2021年8月30日月曜日

無人機戦における新たな章:「バイラクラル・アクンジュ」が就役した




 「İstikbal göklerdedir. Göklerini koruyamayan uluslar, yarınlarından asla emin olamazlar - 未来は空にあります。自分の空を守れない国々は、決して自身の未来を確信できないからです。(ムスタファ・ケマル・アタテュルク)」


 8月29日にトルコ空軍に就役した「バイラクタル・Akıncı(アクンジュ)」は、無人機戦の分野に多くの斬新な機能を導入しています。

 これらには、世界中の既存のいかなるUAVにも備わっていなかったいくつかの機能:特に、250km以上の射程を持つ高精度の巡航ミサイルやBVRAAM(視界外射程空対空ミサイル)を100km先の標的に向けて発射する能力が含まれています。

 これらの能力は「アクンジュ」を世界初の量産型マルチロール無人戦闘航空機に変え、無人のカウンターパートによってレガシーの航空アセット(の役割)をますます効果的に再現するきっかけとなります。

 すでに著しく多種多様な兵装プラットフォームですが、「アクンジュ」の 1,350kgという大きな兵装搭載量、搭載可能なさまざまな種類の兵装、そして24時間以上の滞空性は、現在トルコ空軍の240機のF-16飛行隊に付与されている対地攻撃任務の多くを引き継ぐのにも最適であることを意味しています。[1] 

 「アクンジュ」がF-16の対地攻撃任務を継ぐことは、少なくともこれらの任務から解放された貴重な機体が空対空戦闘に専念できるようになるため、トルコがロシアの「S-400」地対空ミサイルシステム(SAM)の購入を決定した結果としてF-35プロジェクトから除外されたことで生じた戦力ギャップを一応は部分的に減少させることができるでしょう。

 このユニークな一連の能力を世に送り出すことを別として、「アクンジュ」は「バイラクタルTB2」やTAI「アンカ」といったシステムに比べてペイロードも大幅に増やすことによって、トルコの既存の無人戦能力を大幅に拡大させます。

 これらのUAVでは重すぎて搭載できなかった誘導爆弾を「アクンジュ」では搭載できるようになったことに加えて 、この機の増加したペイロード容量は「MAM-L」のような小型爆弾をはるかに多く搭載することも可能にします。

 実際、TB2では4発だけだった「MAM-L」を「アクンジュ」では最大で24発を搭載することができることもあって、この新型機はたった1回の出撃で敵の装甲車列全体を壊滅させたり、前進する地上部隊のために敵を狙い撃ちすることで友軍の攻勢を支援するための完璧なシステムとして位置づけられています。後者の役割では、24時間以上の滞空性能のおかげで敵にとっては「アクンジュ」が忍耐強い潜在的な脅威となるでしょう。

    
 バイカル・ディフェンス社は「アクンジュ」が持つ兵装システムの統合を進めており、現在では数種類の誘導爆弾がこの新しいプラットフォームでの使用を検証するためにテストされています。

 これには、2021年4月に最初の試験が行われたスマート爆弾の「MAM」シリーズの新しい派生型である、40km弱の射程距離を誇る「MAM-T」が含まれています(「MAM-L」と比較すると14km以上も長いのです)。

 「MAM-T」は「アクンジュ」で使用されることになっている「テバー(TEBER)」「LGK(レーザー誘導キット装着爆弾)」「KGK(射程延長用の折りたたみ式主翼・GPS/INS誘導キット装着爆弾)」「(L)HGK(レーザー及びGPS/INS誘導キット装着爆弾)」などの精密誘導爆弾ファミリーと共に役立つものになるでしょう。

 これらの誘導爆弾は、自国で設計された誘導キットと国内生産された「Mark-82」、「Mark-83」と「Mark-84」無誘導爆弾を組み合わせたものから構成されています。

 急速に成長しているこの誘導爆弾ファミリーからも分かるように、トルコの精密誘導弾はそれを搭載することになっている無人機と同様に迅速に導入されています。

 とりわけ約900kgの重量を誇る「Mark-84」は非常に手強い武装であり、無人機に搭載される最重量級の爆弾でもあります。GPS/INS誘導キットを装着した場合、この爆弾は「HGK-84」と呼称されます。

 「HGK-84」は最大28km(低空から投下した場合は22km)の射程距離に到達できる一方で、「LHGK-84」呼ばれる別の派生型には精度を向上させるためにレーザー誘導キットが装着されています。[2]

 また、別の派生型である「NEB-84」は、橋やバンカーなどの硬い目標や地下の目標に使用するために設計された(誘導)貫通爆弾です。

 「アクンジュ」以外で「Mark-84」(米国では「GBU-31 JDAM」)を搭載できる無人機は、ジェットエンジンを搭載したジェネラル・アトミックス社の「アヴェンジャー」だけです。


 一見すると無限な種類があると思える兵装を搭載するために、「アクンジュ」は合計で9基のハードポイントを備えており、その位置は主翼の下部に8基、胴体下に1基となっています。後者には、「HGK-84」や「SOM」巡航ミサイルを含む、この無人機に搭載可能な最重量級の兵装が搭載される予定です。

 典型的な兵装の搭載例としては、下のイメージで示されているように、折りたたみ式の主翼キットを搭載した「KGK-82」滑空誘導爆弾2発、「テバー82」精密誘導爆弾2発、そして「MAM-L」小型誘導爆弾8発で構成されたものがあります。この組み合わせは、遠距離にある高価値な硬化目標を攻撃するために出発した「アクンジュ」に、その道中で敵車両の隊列に遭遇してもそれらを即座に撃破させ、そのまま任務を継続・完了させることを可能にします。



 「アクンジュ」が持つ、ほぼ間違いなく最も革新的な特徴は、国産の「ボズドアン」赤外線誘導式AAMとソリッドステート化されたアクティブレーダーシーカーを用いて自身を目標に向けて誘導する(撃ち放し式の)「ゴクドアン」BVRAAM(目視外射程空対空ミサイル)から構成される、空対空ミサイル(AAM)の運用能力があることです。

 「アクンジュ」が搭載しているAESAレーダーは、遠距離の目標を自律的に見つけ出し、低速飛行している的の固定翼機、無人機やヘリコプターを撃墜するために交戦したり、味方の無人機を護衛するために使用することができるはずです。

 (世界にはBVRAAMを保有していない空軍も多数存在するため)BVRAAMを搭載した「アクンジュ」はほとんどの空軍が直面することのできない大きな課題です。さらに、(オフボアサイト照準能力を持つ)「ボズドアン」のような中距離AAMも高速で機動性が高い上に電子妨害にも強いため、相手の戦闘機にとっても脅威となる可能性があります。

 これらのミサイルはいずれも現時点で依然として開発の途上にあり、「アクンジュ」に完全にインテグレートされるまでには数年を要すると思われます。

 この機体が持つもう一つの特徴は、敵の指揮所やSAMサイト、艦艇や230kgの高性能炸薬弾頭での精密打撃を必要とする他の標的に使用するために設計された「SOM」巡航ミサイル・シリーズを搭載する能力があることです。

 このシリーズの2つの派生型は特に艦艇に対して使用するように設計されたものですが、はるかに小型の「MAM-T」の射程距離は、すでに(トルコの仮想敵国である)ギリシャ海軍の4隻を除く全艦艇の防空システムの有効射程距離を凌駕しています。

 それらがその役割で用いられそうにはありませんが、この事実は、過去数十年でUCAVとそれらが搭載できる精密誘導弾の性能がいかに急速に成長したかを示しています。



 一旦現役に入れば「バイラクタル・アクンジュ」は無人戦の新たな章を告げることになります – 味方の領空内から敵のターゲットに巡航ミサイルを発射したり、「NEB-84」貫通爆弾で地下のバンカーを破壊したり、最大24発の「MAM-L」で装甲車列を停止させたり、敵の防空システムをその射程外から狙ったり、敵の航空機・UAVやヘリコプターを撃墜したり...。

 兵装の種類が豊富なことは、「アクンジュ」にある作戦飛行の途中で別の任務へ容易に転用することが可能であることを意味しており、既存のいかなる無人機よりも運用面で柔軟性が大きなものとなります。

 「アクンジュ」の購入に関心を持っている国にとっては、これらの任務に使用される全ての兵装(及びその誘導キット)をトルコからダイレクトに調達できるという事実が高く評価されることでしょう。さらに、この新型UCAVがNATO規格の兵装に適合しているということは、NATO諸国が他の兵装や各国で製造された兵装を「アクンジュ」にインテグレートできることを意味しています。

 これはNATO諸国だけに及ぶものではなく、アゼルバイジャンやパキスタンのような独自の精密誘導爆弾を開発している国では、比較的簡単に「アクンジュ」とのインテグレート(あるいはそうするためのトルコの支援)が期待できます。

 海外の顧客にとって魅力的であることが「アクンジュ」の成功を確かなものにしており、最終的にごく僅かしか生産されなかった世界中の多くの有望なUCAVの運命から逃れられるかもしれません。

 そのため、この新型機は無人機戦の歴史の中で最も重要な大激変の一つとしての役割をすぐに獲得するか可能性があります。



[1] https://twitter.com/ssysfakb/status/1431632334969790465
[2] Precision Guidance Kit (HGK) - TÜBİTAK https://www.sage.tubitak.gov.tr/en/urunler/precision-guidance-kit-hgk

※  この翻訳元の記事は、2021年8月29日に投稿されたものです。当記事は意訳など 
  により、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読ください。


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