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2026年6月2日火曜日

【復刻記事】T4要塞:戦乱で変貌した空軍基地


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ 
collaboration with Luftwaffe A.S.・衛星画像: finriswolf.(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2015年6月29日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」とBellingcatで公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 シリア中部におけるイスラム国(ISIL)の攻勢は、戦闘員がこれまで手の届かなかった地域へ活動範囲を拡大することを可能にしただけでなく、今やアサド政権のガス供給網や複数の戦線におけるプレゼンス、そして最重要拠点にしてシリア最大の空軍基地であるT4空軍基地と同基地へ通じる唯一の道路までも脅かしています。

 近隣にあるポンプ場と同じ名称であるT4については、より一般的には(正確ではないが)「ティヤス」を含む数多くの通称で知られています。タドムル空軍基地陥落後の現在では、シリア空軍(SyAAF)が実効支配する16の作戦基地の一つとなり、その防衛は空軍がシリア領空を掌握する上で必要不可欠なものとなりました。

 現在、T4基地では少なくとも3個の戦闘爆撃機飛行隊と1個のヘリコプター飛行隊が運用されており、運用機にはシリア空軍の誇る「Su-24M2」もあります。また、同基地には、過去10年間で大部分が段階的に退役した「MiG-25」飛行隊の拠点でもありました。シリア最大の空軍基地であるにもかかわらず、T4には滑走路がたった1本しかないため、この唯一の滑走路が破壊された場合、この基地は極めて脆弱な状態に陥るでしょう。

 2014年半ばから後半にかけてシリア中部と東部の全域で電撃的な進撃を続けたISILによるT4基地への攻撃を予期して、同基地の戦力は、制圧される前のタブカ空軍基地から避難してきた「L-39」練習機の暫定的な飛行隊と少なくとも4機の「Mi-8/17」ヘリコプターから構成される分遣隊の配備によって増強されました。

 T4基地の高い軍事的価値を深く認識しているアサド政権が基地防衛に多大な努力を尽くしたことで、今では難攻不落の要塞同然と言えるものとなっています。「要塞T4」は、現時点におけるISIL支配下のタドムルとアサド政権支配下のホムスを隔てる障壁としても機能していることから、その重要性が一層高まっているのです。

 T4基地守備隊は過去1年間を通じてISIL部隊と幾度も衝突しており、最新の攻勢では将校用宿舎T4ポンプ場付近まで迫ったようです。ISIL関連のツイッターアカウントによる複数の報告によれば、2015年5月下旬にT4基地は砲撃を受けたものの、これが基地に損害を与えたかどうかは現時点でも確認されていません。

 基地自体はISILの手に落ちるという差し迫った危険には晒されていないものの、T4へ通じる唯一の道路の支配権が争われている状況です。したがって、ISILがホムス方面への進撃を続けた場合、この道路は完全にISILに制圧される可能性が高いと思われます。そうなればT4基地は孤立し、道路によるアクセスが不可能となるため、いずれ重大な問題を引き起こすでしょう。

 T4基地への補給は空軍の輸送機とヘリコプターに頼らざるを得なくなるでしょうが、この空輸戦術では重火器や燃料を搬入できないという深刻な欠点があります(編訳者注:空軍の機体では燃料すら十分な量を輸送できない)。もちろん、アサド政権にとって貴重なリソースを大量に消費することになるという事実があることは言うまでもありません。


 T4に配備されている航空機とヘリコプター飛行隊はISIL戦闘員にとって大きな悩みの種となり得るだけでなく、ホムス県で将来行われるあらゆるISILの攻勢を阻止する能力を有しています。ただし、空軍は現実の情勢に十分に対応できない状態が続いており、地上戦が終わった後にようやく参戦する事例が少なくありません。したがって、T4基地で運用可能な戦力を最大限に活用するためには、地上部隊と空軍機・ヘリコプターとの連携強化が不可欠です。そして、空軍が最近失った町に対して行った自暴自棄の報復攻撃についても止める必要があります。これらの出撃で殺害された数多くの罪なき民間人の命だけでなく、無用な出撃に投入された貴重な航空機自体も救うことができるからです。浪費された飛行時間は、代わりにアサド政権の地上部隊を支援する任務に割り当てられるべきでしょう。

 例えば、Hulayhilah守備隊を支援するためにT4から出撃した申し訳程度の任務はたった1回だけであり、最近ISIL戦闘員によって占領されたガス田やアル・スクナ、アル・ハイル、アラクといった数多くの町を守る部隊には航空支援が皆無だったのです。空軍はタドムル陥落時もほぼ静観しており、地上部隊の士気を高めるための意味のない出撃を繰り返しただけでした。この町がISILに占領された後にやっと激しい空爆が開始されたものの、使用された爆弾が住宅地へ無差別に投下されたことは周知のとおりです。

 タドムルに存在する巨大な兵器貯蔵庫と空軍基地はISIL戦闘員に大量の武器弾薬を提供していたため、高度な精密誘導兵器を装備できる空軍の戦闘爆撃機にとって当然の標的となりました。ところが、どの貯蔵庫もシリア空軍の攻撃目標とはならず、タドムルで鹵獲された6門の対空砲を撃破するため動いたのはアメリカ主導の有志連合軍でした[1]。精密誘導兵器を搭載可能な機体の大半がタドムルから僅か60kmしか離れていないT4基地に配備されているにもかかわらず、です。

 種類が豊富なシリアの空対地精密誘導ミサイルは、数は限られている上に内戦では全く使用されていません。このことから、その大半は将来起こるかもしれないアメリカやイスラエルとの武力衝突に備えて温存されている可能性が高いと考えられます。しかし、戦争が4年目に突入した今、こうした兵器をこの内戦で活用する方が賢明ではないかという疑問が生じます。現時点におけるシリア空軍の精密誘導兵器のストックは急速に枯渇するでしょうが、ロシアによって迅速に補充される可能性があります。ロシア製兵器が定期的にシリアに供給され続けている事実が、まさにその証左です。


 最新の(公開されている)衛星画像でT4をチェックすると、基地周辺に運用不能と思われる多数の航空機が点在して様子が確認できます。2014年10月には退役した「MiG-25」が32機もありました。確かに壮観ではあるものの、かつて強大だった「フォックスバット」飛行隊の時代の終焉を告げる光景です。「MiG-25」飛行隊は過去10年間にわたり徐々に退役が進められ、世紀の変わり目までに運用可能な機体は僅か数機となっていました。

 シリアが導入した「MiG-25」の数は約40機です。これらには、(後に「MiG-25PDS」に改修された)「MiG-25P/PD」迎撃機や「MiG-25R/RB」偵察機、「MiG-25PU」複座練習機が含まれると見られています。「MiG-25」飛行隊の退役理由については、機体の老朽化とそれに伴う運用維持費の増加のみならず、この機種がイスラエルのジャミングに対して脆弱だった点にもあるかもしれません。

 シリア内戦では一部の「MiG-25」の運用が複数回にわたって再開された模様です。最後に確認された出撃は2014年3月と4月に行われ、その際に「MiG-25PD(S)」が地上目標に向けて「R-40」空対空ミサイルを発射しました。当然ながら、これらの出撃は実りある結果をもたらしませんでした。

 最後に「MiG-25」を運用したのはタドムルの詳細不明な飛行隊であり、2013年末まで3機の「MiG-25PD(S)」と1機の「MiG-25PU」を配備していました。その後、これらはT4基地へ移送され、既に保管状態にある「MiG-25」飛行隊の残存機と合流したと思われます。



 シリア空軍の「Su-24M2」を含むT4基地から運用される現用機の大半は、同基地内に58基設けられた航空機用強化シェルター(HAS)に格納されています。T4は古くからシリアの「Su-24」の拠点であり、その大半は基地南東部に配置されていますが、常に数機がジーン基地に派遣されています。「Su-24」は間違いなくシリア空軍にとって最重要戦力であり、過去4年間で多用されてきた存在です。

 T4基地はISIL支配地域に近接しているにもかかわらず、「Su-24」を運用する第819飛行隊がISIL攻撃に参加することは稀です。その代わり、「Su-24」飛行隊は、主にシリア全土の村落を攻撃対象としている長距離攻撃部隊として機能しています。デリゾールからクネイトラに至るまでの攻撃どころかキプロスのアクロティリ基地に駐留するイギリス空軍のリアクションタイムをテストすることさえ成し遂げてきたのです。

 以前の報告とは反対に、1990年代半ばにリビアからシリアへの「Su-24MK」1機と「Su-24MR」1機の移送は実際には行われなかった可能性があるようです。実際、複数のシリア空軍パイロット及びT4基地の元司令官によって否定されています。これはシリアが入手した「Su-24」の数が僅か20機であることを意味します。しかしながら、これらの「Su-24MK」のうち19機は2010年から2013年にかけてロシア・ルジェフの第514ARZ航空機修理工場によりM2規格に改修されました。そして、内戦への参加に間に合うかのように、全機が比較的注目されることなくシリアへ帰還したのです。



 この改修では機体の古い制御システムを新型に入れ替えることによって、改良された照準能力・航法および火器管制システムがもたらされました。また、MK2はより新しい搭載装備である「KAB-500/1500(精密誘導爆弾、数字は爆弾の重量を示す)」、「Kh-31A/P」、「Kh-59」、「R-73」との互換性も得ています。つまり、既存の「FAB(無誘導爆弾)」、「OFAB(破砕爆弾)」、「RBK(クラスター爆弾)」、「Kh-25」、「Kh-28」、「Kh-29L」、「Kh-29T」、「Kh-58」空対地ミサイル、「KAB-500」及び「KAB-1500」誘導爆弾、「S-24/25」空対地ロケット弾やロケットポッド、「R-60」空対空ミサイルといった搭載兵器群に新しいものが追加されたわけです。

 シリアでは、「R-73」を除く全兵装が「Su-24M2」で運用可能となっていますが、この空対空ミサイルは「MiG-29SM」専用となっています。



 シリア空軍が入手した20機の「Su-24」のうち、2015年6月時点で11機が運用可能な状態にあります。このうち内戦前に事故で全損した1機を除く全機が内戦中に何らかの損失を被りました。

 1機は2012年11月28日にダーラト・イッザ上空で自由シリア軍のMANPADS(携帯式地対空ミサイル)によって、別の1機は2014年9月23日に占領下のゴラン高原上空に迷い込んだ後、イスラエル軍の「パトリオット」地対空ミサイルによって撃墜されました。さらに別の1機は2015年6月11日にNahtah 近郊に墜落しましたが、これはおそらく搭載していた爆弾の早期爆発が原因とみられています。 

 2015年5月、1機の「Su-24M2」が対空砲火で深刻な損傷を受けた後、パイロットは機体の状態にもかかわらず、何とかT4基地まで辿り着かせることに成功しました。しかし、損傷が安全な着陸に支障をきたすことが明らかな状態になり、最終的に滑走路へのアプローチ中に墜落しました。パイロットと航法士はともに無事脱出したと伝えられています。

2015年5月28日には、さらに2機が事故で失われたとみられています。両機が次の出撃に向けて再武装中だった際に爆発が発生し、少なくとも5名の死亡と十数名の負傷者をもたらしたとのことです。

そして、地上砲火を受けてもう2機が運用不能となってしまいました。両機の損傷は軽微で修理可能ではあるものの、現在のシリア空軍には必要なリソースが不足しているために何もできていません。こうした損失で運用可能な「Su-24MK2」はほぼ半減し、1機ごとの損失がシリア空軍にとって大きな痛手となっています。


 T4基地に駐留する2番目の戦闘爆撃飛行隊は「Su-22M4」を運用しており、全機が同基地の北西部及び南西部に配置されています。第827飛行隊は過去1年間でISIL戦闘員に対する攻撃任務に頻繁に投入され、主にシリアの砂漠地帯をパトロールする「スクーア・アル・サハラ(砂漠の鷹)」旅団の支援任務に従事してきました。

 「Su-22M4」は、「S-24/25」空対地ロケット弾、無誘導ロケット弾ポッド、「FAB」、「OFAB」、「RBK」の各種爆弾、「KMGU-2」ディスペンサー、「Kh-25」、「Kh-28」、「Kh-29L」、「Kh-29T」、「Kh-58」空対地ミサイル、そして「R-60」空対空ミサイルを搭載可能です。ただし、シリア内戦における「Su-22M4」はほぼ完全に無誘導兵器のプラットホームとして使用されています(誘導兵器を運用可能という能力は無視され続けています)。


 ISILの対空砲火に頻繁に狙われる「Su-22」を運用する第827飛行隊ですが、過去4年間の損失は比較的軽微であり、2014年11月30日にシャエルのガス田付近でISIL戦闘員に撃墜された「Su-22M4」が1機のみです。「Su-24M2」と同様に、戦闘による損傷を受けた数機が修理待ちの状態にあります。

 2014年中盤から年末にかけて、T4空軍基地の航空戦力は「L-39」分遣隊の配備によってさらに強化されました。今ではシリア上空で目撃されることは稀ですが、シリア空軍が保有する「L-39」機の残存機はほぼ全戦線で作戦飛行を続けており、「L-39ZO/ZA」はアレッポ及びダマスカス地域において、ほぼ夜間の出撃に限定して運用されています。

 T4基地に配備されている「L-39」は、ナイラブ/アレッポ国際空港にあるシリア空軍修理整備センター(通称「工廠」)でオーバーホールされた機体の一部です。こうした機体は、2014年8月24日にISILに制圧される前のタブカ基地を含む、シリア国内で生き残っている作戦基地に配備されました。現在T4に配備されている「L-39」自体は、以前はタブカに配備されていたとみられています。これらは、ISILがシリアで攻勢を展開するに中で、その戦闘員たちを追うように移動してきたのです。

 「L-39」の火力向上を図るため、オーバーホールされた全機体には(そもそも同機種での使用が想定されていなかった)「B-8」80mmロケット弾ポッドの搭載用配線が施されました。下の画像には、現在T4空軍基地に配備されている「B-8」を装備した「L-39ZO」が写っています。このロケット弾ポッドの搭載のおかげで、従来は57mmロケット弾ポッドと爆弾だけを装備可能だった「L-39」の能力が大幅に強化されたのです。



 最近のT4基地の衛星画像では常に少なくとも5機の「L-39」が存在しており、その大半は「MiG-25」が以前に使用していたエプロンや現在は「L-39」の支援施設として機能している複合強化シェルターに駐機している様子が確認できます。




 現在T4に配備されている「Mi-8/17」分遣隊は、この地域に残存するアサド政権軍を支援するとともに、空軍基地とアサド政権支配下のシリア全土との連絡役を担っています。


 最近の衛星画像では、「L-39」のすぐ西側に4機の「Mi-8/17」が駐機している様子が確認できます。 



 「MiG-25」飛行隊の退役後、中身が空となった多くの強化シェルターは、兵舎や武器庫、さらにはトーチカに転用されています。衛星画像では基地の北東側に位置する2つのシェルター南東部に位置する一つのシェルター周辺では特に活発な動きを見せており、常に複数のトラックがシェルター内や付近に存在している状況です。




 T4の中央には1個戦車中隊が駐屯しており、この基地の防御体制をさらに強化しています。



 デリゾール周辺の油田を守備するために派遣されたスラブ軍団(PMC)のロシア人傭兵たちは、同市への到着前にT4基地に立ち寄ったことが確認されています。実際に戦闘するよりも写真撮影に多くの時間を費やしているように見えた彼らは、デリゾールへ向かう道中のアル・スクナ近郊で反政府勢力に待ち伏せ攻撃を受け総崩れとなり、速やかにロシアに帰国しました。その後、ロシア政府によってこの活動が違法と判断されたため、スラブ連隊の代表者たちは連邦保安庁(FSB)に拘束されてしまったことは言うまでもありません(編訳者注:ロシアではPMC自体が非合法の存在であるため)。

 下の画像は、5人の傭兵がSu-24M2 ‘2514’ の前で撮った記念写真です。


 空軍基地を囲むように配置された2基の「S-75(SA-2)」と3基の「S-125(SA-3)」地対空ミサイル(SAM)陣地は現在も稼働中であり、敵を混乱させるためか定期的に位置を変更しています。そもそも旧式装備である以上、これらが有志連合軍の空爆を迎え撃つのには全く役に立たないでしょうが、それでも空爆の初期段階で敵機の最低高度を押し上げたり、他の勢力による単独攻撃を牽制する効果は期待できるでしょう。

 これらのSAMを目標へ指向する任務を担うシステムは、「P-18 "スプーンレストD"」2次元VHF対空捜索レーダー(2基)と「P-35/37 "バーロック"」早期警戒レーダー(2基)です。これらはシリア中部を飛行するあらゆる航空機の探知を担当していますが、タドムル空軍基地と多数のレーダーがISILに占領された今では極めて重要な任務となっています。T4にはさらに1基ずつの「RSP-7」飛行場監視レーダーと「1L22 「パロル」」対空・識別(IFF)レーダーが配備されており、着陸を控えた航空機の誘導に用いられています。


 
 ISILによるこの重要な空軍基地への新たな攻撃は、またしても基地に到達前に阻止されました。ここ最近続く彼らの劣勢を考えると、これが基地を制圧できる最後の機会だったかもしれません。その規模と重要性の大きさゆえに、T4要塞は確かにシリア空軍の主要拠点としての機能を維持し続けるでしょう。


 お知らせ2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 
お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました

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2025年9月21日日曜日

【復刻記事】ロシア空軍の介入か:シリアで最新鋭機が目撃された


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳Tarao Goo)

 この記事は、2015年9月21日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 シリアでの戦闘に投入されたロシア軍人や装備の目撃情報が相次ぐ中、数多くのロシア軍機や装甲戦闘車両(AFV)の投入が確認されたこともあって、シリア内戦におけるロシアの役割は急激に高まりつつあります。

 ロシア軍基地として活用するためのフメイミム/バッシャール・アル・アサド国際空港の改築と同時に、シリア上空で「Su-30SM」や「Su-24M/M2」などの軍用機を護衛する「Il-76」輸送機または「Il-78」空中給油機(注:おそらく後者の方が可能性が高いと思われる)が目撃されました。これらと共に目撃された「An-124」戦略輸送機については、多種多様な兵器と一緒に、少なくとも2機の「Mi-17」と2機の「Mi-24/35」ヘリコプターを空輸したとも報じられています。

 この飛行場には約12機もの「Mi-14」と「Ka-28」対潜ヘリコプターが配備されていましたが、この数週間で撤収が確認されました。そして、敷地内での新ヘリパッドと誘導路の建設で規模が急速に拡大されるとともに、ロシア軍機と装備の受け入れに応じて反政府勢力の攻撃から基地を防護するための防御体制も整備されつつあります(注:対潜ヘリはシリア空軍所属機)。基地の拡大は今までも多くのメディアによって指摘されていたものの、9月19日になって初めて、(衛星画像によって)滑走路に無防備に駐機されたロシア軍戦闘機の存在と専用のシェルターがまだ建築されていないことが確認されました。

 この時に撮影された4機の「Su-30SM」戦闘機のほかに、インターネット上で公開された動画では9月19日と20日にそれぞれ「Il-78」を護衛する4機の「Su-24」戦闘爆撃機と、(おそらく)さらに4機の「Su-27/30」がホムス北部上空を同様の編隊を組んで飛行しているように見えます。この映像は、ロシア軍機がラタキア近郊のフメイミムに向かっていた可能性が高いことを示しています。これとは別個に推測できる事項は、ロシア機がカスピ海上空を飛行した後にイランとイラク上空を通過したというものです。この説はホムス上空で彼らがとったアプローチを説明してくれるものの、現在のイラク及びシリア上空で活動している大量の外国機を考慮すると、リスクの高い方法ではあります。それでも、フメイミムに展開した最初の「Su-30SM」4機がギリシャ領空を通過したことは判明しているため、展開には双方のルートが使われていることも考えられるでしょう。

 先の動画と、ロシア空軍のスホーイ戦闘機4機のシリア配備に関するアメリカ政府当局者のコメントは、これまでに少なくとロシア機が3回に分けてシリアに飛来したことを示唆しています:まずは 「Su-30SM」が4機、次に「Su-24M/M2」が4機、そして「Su-30SM」と思われる形式不明機が4機です。


 「Su-30SM」はこれまでSyAAFが使えなかった能力をもたらすほか、ロシア空軍はあらゆる攻撃や防御ミッションを細かくフォローすることができるようになります。

 探知・収集した情報を地上部隊に中継できることから、この新鋭機は空中指揮プラットフォームとしても機能します。広範囲にわたる種類の誘導・無誘導兵器を運用可能であることから、「Su-30SM」はシリアの戦場に適した非常に汎用性の高い航空機と言えるでしょう。 しかしながら、これらの戦闘機がロシア空軍で使用されている最新鋭の戦闘機の一部で、対地攻撃だけでなく空対空戦闘も可能であるという事実は、空軍が配備にこの戦闘機を選んだ別の理由を暗示している可能性があります。というのも、これらの戦闘機が初めて目撃される直前に、ロシアはシリア内戦に関するアメリカ側との最初の協議を終えたばかりだったからです。こうした高性能な最新鋭機のシリア配備が世界に強力なメッセージとなることは言うまでもありません。

 「Su-30SM」より性能が劣る「Su-24M/M2」の配備については、シリア空軍も同じ機体(しかも全てが最近にロシアのルジェフでMK規格からM2規格にアップグレードされたもの)を運用していることを踏まえると、特に驚くようなことではありません。シリアで「Su-24M2」の運用を担う第819飛行隊は、シリア中部のT4基地を拠点にして11機を運用し続けています。予想され得るロシアの「Su-24M/M2」のT4展開はロジスティクス面での円滑化に役立つでしょうし、すでに利用可能な広大な基地を利用することになるので賢明な選択と言えるのではないでしょうか(編訳者注:結局はT4ではなくフメイミムに配備された)。

 シリアに展開する機体の量に左右されますが、ロシア・シリアの統合化された「Su-24」飛行隊は大規模な空爆によって地上の状況を迅速に変える能力を持っています。反政府勢力のあらゆる攻勢を阻止することもできるし、ロシアやアサド政権側の攻勢で彼らの防衛線が吹き飛ばされる可能性さえあるのです。

「Su-27」と表記されているが、カナード翼の存在で「Su-30SM」と識別できる

 飛行機以外の重装備も同時にシリアに空輸されていると報じられています。9月15日の衛星画像では、約26台の装甲兵員輸送車(APC)/歩兵戦闘車(IFV)、6台の戦車、4機のヘリコプター、大量のトラックやその他の装備が飛行場に点在しているのが確認されました。

 9月17日にノヴォシビルスクで撮影された写真には、2機の「Mi-24/35」攻撃ヘリコプターと少なくとも1機の「Mi-17」輸送ヘリコプターが「An-124(RA-82035)」輸送機に積み込まれている様子が写っています。その後、同機は18日にシリア上空でトラッキングされ、夕方に再びロシアのモズドクに着陸したことが確認されました。こうした状況や衛星画像は、現時点でロシア・シリアで大規模な空輸作戦が展開中であることを示唆しています。


26台のBTR系APCと6台の戦車が見える(ただし、BTR系はIFVである可能性がある)

 シリア内戦へのロシアの軍事的介入が強まるというニュースは、決して青天の霹靂ではありません: 7月下旬のロシア軍無人偵察機の撃墜から今月初めの(おそらくロシアが運用する)「パーンツィリ-S1」防空システムの納入に至るまでの相次ぐリポート全てが、アサド政権への支援が大幅に急増していることを証明しているからです。

 こうした流れから、ロシアが反政府勢力の攻勢でアサド政権が屈服することを許さないだろうことは明らかでしょう。そして、ロシアと反政府勢力の間で戦争がまだ始まっていないにもかかわらず、当面はアサドが権力の座を維持し続けるのが現実のようです。

改訂・分冊版が2025年に発売予定です(英語版)

  2025年現在の情報にアップデートした改訂・分冊版が発売されました(英語のみ)

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2024年12月1日日曜日

内戦最大の包囲戦が終結へ:アブ・ズフール空軍基地の陥落


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2015年9月10日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 3年近くも窮地に立たされていたアブ・ズフール空軍基地は、2015年9月9日、とうとうアル・ヌスラ戦線を中心とする反政府勢力によって占領されてしまいました。シリア内戦で最長の包囲戦を展開したところで、空軍基地の陥落を最終的に避けられないことが明らかとなったわけです。アブ・ズフールはシリア政府に敵対する多数の勢力によって失われた8番目の空軍基地であり、これでシリア・アラブ空軍(SyAAF)が出撃に使用できる空軍基地は15となりました。

 この基地でシリアのイドリブ県上空を飛ぶ航空機やヘリコプターをいまだに格納していると頻繁に噂がなされていましたが、最後の運用可能な機体はこの基地が陥落する数か月前に離れています。というのも、この基地の陥落が差し迫っていることを十分に認識した上で、数少ない運用可能な「MiG-23MF」と「MiG-21MF」、そして「MiG-23bis」をハマ基地に対比させることが決定されたからです。

 基地にはグーグルアースや画像や動画で確認できる18機以上の退役機があるために見応えのある光景となっているものの、その大部分は10年から15年前に放棄されたものです。したがって、アブ・ズフール基地の陥落は、シリアの空を支配するシリア空軍の能力に少しも影響を与えることはないでしょう。

 アブ・ズフールは他の政府支配地域から完全に孤立していたため、この基地への補給はシリア空軍の手に委ねられていました。彼らは主に「An-26」と「Mi-8/17」を用いて食料から武器に至るまであらゆる物資を運び込んでいましたが、反政府軍が基地の周囲に接近し続けるにつれて、その危険性は徐々に高まっていったようです。年間を通して数機のヘリコプターが撃墜・破壊・損傷を受けたほか、2機の「MiG-21」と1機の「An-26」も失われてしまいました。 

 アブ・ズフール空軍基地への襲撃は中東を吹き荒れる極めて異例な砂嵐と重なったため、シリア空軍は守備隊を支援するための出撃を行うことができませんでした。それでも、最終的に空軍基地の占領につながったのは、絶え間ない砲撃と3年近くにわたる包囲によって生じた消耗、そして反政府軍の数的優位があったからです。

 守備隊の大半は捕虜になるか殺害されましたが、ごく一部は政府軍の支配地域に逃亡しました。アブ・ズフールの司令官であるイッサン・アル・ズフーリ准将は戦死したと伝えられています。


 アブ・ズフールは、「MiG-23MS」、「MiG-23MF」、「MiG-23UB」を擁する第678飛行隊と、「MiG-21MF」、「MiG-21bis」、「MiG-21UM」を擁する名称不明の飛行隊の拠点でした。

 1973年に納入され、間違いなく史上最悪の軍用機の一つである「MiG-23MS」は、今世紀に入って(すでに十分に引き延ばされていた)寿命が尽きました。第678飛行隊は2000年代初頭を通じて徐々に「MiG-23MS」の運用を縮小し、2005年頃に正式に退役させたのです。
結果として、僅か数機の「MiG-23MF」と「MiG-23UB」「MiG-21」がこの基地で唯一の稼働状態にあるアセットとして残りました。

 下の画像の機体は、状態が良好な往事の「MiG-23MS "1614"」 です。


 アブ・ズフールを占領しようとした最初の本格的な試みは2013年4月30日に行われており、その際に自由シリア軍の兵士たちが基地の周囲に侵入することに成功しました。しかしながら、守備隊が自由シリア軍を撃退したことにより、初めて空軍基地へ侵入するという試みは頓挫してしまいました。基地の防御線はその後すぐに強化され、その後の数か月間は全ての攻撃を受け流すことができたようです。

 2012 年3 月 7 日、自由シリア軍の兵士たちは 「9M131 (9K115-2 "メチス-M")」対戦車ミサイルで基地を攻撃し、すでに運用状態になかった「MiG-23MS」の 1機に損傷を与えました。ちなみに、この機体は彼らが基地を強襲した際に再び登場します。

 全長5km近いアブ・ズフールの境界線は、空軍基地を取り囲む平坦な地形を見渡せるような高い建物がなければ、防衛することはほとんど不可能な状態でした。というのも、空軍基地の周辺にある村や農場の多くは、反政府軍の動きを封じるためにすでに平らにされていたからです。

 13基の強化型航空機シェルター(HAS)は大部分が空っぽになっていたものの、さまざまな軽火器や重火器で守備隊のグループを収容する砦に変貌しました。そして、重機関銃や対戦車ミサイルがHASの上に備えられたことで、防御側はクリアな射界を得ることに成功したのです。こうしたHASの存在が、この空軍基地が3年近く存続する上で重要な役割を果たしたことは言うまでもありません。

 防衛側は防衛線に沿った複数の検問所に配備された数台の戦車や装甲戦闘車両の支援を当てにすることができましたし、これらを即応部隊として展開させることもできました。

 実際、包囲されたとはいうものの、アブ・ズフールの守備隊は何度も基地を離れて敵の陣地に対する襲撃を行ったことがあります。これらの攻撃は反政府軍の火砲を叩くことが目的だったようです。

 この空軍基地への攻撃では、(イスラム国から逃亡した多くのデリゾール地方の部族民を含む)ヌスラ戦線は数台の戦車を防御側に奪われてしまい、そのうちの何台かはかつての所有者であった自身に敵対することがありました。


 空軍基地が反政府軍に大量の武器や弾薬を提供することはありませんが、基地の占領は彼らの士気を著しく高めることになります。鹵獲したミグ戦闘機は、運用可能であろうがなかろうが、彼らにとって勝利の象徴であることに変わりはありません。

 (有用な)「ガニーマ(戦利品)」という点では、アブ・ズフール基地は反政府軍に数台の戦車と装甲戦闘車両、1台の「ZSU-23-4」自走対空砲、数門の「M-46」130mm野砲、対空砲、トラック、小火器と弾薬をもたらしました。

 航空機やヘリコプターの撮影が車両の撮影よりも人気があることに加えて、どれだけの車両や装備が敗走する守備隊の手で避難させられたかは不明であることから、鹵獲された装備に関する実際の数量を特定することは困難を極めます(注:FSAの兵士らが飛行機やヘリの撮影に気が向くことで鹵獲した戦車や銃火器の画像が少なくなる傾向を示したものです)。

 HASの一つで鹵獲された10発の対戦車ミサイルの内訳は「9M111 "ファゴット"」3発、「9M113 "コンクールス"」5発、「9M131 "メティス-M"」2発でしたが実際はキャニスターが空っぽだったようです。




 予想されたとおり、かつてジェット機の運用に使われていた車両や機材の多くも鹵獲されました。これらの車両の損傷や錆は、この基地で戦闘機の運用が最終的に不可能に近くなり、ほとんど注意を払われずに放棄されたことを示しています。



 アブ・ズフールに配備されていた「MiG-21」や「MiG-23」が使用していた多くのロケット弾ポッドや空対空ミサイルも、HASの至る所に散らばっている様子が見られました。

 これらのロケット弾ポッドやミサイルを避難させる際に使用するべきだった燃料は装備そのものよりも価値があったためか、これらの装備は空軍基地に残されてしまいました(注:ロケット弾ポットを避難させるくらいなら放置した方が貴重な燃料を浪費せずに済んだということ)。その結果として、数十個の「UB-16」と「UB-32」ロケット弾ポッドが、かつてのラックの横に立っているのが発見されるに至ったわけです。

 地上ベースの多連装ロケット砲として使用するためにトラックに搭載するには完璧だったものの、肝心の「S-5」57mmロケット弾は1発も鹵獲されなかったと思われるため、「UB-16/32」は使い物にならなかったようです。



 下の画像が示すとおり、約10基もの多連装エジェクターラック(MER)も鹵獲されました。


 下の画像で見られるのは、「R-23R」セミアクティブレーダーホーミング式空対空ミサイルと「R-23T」赤外線誘導空対空ミサイルです。かつてアブ・ズフールの「MiG-23MF」の武装として使われたものですが、そのほとんどは約35年前に納入されたときの保護カバーに包まれたままでした。





 「MiG-23MF」の近接戦闘用の兵装である短射程の「R-60M」空対空ミサイルもありました。かつてはイスラエルとの戦争で使用されたミサイルですが、シリア内戦によってその出番が完全に消えたこともあり、今では埃をかぶっています。


 SyAAFが独自に開発したチャフ/フレア用ディスペンサー数基と、空対空ミサイルやロケット弾ポッドを収納する多数の箱が積まれていました。

 多数の「MiG-21」や「MiG-23」用の増槽も発見されましたが、その大半には多数の弾痕が残されていました。どうやらヌスラ戦線の戦闘員が射撃訓練に使ったようです。



 紛れもなく最も興味深くも役に立たなかった戦利品はアブ・ズフールで「発見」された17機の戦闘機と2機のヘリコプターでしょう。これはタブカでイスラム国の戦闘員によって鹵獲された18機のMiG-21と同等のものです。機体の状態は、半分に切断されたものから概ね無傷のもの、あるいはその中間の状態とバラバラでした。

 機体の大部分を保有していたのは第678飛行隊であり、基地の北西部に11機の「MiG-23MS」と2機の「MiG-23UB」、1機の「MiG-23MF」が残されていました。2000年代以降に退役した「MiG-23」の大半がここに放置されています。

 興味深いことに、この基地にある「MiG-23MS」の一部は、1982年のイスラエルと戦ったレバノン戦争でシリア空軍が被った甚大な損害を補うために、カダフィ大佐が寄贈した元リビア空軍の機体でした。この知られざる物語の詳細については、こちらをご一読ください。




 「MiG-23UB "1750"」は最近になってスクラップヤード(上の画像はその一部)から、より広大な機体の廃棄エリアに移されました。この機体は(上述した)反政府軍によってまだ運用可能と判断されたと思われて対戦車ミサイルの直撃を受けたものでしたが、実態としては過去に廃棄された機体を損傷させただけだったわけです。

 手前の「MiG-23MS」には、シリア国産のチャフ/フレアディスペンサー用の固定具が2つ備えられています。


 下の画像では、おそらくこの基地で最も劣化した機体を見ることができます。その状態は迷彩パターンさえも完全に色あせているほどです。

 機首右側に施されたマークは、この「MiG-23MS」はかつて、ナイラブ基地/アレッポ国際空港にあるSyAAFのオーバーホール・整備施設である「工廠」でオーバーホールされた過ことを示ししています。


 「MiG-23MF "3677"」は、このモデルで唯一ハマへ避難させられなかった機体でした。僅かに残留していた整備員たちはATGMの被弾で甚大な損傷を受けた尾翼を修理することができなかったようですが、いずれにせよ鹵獲されても敵に役立つことはないだろうと放置することを選択したと考えられます。

 「3677」はアブ・ズフールでATGMの攻撃を受けた3番目の機体で、ミサイルは全弾が機体の尾翼に命中しました。他の2機は被弾した時点で稼働状態になかったことを踏まえると、ATGMを用いた「3677」への攻撃は「敵が実際に使用している作戦機を破壊する」という目的を達成した唯一の事例となります。


 アブ・ズフールで鹵獲された(ゲートガードの「MiG-21F-13」を除く)「MiG-21」は合計で4機であり、内訳は「MiG-21MF」が2機、「MiG-21bis」が1機、「MiG-21UM」が1機でした。どの機体も少なくとも1年半は稼働状態になかったため、ハマに避難させることができなかったものです。


 この文章の上下に写っている機体は「MiG-21MF "1518"」で、アブ・ズフールで発見された機体の中で最も無傷に見える機体の一つです。

 唯一の「MiG-21UM」は下のHAS(左のシェルター)内に格納されていました。


 下の画像の機体は「MiG-21MF "1942"」です。


 ところで、発見された全ての機体は基地の陥落前に機関砲が取り外されていました。おそらくは即席の基地防御用の火器として使用されたか、あるいは僅かに残った運用可能な「MiG-21MF」と「MiG-21bis」で使用するためにハマに持ち去られたのでしょう。

 戦闘員たちは基地で2機の「Mi-8」にも遭遇しました。そのうちの「Mi-8 "1282"」は地雷散布装置を搭載していました。修復不能な故障や戦闘中の損傷によって現地のスクラップ置き場行きになったものと思われますが、その前にアブ・ズフール近郊で地雷を空中散布する任務に就いていたのでしょう。

 機体の奥に見えるのは前述の「MiG-23MS」で、尾翼が胴体から分離した状態で放置されて様子がよくわかります。




 もう1機の「Mi-8」はATGMか迫撃砲弾の餌食になったものと思われます。炎が機体を焼き尽くしたおかげで、このヘリが二度と飛ぶことがなかったことは言うまでもありません。



 アブ・ズフールで発見された機体の数が膨大であったにもかかわらず、この基地の占領がシリア上空におけるSyAAFの航空作戦に影響を与えることはないと思われます。実際、アブ・ズフールにいた相当な規模の守備隊への補給という困難な任務から解放されたことを考えれば、この占領はSyAAFに必要な一息つく猶予を与えたとすら言えるでしょう。

 ただし、空軍基地の陥落は、アサド政権にとって勝利どころか存続も保証されていないという国外の支援者たちが見過ごすことがない事実を思い起こさせる重要な出来事なのです。


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