2026年10月25日日曜日

【復刻記事】イスラム国の猛威:タブカ基地での鹵獲でパワーバランスを取り戻す


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2014年8月25日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」とベリングキャットで公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 シリア北部のタブカ空軍基地が先日に陥落したことで、イスラム国(IS)は再び大量の兵器や装備類を手に入れました。これらが中東における勢力拡大をさらに強化するために活用されることは確実です。

 タブカにおけるシリア・アラブ空軍(SyAAF)の全戦力はISの占領前に撤収されましたが、 整備中だった「MiG-21MF」1543番機と2217番機、「MiG-21UM」2360番機と2357番機、そして多数の稼働不能なMiG-21MF/UM」が残置され、その後戦利品として鹵獲されました。合計で23機もの「MiG-21」が鹵獲されたと見られています。


 また、「AZP S-60」57mm対空機関砲24門を装備した4つの対空陣地、数台の「T-62」戦車、大量の弾薬、そして「9M113」ミサイルと発射機も鹵獲されました。



 タブカに配備されていた「MiG-21」の2個飛行隊が使用する予定だった「R-3S」空対空ミサイル(AAM)の鹵獲も確認されました。AAMは適切な発射母機がなければ本来の用途では役に立ちませんが、「R-3S」ミサイルは多数が(アル・クサイル)空軍基地で鹵獲された後、地対地誘導ロケット弾として使用されたことが知られています。しかし、軽量の弾頭のため、こうした転用も全く使い物になりません。


 アサド政権にとって、この基地に存在するもう一つのかけがえのないアセットはシリア北部を飛ぶ航空機を探知する多数の対空レーダーでした。これらがなければ、あらゆる航空機が危険を冒してシリア領空に侵入しても探知されずに済むことになります。ISがレーダーを攻撃しなかったことを考えると、レーダーネットワークを稼働させるために無傷で鹵獲しようとした可能性が高いと思われます。ただし、基地に残った守備隊らによって全レーダーが無力化された可能性も排除できません。

 タブカで使用できる最も新しいレーダーは中国製の「JY-27」であり、基地が陥落する前の映像でも確認できます。このレーダーは元オペレーターの協力を得られればISにとって非常に有用なものとなりますが、高度測定機能を欠くため、同基地に配備されている2機の「PRV-13」によるサポートが必要です。ちなみに、鹵獲されたレーダーには、「P-14」と「P-35/37」が含まれます。


 鹵獲された40年前の航空機の多くについては、そもそもが廃棄寸前の機体だったり守備隊らによって意図的に破壊工作が施されている可能性もあります。しかしながら、整備されていた2機の「MiG-21」をISが再びフライアブルな状態にしようと試みる可能性も考えられなくはありません。 アフガニスタンのタリバンが旧政権軍のパイロットや整備兵を活用して「MiG-21」、「Su-20」、「L-39」、「Mi-8/17」を運用していたのと同様に、「MiG-21」に関する訓練を受けた元整備兵らが(鹵獲機の稼働状態を維持し続けるために)ISに協力せざるを得なくなる状況に陥る可能性があるでしょう。過去に「MiG-21」を運用していた国の数を考慮すると、飛行または航空機整備の経験を持つISシンパの人間が海外から呼び寄せられる可能性も考えられます。

 ISはKshesh(ジラー)で鹵獲したイスラーム軍の「L-39」を再び稼働させることに何の関心を示さない代わりに、同基地を戦闘員の訓練基地として使用したことがあります。これを踏まえると、今回も同様のパターンを踏む可能性あ十分あるでしょう。もちろん、イスラーム軍の戦闘員が撤退時に「L-39」を破壊してIS国による再使用を妨げた可能性もあるため、今回も同じになるとは断言できません。


 ISはシリアとイラクの双方において空からの攻撃に対してほとんど無防備であり、幸いなことにアメリカとシリアの空軍がその能力不足を突いてきました。タブカやそれ以前の戦闘でも数多くの対空砲も鹵獲されていますが、機動性が低い上に空を高く飛ぶ現代的な航空機に対する有効性が限られているため、地対空ミサイル(SAM)のようなリスクを敵機に及ぼすことがなかったのです。

 最も重要な事実は、タブカの陥落によってラッカ県におけるSyAAFの優勢が終焉を迎え、ISがシリアの奥深くまで活動拠点を拡大するための切り札を手に入れたことでしょう。アサド政権が新たに始めたアレッポへの攻勢はISにとってより分かりやすい脅威にも思えますが、その一方で、ISとパルミラ近郊のタドムル空軍基地、そして「Su-24」戦闘爆撃機部隊が配備されているT4空軍基地との間に何も遮るものがなくなったことも事実です。

 鹵獲された戦闘機が再び使用されるかどうかは別として、ISにとっての一連の勝利が、現時点におけるシリアとイラクの支配権をめぐって争っている勢力のパワーバランスに大きな影響を与えることは明らかです。

Special thanks: ACIG


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