点で4機が失われたことが視覚的に確認されました。[1]

 「イントラ・ディフェンス・テクノロジーズ」社による「カライェル-SU」の国内生産はCOVID-19の影響を受けて1年半遅れたものの、2022年半ばに開始される予定です。[4] 
国内生産は「レンタテク」が重要なコンポーネントを供給し、サウジアラビアで組み立てられる方式となっています。[2]

サウジアラビアにおける「カライェル-SU "ハブーブ"」:同機は「MAM-C/L」やほかの小型爆弾を搭載可能なハードポイントを4つ備えています

 「カライェル-SU」の国内生産は、「サクル-1」プロジェクトにとって"とどめの一撃"となるかもしれません。

 少なくとも2012年からアメリカに拠点を置く「UAVOS」社と「キング・アブドルアジーズ科学技術都市(KACST)」で共同開発が進められてきた「サクル-1」は数多くの修正がなされ、2020年に公開された最新型の「サクル-1C」までプロジェクトが進んでいます。

 しかし、これらはどれも実用化されておらず、より小型の「サクル-2」と「サクル-4」も実機の生産までには至っていません。[8] 

 最大で48時間という目を見張るような滞空時間を誇りますが、「サクル-1」は兵装搭載用のハードポイントを2つしか備えていないため、UCAVとしての有用性は著しく制限されたものとなります(注:「CH-4B」や「TB2」のハードポイントは4つ)。

 「イントラ」社が現在開発中である「サムーン」が「サクル-1」の代わりにサウジアラビア初の量産型国産UCAV となるのか、あるいは(既存のサウジアラビアの防衛プロジェクトの大部分と同様に)開発サイクルの長期化や内部からの反対、最終的に中止という事態に直面することになるのかは、まだ分かりません。[9] 

 中国製ドローンの高い消耗率と、(おそらく)基本的な整備上の問題にさえ悩まされていることから、サウジアラビア当局が最近公表した高い人気と実績を誇る「バイラクタルTB2」「アクンジュ」の導入へ関心を示したことについては、一部の人が予想したほどあり得ない動きではないのです。[10]

 これらはサウジアラビアで開発されたものではありませんが、無人機技術への協力、そしておそらくKSAでの「バイカル・テクノロジー」社製品の生産は、同国の新興UAV産業を実質的に有効なレベルまで引き上げるのに役立つ可能性がある貴重な知見をもたらすことになるでしょう(注:2023年8月、サウジアラビア軍事産業:SAMIは「バイカル・テクノロジー」と「アクンジュ」の70パーセントを現地生産する契約を結びました)。

南アフリカの「バトルゥール」MALE型UAVをベースに開発された「サクル-1」

今後登場する「サムーン(1/2サイズのモデル」:このモックアップの主翼に中国製の「ブルーアロー7」と「TL-2」対地攻撃ミサイルが搭載されていることに注目


※ 各UCAVの名称をクリックすると当該機体の画像が表示されます(括弧内の年はプロ
 ジェクトの公表または始動日を指します)。


無人戦闘航空機 - 生産中
  • ハブーブ [2018年 または 2019年] (「イントラ・ディフェンス・テクノロジーズ」)

無人戦闘航空機 - 生産予定
  •  アクンジュ [時期未定] (「バイカル・テクノロジー」)

無人戦闘航空機 - 開発中

[1] List Of Coalition UAV Losses During The Yemeni Civil War https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/coalition-uav-losses-during-yemeni.html
[2] Saudi Arabia’s Intra Pushes Ahead with Drone Programs https://www.ainonline.com/aviation-news/defense/2022-03-14/saudi-arabias-intra-pushes-ahead-drone-programs
[3] Sino-Saudi heavy unmanned aerial vehicle https://vpk.name/en/487652_sino-saudi-heavy-unmanned-aerial-vehicle.html
[4] https://twitter.com/inter_marium/status/1099657284911841280
[5] It is possible that this joint venture had already effectively ended before the Russian invasion of Ukraine in February 2022.
[6] Saudi Arabia https://drones.rusi.org/countries/saudi-arabia/
[7] Saudis in talks with TAI to buy six Anka turkish drones https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/2017/11/17/saudis-in-talks-with-tai-to-buy-six-anka-turkish-drones/
[8] https://i.postimg.cc/W4My3cMX/18933-2.jpg
[9] Intra’s Samoom: the future Saudi Armed Forces MALE unmanned air system https://www.edrmagazine.eu/intras-samoom-the-future-saudi-armed-forces-male-unmanned-air-system
[10] Saudi GAMI, Baykar and Bayraktar drones https://www.tacticalreport.com/news/article/59638-saudi-gami-baykar-and-bayraktar-drones

 当記事は、2022年9月13日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

2023年12月20日水曜日

「マーチン139」から「クズルエルマ」まで」 :トルコ軍爆撃機の85年


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 「İstikbal göklerdedir. Göklerini koruyamayan uluslar, yarınlarından asla emin olamazlar - 未来は空にあります。自分の空を守れない国々は、決して自身の未来を確信できないからです。(ムスタファ・ケマル・アタテュルク)」

 2022年12月14日、「バイラクタル・クズルエルマ」無人戦闘攻撃機がテキルダー・チョルル・アタチュルク空港で初フライトを実施しました。偶然にも、この85年前にはアメリカから購入した20機のマーチン「139WT」爆撃機の1号機がトルコ空軍に就役するために同じ空港に着陸しています。

 1937年にチョルルでアメリカから初の本格的な爆撃機が納入されてから85年後に同じ場所で初の国産無人戦闘機の試験飛行を行うまでに至ったトルコは、軍事大国として飛躍的な発展を遂げています。

 85年前と根本的に異なるもう一つの状況としては、トルコがアメリカから軍用機を調達する能力(というよりは能力の欠如)が挙げられます。何年にもわたって多くの西側諸国から事実上の武器禁輸措置を受けているトルコは、2019年にはロシアから「S-400」地対空ミサイルシステムの調達を決定したことを受け、F-35の国際共同プログラムからも追放されてしまったのです。

 トルコ空軍は旧式化した「F-4E "ターミネーター2020"」の後継機として最大100機の「F-35A」を、トルコ海軍は「TCG アナドル」強襲揚陸艦で使用するための「F-35B」の導入を計画していました。

 トルコのF-35国際共同プログラムからの除名と「F-16V」の調達に行き詰まっている状況は、2020年代から2030年代初頭にかけて(少なくともその10年の間に「TF-X」ステルス戦闘機が導入されるまで)トルコ空軍は自身の戦闘機よりはるかに最新で高性能な戦闘機を保有するギリシャ空軍に対抗せざるを得ないことを意味しています。

 しかし、このような環境下であるからこそトルコの兵器産業は栄えてきたことを見落としてはならないでしょう:つまり、今が全ての状況がトルコにとって不利になり、赤字を埋め合わせるために創意工夫が必要とされるというわけです。

 「バイラクタルTB2」「アクンジュ」の開発後、メーカーである「バイカル・テクノロジー」社は 「クズルエルマ」無人戦闘機を開発することを通じてトルコの航空戦力不足の解消に取り組もうとしています。

 同社は、「AI-25TLT」エンジンを1基搭載した亜音速型の「クズルエルマ-A1」と2種類の遷音速型:同エンジンを2基搭載した「クズルエルマ-A2」と「AI-322TF」を1基搭載した「クズルエルマ-B1」を製造する計画です。超音速型の「クズルエルマ-B2」は2基の「AI-322TF」が搭載されることになるでしょう。

 「クズルエルマ」は「バイラクタルTB3」と共に「アナドル」からの運用が可能であり、これまで艦載機として検討されていた「F-35B」を代替するシステムにもなり得ます。

 この新型無人機がその真価を発揮する前には何度かの反復作業を経る必要がありますが、その回を重ねるごとに、この新型UCAVが従来の航空アセットの能力を次第に再現していくことは間違いありません。少なくとも、ロシアから「S-400」の購入を決めた結果として、トルコが「F-35」国際共同プログラムから外されたことによるギャップを部分的に埋め合わせることができるでしょう。その真価には、射程275km以上の巡航ミサイルと(100km離れた目標を攻撃可能な)目視外射程空対空ミサイル(BVRAAM)の発射能力も含まれます。
 
「バイラクタル・クズルエルマ-A1」試作初号機

 1930年代のトルコは、現在と全く異なる安全保障上の問題に直面していました。つまり、拡張政策を唱えるファシスト・イタリアの台頭です。

 地中海で急速に近代化が進むイタリアの脅威に対抗するには十分な装備をもってなかったトルコ軍は、将来の脅威に対処できる現実的な抑止力を構築すべく、自国に航空機の販売を望んでいる意思があると確認されたあらゆる国から運用機を調達し始めたのです。

 その結果、トルコ空軍はポーランドからPZL「P.24」戦闘機を66機、アメリカからマーチン「139WT」爆撃機20機の導入を通じて増強されました。こうした軍用機の調達は(トルコ空軍に対する)ここ数年で最初の設備投資であり、最終的には、ヨーロッパで新たな世界大戦が近づくことが予想される情勢下で、より大規模な航空機の発注へと道を開けるものとなったのです。

 その数年前に、ムスタファ・ケマル・アタテュルク大統領がトルコ空軍に初めての爆撃機を調達するよう命じたため、慎重な検討を重ねた結果としてアメリカのマーチン「B-10」が選定されました。これを受けてトルコの代表団が現地へ派遣され、マーチン「139WT」と呼称されるようになったエンジンを改良したモデルを20機調達するに至りました。 [1]

 1937年9月に納入されたマーチン「139WT」は、チョルル基地を拠点とする第9航空大隊(Tayyare Taburu)の第55・56飛行隊(Tayyare Bölüğü)に配備されました。同爆撃機は引き渡されてから僅か2年で時代遅れと化したものの、第二次世界大戦中には黒海上空の偵察任務で広く活用されました。

 1944年にイギリス製ブリストル「ブレニム」及び「ボーフォート」に置き換えられた後のマーチン「139WT」は、1946年まで第二線機として活躍し続けたことが記録されています(その時点でも、残存する16機のうち12機が依然として稼働状態にありました)。[1]

テキルダー・チョルル・アタチュルクに並ぶマーチン「139WT」

 航空機の設計における進歩(とりわけエンジン開発の発展)のおかげで戦闘機や爆撃機のペイロードは機体のサイズ以上に大きな割合で増加してきましたが、このことはマーチン「139WT」や「クズルエルマ」の場合でも変わりません。

 1930年代のマーチン「139WT」は機内の爆弾倉に搭載可能な爆弾のペイロードが1,025kgである一方、「クズルエルマ-A1」は1,500kgで、さらに「クズルエルマ-B2」では推定3,000kgのペイロードを搭載可能となっているのです。

 搭載する兵装自体も、無誘導爆弾から巡航ミサイルやBVRAAMへと大きな進化を遂げています。
 

マーチン「139WT」が僅か1,025kgしか爆弾を搭載できない一方、「クズルエルマ-B2」はその3倍近い積載量を有することになるだろう

 1世紀近くにも及ぶ技術革新がもたらした違いこそあるにもかかわらず、現代のトルコ製UAVは、この国が爆撃機を運用し始めた際の機体が有していた一部のDNAを継承しています。

 「バイラクタル・アクンジュ」はマーティン「139WT」と同様に2基のエンジンを持つプロペラ機で、エンジンはより効率の良いターボプロップ式ですが、最高出力はほぼ同一です。また、外形寸法においても両機は驚くほど似ていますが、前者はその流線形の機体を活用して最大1,350kgという見事なペイロードも誇っているのです。
 


 マーチン「139WT」と「クズルエルマ」は、過去80年間で航空機の設計及び性能がどれだけ進化してきたかだけでなく、軍備の調達面でトルコが1930年代から2010年代までずっと他国に頼っていたのが2020年代にはほぼ全てを国内産業から調達を目指すことで、トルコがどのようにして安全保障上の課題を対処から発展してきたのかについて興味深い考察を可能にします。

 その目標の実現に向けたトルコの発展は猛烈なスピードで前進していますが、その流れは当然のことでしょう。なぜならば、トルコは世界中の国々と同様に、現代において次の言葉の重要性をますます悟っているためです:「...自分の空を守れない国々は、決して自身の未来を確信できないからです。」


[1] Martin 139-WT (B-10) http://www.tayyareci.com/digerucaklar/turkiye/1923ve50/martin139wt.asp

注:当記事は2023年1月7日に本国版「Oryx」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事であり、意訳などで僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。


おすすめの記事

2023年12月6日水曜日

着実に積み重なるイノベーション:トルコ製の航空機搭載用ミサイル・爆弾類(全一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 トルコが世界的なドローン大国に台頭したことは今では多くの人々に知られていますが、この国のドローンに搭載される精密誘導兵器が、それを搭載するドローンとまさに同じくらい急速に導入されていることは全く知られていません。

 こうしている間にも膨張していくトルコ製の誘導兵器群は、数種類の無人戦闘航空機(UCAV)や戦闘機での使用が想定されたもので構成されており、後者には近いうちに登場する「ヒュルジェット」練習機と「TF-X(カーン)」ステルス戦闘機も含まれています。

 これらの兵装の全てがNATO規格に適合していることは、各国はトルコ製の兵装を自国の機体に容易にインテグレートすることができることを意味しています。それを踏まえると、この利点がまさに輸出面での商業的な成功を保証してくれるかもしれません。

 トルコ製の航空機搭載用の兵装には、現時点までに空中発射レーザーシステムから巡航ミサイル、さらには「METE」レーザー誘導式超小型ミサイルまでのあらゆるものが含まれています。[1]

 より一般的な兵装としては、「LGK」、「HGK」、そして「KGK」といった精密誘導爆弾のシリーズがあり、これらはトルコで製造された「Mark-82」、「Mark-83」、「 Mark-84」無誘導爆弾と同様に国内で開発された誘導キットを融合させたものです。

 防衛分野におけるほぼ自給自足の達成に向けてトルコが試みた結果は、同じ企業内で開発されたものでさえ兵装ごとに設定された目標領域で著しい重複が生じ、同じ任務に対処できる豊富な兵装群をもたらしました。

 産業面での自給自足を達成しようというトルコの決心で見落とされがちな要素として、この国がとあるシステムのみならず、それに関連するかもしれない全てを生産する意図があることが挙げられます。この戦略は防衛産業を超えて広がっており、自動車産業や鉄道といった別の分野でも大規模な投資が行われています。結果として、これまでに他国の鉄道を建設することができていたトルコが、近いうちにその上を運行する列車も納入できるようになるのです。

 この戦略は、最終的にはより多くの発注がトルコ企業へ与えられることを確かなものとし、将来的にトルコに莫大な利益をもたらすことは間違いないでしょう。

注意点
  1. このリストに掲載している兵装のいくつかについては、本稿執筆時点でも開発と(機体との)インテグレートの試験が継続しています。したがって、このリストは将来的なものを含めた兵装の概観と見るべきでしょう。
  2. 列挙している兵装については、基本的に①開発企業、②名前、③最大射程距離、④搭載機、⑤誘導方式、⑥その他参考事項の順に表記しています(種類によっては順番が入れ替わっていたり、省略しているものもあります)。
  3. いくつかの兵装の実際の射程距離について、UAVが投下する場合は高高度を飛行するジェット機よりも射程距離が短くなるものがあります。
  4. トルコの「F-4E-2020 "ターミネーター"」戦闘攻撃機はそう遠くない将来に退役する予定であることから、このリストには同機を各兵装を搭載可能な機体として表記していません。とはいえ、「F-16」で使用可能な兵装については、通常は「F-4E-2020」でも使用できます。
  5. リストに表示されている兵装名をクリックすると、当該兵装備の画像を見ることができます。
  6. 開発企業・メーカーは略称などがされていますが、制式名称は以下のとおりです。
      ・TÜBİTAK SAGE(トルコ科学技術研究会議・防衛産業研究開発機関)
      ・TAI(トルコ航空宇宙産業)
      ・STM(防衛技術エンジニアリング      
      ・MKE(機械及び化学工業株式会社)

空対空ミサイル(AAM)


対レーダーミサイル (ARM)
  •  ロケットサン 「アクババ」 (「アクンジュ」,「TF-X」,「F-16」用 ) [開発中]


空中発射レーザー

 
巡航ミサイル
  •  TÜBİTAK SAGE「SOM(ソム)-A」 [275+km] (GPS/INS誘導方式) [静止目標用・破片効果弾頭装備型] (「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「TF-X」,「F-16」用 )
  •  TÜBİTAK SAGE「SOM-B1」 [275+km] (GPS/INS/赤外線画像誘導方式) [静止目標用・破片効果弾頭装備型] (同上)
  •  TÜBİTAK SAGE「SOM-B2」 [275+km] (GPS/INS/赤外線画像誘導方式) [耐爆目標用・タンデム弾頭装備型] (同上 )
  •  TÜBİTAK SAGE「SOM-C1」 [275+km] (GPS/INS/赤外線画像誘導方式+データリンク) [移動目標用・破片効果弾頭装備型]  (同上) [開発中]
  •  TÜBİTAK SAGE「SOM-C2」 [275+km] (同上) [移動型耐爆目標用・タンデム弾頭装備型] (同上)  [開発中]
  •  TÜBİTAK SAGE 「SOM-J」 [275+km] (同上) [対艦用・半徹甲弾頭装備型]  (同上)
  •  ロケットサン「チャクル-CR」 [150km] (GPS/INS/赤外線画像/アクティブ・レーダー誘導方式+データリンク) [地上目標用・HE/サーモバリック弾頭装備型] (開発中)
  •  ロケットサン「チャクル-AS」 [150km] (同上) [対艦用・半徹甲弾頭装備型] (開発中)
  •  ロケットサン「チャクル-LIR」 [150km] (同上) [電子戦装置搭載型] (開発中)
  •  ロケットサン「チャクル-SW」 [150km] (GPS/INS/赤外線画像/アクティブ・レーダー誘導/スウォーム・センサー誘導方式+データリンク) [対艦用・半徹甲弾頭装備型] (開発中)
  •  ロケットサン「アトマジャ」 [220km] (GPS/INS/赤外線画像/アクティブ・レーダー誘導方式+データリンク) [対艦用・半徹甲弾頭装備型] (開発中)
  • バイカル「ケマンケシュ」 [200km] (開発中)


徘徊兵器


精密誘導爆弾
  •  TÜBİTAK SAGE「トガン」 (トルコ製81mm迫撃砲弾にGPS/INS誘導キットを組み込んだもの)[固定翼型及びVTOL型UCAV用]
  •  TÜBİTAK SAGE「ボゾク」 [9km] (GPS/INS/レーザー誘導方式)[UCAV用]
  •  TÜBİTAK SAGE「カユ 30」 [25km] (同上)[UCAV用]
  •  TÜBİTAK SAGE「カユ 50」 [25km] (同上)[UCAV用]
  •  ロケットサン「MAM(マム)-C」 [15+km] (同上)[UCAV用]
  •  ロケットサン「MAM-L」 [15+km] (同上)[UCAV用]
  • ロケットサン「MAM-L +」 [25+km] (赤外線画像誘導方式+データリンク)[UCAV用]
  •  アセルサン「LGK-82」 [12+km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にレーザー誘導キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  アセルサン「LGK-84」 [12+km] (トルコ製「Mk.84」爆弾にレーザー誘導キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  ロケットサン「テベル-81」 [28km] (トルコ製「Mk.81」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  ロケットサン「テベル-82」 [28km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットを組み込んだもの) [同上]
  •  ロケットサン「ラチン」 [28km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS/赤外線画像+データリンク誘導キットを組み込んだもの) [同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「ギョズデ」[28km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットを組み込んだもの) [同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「ギョクチェ」 [28km] (トルコ製「Mk.83」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットを組み込んだもの) [同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「HGK-82」 [28km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS誘導キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルクス」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「HGK-83」 [28km] (トルコ製「Mk.83」爆弾にGPS/INS誘導キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「HGK-84」 [28km] (トルコ製「Mk.84」爆弾にGPS/INS誘導キットを組み込んだもの)[「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「LHGK-84」 [28km] (トルコ製「Mk.84」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットを組み込んだもの)[「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  ロケットサン「MAM-T」 [30+km] (GPS/INS/レーザー誘導方式)[「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「TB3」,「ヒュルジェット」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「クズガン-SS」 [40+km] (INS/GPS/レーザー/赤外線画像/CCD/ミリ波レーダー誘導方式+データリンク) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  アセルサン「ミンボ」小直径爆弾 [100km] (GPS/INS誘導方式) [同上]
  •  アセルサン「赤外線誘導式小直径爆弾」 [100km] (赤外線画像誘導方式) [同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「KGK-82」 [110km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS誘導キットと折りたたみ式翼を備えた射程延長キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルクス」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「KGK-シィーハ-82」 [110km] (トルコ製「Mk.82」爆弾にGPS/INS/レーザー誘導キットと折りたたみ式翼を備えた射程延長キットを組み込んだもの) (UCAV用に設計されたもので、開発中)[「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「KGK-83」 [110km] (トルコ製「Mk.83」爆弾にGPS/INS誘導キットと折りたたみ式翼を備えた射程延長キットを組み込んだもの) [「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]


精密誘導爆型地中貫通爆弾
  •  TÜBİTAK SAGE「サルト-82」 [28km] (トルコ製「Mk.82」地中貫通爆弾にGPS/INS誘導キットを装着したもの)[「クズルエルマ」,「アクンジュ」,「アクスングル」,「ヒュルジェット」,「TF-X」,「F-16」用]
  •  TÜBİTAK SAGE「サルブ-83」 [28km] (トルコ製「Mk.83」地中貫通爆弾にGPS/INS誘導キットを装着したもの)[同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「サルブ-83T」 [28km] (トルコ製「Mk.82」サーモバリック地中貫通爆弾にレーザー誘導キットを装着したもの)[同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「NEB-84」 [28km] (トルコ製「Mk.84」地中貫通爆弾にGPS/INS誘導キットを装着したもの)[同上]
  •  TÜBİTAK SAGE「NEB-84T」 [28km] (トルコ製「Mk.84」サーモバリック地中貫通爆弾にGPS/INS誘導キットを装着したもの)[同上]


空対地ミサイル


汎用爆弾(無誘導爆弾)




[1] https://twitter.com/SavunmaTR/status/1441380967742988296

特別協力:SR_71 と TurkishWarNews(敬称略) 

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。


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