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2023年4月8日土曜日

アフリカに嵐を巻き起こせ: ニジェールが「バイラクタルTB2」を導入した


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)の商業的成功には際限がなく、このシステムの調達に関心を示す国の数は月ごとに増加しているようです。2021年10月下旬の時点で、TB2を調達した国は13カ国と報じられており、同年8月から3か国も増加しました。[1]

 TB2の製造・販売を手がける「バイカル・テクノロジー(以下、バイカル社と表記)」社は、ほかの大部分のUCAVメーカーが自社製システムの生産期間の全体を通じて達成したいと望む数よりも多くの取引を3か月で成功裏に締結したため、この商業的成功の重要性について、いくら強調してもし過ぎることはありません。

 それ自体もすでに素晴らしい偉業ですが、「バイカル」社が全く新しい市場に自社製品を浸透させることに成功したことも同じくらい素晴らしいことだと言ってもよいでしょう。その中で最も注目すべきはサハラ以南のアフリカ市場で、ナイジェリア、アンゴラ、ルワンダといった国々がTB2の導入を示唆したり、すでに発注済みの状態にあります。[2]

 「バイラクタルTB2」を調達したもう1つのアフリカの国は、ニジェールです。[3] [4]
 ニジェールへの販売は、モロッコやリビアなど他のアフリカ諸国とすでに締結している取引に続いて成立しました(注:2023年現在は、すでに作戦に投入されているようです)。このとき、「バイカル」社は、「翼竜」シリーズを生産する中国の「CAIG」社や「CH-3/4」シリーズで知られる「CASC」社だけでなく、トルコ企業との競争にも直面しました。[3]
 
 「トルコ航空宇宙産業(TAI)」「アンカ」UCAVをニジェールにも売り込んでおり、賢明に「T129」攻撃ヘリコプターと同UCAVの輸出契約を成立させようとしていたため、「TAI」が同国と取引をまとめる用意ができているように見えました。[3]

 しかし、現時点で「アンカ」を導入した外国は2020年に3機を調達したチュニジアのみに留まっているようです(注:2023年4月現在でカザフスタンマレーシアアルジェリアとチャドも契約を結ぶという商業的な成功を収めています)。[5]

 「T129」については、機体に搭載されるターボシャフトエンジンである「LHTEC」製 「T800」の輸出許可にアメリカが難色を示したことが海外販売のネックとなっており、「アンカ」の輸出販売が不調なのは、UCAV市場における中国や「バイカル」社との激しい競争の結果がダイレクトな原因であることに疑う余地はありません。

 「バイラクタルTB2」がリビア、シリア、そしてナゴルノ・カラバフで著しい成功を収めたことが、価格の安さと共にTB2の売却を推し進め、結果的に「アンカ」に不利益をもたらしていることは間違いないでしょう。

 とはいえ、「TAI」はニジェールに若干数の「ヒュルクシュ」練習機を売却することに成功し、同機初の輸出を記録するという偉業を成し遂げたことも注目すべき出来事と言えます。[6]

                   

 現在、ニジェールはチャド湖に沿った南東部の国境で反政府軍の脅威に直面しています。
 この脅威は2000年代後半にボコ・ハラムによって引き起こされ、今はイスラム国・西アフリカ州(ISWA)が主体となっています。彼らがニジェールの前哨基地や民間人の居住地を頻繁に攻撃した結果、数千人もの民間人や兵士が殺害されました。[7]

 ボコ・ハラムのテロ活動は2009年にナイジェリア北東部で勃発し、次第に行動範囲が近隣のチャド、カメルーン、ニジェールまでに急速に拡大していきました。治安部隊はこれまでにこうした脅威を封じ込めるのに苦労しており、機動性の高い武装勢力を追跡し、居場所を突き止め、無力化するのは困難であることが判明しています。

 イスラム国部隊との戦闘の難しさは、ニジェールが彼らの小規模な集団や車両を発見し無力化できる適切な航空戦力が欠けていることによってさらに悪化しています。なぜならば、彼らは近くにある木の下に隠れるだけでほとんどの航空機からの発見から簡単に逃れることができるからです。

 現在、ISWAと戦う諸国の中ではナイジェリアだけが、密集した草木に隠れた人や車両の熱源を検知できる前方監視型赤外線装置(FLIR)を搭載したUAVの大規模な飛行隊やその他のアセットを運用しています。

 ニジェールはFLIRを搭載した航空機を数機保有しているものの、これらは非武装であるため、攻撃機やヘリコプターとの連携した運用は事実上不可能となっているのが現状です。

 「バイラクタルTB2」のような無人戦闘航空機(UCAV)を導入することで、ニジェールは現在保有している作戦機の長所(この場合、高度なFLIR装置と兵装)を1つのシステムに統合することができます。また、TB2(と「アンカ」)は、アフリカのほとんどの攻撃機やヘリコプターに搭載されている無誘導爆弾やロケット弾ではなく、最大で4発の「MAM-L」「MAM-C」精密誘導爆弾を搭載することが可能です。

 多くのアフリカ諸国は、高度な兵器を調達したものの、それらの運用について長期的に見ると財政面で持続不可能であることが判明した経験があるため、TB2の手頃な価格、信頼性、そして強力なアフターサポートはニジェールでも間違いなく評価されることでしょう。


 現在の「Armée de l 'Air Nigérienne(ニジェール空軍)は、ロシア、ウクライナ、アメリカ、フランスから導入した固定翼機とヘリコプターで構成された、小さくもよく装備された飛行隊を運用しています。

 過去10年間で、ニジェール空軍は、ニジェール南部のチャド湖岸において急増しつつあったイスラム国によるテロ攻撃に対処する能力を強化することを目的とした、適度な再軍備計画を立ちあげて推進してきました。

 その計画の一環として、ニジェールは近接航空支援(CAS)機と攻撃ヘリコプターを保有することになり、「キングエア350」ISR機を1機、「セスナ208」を2機、そして「DA42 MPP」を 2機といった多数の新型観測機も導入されました。後者の2機種はFLIR装置を搭載しているため、同国南東部のナイジェリアとの国境沿いでの監視任務に適しています。

 ちなみに、2機の「セスナ208」は、ニジェール南東部上空の情報収集・警戒監視・偵察任務(ISR)を遂行するために、2015年に米国から供与されたものです。[8]

 ただし、アフガニスタン、レバノン、イラクに引き渡された「AC-208 "コンバット・キャラバン"」とは異なって、ニジェールの「セスナ208」は武装を全く備えていません。

 ニジェール空軍の対地攻撃能力は、「Su-25」攻撃機2機、「Mi-35P」攻撃ヘリ2機、「Mi-171Sh」強襲ヘリ2機、「SA342M "ガゼル"」攻撃ヘリ3機で構成されています。この空軍の攻撃機やヘリコプターはいずれも誘導兵器を装備していないものの、各種ロケット弾やガンポッドを装備することが可能です(注:ニジェールは誘導爆弾や空対地ミサイルを保有していません)。

 同空軍がほかに保有する飛行機には、「C-130 "ハーキュリーズ" 」輸送機2機、「ドルニエ228」輸送機、ハンバート「テトラ」軽飛行機2機、「ボーイング737」VIP輸送機が含まれています。

 2013年には、はアメリカから、災害・戦傷救難活動仕様の「セスナ208 "キャラバン"」2機も供与されました。[8]

ニジェールが2機保有する「DA42 MPP」観測機の1機。機種下部のFLIR装置に注目。

 自身がいまだにUAVを運用していないにもかかわらず、フランス軍の「MQ-9B "リーパー"」を首都ニアメに配備し、中央部のアガデス近郊にあるアメリカの極秘のドローン基地を提供することによって、ニジェールは今やサハラ以南のアフリカにおけるU(C)AV作戦の中心地となっています。

 これらの国による作戦がニジェールに自身のUCAVの運用に体する関心を刺激し、それが南部国境の治安状況と組み合わさって、自国のUCAVアセットの導入を強く主張するに至らせたことは間違いないでしょう。

ニジェールのアガデス近郊で緊急着陸したアメリカ陸軍の「MQ-1C "グレイ・イーグル"」(2021年1月)

 ニジェール空軍の固定翼機とヘリコプターは全てが首都ニアメのベース・アエリエンヌ101(BA101:第101空軍基地)を拠点としており、ディオリ・アマニ国際空港と敷地を共有しているものの、軍専用の滑走路を有しています。

 「BA101」はフランス空軍の輸送機やUCAVにも使用されていたほか、以前はアガデスに運用が移るまでは、ニジェールにおけるアメリカによるドローン運用の主要拠点として使用されていました。

 ニジェール中部に位置するアガデス(BA201)も重要な空軍基地ですが、現在はここに常駐している航空機はありません。

 公式な空軍基地という地位を得ていないにもかかわらず、ニジェール空軍は同国南東部にあるディファ飛行場へ定期的に機体を派遣し続けています。


 公式な空軍基地という地位を得ていないにもかかわらず、ニジェール空軍は同国南東部にあるディファ飛行場へ定期的に機体を派遣し続けています。

 ニジェール政府は南東部の国境沿いにおける治安状況を考慮し、ディファ近郊に空軍基地を設けるすることを公表していますが、これがディファ飛行場(下の画像)を拡張するのか、近くに全く新しい基地を建設するのかについては、現時点では不明です。[9]

 ディファ飛行場の1800mある滑走路は「バイラクタルTB2」を配備するには十分な長さであり、敷地自体も将来的な拡張にも十分なスペースがあります同同飛行場には2016年の時点ですでに3つの格納庫が建てられており、それらは同時に数機のTB2を格納に十分な大きさを誇っています。


ディファに駐機駐機している2機の「Mi-35P」攻撃ヘリコプターと災害・戦傷救難活動仕様の「セスナ 208」。

 ニジェール空軍がディファ飛行場を使用していることに反応して、ISWAの戦闘員は過去数年間にわたって何度もこの飛行場を標的にテロ攻撃をしかけてきました。

 この飛行場に詰めている人々にとっては幸いなことに、これらの攻撃の大半は、単発の122mmロケット弾を極めて簡易な発射装置から撃ち込む程度のもので占められていました。そのような即席の発射装置から撃ち込んだ場合の命中精度は極めてお粗末なものであり、こうした散発的な攻撃による被害はなかったと思われます。[10]

 それにもかかわらず、ニジェール軍は滑走路の周辺に防御陣地を点在的に設けて、空港周辺におけるプレゼンスを大幅に強めました。

ディファ飛行場に対して122mmロケット弾による攻撃を準備中のイスラム国戦闘員(2019年3月14日)。 [10]

 装甲・砲兵戦力といった火力の観点から見ると、ニジェール軍はそれらをほとんど備えていませんし、本格的な多連装ロケット砲(MRL)や比較的新しい大砲も運用していないことが特徴となっています。数多くある「63式」107mmMRL(射程8km)と「D-30」122mm榴弾砲(射程15km)が、陸軍唯一の長距離火力支援アセットです。

 チャドやナイジェリアとは逆に、ニジェール軍はもっぱらフランスの「AML-20/60/90」装甲車や中国の「WZ-551」「WZ-523」装甲兵員輸送車といった装輪式のAFVを用いています。

 それらとは別に、最近ではフランスのACMAT製「バスティオン」歩兵機動車(IMV)や南アフリカの耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)を導入しています。2021年11月には、ニジェールがトルコから装甲車を調達することが公表されました。[6]

 十分な数の現代的な防護車両が不足していることが、効果的なパトロールを実施したり、ISWA部隊が攻撃地点からの逃走や全く別の国へ逃げ込む機会を得る前に追跡する軍の能力を妨げているのが実情です。

 MRAPやその他の装甲車両の数が限られているため、地上部隊は即席爆発装置(IED)や待ち伏せ攻撃に脆弱であり、それに加えて最新の照準装置が欠けていることから、植物が密集した作戦地域における状況認識が全くできません。

 地上部隊の支援や独自に目標を捜索することに航空機を用いることで、ニジェール軍は無防備な地上部隊だけに依存することなくISAW部隊に戦いを仕掛けることが可能となるのです。


 ニジェール空軍が現在保有する主要な対地攻撃戦力は、2013年にウクライナから調達した2機の「Su-25」攻撃機です。この攻撃機は100kg爆弾、250kg爆弾、「UB-32」57mmや「S-8」80mmロケット弾、あるいはこれらの兵装を組み合わせたものを最大で4400kgも搭載できるという相当なペイロードを誇っていますが、ニジェール南東部の植物が密集する地域では、目標の位置を特定するという厳しい難題に直面していると思われます。

 もともと「Su-25」はヨーロッパの平原を横断する機甲部隊を攻撃するために設計されたため、パイロットからすると、上空に響き渡るエンジン音を聞くとすぐに木の下に隠れてしまうことが多い反政府軍の小規模な部隊や車両を追跡することは非常に困難を極めます。
安価な攻撃機として多くのアフリカ諸国が「Su-25」を導入していますが、これらの国々は頻繁にその効果的な実戦への投入に苦労しているようです。

 実際に攻撃に用いられた際に、「Su-25」が投下した爆弾の命中精度があまりに低いことが判明したため、導入したアフリカ諸国は作戦飛行を全くさせていないのかもしれません。

 アンゴラとコートジボワールだけが「Su-25」をある程度有効に使うことができましたが、後者は車両や歩兵のような機動性を有する目標ではなく、ほとんどが建物や強固な陣地に対して用いられました。

80mmロケット弾用の「B-8」ロケット弾ポッドを装備した、ニジェール空軍の「Su-25」。

 地上の反政府軍との戦闘で「Su-25」より少しは効果的なのが、今は「Mi-35P」が2機、「Mi-171Sh」が2機、「SA342M "ガゼル"」が3機で構成されているニジェールの攻撃ヘリコプター飛行隊でしょう。これらの全機が近年に導入されたものであり、特に「Mi-171Sh」は6門のロケット弾ポッドとガンポッドという重装備に加え、歩兵も輸送可能な畏敬されるアセットとなっています。

 しかし、現時点でどのヘリコプターにも誘導兵器が装備されていないことに加え、FLIR装置も欠いていることは、これらの機体が基本的に格好の目標に対する攻撃にしか使えないことを意味します。

 この意味で、高価な近接航空支援機や攻撃ヘリを数多く調達しても、これらを効果的なプラットフォームに変えることができる誘導兵器や照準システム抜きで導入した場合、それらを運用する軍隊の実際の能力を向上させる可能性はほとんどありません。

 ニジェールは「Su-25」や攻撃ヘリの目標位置を特定するのにを手助けする複数のISR機を運用していますが、このようなアフリカの小規模な空軍にとって、複数の航空アセット間の相乗効果の実現にいまで手に届かないことが一般的です。こういった欠点はあるものの、ニジェール空軍の「Su-25」、「Mi-35P」、「SA342M」はISWAとの戦いに何度も投入されています。

ロケット弾ポッドとガンポッドを装備した「Mi-171Sh」は2機が2020年にロシアから470万ドル(約5.7億円)で調達されました。 [11]
ニジェールが3機保有する「SA342M "ガゼル"」の1機。 機体右側面に20mm機関砲が装備されています。

 アフリカ諸国の空軍が「DA42 MPP」のような捜索能力(特にFLIR装置)と精密誘導兵器の運用能力を一体化した機種を導入することについて、彼らの考え次第と主張することもできますが、これは言うほど簡単なことではないことが実証されています。

 一例を挙げて見ると、マリやブルキナファソは「A-29B "スーパーツカノ" 」を導入していますが、単に非常に高価格のためか米国が輸出を許可しなかったために、FLIRや誘導兵器の運用能力を装備しない状態で引き渡されたのです。実際、マリは「A-29B」の調達が認められたものの、同機に付随するFLIRシステムの購入は阻まれてしまいました。[12]

 (カリダス「B-250」とTAI「ヒュルクシュ」を別とすると)選択可能な代替手段がほとんどないことから、この状況は本質的に、あるアフリカの国がPGMの運用能力を持つ航空戦力を入手するために、中国の腕にまっすぐ押し込まれてしまうことに至らせる可能性を生じさせているのです。

 中国は、戦争状態にある国にすら、そのような兵器を輸出することを少しも問題にしていないことが知られています。[13]

 とはいえ、サハラ以南のアフリカ諸国の多くは、これまで中国製UCAVの調達を控えてきました。おそらく、墜落・事故発生率の高さ、信頼性の問題、そして依然として高額な導入コストが理由と思われます(注:「翼竜II」1機だけで約1500万ドル:約15億円に近い価格です)。


 「バイラクタルTB2」は、現代戦の概念に革命をもたらしました。その手頃な価格と信頼性、そして政治的な制約なしに入手可能というメリットのおかげでこの革命は今ではアフリカにも到達する見込みとなっています。

 ニジェールによる「バイラクタルTB2」の導入は、彼らにイスラム国との戦いを効果的な方法で仕掛けたり、現時点でアメリカやフランスがニジェール国内から実施しているのと同じドローン作戦を、実際に同国の水準から見ても手頃な価格で遂行することが可能になります。

 ニジェールやナイジェリアに続いて、チャドやカメルーンといった国々もUCAVの獲得に向けて動き始めようという意欲を持つことは考えられないことではないでしょう。これらの国々でのTB2の商業的成功や、後者がすでに運用している中国製UCAVではなくトルコ製UCAVの調達に関心を示していることを考えると、これらの国々にとってTB2は今や当然の選択のように思えるかもしれません。

 アンゴラやルワンダといった別のアフリカ諸国もトルコ製ドローンを買い求めていると報じられている現在、TB2の商業的成功は今や際限がないように見えます。

 TB2は戦場で圧倒的な結果をもたらし、 21世紀に求められていた能力:信頼性と手頃な価格を兼ね備えることに成功した(ほぼ間違いなく)最初のUCAVであるため、商業的成功の拡大は実戦におけるシステムを分析した人々にとって全く驚くべきことではないのです。


[1] https://twitter.com/BaykarTech/status/1453383196624793606
[2] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[3] Battle between Turkey's TAI and Baykar plays out in Niamey https://www.africaintelligence.com/central-and-west-africa_business/2021/10/04/battle-between-turkey-s-tai-and-baykar-plays-out-in-niamey,109695781-art
[4] TUSAŞ’tan Nijer’e HÜRKUŞ İhracatı https://www.savunmasanayist.com/tusastan-nijere-hurkus-ihracati/
[5] Tunisia Signs $80 Million Deal for Three Turkish Anka-S Combat Drones https://www.thedefensepost.com/2020/12/17/tunisia-buys-anka-s-drones/
[6] Niger becomes first foreign customer of Turkey’s Hurkus aircraft https://www.defensenews.com/air/2021/11/19/niger-becomes-first-foreign-customer-of-turkeys-hurkus-aircraft/
[7] Niger: Surging atrocities by armed Islamist groups https://reliefweb.int/report/niger/niger-surging-atrocities-armed-islamist-groups
[8] Niger C-208 Program Reaches 10,000hr Flying Hours Without Incident https://ne.usembassy.gov/niger-c-208-program-reaches-10000hr-flying-hours-without-incident/
[9] Niger to construct new air base in Diffa http://www.wadr.org/news.php?uin=WN0908215998
[10] https://twitter.com/AnalystMick/status/1109159221332004867
[11] Niger receives Mi-171Sh helicopters https://www.defenceweb.co.za/aerospace/military-helicopters/niger-receives-mi-171sh-helicopters/
[12] Mali receives Super Tucanos https://www.defenceweb.co.za/aerospace/aerospace-aerospace/mali-receives-super-tucanos/
[13] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html

  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
    あります。



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2021年7月9日金曜日

死に物狂いの怪物:YPGのシュトルム・パンツァー


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 おおよそ1918年頃から世界の大部分で歴史の片隅に追いやられていますが、YPGはいわゆる「シュトルム・パンツァー(突撃戦車)」:第二次世界大戦に登場した同名の戦車(注:ドイツ軍の「ブルムベア」)を思い起こさせる装甲強化型歩兵支援プラットフォームの積極的な運用者であり続けています。巨大で奇怪な見た目をしたこれらの車両は、シリア北部にあるYPGの支配地域から彼らを何度も追い払おうとしたイスラム国や自由シリア軍に対するYPGの抵抗を象徴し始めています。

 YPGの隊列にこのようなDIYの怪物たちが存在していることはよく知られていますが、運用されているシュトルム・パンツァーの種類を要約する試みはほとんど行われていません(結果として、この記事の完成が大幅に遅れてしまいました)。

 シリア内戦に関与した他の主要と比較すると、シリア民主軍(SDF)を構成する主要な勢力であるYPG(Yekîneyên Parastina Gel: 人民防衛隊)は装甲戦闘車両(AFV)をほとんど運用していません。結果として生じた戦力のギャップを補うために、YPGは(通常はクローラーローダー、ブルドーザーや大型トラックなどをベースにした)DIY装甲車の生産を積極的に始めました。

 最初のDIY装甲車は無限軌道の車体に箱状の構造物を搭載したもの –ほぼ移動式のトーチカのようなもの– で構成されていましたが、そのうちYPGはその設計にいくつかの進歩的な要素を取り入れていきました。最終的に完成した車両は数え切れないほど多くの点でその有効性が制限されていますが、実際には一定の状況で役立つことがあります。

 YPGの機甲戦に関する情報が明らかに著しく不足している結果として、シュトルム・パンツァーの戦闘効率についてはほとんど知られていません。前線から離れた位置にあるYPGの拠点で撮影されたプロパガンダ映像や写真には頻繁に登場しますが、作戦下でシュトルム・パンツァーが動いている映像はほとんど存在しないようです。2013年から2017年にかけてSDFに戦争をしかけたイスラム国(IS)でさえ、2015年にハサカ県でYPGの部隊が敗走した際に、損傷を受けて放棄された1台しか捕獲できなかったのです。


控えめな始まり

 初期のシュトルム・パンツァーは装輪式の車体をベースにしていることが多く、ダンプトラックがその理想的なベースであることが証明されています。
装輪式の車体は装軌式のものと比較すると未舗装地での機動性が低下することに関係があるかもしれませんが、装軌式ローダーは決してスピードを考慮して設計されていません。新たに追加された装甲版と相まった結果、装軌式大型モデルのいくつかは固い地表での走行のみに限定されているのが妥当なものと思われます。この状態は彼らの運用能力を深刻な制約にかけているため、オフロード性能の維持という面では装輪式のプラットフォームに優位性を与えています。

 下の画像は典型的に改造されたダンプトラックです。この車両には(敵の心に恐怖を植え付けるということを主張したい場合を別として)迷彩効果が皆無に近い、周りから目立つ豪華な塗装が施されています。無蓋式荷台には砂や建設廃材の代わりに、歩兵のシェルターとなり、両側に各3つある銃眼から彼らの小火器を射撃することができる装甲構造物が設置されています。また、荷台と同様に完全に金属板で覆われているキャビンの上部には、「DShK」12.7mm重機関銃(HMG)付きの装甲キューポラが設置されています。


 機動式バンカーのコンセプトは最初の装軌式シュトルム・パンツァーでも引き継がれました。明らかに第一次世界大戦のフランス戦線に展開したドイツの「A7V」重戦車を意図せずにオマージュしたこの車両は、前方に射撃可能な「KPV」14.5mm重機関銃に加えて、乗員が持つ小火器を外部に射撃できるようにした10個(!)もの銃眼を装備していました(下の画像)。

 これらの装備は車両にほぼ全方位射撃を可能にさせていますが、ここから射撃される小火器は、すでにシュトルム・パンツァーへのRPGの有効射撃圏内まで挑んできた敵に対してのみ有効です。軽装甲では小火器からの射撃や砲弾の破片しか防げないことから、RPGが命中した場合はほぼ確実に内部に壊滅的な損傷をもたらして乗員を殺傷してしまうため、結果としてシュトルム・パンツァーが沈黙してしまうことは避けられないでしょう。


 おそらくはまさにこの理由で、後に登場したシュトルムパンツァーはほとんどの場合はその前部に2基の砲塔を装備しており、より広い射撃範囲を実現させています。

 下の画像の車両はそのような設計思想をうまく実例で示しており、向かって左側の砲塔には「KPV」14.5mm重機関銃、その反対側の砲塔には12.7mm重機関銃を装備しているように見えます。さらに、(向かって左側の)砲塔の上部には、乗員が身を隠したまま別の武器を射撃できるようにするための防楯が装備されています。


 まるで過ぎ去った時代のような戦闘に入ると、3台のシュトルム・パンツァーが敵に接近するために前方へ「突撃」します(下の画像)。カメラに最も近い車両は上の画像と同じ個体のようであり、これはこれらの車両がプロパガンダ映像に頻繁に登場するにもかかわらず、こういった「モンスター」の生産は実際には極めて限られていたことを暗示しています。


 YPGの装甲車列は、後方に駐車している大型のシュトルム・パンツァーの尋常でない巨大さをはっきりと目立たせています(下の画像)。
隣に駐車されている汎用装甲車「MT-LB」のほぼ2倍の高さもあるシュトルム・パンツァーは、「MT-LB」や他の種類のAFVの能力を広げることはほとんどありません(注:シュトルム・パンツァーの存在がほかのAFVの助けになるようなことが無いということ)。

 必要に迫られて誕生したとはいえ、ほとんどのシュトルム・パンツァーの運用歴は驚くほど長く、YPG/SDFが耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)といったより適切な代替装備を容易に入手できるようになった後も長く運用され続けています。


 2015年にテル・タミル近郊でISに捕獲されたシュトルム・パンツァー(下の画像)。驚くべきことに、これがこの種の車両の唯一の損失記録です。そうはいっても、シュトルム・パンツァーの低損失率はそれらが少数しか生産されていないことと、主に十分な歩兵からの支援を受けることができる掃討作戦で活用するという控え目な展開にとどめられていたことからも説明することができます。
 
 世間一般に信じられていることとは逆に、シュトルム・パンツァーはISやFSAとの激しい戦闘で重装甲の突破車両として使用されたことは一度もありませんでした。


 上の捕獲された車両は、その設計の固有の弱点:機動性の低さも目立たせています。
おそらく速度は10km/hをはるかに下回り、ほとんどが舗装された道路での移動に限られるため、敵の集中砲火を受けているシュトルム・パンツァーが(とりわけ危険な場所から抜け出して後方へ横切る必要がある場合は)成功裏に退却するのは困難を極めます。このような状況下では車両を完全に放棄することが最良の選択肢となる可能性があり、大きな後部ドアと側面の脱出用ハッチがそのための十分な機会をもたらします。


 一部のシュトルム・パンツァーは重装甲工兵車(AEV)として使用するために排土板を維持し続けており、瓦礫やその他の障害物を取り除いて友軍部隊が前進を続けられるようにしました。ちなみに、排土板は敵と正面で対峙した際の追加装甲としても機能します。

 下の車両は非武装でしたが(ただし、両側面に2つの銃眼を装備しています)、別の車両では発生し得る敵敗残兵から攻撃を払いのけるために機銃を装備した砲塔が搭載されていました。


 これらのAEV型シュトルム・パンツァーの1台は、2017年8月にラッカでISのクアッドコプター・ドローンから投下された簡易爆弾の直撃によって、装甲化された上部構造に詳細不明の損傷を受けました。面白いことに、この映像をリリースしたISのメディア部門はこの車両をBMP(歩兵戦闘車)と誤認しています(注:下の画像の字幕に注目してください)。


 大型の設計に加えてYPGはいくつかの小型モデルを組み立て、いくつかの設計を経た後で、最終的には最も高性能なシュトルム・パンツァーが作り上げられました(下の画像)。

 この高性能型はシリーズの最初の型とはほとんど関連性がなく、状況把握能力を向上させるためのカメラ・システムを搭載していますが、双連の機銃が正面に固定して装備されています。これは、標的に照準を合わせるために自らの車体そのものを動かさなければならないことを意味しており、結果的におそらくは命中精度がひどく不正確で扱いにくいものになっていると思われます(注:スウェーデンのStrv.103「Sタンク」と似たようなものと考えると理解しやすいかもしれません)。

 この車両に関するもう一つの興味深い特徴は、車体の左側に4発の無誘導ロケット弾発射管を備えた固定式発射機が取り付けられていることです。



 YPGのために、このコンセプトは短時間でより有用なデザインへと進化しました。このモデルは砲塔に「54式」12.7mmHMG(どこにでもあるソ連製「DShK」の中国版)を搭載し、合計で7つの銃眼を装備しています。弱点としては、車両のサイズが小さく、乗員がエンジンに近いところに配置されることから、シリアの高温で乾燥しがちな気候での運用は悪夢のような状態となる可能性があります。
 また、車体の右後方にある小さなドアにも注意してください。このドアは乗員が車内に出入りするための2つの出入り口のうちの1つです。



 (Soendilと名付けられた)この第2バージョンは明らかに上の車両と同じデザインを軸に組み立てられていますが、(機関銃手の防御力が低下する一方で状況認識能力が大きく向上する)オープントップ式の砲塔やその他の僅かな違いがあります(下の画像)。

 この車両は2016年にSDFがシリア北部をイスラム国の影響下から解放し始めた際に市街戦で監視任務と制圧射撃を実施した、戦闘中に目撃された数少ないシュトルム・パンツァーの1台でもあります。



 さらに同じデザインの別バージョンでは、北朝鮮の「323」APCを連装させる大型の砲塔を特徴としています(下の画像)。YPGによって製造された初期のDIY AFVでも見た目が同じような砲塔がすでに見られていたため、これに関する実際の原点は風変わりなものではありません。

 この新たな砲塔では搭載武装が1丁の機関銃ではなく2丁に増強されており、運用上の要件や持ち合わせの武器に応じて武装を入れ替えることができます。(下の)2枚目の画像では砲塔の武装が「KPV」14.5mmHMGと「PK」7.62mm汎用機関銃で構成されていますが、3枚目の画像の車両には2門のKPVが搭載されています。




 究極のシュトルム・パンツァーのデザインは、最も本格的なAFVに近いものになっています。「BMP-1」の砲塔と車体前面のボールマウント式銃架に「W85」12.7mmHMGを装備しており、ある程度の状況認識能力を維持しつつ十分な装甲と重武装の両方を備えています。

 また、車体全周には成形炸薬弾頭が直撃した際の効果を低減させるためにスラット・アーマーが追加されており、小火器や砲弾の破片以上のものからの防御を試みています。しかし、この追加装甲と車体との間隔の狭さは実際にその効果が発揮される可能性が低いことを示しています(注:スラット・アーマーが車体とほぼ密着しているため、成形炸薬弾頭の威力の低減に全く意味をなさないということです)。

 以前のモデルを上回る優れた火力と機動性は、このシュトルム・パンツァーが実際に火力支援車両としての価値がある可能性を意味しており、長年にわたる段階的な設計改善の恩恵がはっきりと示されています。

 アメリカから供与されたMRAPというより優れた代替手段がすぐに利用できるようになっても、完全に死に物狂いの中で生み出されたYPGのシュトルム・パンツァーは、終わりなきシリア内戦の信じられないほど過酷な状況で当初考えられたよりもはるかに長く運用されています。

 MRAPを使えるもかかわらずシュトルム・パンツァーを運用し続ける頑固さの理由は彼らのプロパガンダ的価値やYPGの技術陣の作業を維持しておく必要があるということにすぎませんが、信頼できるデータが無いため、私(著者)はYPGのシュトルム・パンツァーを健在させ続けているのは、彼らの純粋な反発の精神にあると信じることにします。

 ※  この記事は、2021年6月7日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。         


2017年2月24日金曜日

シリアにおける北朝鮮の「HT-16PGJ」携帯式対空ミサイル


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 ほぼ10年にわたる厳しい制裁の下で国際武器市場における北朝鮮の従来型兵器の拡散はたびたび過小に報告されており、過去の多くの武器取引は完全に記録されていません。それにもかかわらず、これらの取引の跡は未だに世界の紛争地域の多くで目立っており、時折新しい映像などが国際的な武器取引への北朝鮮の関与を窺わせています。

 今日の紛争のホットスポットで既に存在している、北朝鮮によって改修された主力戦車, 様々な種類の砲, 対戦車ミサイル (ATGM) 軽機関銃 (LMG)のほか、シリア内戦で使用されている武器の画像を分析すると、バッシャール・アル=アサド大統領の政権と対立する様々な勢力の間で、北朝鮮の携帯型防空ミサイルシステム(MANPADS) の存在が明らかとなりました。

 このミサイルの目撃はアサド政権への初期供与の規模がかなり大きいと暗示させるほど十分一般的になりましたが、常にシリアでも使用されている同様のソ連製9K310(SA-16)「イグラ-1E」として識別されていたという事実は、今までこれらが北朝鮮製であると気づかれなかったことを意味しています。

 2014年8月、同年の夏にイスラーム軍から奪取したKshesh(注:ジラー空軍基地)においてイスラム国の戦闘員の手でこの一つの例が最初に特定されましたが、さらなる追跡調査で、 2013年2月のアレッポにおけるシリア軍第80旅団の基地で自由シリア軍と(もとはアルカーイダ系グループ)カテバ・アル=カウサールによって捕獲された少なくとも18発の発射機とそれに付随するシステムの一群の存在も明らかとなりました

 航空機やヘリコプターがこれらのミサイルで撃墜されたことは明確に知られていませんが、戦場における彼ら(北朝鮮製MANPADS)の継続した存在は最近(注:執筆当時)厳しく包囲されたラタキア県では未だに機能していることを示唆しています。

先端キャップが取り外された北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS:ジラー空軍基地で2014年8月撮影




2013年2月にアレッポで鹵獲された「HT-16PGJ」

 これらのMANPADSは北朝鮮では一般的に「Hwaseong-Chong(火縄銃)」と呼ばれているようですが、シリアに輸出されたタイプは3番目か4番目に北朝鮮で独自に開発されたものと考えられています。
 
 ソ連の9K32(SA-7)「ストレラ-2」MANPADSからコピーされた(PGLMまたはCSA-3Aという名称を付与されたかもしれない)初期のタイプは1980年代に開発された可能性が高いですが、9K34(SA-14)「ストレラ-3」の独自の派生型と思われるものは早い時期であれば、すでに1992年の時点で目撃されています。

 北におけるMANPADSの開発は、最終的にここ近年でしか認識されていないロシアの9K38(SA-18)「イグラ」に由来と思われるシステムをもたらしました。

 シリアで現在見られるMANPADSは古い9K310「イグラ-1」(SA-16)と最も類似点が共通しているものの、特徴的な先端の三角状のエアロスパイクは9K38(SA-18)「イグラ」や9K338(SA-24)「イグラ-S」で見られるより近代的な針状のエアロスパイクに置き換えられており、性能が向上している可能性が高いと思われます。

 北朝鮮のシステムがソ連/ロシア製との識別を可能にする最も重要な相違点は、MANPADSの電源である熱電池をより前に配置している点です(注:北朝鮮製はオリジナルのSA-16と異なり、熱電池が(キャップを除く)ミサイル・チューブ先端より僅かに前へ突き出るような配置をしています)。

 また、この熱電池はシステムがまだ使用可能かどうかを判断する材料となっています。熱電池の枯渇はMANPADSが役に立たなくなったことを意味し、対空装備を入手を熱望する武装勢力が自ら代用電池を作り、使用を試みたいくつかのケースに至ることがあります。

ラタキアにおける北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS(2015年11月26日撮影)、右:北朝鮮の閲兵式における同型と思われるMANPADS

 さらなる画像分析によると、シリアで発見された北朝鮮のシステムには「HT-16PGJ(ミサイル単体ではHG-16)」と表記されており、第80旅団で捕獲されたものは2004年1月1日付けの契約日が記載されたシステムの一部であり、これは熱電池の有効保存期間がまだ切れそうにもないことを意味しています。

 2003年にとある(ベラルーシといわれている)未知のサプライヤーが引き渡した約300基の「イグラ」について、西側の情報に基づくレポートは、特にシリアでは同MANPADSが未だに目撃されていないため実際には北朝鮮のシステムをめぐる取引に言及している可能性があります。

 仮にもしそうであるならば配送が2004年の初めの時点で継続していたことから、報告よりもさらに多くのMANPADSが調達された可能性が高いと思われます。実際、ミサイルの箱に対する徹底した調査は合計600基のHT-16PGJで1箱に各2発ずつミサイルが入っていたことから、少なくとも300箱がシリアに引き渡されたことを明らかにしています。

 シリア内戦ではかなりのMANPADSの派生型が見られたにもかかわらず、ソ連の伝統的な「ストレラ-2M」、「ストレラ-3」と「イグラ-1」から中国の「FN-6」に至るまでスーダンを通じてカタールによって供給されたほか、ロシアの「イグラ-S」が紛争開始の数年前に引き渡されましたが、今日、シリアの空を飛び回る多数の勢力(注:シリア空軍やロシア空軍など)に対抗する防空戦力は未だに不足したままとなっています。

 これによっていくらかの武装勢力は極端な射程の、見かけだけの間に合わせでしかない防空戦力で戦うことを強いられ、あらゆるMANPADSは貴重な資産とみなされるようになりました。

 これらのシステムの能力のために、ミサイルが国外へ密輸されて民間航空機が撃墜されることを恐れたことから、西側諸国は内戦初期に穏健なシリアの反政府勢力へMANPADSを供給することに消極的でした。通常、このような航空機はMANPADSの有効高度よりも高い高度で巡航していますが、離陸直後や着陸前に発射されたミサイルは過去に本当の脅威となったことがあります。

 ロシアの「イグラ-S」に類似するものがシリアの戦場で見つけられる最も能力の高いMANPADSシステムであるとは思われませんが、古い「ストレラ-2」や「ストレラ-3」、「イグラ-1」、そしておそらく中国の「FN-6」よりも確実に有効であり、後者(FN-6)はそれを使用した反政府勢力によって信頼できないことが明らかとなっています。

 ロシア空軍はラタキア県を含むシリア全土でアサドの対抗勢力との空爆作戦の最前線にとどまり続けるため、いかなる種類の防空システムもその出所を問わず反政府勢力に快く受け入れられることでしょう。

 将来的にこれらのシステムのより多くが出現するかどうかについては、当然ながらまだ分かりませんが、世界中の国に対する北朝鮮の武器輸出の全容の解明がやっと始まったばかりであるとはいえ、結局はいつか違法な武器取引市場に行き着く可能性がある北朝鮮におけるMANPADSを含む新しい武器の開発は未だに進行中です。

朝鮮人民軍で使用されるMANPADS:左から3人目まで使用しているものが、同側から順に「イグラ-1」、シリアでも使用されている「HT-16PGJ」、「ストレラ-3」








特別協力:'BM-21 Grad'(注:元記事への協力であり、本件編訳とは無関係です)。

 ※ この翻訳元の記事は、2016年3月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。
 ※ 最終更新日:2021年10月8日    


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